2017-08

民間3団体がセックスワーカーの人権問題に関する報告を発表

 9月、北京愛知行研究所中国民間女権工作組女性権利連盟が共同で『中国セックスワーク・セックスワーカー健康・法律人権報告(2008-2009)[中国性工作与性工作者健康与法律人権報告(2008-2009)(PDF)]』を発表しました。

 中国のセックスワーク(セックスワーカー)については、これまでにもさまざな調査研究がされてきました(そのかなりの部分は、中国人民大学性社会学研究所のサイトに収録されています[性工作与性産業])。しかし、民間団体がセックスワーカーの人権問題にテーマを絞った報告が出したのは初めてではないかと思います。

 かつて1991年9月、全人代常務委員会は「売買春厳禁に関する決定(厳禁売淫嫖娼的決定)」を採択しました。この決定は、売買春を処罰することを規定するとともに、「売春・買春をした者に対して、一律に強制的に性病検査をし、性病を患っている者に対しては強制的に治療をおこなう」と述べています。つまり、「中国の売買春厳禁政策は、性病伝染を抑制する公共衛生措置でもあった」とこの報告書は述べています。

 しかし、政府の売買春取り締まり政策はセックスワーカーを地下に追いやったために、彼女(彼)らは黒社会の支配を受けて人身の権利が侵害されただけでなく、良好な公衆衛生サービスを受けにくくなった、とこの報告書は批判し、政府の政策の見直しを求めています。

 以下、この報告書の興味深い箇所を抜き書きするなどして、かついまんでご紹介します(正確には原文をご覧ください)。

一、セックスワーク・セックスワーカーに関係した法律人権問題──中国で無視されている問題

 (一)人身の安全

1.人として──セックスワーカーの人身の権利は当然保護されなければならない
 「世界人権宣言」第3条は「すべて人は、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する」と指摘している。現在の中国の法律の枠組みの下では、セックスワーカーの行為は依然として違法と定められているけれども、セックスワーカーの人身の権利は、その行為が違法であるからといって失われてはならない。その生存における自由と安全はなお重視され、あるべき保護を受けなければならない。

2.大多数である女性のセックスワーカーについて:女性として享有すべき権利
 私たちは、大多数である女性のセックスワーカーは、女性として、多くの男性の前では依然として弱い立場にあることを重視しなければならない。「女性に対する暴力の撤廃に関する宣言」第4条は「各国はできるだけ早くすべての適当な政策をとって、女性に対する暴力をなくさなければならない」と述べている。

 (二)権利の訴えと保障

 大多数のセックスワーカーは人身や財産の権利が侵害されても、往々にして警察などに届け出るという選択をしない。その原因は、法律を執行する機関が、セックスワーカーの訴えに対応するとき、しばしば差別や偏見があるからである。

 同時に、セックスワーカーは、法律を執行する機関が権力を濫用することによる権利の侵害にもあう。たとえば、2006年に深圳の福田で起きた「街頭で売買春を処罰した」事件などである。

 (三)疾病に対する脆弱性

 国連のエイズ計画署(?)が出版した『セックスワーカーとエイズ』は、セックスワーカーがエイズにかかりやすい要因を指摘している。
 ・恥辱と周縁化がセックスワーカーにはつきまとう。そのために生じる社会的隔離は、人々にセックスワーカーーに対する差別を増長させ、セックスワーカーが法律・衛生・社会サービスの体系に入ることを制約する。そのことがセックスワーカーがエイズに感染する可能性を高めている。
 ・保護的な法律・政策がない。抑圧的な法律と政策の下では、セックスワークはますます秘密化するしかない。そのような状況の下では、エイズや性病の予防・ケアのプロジェクトが成功することはほとんど不可能である。
 ・大量飲酒や薬物の吸引・注射、暴力をふるわれるなどの情況が存在する生活方式は、エイズウイルス感染の危険を増す。

 それゆえ、反差別・法律的救済・環境改善の面の努力を軽視するなら、行為関与は一面的な働きしかしないかもしれない。

 (四)普遍的な被差別

1.国家レベル
 日常の法律執行において、いつも気の向くままに逮捕して、殴ったり罵ったりし、セックスワーカーの個人のプライバシーやその他の権利を顧みない。また、逮捕や法律執行のとき、通常、けなしたり差別したりする言葉を言う。

