2017-05

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成都市の条例草案の生理休暇の規定に対してさまざまな意見

 現在起草中の「成都市婦女権益保障条例」に「女性は、月経期間は身体の情況にもとづいて短い休暇を取ることができる」という規定が盛り込まれていることがわかりました。

 この条例の立法の調査研究と起草グループの責任者である、成都大学法学部教授の張居盛さんによると、調査研究の中で、公共交通の女性運転手が「月経期にも車を出して、長時間座っているために体をこわす」という意見を述べたということです。張さんによると、この規定は「画一的に休みを強制する形式ではないので、それぞれの職種の女性が自らの身体の状況にもとづいて、休みを取るか否かを自由に決定できる」ということです(1)

従来の法制

 従来中国では、女性労働者の月経期間の労働に関しては、以下のように定められていました。

 まず、月経期間に従事させてはならない労働に関する規定があります。
 ・女性労働者保護規定[女職工労動保護規定](1988年7月公布、9月施行)第6条……女性労働者の月経期間には、所属する単位は、高空・低温・冷水および国家が規定する第3級の体力労働強度の労働を割り当ててはならない。
 ・女性労働者禁忌労働範囲の規定[女職工禁忌労動範囲的規定](1990年1月)第4条……女性労働者が月経期間に従事することを避ける労働の範囲:1.食品冷凍庫内および冷水などの低温の作業、2.「体力労働の強度の等級分類」基準の中の第Ⅲ級体力労働強度の作業、3.「高所作業の等級分類」基準の中の第Ⅱ級(Ⅱ級を含む)以上の作業

 月経期の休暇についての規定も、これまでなかったわけではありません。
 ・女性労働者保健工作規定[女職工保健工作規定](1993年11月)第7条第4項……重度の月経痛および月経過多を患う女性労働者は、医療あるいは母子保健機構の診断を経て、月経期間に適切に1~2日の休暇を与えることができる。

 「成都市婦女権益保障条例」の草案の規定は、女性労働者保健工作規定と比べると、「医療機構あるいは母子保健機構の診断」という条件がないことが特徴です。

 ただし、今回、女性労働者保健工作規定はなぜかあまり話題になっていません。また、後述の呂頻さんは、「現在中国で実行されているのは、月経期を含めた『五期(月経、妊娠、出産、授乳、更年期)』の保護であるが、『女性労働者保護規定』などは、月経期の労働の禁忌を規定しているだけで、休暇には触れていない」と述べているだけです(2)

 こうした点から見ると、女性労働者保健工作規定は、それほど活用されていなかった可能性もあるように思います。

賛否両論

 さて、今回の成都市の条例草案の規定に対しては、以下のような賛否両論が出ました(3)

[賛成論]
 賛成論は、「女性の人身の権利である」「母親として次の世代の健康や教育のために必要である」「重い仕事や労働環境が悪い仕事では必要だ」といったものでした。

 ・「女性の特殊な生理的な権益は、法律で保護すべきである。こうした保護は、企業の利益と矛盾が生じるかもしれないけれど、女性労働者の人身の権利は、企業の利益よりもはるかに大きい。奥深い点を言えば、実は、それは、女性の労働の権益を保護するだけでなく、女性の人身権を保護する」(四川大学法学院教授・王建平)
 ・「平等には形式的平等と実質的平等があり……実質上の平等には反しない」(中国人民大学商法学研究所所長・劉俊海)
 ・「この条例を制定することは非常に価値があることで、全社会が女性の心身の健康にいっそう関心を寄せることを促進することができる。母親は子どもを教育する重い責任を担っている。母親が健康でこそ、次の世代の健康・教育が十分保障される」(全国政協委員、中国美容時尚報社社長兼編集長・張曉梅
 ・「長時間立つ、歩いて動く、水の中で作業しなければならない部門、部署、職種などでは『月経期の生理休暇』を実行すべきだ」(四川大学法学院教授・王建平)
 「(私たちは高温、寒冷の状況下でも仕事をやらなければならないので)『条例』が、女性が月経期に休むことを認めていることに断固賛成する」「高温手当などの福利はあるけれども、月経期に体力がいる労働をやると、確実に体調がおかしくなる」(清掃作業員)

