2017-10

台湾プライドパレード2009に2万5千人

 10月31日、第7回台湾LGBTプライドパレード(パレードのサイト「台灣同志遊行聯盟」)がおこなわれ、史上最高の2万5千人(1)が参加しました(2007年のパレードについては、Global Voicesの記事「台湾:2007台湾プライドパレード」、2008年のパレードについては、本ブログの記事「台湾プライドパレードに史上最高の1万8千人」参照)。

 参加者は、第1回から毎年、急速に増え続けています。
 第1回(2003年)  500人近く
 第2回(2004年)  3000人を越える
 第3回(2005年)  5000人近く
 第4回(2006年) 10000人を突破
 第5回(2007年) 15000人
 第6回(2008年) 18000人
 第7回(2009年) 25000人

 今年のテーマは、「同志愛很大(Love Out Loud)」でした。これは、「愛によって差別をなくして、愛し合うことの力を示そう」という趣旨のもので、具体的には、次の3点を意味しています(それぞれ、簡単な内容も付記しました)。
 ・「同志的愛,無所不在(私たちの愛は、いたるところに存在する)」……LGBT(2)はみんなの身近にいる。社会のどこにでもいて、みな、社会のために貢献してきたけれども、異性愛者と同じ権利を持つことができていない。
 ・「同志驕傲愛自己(私たちは誇りを持って自分を愛そう)」……私たちLGBTはしばしば、自分を愛することの重要性をおろそかにしてきた。まず自分を愛してこそ、他人と社会を愛することができる。
 ・「同志要你的愛(私たちにはあなたの愛が必要だ)」……私たちLGBTは今なお、差別され、嘲笑されている。「異性愛関係だけが尊い」という価値観によって、非異性愛者は異端視され、不正常なものとされてきた。私たちは社会との対話を求め、「愛し合うことを支持し、恨み憎しみを拒絶する」人々を歓迎する。

 パレードを主催する「台湾同志遊行連盟(Taiwan LGBT Pride Community)」は、今年は、以下の団体が準備団体になりました。
 台湾性別人権協会(Gender/Sexuality Rights Association Taiwan)(セクシュアル・マイノリティなど、既成の性別二分法から外れた人々のための団体)、台湾同志諮詢熱綫協会(セクマイのための電話相談など)、晶晶書庫(LGBTらのための書店)、基本書坊(〃)、教師同盟(セクマイの教職員を支持し、教育における多元性を尊重する団体)、水男孩(海水パンツでパレードする男性の集まり)、Bi the Way(バイセクシュアル団体)、台湾大学浪達社(女性同性愛の学生団体)、台湾大学女性研究社(フェミニズム研究団体)、皮縄愉虐邦(BDSMの団体)

 パレードに参加した団体は、今年は初めて100を超えました。

 今年は、女性歌手の梁靜茹(Fish Leong)さんが「レインボー大使(彩虹大使)」になりました(梁靜茹さんのブログの記事「梁靜茹擔任2009年〈同志愛很大 彩虹代言人〉」、発言のビデオ「彩虹大使梁靜茹 1031台灣同志大遊行行前的祝福」)。

 「レインボー大使」は、「LGBTに友好的で、かつ芸能生活と公の場で、LGBTの運動を支持することを明確に表明した芸能人」の中から選ばれ、「必ずパレードに参加して、終点の舞台で行動によってLGBTを支持し、パレードに声援を送り、LGBTの権益のために声を上げる」ことになっています。

パレードの様子

 今年のパレードは、初めて総統府前のケタガラン大通りを出発点と終点にしたルートでやることができました(遊行路線)。

 終点では、梁靜茹さんが「勇気」「属於」「會呼吸的痛」などの歌を歌い(←リンク先はyoutube)、「私の友だちや仕事仲間にもたくさんLGBTがいるから、LGBTのために声を出せるのはとても光栄です」と述べました(3)

 日本・香港・シンガポール・欧米など、国外からも多数の参加がありました。日本国籍のMASAさんは「ここのパレードは東京よりずっと面白い。東京は行儀が良すぎる」と言いました。彼の見積もりでは、日本から約200人が台湾に来ているとのことです。また、今年は中国の団体も来ていましたが、中国の規定では「観光客は、台湾のデモには参加してはならない」ことになっているそうで、控えめにしていたそうです(4)