2.社会的レベル
 人々は往々にしてセックスワーカーを不道徳な人だと考える。それは、一つには、セックスワーカーがその仕事をしている原因を意識しないからである。実際は、セックスワークをすることを強いられている人も多くいるのである。もう一つには、セックスワーカーが社会の気風を損なうと考えるからである。この面は、ジェンダーの不平等(性道徳の二重基準)とかかわっている。

二、セックスワークの違法性の認定と関係する法律とその問題の再考

 (一)違法性の認定と関係する法律の規定

 ・1991年 全国人民代表大会常務委員会「売買春厳禁に関する決定(厳禁売淫嫖娼的決定)」:
 「売春・買春をする者に対しては、公安機関が関係部門と共同で、集中して法律・道徳教育と生産労働を強制して悪習を改めさせる。期限は6カ月から2年とする。具体的な方法は国務院の規定による。」

 ・2001年 公安部「同性間の金銭・財物を媒介とした性行為の定性処理の問題に関する批復[批復:(下級機関からの文書に)意見を書きくわえて返答すること]」:
 不特定の異性間または同性間で、金銭・財物を媒介にして発生した不正当な性関係の行為は、口淫・手淫・鶏姦などの行為を含めて、みな売買春行為であり、行為者に対しては法によって処理しなければならない。

 ・2005年 「中華人民共和国治安管理処罰法(中華人民共和国治安管理処罰法)」:
 第66条 売春や買春をした者は、10日以上15日以下の拘留に処し、あわせて5000元以下の罰金を科すことができる。情状の軽いものは、5日以下の拘留または500元以下の罰金に処す。
 第67条 他人を誘惑・収容・紹介して売春させたものは、10日以上15日以下の拘留に処し、あわせて5000元以下の罰金を科すことができる。情状の軽いものは、5日以下の拘留または500元以下の罰金に処す。

 二)中国のセックスワークは合法化すべきか?

 治安管理処罰法と関連する法律の規定とから見て、わが国のセックスワークについての法律による判断は、罪ではないけれども、違法行為だと認定している。すなわち、セックスワークに従事することは犯罪行為ではないが、国家がそれに対して治安管理処罰をしなければならないということである。

1.世界の他の国家のセックスワークに対する法律の認定

 (1)売春の犯罪化(売春の刑事化):アメリカの若干の州、社会主義の時期のルーマニア・ハンガリー・チェコスロバキア
 (2)売春の合法化:ドイツ・フランス・オーストリア・オランダ、アメリカのネバダ州の大部分の地区
 (3)売春の非犯罪化:イギリス・日本
 (4)売春は違法だが、犯罪を構成せず、行政機関が行政処罰をおこなう。→世界でこのモデルを採っている国家は中国だけのようだ。

2.セックスワークの合法化の可能性(略)

 (三)コンドーム:セックスワーカーを逮捕する証拠か?

1.コンドームを証拠とすることの法律的意味におけるマイナスの意味

 以上のセックスワークと関連する法律の規定にもとづいて分析すると、「売春」行為が発生したか否かを判断するには、(1)不特定の異性または同性の間に、(2)金銭・財物を媒介にして、(3)営利を目的にした、(4)不正当な性的関係があった、という点を満たさなければならない。しかし、実際は、法を執行する機関は、「売春」行為を取り締まるとき、往々にして、簡単な追及・尋問と、コンドームを身につけて(持って)いるかどうかを証拠にして逮捕や懲罰をおこなっている。

 1998年、衛生部が中共中央宣伝部など9つの部門と共同で出した「エイズ・性病を予防する宣伝教育の原則を印刷配布することに関する通知」は、「コンドームを売春の証拠として扱う報道は避けなければならない」と指摘した。しかし、これは拘束力のある法律的文書ではない。また、2008年12月4日、公安部政府情報公開事務局は、北京愛知行研究所所長の万延海の情報公開申請に対する返電において、「公安部はまだコンドームを売買春の証拠にしてはならないという規範的文書を発表したことはない」と述べた。

2.コンドームを証拠とすることと国家の疾病制圧政策の中のコンドームに関する規定との食い違い

 (ここで、エイズのハイリスクグループのコンドーム使用率を向上させることを説く国務院や衛生部の規定・計画や、公共施設や入浴施設にコンドームまたはコンドームの販売設備を設置することを決めた規定などを引用しています)

 もしコンドームを「売春、買春」の証拠にするならば、これらの規定は大きく割り引かれ、疾病予防の任務を実際に果たすことができない。

 (四)引き回して見せしめにすること(游街示衆)は合法か否か?