[反対論]
 反対論は、「企業の負担が増える」「企業の負担が増えるので、女性を雇いたがらなくなる」「女性がウソをついて休暇を取ったらどうする」といったものでした。

 ・「女性労働者が多い企業、特に流れ作業では、互いに協力して生産することが必要なので、企業に対する影響は非常に大きい」(成都レインボー電器[集団]株式有限会社理事長兼社長・劉栄福)
 ・「企業が女性を採用する際に心配を増やすので、女性の就職の困難が増大する」(万博不動産売買有限会社理事長兼社長・米瑞蓉、四川金斯達投資有限会社理事長・王進)、「女子大学生がますます就職難になる」(省人民代表大会代表、四川華僑鳳凰グループ株式有限会社理事長・成甦)
 ・「もし女性労働者がウソをついて生理休暇を取ったら、その企業の発展はどのようにして保護するのか」「もしその規定が本当に必要なら、職業を厳密に限定して、月経期の休暇を取る具体的な手続きを明確にするべきである」(男性の企業経営者)

 以下では、今回の条例の規定についてまとまった文を発表した劉明輝さんと呂頻さんの見解を見てみます。

劉明輝さんの見解(4)

 劉明輝さん(中華女子学院副教授)は、以下のように、個人の違いを重視すべきことを強調しています。
 「まず、部署の違いにより、月経期の休暇に対するニーズが異なる。あらゆる職業の女性労働者が月経期に休まなければならないわけではなく、たとえ交通、室外の肉体労働者であっても、一概には論じられない。」「次に、女性の体質の違いによって、月経期の休暇に対するニーズが異なる。」
 「国内の学者は両性の差異に対する研究に注目していて、個人の差異に対する研究は相対的に弱い。もし立法が個人の差異を軽視したら、自ら望む月経期の労働の権利を剥奪したり、強制的な休暇の後の時間外勤務、昇進への影響、仕事の機会を失うなどのマイナスの影響を引き起こすかもしれない。」「職業安全衛生の領域の新しい趨勢は、労働者の健康の保護を考えるときは、もっと個人の脆弱性に依拠しなければならず、年齢と性別を統一的な基準にはしないことを示している。」

 また、劉さんは、単に「女性を保護する」のではなく、職業の中の危険自体を除去するべきだという観点も出しています。
 「ある措置は、女性全体を危険な職業に従事することを禁止するものであって、職業の中の危険を除去してあらゆる従業員の健康を出発点にしていない」

呂頻さんの見解

 呂頻さんは、最初は、「女性は本当に月経期の休暇が必要なのか」(5)という文を書きました。

 この時点では、呂頻さんは、以下のように、月経期の休暇に否定的でした。
 「月経は、女性が正常な仕事に従事することに対してどれほど影響があるのか? 中国にはまだ全面的な研究はないが、国外には、月経は、女性の平均的な労働能力に対する影響は非常に小さいことを実証した研究がある。」
 「私は、20年前と比べて、今日の女性の身体の資質はすでに大きく向上し、仕事の労働の強度は著しく下降したと信じることができる。」
 「そうである以上は、月経期を病理化し、月経期の休暇を特に規定することは、必要なくなったかもしれない。当然、重い生理痛が休息を必要とする状況はたしかにあるが、それは実際は、病休の範囲に組み入れることができる」
 「国際的に普遍的な状況から見ても、現今の女性の特殊な労働保護の範囲と程度の変化の趨勢は、拡大と強化ではなく、逆である。これは、人々が女性は多くの面で弱者ではなく、平等な社会の競争に参与する十分な能力があり、良い願望にもとずく過度の保護は、かえって女性の自由な選択を制限する可能性があるからである」

 ただし、呂頻さんは、「中国では若干複雑かもしれない。多くのあるべき労働保護が水準に達していないと同時に、若干の不必要な、制限的な保護がなお存在している。女性の権益の立法において伝統的な『五期』の保護という考え方の道筋を踏襲する必要があるのか否か? いかにして必要な保護措置を実現しつつ、女性の労働の権利の損害を防止するのか、これはあるいはさらに論証が必要かもしれない」と言います。

