女性/ジェンダー学学科発展ネットワーク第1回会員代表大会
7月24日から26日まで、広西チワン族自治区の南寧市で、「女性/ジェンダー学学科発展ネットワーク(婦女与社会性別学学科発展網絡)」の第1回会員代表大会がおこなわれました。
「女性/ジェンダー学学科発展ネットワーク」は、2006年8月、女性/ジェンダー学領域の大学教員や研究者によって結成され(本ブログの記事。この際にも「会員大会」が開催されていて、今回の大会との違いがどうもよくわかりませんが)、その後3年間にわたって女性/ジェンダー学の学科の建設と発展のために力を尽くしてきました。現在、同ネットワークには、テーマごとに15のサブネットワーク(子網絡)があり、会員は計1273人に達しています(ただし、団体会員が26あり、個人会員は265人です)(1)。
大会では、活動報告や財務報告がおこなわれるとともに、新しい規約も提案され(婦女/社会性別学学科発展網絡章程[ワードファイル])、審議されました(2)。
役員の選出
大会では、理事を選出し、以下の方々が理事になりました(得票順)(3)(リンクは本人のサイト・ブログ・専欄)。
〇王金玲(女、浙江省社会科学院)→理事長に
〇黄約(女、壮族、広西財経大学)→副理事長に
〇張建(女、中華女子学院)→副理事長に
〇楊国才(女、白族、雲南民族大学)
王宏維(女、華南師範大学)
〇駱曉戈(女、湖南商学院)
〇趙瑩(女、東北師範大学)
金一虹(女、南京師範大学)
暢引婷(女、山西師範大学)
〇夏増民(男、華中科技大学)
荒林(女、首都師範大学)
〇石紅梅(女、厦門大学)
金花善(女、朝鮮族、延辺大学)
沈奕斐(女、復旦大学)
〇柯倩婷(女、中山大学)
黄筱娜(女、広西婦女幹部学校)
胡曉紅(女、東北師範大学)
理事会では、常務理事を選出し、上で〇を付けた人が常務理事になりました(4)。
常務理事会では、理事長と副理事長を選出しました。上に書いたとおり、理事長には王金玲さんが、副理事長には、黄約さんと張建さんがなりました(5)。
サブ・ネットワークからの報告
大会では、また、各サブ・ネットワークがこの一年間の活動や今後の課題、目標について報告し、お互いの交流をおこないました。
当日の報告の内容はわかりませんが、各サブ・ネットワークは、大会の前に報告書を提出しています。たとえば、「女性・ジェンダー史サブ・ネットワーク」の報告書を見ると、以下のような問題に力を入れてきたことが述べられています(6)。
1.女性史研究の本土化に関する問題……単に西洋のフェミニズム理論を導入するだけではなく、中国本土のジェンダー文化・制度を研究することが必要である。杜芳琴・金一虹、宋少鵬、白路らは、いま、中国本土の「家父長制(父権制)」の発生および運行のメカニズムを研究している。
2.女性史研究の理論化に関する問題……具体的研究の中から理論的な抽象をしたり、その理論によって人文・社会科学全体に影響を与えたりするのは難しいが、この点では、全国の大学の学報の編集者が、その条件を利用して、女性学や女性史の学際性を実現していくことができる。
3.女性史研究の現実性に関する問題……歴史研究を現実の課題とを結び付けていくことが必要である。最近、杜芳琴・梁軍・金一虹らは、研究の過程で、中国の「家父長制(父権制)」の理論や運行のメカニズムを、計画生育の推進と農村の伝統的な「代々血統を継ぐ」父権制観念の改変と結びつけている。
他にも、民族学、社会学、メディア、教育などのサブネットワークから報告書が出ています。また、このネットワークは、女性/ジェンダー学の学科の建設のために、課程の建設、教員の研修、教材の作成などに力を入れていますから、そうしたテーマのサブネットワークもあります。おそらく、当日も、そうしたさまざまな報告をもとに議論がなされたのではないでしょうか?