 深圳警察は、2006年11月29日、売買春をおこなった百名あまり(男子60人、女子40人)の容疑者を公に見せしめにした。彼らはみなマスクを着け、顔面を、目だけを残して、ほとんどすべて蔽っていた。引き回して見せしめにした後、福田公安分局の副局長が処罰の決定を宣言し、各人の姓名、誕生日、本籍をそれぞれ読み上げた。現場では千人に上る人がやじ馬見物をしていた。

 ・中華人民共和国憲法第38条は、「中華人民共和国の公民の人格の尊厳は侵犯されてはならず、いかなる方法による公民に対する侮辱、誹謗、誣告、他人の陥れも禁止する」

 ・治安管理処罰法第5条は、「治安管理処罰を実施する際は、公開・公正で、人権を尊重・保障し、公民の人格の尊厳を保護しなければならない」と明確に規定している。

 ・1988年、最高人民法院、最高人民検察院、公安部は共同で「既決囚、未決囚を引き回して見せしめにすることを堅く制止する通知」を出している。

 ・上海普若弁護士事務所の姚建国弁護士が2006年12月1日に発表した「深圳警察が妓女と嫖客を引き回して見せしめにした事件についての全国人民代表大会への公開状」は、次のように述べている(要旨)。
 治安管理処罰法に違反した人に対して、警察は行政処罰をする権利があるけれども、法律は同時に、処罰された人は行政再議や行政訴訟を経て処罰の決定をくつがえすことができることも規定している。また、公安機関が犯罪だと考えても、警察の捜査や検察の審査の段階では容疑者であって、犯罪者ではない。裁判所の判決によってはじめて犯罪や処罰は確定する。福田警察のやり方は、法律的手続きに背いており、法の外で刑を執行している。

三、幼女を強制・誘惑して売春させることおよび関係する法律の問題

 (一)関連する法律の規定(略)

 (二)法律の規定に存在する問題及びその幼女に対する保護の欠落(略)

 1.異なった法律の間の接続に問題が存在している。

 2.幼女買春罪は、未成年の少女の保護に不利である。

 →本ブログの記事「女児に対する性侵害事件と法律問題」で書いたことと重なる部分がかなりあります。

四、セックスワーカーの人身の権利が傷つけられやすさ

 (一)『中国版ニューズウィーク』の調査報告(略)

 (二)学者の研究による結論(略)

 →(一)(二)については、本ブログの記事「中国の女性セックスワーカーに対する暴力の調査」と重なる部分が多いです。

 (三)民間組織による調査報告──北京愛知行研究所の経験

 2008年、北京愛知行研究所は、北京市の女性セックスワーカーにアンケート調査をした。その主な結論は以下のとおり。
 ・客からの傷害が発生が比較的頻繁で、主に「罵る」「金を払わないか、少なく払う」「たとえ自分はしたくなとくも、応接せざるをえない」「奇怪な動作を強要する」「殴る」である。傷害の程度から言えば、「強姦」「殴る」「誘拐」は発生率は低いが、傷害は最も大きい。
 ・客からいかなる傷害も受けたことがない人は22%、1―2種類の人が35%、3―4種類の人が26%。4種類以上の人が15%。
 ・傷害を受けたとき、セックスワーカーは同じ世界の人に助けを求めることが最も多い。多数は雇い主に助けを求め、一部は自分で処理する。

 (四)弱々しく無力な女性の思いやり──主流の女性組織のセックスワーカーの権益問題に対する無視

 この数年、中国の女性セックスワーカーに対する工作とプロジェクトは多いけれども、それらは、主に中国の衛生部がおこなっいてる行為関与とエイズ・性病制圧工作である。女性セックスワーカー自身に対するヒューマンケア活動は少ない。