次が当日の写真(フリッカー)です。
2009同志大遊行現場相片

また、「アジア最大のプライド・パレード『台湾プライド』に2万5千人が参加」(みやきち日記)は、TAIPEI TIMESの記事の内容やyoutubeのビデオを紹介しています。

以下の中国本土のサイトの記事も、写真を多数掲載しています。
第七届台湾同志游行熱烈進行」愛白網2009-10-31
媒体报道第七届台湾同志大游行:同性恋者盼法律平等权利」愛白網2009-11-01
台湾同性恋游行图片-同语志愿者现场拍摄」同語HP2009-11-02

進まないLGBTをめぐる政策

 パレードへの参加者は年々急増していますが、もちろんLGBTの人々はまだまだ困難な状況に置かれています。たとえば、今回初めてパレードに参加した同性愛者の小Pさん(21歳)は、新聞の取材に答えて、高校以前は、学校は同性愛者に対する差別と嘲笑で充満していたので、やむなく異性愛者を偽装してクラスの女子生徒と怪しい関係になったが、それは「ちょうど、あなたがた異性愛の男子生徒が、むりやり男子生徒と怪しい関係を強要されるとの同じような苦痛だったんだ!」と述べています。大学に入学した後、はじめて同級生に性的指向を明らかにしたけれども、「今に至るまで、父母には知らせることができない」とのことです(5)

 たとえばそうした状況があるのに、馬英九政権は、同性婚姻の合法化や反差別法の立法化、刑法235条児童および少年福利法29条社会秩序維持法80条(これらは、それぞれ猥褻・青少年保護・売買春禁止条項ですが、同性愛の抑圧にも利用されているということのようです)の改正を進めてません。中央大学教授の何春蕤さんは「馬英九が政権について変えたのは、LGBTにケタガラン大通りを開放したことだけだ。これは基本的人権にすぎず、他のことは何もしていない」と批判しています(6)

 こうした状況に対して、パレードは、青(国民党を示す)と緑(民進党を示す)ののぼりを交差させて、×印を作って両党を批判したり、みんなで黒いハートマークを掲げて、政府の政策にノーを突きつけたりしました(7)

反LGBTデモ

 また、今年は、パレードの1週間前の10月24日に、反LGBTデモがありました。これは、キリスト教長老会・侵信会・衛理会・行道会による「神の愛はすべてを超える」と称するデモです。その発起人の一人である長老会の陳宇全牧師は「プライドパレードが年々盛んになって、若い人が性別と婚姻に対して誤った偏向した認識を持つようになり、また、多くの父母の心も傷つけている」、「キリスト教の教義は同性愛行為を支持しないが、できるだけ愛によって包容する。けれども、ここ数年のLGBTは弱者ではないのみならず、メディアの主流になったので、次の世代の価値観が混乱することを心配して、声を伝えようと決めた」と言っています。

 このデモは、「間違った愛を拒絶し、台湾を浄化する」というスローガンを叫びつつ、写真にあるように、「神は、一人の男と一人の女の婚姻を祝福する」「同性愛パレードは、大きな災難をもたらす」「神は世人を愛し、罪悪を憎む」といった幟を立てて歩きました。やはりケタガラン大通りから出発し、300人ほどが参加しました。デモの終点では「台湾の大空を浄化する」祈祷会をおこないました(8)

 このデモに対しては台湾のキリスト教の人士からも異見が出ていますが、台湾同志遊行連盟も「LGBTは、社会に対して多くの貢献をしており、また社会の各界・各階層に存在しているのに、宗教人が、LGBTを『罪がある』と考えるのは、無知と偏見の産物であり、LGBTとLGBTのキリスト教徒の心を深く傷つけた」と批判しました。連盟の楚楚さんは「LGBTの運動は、台湾が真の民主的で平等で多元的な社会に歩んでいる象徴であり、少数のキリスト教団体が、『愛』の名の下に、実際は『差別』をおこなっているのは、『神は世界の人を愛する』という真理に背いている」と指摘しました。さらに、大学生ら10数名で結成した「All My GAY」というグループのメンバーは、その場に出向いて、十字架を背負って抗議行動をしました(9)