 さらに、翌日、呂頻さんは「どれほどの女性が月経期の休暇を必要なのか、または必要でないのか」(6)という文を書きました。

 まず、呂頻さんは、上の昨日の自分の文には、次の2つの間違いがあったと述べます。
 1.軽率に「女性」という、女性全体を指す言葉を使ったこと。
 2.月経休暇を設けることは、けっして女性の労働の権利に対する制限ではないこと。現在の状況の下では、それは、客観的に女性の就業の競争力を弱めるかもしれないが、そのことと労働の権利の損害とは別問題であること。

 そして、以下のような議論を展開します(おおざっぱな抜き書きなので、正確には原文をご覧ください)。

 「月経と関係する疾病、気分の悪さ、困惑は、女性の普遍的な経験であり、これらの経験が得ている理解と配慮は、多すぎるのではなく、少なすぎる。この角度から言えば、月経休暇を設けることは、単純に悪いことでは絶対にない」

 「伝統的な『五期』の保護の考え方の道筋はたしかに考え直さなければならないけれども、どの程度考え直すべきなのか、どのように改革すべきなのかは、私はよくらかわないし、誰がわかっているかも知らない。原因は、今日の女性の健康の状況と保護のニーズに対しても、保護の基準を設定する根拠に対しても、研究が欠乏していることである。」

 「月経期の休暇の構想は、何も間違っていない。それは、女性に休暇を使う可能性を提供するだけである。確実に若干の女性にはそれが必要なのであり、使うことも、使わないこともできる」

 「けれど、客観的な結果から言えば、これは明らかに使用者に女性を雇わない口実をまたひとつ与える。」「この背後には、普遍的なジレンマがある。『女性の特殊な境遇』を言えば、『余計な負担』と見られるだろうし、『女性が平等な競争力を持っている』と主張すれば、性差や女性内部の差異に対して配慮されなくなるかもしれない」

 「女性に対する搾取は、強要と無視の2つの面が同時に存在している。この2つの面は、本来は一体なのだけれども。保護すべきことが保護されていないのに、保護は女性の弱者性の固定化をもたらすかもしれない。カギは、全体のコンテクストが女性に対して非常に友好的でないことであり、そのために、こちらを立てれば、あちらが立たないということになる」

 「どのようにして包囲を突破するか? 私には簡単な答案はない。現在私にできる自己警戒は、平等の権利に対するこれらの討論は、非常に注意深く情境化[具体的な状況に即して考える、といった意味でしょうか?]しなければならず、かつ、どんなことがあっても、少なくとも私の観点が女性に対していかなる不利も作り出さないようにすることである。」

 私(遠山)はこの問題を深く考えているわけではありませんし、それぞれもっともな意見だと思いますが、とくに王建平さんや、劉明輝さん、呂頻さんの2番目の文に共感を覚えます。また、私がより問題が生じる可能性が高いと思うのは、成都市の条例のような、申請による生理休暇よりも、「女性労働者保護規定」や「女性労働者禁忌労働範囲規定」で、月経期の女性がやることのできない作業が一律に決められていることだと思います(7)。いずれにしても、劉明輝も呂頻さんも指摘しているように、当事者の女性の方々の多様な情況や要求をもっと広く集める作業が必要だと思います。

(1)成都擬立法 婦女経期有望据身体情況請短假」『成都晩報』2009年6月29日。
(2)呂頻「婦女真需要経期假嗎?」鳳凰網2009-6-30
(3)成都擬立法為婦女経期請假 専家力挺適当傾斜」『成都晩報』2009年6月30日、「経期放假,該不該立法保護?」『中国婦女報』2009年7月1日。
(4)劉明輝「特殊保護,以消除職業危険為出発点」『中国婦女報』2009年7月2日。
(5)呂頻「婦女真需要経期假嗎?」鳳凰網2009-6-30
(6)呂頻「多少婦女需要不需要経期假」朝陽路上2009-7-1
(7)劉明輝さんも、『女性労動和社会保障権利研究』(中国労動社会保障出版社 2005年)16-17,26頁などでこの問題を指摘しています。
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