 この数年、女性の権益と労働者の権益については多くの関心が寄せられているけれども、セックスワーカーの権益問題についてはほとんど重視されていない。主流の女性権益保護組織も、そうした周縁のセックスワーカーの問題にはほとんど関心を寄せていない。主流の女性機構の大きな部分は、セックスワーカーは社会の罪悪と恥辱であるとさえ考えている。

五、セックスワークとエイズ

 (一)なぜセックスワーカーのエイズ問題における脆弱性に注目しなければならないか

1.セックスワーカーのエイズに関する認知の現状──北京愛知行研究所の研究の経験

 ・72%の人しか、エイズが性病であると正しく判断できなかった。
 ・28%の人は、「外見ではエイズに感染しているかどうか判断できない」ということを肯定できなかった。
 ・12%の人だけが周囲にエイズに感染した人がいると聞いたことがあったが、58%の人が自分がエイズに感染していないか心配している。しかし、13%の人しか、過去1年以内にエイズウイルスの検査を受けたことがなかった。

2.セックスワーカーをエイズに感染しやすくしている要素

 ・恥辱と周縁化
 ・限られた経済的選択、とくに女性
 ・健康・社会・法律の面でのサービスの欠乏
 ・情報と予防方法の欠乏
 ・ジェンダーにもとづく差異と不平等
 ・性的搾取と不法な販売
 ・有害または保護が欠乏した法律と政策
 ・生活方式と関連した危険(暴力、薬物吸引、流動など)

 (二)国際的レベルのセックスワーカーとエイズの問題に関する指導的原則

 2007年4月、国連エイズ計画は、「エイズとセックスワーカーに関する指導的文書」を公布した。それは、以下の三点を柱としている(1)。。
 1.脆弱性を減らし、社会構造の問題を解決する
 2.エイズウイルスに感染する危険を減らす
 3.サポートの環境をつくり、選択の機会を増やす。

 (三)わが国のエイズ防止領域におけるセックスワークに関する関連規定(略)

 (四)中国の、セックスワークのエイズ対応能力を規範化する上で存在する問題

 ・セックスワーカーとその客は「エイズウイルスに感染しやすい危険な行為集団」として、中国のエイズ防止工作に重視されているけれども、その関心は、主に公衆衛生的な考慮にもとづいており、基本的に疾病予防工作に限られていて、セックスワーカーの権利に対する関心やセックスワーカーの生存境遇に対する理解、セックスワーカーに対する全面的援助のメカニズムが欠けている。

 ・中国のエイズ防止工作は、セックスワーカーの主体的参加が欠けており、セックスワーカーはいつもなおざりにされている。エイズ防止工作をする者の中で、セックスワーカーは教育の対象であるか、ピアボランティアであって、エイズ防止プロジェクトの計画や指導に参与することは少ない。数から言ってそう多くないセックスワーカーのエイズ防止工作において、セックスワーカーは受動的地位に置かれている。

 ・中国はかつて売買春を取り締まることを性病・エイズ防止の主な戦略にしていた。現在は、売買春の取り締まりを性病・エイズ制圧の手段にする姿勢は弱めて、衛生工作者とピアボランティアが行為関与工作を展開することを強調しているけれども、衛生工作はけっして優先的地位を与えられておらず、公安部門の取り締まりは、良好な衛生工作がおこなわれているからといって、ストップしない。公安部門の取り締まりの行動は、しばしば、衛生工作者がセックスワーカーの社会集団の中で築いた信頼と社会的関係を破壊している。

 ・中国の最近のエイズ防止政策は、娯楽施設がコンドームを提供し、入浴の場所には必ずコンドームを置くことを要求している。しかし、公安部門はしばしばコンドームを施設で売買春がおこなわれている証拠にしている。そのため、娯楽施設の経営者は、しばしばコンドームを公然と置きたがらず、セックスワーカーをサポートする人が施設の中で活動することを支持しない。