パレードのあり方に対する疑問も一部に

 このように、LGBTの状況が改善されないまま、バックラッシュまで起きているので、上の「All My GAY」グループは、パレードの当日、次のような声明文を発表しました。
 「もし一年のうち、パレードの日以外の364日は、LGBTの実際の生活の境遇が改善されず、相変わらず差別や抑圧、恐怖の中で生きているなら、毎年パレードの人数が増えるだけでは、まったく誇るに値しない」、「このような人数・規模の拡大は、その中の重要なカギは、プライドパレードの形式を日増しに娯楽化・商業化して、それによって主流の大衆に気に入られようとする戦略である」、「私たちは衝突を恐れてはならないし、衝突によってのみ社会的対話の空間を支えることができるとさえ意識しなければならない。この社会の保守的な力、たとえば週末の一部のキリスト教会の反LGBTデモ……に対しては、私たちはみな積極的に具体的行動で対応する必要があり、声明文を出すだけではいけない!」(10)

 何春蕤さんも、パレードの5日前に、「同志愛很大」というテーマについて、「若干の人は、このテーマは穏やかすぎて、集団で声をあげる際に、苦境に抗議し、改善を要求する機会を失ってしまう、たとえ集団でパレードすることによって1日は士気が上げられても、この士気は、一年中差別されているうちに擦り減ってしまうかもしれないと心配している」と述べています(11)

 もちろんパレードは上述のように政治批判もしたのですが、パレード当日、何さんは、通行人から「これはハロウィーンのパレードですか?」と尋ねられて驚き、もっとはっきり議題を訴えなければいけないと思ったといいます(12)

 私には詳しい事情がわかりませんので、「All My GAY」や何さんの批判が当たっているかどうか判断できませんが(パレードとして政府へ抗議行動をしたのは、「All My GAY」や何さんのような声を取り入れたからかもしれません)(13)、台湾の状況をある面で反映した議論として紹介させていただきました。

(1)新聞報道では、2万5千人としているものと、2万人としているものと両方ありますが、連盟の発表では、2万5千人となっているので(第七届台湾同志遊行的総召楚楚「感謝大家參與,第七屆台灣同志遊行圓滿落幕!」)、いちおう2万5千人としました。
(2)LGBTとは、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーのこと。「同志」は、「セクシュアル・マイノリティ」と訳したほうが適切な場合も少なくないと思いますが、台湾同志遊行連盟のサイトでは「LGBT」と英訳しているので(ときに「we」と訳している)――この点は、「LGBT」のほうが「セクシュアル・マイノリティ」より自称として使われやすいという理由もあると思いますが――本稿では「LGBT」と訳すことを基本にしました。
(3)梁靜茹無懼函 送勇氣聲援同志」中時電子報2009-11-01
(4)2萬同志 凱道大遊行」『聯合報』2009年11月1日。
(5)警察開道 2.5萬同志大遊行」『中国時報』2009年11月1日。
(6)同志愛很大 赤裸擁吻無罪」『自由時報』2009年11月1日。
(7)同上および聯盟新聞稿「1031第七届台灣同志大遊行 两萬人齎聚凱道 巨型大叉、心標誌 抗議政府長期欺騙、漠視同志權益」台湾同志遊行HP。
(8)基督教反同志遊行 同志團體嗆聲」中央社2009-10-24、「同志愛太狂 基督教今抗議」『自由時報』2009年10月24日、「300教友反同志 遭背十字架反嗆」『蘋果日報』2009年10月25日。
(9)台灣同志遊行聯盟:拒絕假關愛、真歧視 不應假上帝關愛之名 羅織同志罪名 10/31同志愛很大遊行 歡迎現場對話」苦労網2009/10/24、「反同志遊行激對立 支持與否 教會界並無共識」苦労網2009/10/27。
(10)「All My GAY!!! 」小組「All My GAY!!!  同志遊行聲明稿」苦労網2009/10/31
(11)何春蕤「弱勢者遊行 如何面対危機」『蘋果日報』2009年10月26日。
(12)同志愛很大 赤裸擁吻無罪」『自由時報』2009年11月1日。
(13)もちろんパレードについて様々な考え方があるのは、どの国でもある意味当然のことで、たとえば中井伸二「セクシュアル・マイノリティーの行進 プライドパレード <その意義と困難さ>」(JANJAN2008/10/28)にも、パレードは単なるお祭りではなく、メッセージ性を強化すべきだという意見をめぐる議論が少しなされています。なお、中井さんの文は、日本のパレードは外国の大都市に比べて参加者が少ないのではないか、という疑問も取り上げています。
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