今回の大会は、「女性/ジェンダー学の研究発表の場」という色彩は薄いものでした。それは、一つには、このネットワークが純粋の「学会」というより、学科の建設に重点を置いているからでしょうが、一番の原因は、この3月に、武漢で、すでにネットワークの「第1回全国学術研究討論会」(7)がおこなわれていたからだと思います。この研究討論会での報告には興味深いものがありましたので、次回、ご紹介します。
(1)「網絡第一届会員代表大会在南寧隆重召開」(2009/7/24)婦女社会性別学学科発展網絡HP、「婦女社会性別学学科発展網絡代表大会召開」(2009/7/30)中山大学性別教育論壇HP、「婦女/社会性別学科発展網絡代表大会在南寧召開」『中国婦女報』2009年7月29日。
(2)「大会審議協委会提交的工作報告和財務報告」(2009/7/25)婦女社会性別学学科発展網絡HP
(3)「網絡第一届会員代表大会第三号公告(2009年7月28日)」(2009/8/14)婦女社会性別学学科発展網絡HP
(4)「網絡第一届理事会第一号公告(2009年7月28日)」(2009/8/14)婦女社会性別学学科発展網絡HP
(5)「網絡第一届常務理事会第一号公告(2009年7月28日)」(2009/8/14)婦女社会性別学学科発展網絡HP
(6)「中国婦女/社会性別学学科発展網絡子網絡申報書(ワードファイル)」婦女社会性別学学科発展網絡HP
(7)「学科発展網絡第一届全国学術研討会在武漢熱烈召開!」(2009/3/29)(婦女社会性別学学科発展網絡HP)。蔡虹「彙聚 対話 成長――婦女/社会性別学科発展網絡全国第一届学術研討会会議綜述(ワードファイル)」(2009/6/27)(婦女社会性別学学科発展網絡HP→のちに『婦女研究論叢』2009年第3期に収録)を読むと、3月の研究討論会は、学科建設の研究も一つの柱にはなっていますが、多くの報告は、一般的な女性学・ジェンダー学の研究だったことがわかります。なお、参加者の感想は、「本網絡第一届全国学術研討会参会者体集錦(一)」(2009/5/27)、「(二)」(2009/5/29)、「(三)」(2009/6/3)(いずれも婦女社会性別学学科発展網絡HP)参照。
「女性/ジェンダー学学科発展ネットワーク」は、2006年8月、女性/ジェンダー学領域の大学教員や研究者によって結成され(本ブログの記事。この際にも「会員大会」が開催されていて、今回の大会との違いがどうもよくわかりませんが)、その後3年間にわたって女性/ジェンダー学の学科の建設と発展のために力を尽くしてきました。現在、同ネットワークには、テーマごとに15のサブネットワーク(子網絡)があり、会員は計1273人に達しています(ただし、団体会員が26あり、個人会員は265人です)(1)。
大会では、活動報告や財務報告がおこなわれるとともに、新しい規約も提案され(婦女/社会性別学学科発展網絡章程[ワードファイル])、審議されました(2)。
役員の選出
大会では、理事を選出し、以下の方々が理事になりました(得票順)(3)(リンクは本人のサイト・ブログ・専欄)。
〇王金玲(女、浙江省社会科学院)→理事長に
〇黄約(女、壮族、広西財経大学)→副理事長に
〇張建(女、中華女子学院)→副理事長に
〇楊国才(女、白族、雲南民族大学)
王宏維(女、華南師範大学)
〇駱曉戈(女、湖南商学院)
〇趙瑩(女、東北師範大学)
金一虹(女、南京師範大学)
暢引婷(女、山西師範大学)
〇夏増民(男、華中科技大学)
荒林(女、首都師範大学)
〇石紅梅(女、厦門大学)
金花善(女、朝鮮族、延辺大学)
沈奕斐(女、復旦大学)
〇柯倩婷(女、中山大学)
黄筱娜(女、広西婦女幹部学校)
胡曉紅(女、東北師範大学)
理事会では、常務理事を選出し、上で〇を付けた人が常務理事になりました(4)。
常務理事会では、理事長と副理事長を選出しました。上に書いたとおり、理事長には王金玲さんが、副理事長には、黄約さんと張建さんがなりました(5)。
サブ・ネットワークからの報告