 (五)セックスワーカーの健康組織が世界基金第6次プロジェクトと中国ゲイツプロジェクトに参加している情況

 第6次中国世界基金エイズプロジェクト[第六輪中国全球基金艾滋病項目]と中国ゲイツプロジェクト[中盖項目。中国とビル&メリンダ・ゲイツ財団とのプロジェクト]は、NGOの参与を重視した。

 第6次プロジェクトが始まったとき、中国の民間組織の発展はまだ未成熟で、セックスワーカーにサービスを提供する組織は、多くの都市にはほとんどなかった。このとき、中国に、純粋の草の根組織でもなく、完全に政府が組織した「官営の民間組織」でもない一群の組織が出現した。

 それらの組織は完全に政府の機関から離脱した独立した名称を持っていたけれども、資金あるいは執務の場所は依然として政府当局にあった。下の方で仕事をしているのは民間の人だったかもしれないけれど、当局の責任者が工作を指導した。これらのセックスワーカーに関心を寄せる組織はみな陽光[公然としている?]で、たとえば、女性関愛小組、女性健康センターなどなどであった。彼女たちは、セックスワーカーに無料でコンドームを提供し、希望しだいで相談や検査のサービスもした。けれども、彼女たちはけっして「セックスワーカー」と一体にはなれず、過剰な結びつきを持たなかった。彼女たちは、エイズ防止の宣伝教育活動をしているだけである。

 若干の積極的なプロジェクト機構は第6次プロジェクトの趣旨に従って、民間に行って本当の草の根組織を発見・養成した。この時やっと、少しばかり本当の「セックスワーカー」がプロジェクトに参与してきた。けれども、極彼女たちの比率は第6次プロジェクトでは極めてわずかだった。

 (六)中国政府への提案と意見

 ・中国政府はエイズ工作の優先的な地位を明確にし、衛生部門とエイズ民間組織(セックスワーカーが設立した組織を含む)のエイズ防止における特殊な地位を明確に決め、その工作が公安部門の介入を受けないよう確実に保証すべきである。

 ・中国政府は、セックスワーカーがエイズ防止工作に参与するよう政治的・経済的に奨励しなければならない。エイズ防止工作に参与したセックスワーカーに対しては必要な配慮を与え、気の向くままに法律的な取り締まりをしてはならない。セックスワーカーが自らの組織を設立し、登記できるよう励まし、サポートしなければならない。その組織は、エイズ防止工作に参与するだけでなく、暴力反対や法律的援助を含めた、セックスワーカーの全面的なソーシャルワークに参与する。

 ・セックスワーカーはエイズ防止工作の計画に参与しなければならず、エイズ工作の指導者にならなければならず、受動的な被教育者、または社会的グループのピアエデュケーションの工作に限られてはならない。

 ・中国政府は娯楽施設にコンドームを置くように規定すべきであるだけでなく、娯楽施設のためにコンドームを購入すべきであり、娯楽施設のコンドームに関して具体的な規定を提供し、一定量のコンドームの供給を確保すべきである。

 ・中国政府は、現行の法律と政策における、売買春の取り締まりを性病・エイズ制圧の方策とする規定を改正し、とくに刑法の中の性病の伝染の罪に関する条項を改正する必要がある。

六、メディアとセックスワーク

 (一)中国の「性文化フェスティバル(性文化節)」が初めてセックスワーカーを招待した

 2008年5月に南昌で開催された「性文化フェスティバル」では、中国の前近代の性文化の展覧や、エイズ予防の知識の宣伝パネル、性心理の現場の専門家のカウンセリング、劉達臨教授や胡宏霞博士の講座などがおこなわれたが、セックスワーカーに入場券を贈って招待した。

 (二)メディアの悪質な報道が、上海楽宜[男性セックスワーカーをサポートするNGO(2)のセックスワーカーの中でのエイズ防止活動の困難を増大させた

 『新快報』の男性セックスワーカーに関する報道は、記事が出たとたんに、多くのセックスワーカーは地下に潜ってしまい、彼らの仕事の安全(強盗、ゆすり、性病・エイズ、強姦などの問題)に対して関与できなくなった(3)

 (三)メディアのセックスワーカーに対する尊重の問題

 ・2007年初め鳳凰衛星テレビの《冷暖人生》コーナーで、中国大陸のテレビで初めて、セックスワーカーがカメラのレンズに向かって自分のことを語った(4)

