2017-10

本年の動向9-農村に残された「留守児童」の問題

2005年5月 全国婦連と中国家庭文化研究会、「中国農村留守児童 社会的支援行動シンポジウム」開催。
12月 『中国婦女報』とユニセフ、「社会に働きかけ、留守児童と流動児童の権益を保護する」座談会開催。
2006年7月 全国婦連「農村の留守児童を愛護する行動を強力に展開することに関する意見」出す。
9月 全国農村留守児童工作テレビ電話会議
10月 農村留守児童専題工作組設立。
(1)

 昨年から今年にかけて、「留守児童」の問題が大きく浮上してきました。「留守児童」というのは、父親か母親(またはその両方)が出稼ぎに行って、農村に残された子どものことです。
 中国には14歳以下の「留守児童」が全国で2290万人いるとのことです。
 以前から、父母と一緒に出稼ぎに行った子ども(流動児童)が、農村の住民を差別する「戸籍」制度の影響で、都市の子どもと同じ学校に通えず、不十分な教育しか受けられないことは問題になっていました。しかし、出稼ぎの農民たちの多くは、子どもや家族を連れて都市に行くことができないので、農村に残された子どもの問題も深刻です。

 もちろん子どもの問題は、けっして女性だけの問題ではないですが、中国では、主に婦女連合会(婦連)の仕事とされることが多いという現実があるので、このブログでも取り上げました。

 2005年12月に、『中国婦女報』とユニセフが、「社会に働きかけ、留守児童と流動児童の権益を保護する」宣伝プロジェクトの調査結果を発表します。
 その調査によると、「留守児童」の31%は、両親の帰宅が年1回で、24.1%は数年に1回だといいます。
 親子の連絡は、電話が74.5%であり、電話に頼っているようです。
 52.5%の子どもは、出稼ぎに行った父母のことを非常に心配しており、20.2%は、父母との感情の交流に問題があることを心配しているとのことです。

 留守児童は成績が悪いとか、非行に走りやすいということもよく言われます(2)。ここらへんは多少偏見が入っている可能性もありますが、農作業を手伝わされてその負担で勉強できないということもあります。
 また、犯罪の標的になりやすい、とくに女児の場合、性被害に遭いやすいという問題もあります(3)。

 2005年9月には、留守児童問題に関する調査研究が単行本としても出版されています(4)。その結論は、以上で述べたこととも重なる部分がありますが、以下のようなものです。
 ・父親の出稼ぎが主であり、仕事をしている場所は一般的に比較的遠く、家に帰る頻度は低い。
 ・留守児童と出稼ぎの父母の連絡は限られており、電話が主な連絡手段である。
 ・留守児童の監護保護は、ひとり親によるものが主で、祖父母による監護保護は問題が多い。
 ・留守児童の労働負担の増加は、留守児童の娯楽に深刻な影響をもたらしている。
 ・少数の留守児童は成績が下がっている。
 ・留守児童は、いつも父母のことを思っているが、同時に現実はいかんともしがたいと思っている。
 ・心理的負担と労働の負担は増加しているが、自己の生活の独立性は増大している。
 ・学校・コミュニティ・政府部門は、留守児童問題を重視しておらず、ほとんど措置は取られていない。
 結局、残された子どもは農作業もやらされて、遊んだり勉強したりする暇がないわけです。しかし、学校や政府の対策はなされていないと。

 さて、全国婦連が今年7月に留守児童問題に対して「意見」を出したのに続き、10月には、国務院農民工工作連席会議弁公室や全国婦連など12の部門が共同で「農村留守児童専題工作組」を設立し、全国婦連書記処書記の張世平が組長になりました。
 しかし、全国婦連の「意見」で述べられている対策も、「調査研究」「家庭教育を『第11次五カ年計画』に入れる」などであって、まだ一般的・抽象的なものが多く、具体的な措置があまり述べられておらず、まだまだ対策はこれからのようです。

 また、出稼ぎは父親が多いのですから、農村に残された「留守児童」の問題だけでなく、「留守女性」の問題も軽視できません。
 すなわち、農村に残された女性は、子どもや親・義理の親を抱えつつ、農作業も自分一人でしなければならなくて負担が重いという問題です。彼女たちは性犯罪などの犯罪の標的にもされやすい。この「留守女性」の問題は、項を改めて書きたいと思いますが、とりあえず、捜狐財経『五道口争鳴』第105期「5000万“留守村婦”中国新農村之痛」がまとまっているので、参照してください。
 しかし、「留守女性」の問題は、婦連も含めて、どうも「留守児童」の問題ほどには取り上げられないようで、気になります。

(1)以上のそれぞれについては、順に「探尋農村留守児童的出路 中国農村留守児童社会支援行動研討会在鄭州閉幕」『中国婦女報』2005年5月24日、「本報与聯合国児基金会召開“動員社会,保護留守児童和流動児童権益”座談会 孩子們期待我們做些什麼」『中国婦女報』2005年12月13日、全国婦聯「関于大力開展関愛農村留守児童行動的意見」(「中華全国婦女聯合会文件 婦字[2006]25号 7月17日)(全国婦聯HP→文件庫)、「扎実有効推進農村留守児童工作 全国農村留守児童工作電視会議在京召開 顧秀蓮出席並講話 黄晴宜主持」『中国婦女報』2006年9月15日「我国成立専門機構解決農村留守児童問題」『中国婦女報』2006年10月20日
(2)「八成以上留守児童成績中等偏下」『中国婦女報』2006年9月2日。「“留守孩子”失足多」『中国婦女報』2005年3月23日。
(3)「六大問題困擾留守児童」」『中国婦女報』2006年6月20日。
(4)葉敬忠・[美]姆斯・莫瑞(James R Murray)主編『関注留守児童 中国中西部農村地区労動力外出務工対留守児童的影響』(社会科学文献出版社 2005年)91-97頁。
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