大会では、また、各サブ・ネットワークがこの一年間の活動や今後の課題、目標について報告し、お互いの交流をおこないました。
当日の報告の内容はわかりませんが、各サブ・ネットワークは、大会の前に報告書を提出しています。たとえば、「女性・ジェンダー史サブ・ネットワーク」の報告書を見ると、以下のような問題に力を入れてきたことが述べられています(6)。
1.女性史研究の本土化に関する問題……単に西洋のフェミニズム理論を導入するだけではなく、中国本土のジェンダー文化・制度を研究することが必要である。杜芳琴・金一虹、宋少鵬、白路らは、いま、中国本土の「家父長制(父権制)」の発生および運行のメカニズムを研究している。
2.女性史研究の理論化に関する問題……具体的研究の中から理論的な抽象をしたり、その理論によって人文・社会科学全体に影響を与えたりするのは難しいが、この点では、全国の大学の学報の編集者が、その条件を利用して、女性学や女性史の学際性を実現していくことができる。
3.女性史研究の現実性に関する問題……歴史研究を現実の課題とを結び付けていくことが必要である。最近、杜芳琴・梁軍・金一虹らは、研究の過程で、中国の「家父長制(父権制)」の理論や運行のメカニズムを、計画生育の推進と農村の伝統的な「代々血統を継ぐ」父権制観念の改変と結びつけている。
他にも、民族学、社会学、メディア、教育などのサブネットワークから報告書が出ています。また、このネットワークは、女性/ジェンダー学の学科の建設のために、課程の建設、教員の研修、教材の作成などに力を入れていますから、そうしたテーマのサブネットワークもあります。おそらく、当日も、そうしたさまざまな報告をもとに議論がなされたのではないでしょうか?
今回の大会は、「女性/ジェンダー学の研究発表の場」という色彩は薄いものでした。それは、一つには、このネットワークが純粋の「学会」というより、学科の建設に重点を置いているからでしょうが、一番の原因は、この3月に、武漢で、すでにネットワークの「第1回全国学術研究討論会」(7)がおこなわれていたからだと思います。この研究討論会での報告には興味深いものがありましたので、次回、ご紹介します。
(1)「網絡第一届会員代表大会在南寧隆重召開」(2009/7/24)婦女社会性別学学科発展網絡HP、「婦女社会性別学学科発展網絡代表大会召開」(2009/7/30)中山大学性別教育論壇HP、「婦女/社会性別学科発展網絡代表大会在南寧召開」『中国婦女報』2009年7月29日。
(2)「大会審議協委会提交的工作報告和財務報告」(2009/7/25)婦女社会性別学学科発展網絡HP
(3)「網絡第一届会員代表大会第三号公告(2009年7月28日)」(2009/8/14)婦女社会性別学学科発展網絡HP
(4)「網絡第一届理事会第一号公告(2009年7月28日)」(2009/8/14)婦女社会性別学学科発展網絡HP
(5)「網絡第一届常務理事会第一号公告(2009年7月28日)」(2009/8/14)婦女社会性別学学科発展網絡HP
(6)「中国婦女/社会性別学学科発展網絡子網絡申報書(ワードファイル)」婦女社会性別学学科発展網絡HP
(7)「学科発展網絡第一届全国学術研討会在武漢熱烈召開!」(2009/3/29)(婦女社会性別学学科発展網絡HP)。蔡虹「彙聚 対話 成長――婦女/社会性別学科発展網絡全国第一届学術研討会会議綜述(ワードファイル)」(2009/6/27)(婦女社会性別学学科発展網絡HP→のちに『婦女研究論叢』2009年第3期に収録)を読むと、3月の研究討論会は、学科建設の研究も一つの柱にはなっていますが、多くの報告は、一般的な女性学・ジェンダー学の研究だったことがわかります。なお、参加者の感想は、「本網絡第一届全国学術研討会参会者体集錦(一)」(2009/5/27)、「(二)」(2009/5/29)、「(三)」(2009/6/3)(いずれも婦女社会性別学学科発展網絡HP)参照。
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