 ・《魯豫有約》でセックスワーカーに取材したとき、番組のホストと取材者との間に、「なにか病気にかかるのは怖くなかったか」、「着てもらった服はすぐに洗った」という会話が交わされた。

 ・《辺縁人生――一個撮影師眼里的世界》《她們》で、作者は大量にセックスワーカーの阿Vと彼女のボーイフレンドの写真を掲載した。作者は同意書をもらっているとはいえ、作品の発行がその女の子を傷つける可能性を考えるべきである。

七、国内外の重要事件のセックスワークに対する影響

 (一)オリンピックと中国は、再三再四セックスワークに「レッドカード」を出した

 2007年以降、北京・瀋陽などオリンピックが主に行われる都市では、娯楽場所から売買春などの違法活動を一掃する活動が行われた。

 (二)建国60周年前夜の「厳打(厳しい取り締まり)」

 2009年は中華人民共和国建国60周年なので、5月1日以降、北京市の警察は「厳打(厳しい取り締まり)」を開始した。通りでは至るところでパトカーが身分証を検査した。女性のセックスワーカーと客がホテルの部屋を取ったら、警察は入力された身分証の情報から女性のセックスワーカーがいるホテルを知って、彼女たちを厳しく取り締まり、課せられた罰金や処罰も比較的重かった。

 しかし、街頭に立っているセックスワーカーが強盗や暴力の問題を警察に通報した時は、警察はなかなかやって来なかった。北京の東単公園で、ある男性セックスワーカーが強盗にあったとき、強盗犯の様子はこの公園のネットワークカメラで見ることができたにもかかわらず、警察はこのセックスワーカーに、今後はそのような仕事をしないように警告しただけで、強盗犯を追及しなかった。

 最近の「低俗取り締まり」運動では、多くの場合、「セックスワーカー」というキーワードで検索するとスクリーニングされる。国家は、また「グリーンダム」によって、色情情報をシャットアウトしようとしている。

 (三)経済危機の、治安とセックスワーカーの人身の安全および接客態度と性行為に対する影響

 2007年と2008年の350名の女性セックスワーカーのコンドーム使用問題の調査によると、最近3カ月の間に客と性的関係を持つ時に毎回コンドームを使っていた人は65%だったが、これは2007年の値(72%)よりも7%低かった。使わない原因を尋ねると、多くのセックスワーカーは、経済危機のために客が少なくなったので、客の意志に従わざるを得なくなったことを挙げた。

(1)ただし、この文書や「3本の柱」に対しては、セックスワーカーから批判も出ているようです。セックスワーク・プロジェクト国際ネットワーク(NSWP)「セックスワーカーたちの、UNAIDS(国連エイズ合同計画)による『HIVとセックスワークについてのガイダンス・ノート』への意見書」すぺーすアライズ
(2)「楽宜」は、2004年11月に設立された中国初の男性セックスワーカーためのNGO。男性のセックスワーカーに、性病・エイズの予防知識を宣伝するとともに、医療相談や無料の性病・エイズ検査をおこない、問題があった人には病院に同行したりしている(これは、彼らにとって重要で、彼らの多くは医者に冷ややかに見られるのを恐れて、正規の大病院に行けなかったり、私営病院に行って、しばしば高価な治療費をだまし取られたりしている)。また、客の強姦、虐待、ゆすりなど――警察には届けない人が多い――に対して法律的援助もしている。20人ほどのボランティアがおり、その半数近くは男性セックスワーカーで、ピア・エデュケーションをしている。
 なお、男性セックスワーカーの多くは困窮した地方の出身で、必ずしも良い生活をしていない。また、異性愛者が大多数で、経済的事情から男性に性的サービスをしているという(「上海『楽宜』服務男性性工作者」『文匯報』(香港)2007年5月20日[愛白網より])。
(3)媒体的悪性報道, 対于上海楽宜在性工作者中的防艾工作増加難度」中国紅絲帯網(2008-08-11)。
(4)“灰姑娘”一個辺縁群体或悲或喜的別類人生」人民網2007年1月26日。
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