2017-10

中央党校女性研究センターが父親の育休を提案

 6月18日、中共中央党校女性研究センターが理論シンポジウムを開催して、「男性の有給の看護休暇または産休を、公民の権利・義務として、まもなく制定される『社会保険法』の中に入れるべきである」という提案をしました(1)(*ここで「看護休暇(護理假)」「産休(産假)」と呼ばれているものは、日本の制度では、「育休」の範疇に入ると思うので、記事のタイトルは「育休」にしましたが、本文では、原文のまま表記します。また、「護理」は、「看護」と訳すよりも、「世話」とか「ケア」とか訳した方がいい感じもしますが、一応「看護」と訳してみました)。

 これに先立って、中央党校女性研究センターは、北京・西安・鄭州・南京・揚州などの土地で850人の労働者(そのうち男性が59.1%)にアンケート調査をおこないました。

 その結果、「産休を取るのは男性の権利である」という意見について、「非常に同意する」人が60.7%で、「基本的に同意する」人が31.4%であり、92.1%の人が賛成しました。また、89.4%の男性が、男性の看護休暇の制定に賛成でした。賛成する理由は、「生育[日本語で言えば出産と育児]は夫婦双方の共同の責任だから」(81.8%)、「産婦と新生児は特に世話が必要だから」(71.2%)などでした。

 けれど、現在、産婦や新生児の世話は、夫が休暇を取ってやっている場合は18.5%にすぎず、父母の世代が担っている場合が64.1%でした。夫に休暇を取らない理由を尋ねると、「仕事が忙しすぎて、手が放せない」(66.5%)、「競争が激しくて、ポストを失うのが怖い」(43%)、「休むと経済的損失が大きい」(36%)などでした。

 中央党校女性研究センター副主任の李慧英さんは、「現在、国際社会が、両性が共同で生育の仕事を担うことを促進するための一つの重要な措置は、法律の形式で、男性が生育の仕事に参与するように要求・奨励することである」と言って、女性差別撤廃条約やILO156号条約(家族的責任を有する労働者条約)[中国は未批准]を挙げ、現在すでに36カ国が、男性の看護休暇または父親休暇を定めていることを指摘しています(2)

 中国でも、2001年に制定された「中華人民共和国人口と計画生育法」(全文[中国語])には、「公民には生育の権利があり、法に基づいて計画生育を実行する義務もあり、夫婦の双方に計画生育を実行する共同の責任がある」(第17条)と書かれています。また、同法を施行する際に各地で定められた地方性法規・政策のうち、26の省・市・自治区の法規・政策が、有給の男性の看護休暇(大部分の地区では「男方護理假」と称し、少数の地区では「配偶護理假」などの名称)を規定しています。期間は、一般に5~15日で、7日と10日が比較的多く、上海市が3日で最も短く、河南省が1カ月で最も長くなっています(3)

 ただし、休暇を付与する前提条件として、夫婦とも晩産で、一人っ子であることなどを定めています。ですから、こうした規定は、「計画生育の付帯的な政策であり、独立性を有しておらず、両性が平等に家庭責任を負うという理念を体現した立法の選択とはいえない」(李慧英)ものです。

 それゆえ、「社会保険法」において、独立した男性の看護休暇(父親休暇)を規定する必要があるわけです。

 このシンポジウムで、李明舜さん(中華女子学院教授、副院長)は、男性の産休制度に必要な理念として、以下のような点を強調しました。
 ・生育は男女両方のことだから、父親の産休は、権利であるだけでなく、責任でもある。
 ・それゆえ、父親が休暇を取ることを自由意志だけにまかせてはならず、義務にもする必要がある。
 ・父親の産休を国家として確認するにとどまらず、(それが侵害された場合の)救済のメカニズムが必要である(4)

 父親の産休に関しては、すでに昨年、浙江工業大学財貿管理学院院長の程恵芳さんが提案し、今年も上海市婦連が提案していますが(本ブログの記事)、今回、中央党校女性研究センターも提案したことによって、ますます声が広がったと思います。

 なお、中国の場合、現在の地方性法規で与えられる休暇日数は比較的短いですし、提案の際も、父親の「産休」という表現がよく使われていて、期間も、程恵芳さんの提案では7~15日、上海市婦連の提案では10日と比較的短いものでした。今回の中央党校女性研究センターの提案は日数を明記していませんが、こうした点は中国社会のあり方と関係があるのかもしれません。

 それから、今回の中央党校女性研究センターの男性の産休の提案については、インターネット上(人民網、新華網、鳳凰網など)でも、調査・投票がおこなわれました。

 その結果、90%以上の人が支持を表明しました。

 ただし、一部の人は、「いったん法律に書き込まれたら、父親の産休は、おそらく政府の機関や事業単位の職員だけのものになるだろう。私営企業では、女性の産休さえ、量・質とも充分実現していないのだから、男性の産休は論外である。普通の農民労働者は、正月休みや祝・休日さえ保証する手立てがないのに、産休は問題外だ」と述べています(5)

 もちろん、だからといって、男性の産休が必要でないということにはならないでしょうが、格差社会における提案や運動の困難を感じます。

 日本では、今国会で成立した育児・介護休業法改正案に、父親の育休取得を促進する措置が盛り込まれていますが(6)、やはり非正規で働く労働者にはほとんど恩恵がないということが指摘されています(7)

(1)王玉橋「中央党校婦女研究中心召開理論研討会 建議在《社会保障法》中設立男性生育護理假(父親假)」(2009-6-20)社会性別与公共政策HP、「男性休産假立法応早行」『中国婦女報』2009年6月23日、「男性護理假(父親假)的研討会召開」(2009-6-19)中国広播網。
(2)李慧英さんは、「国外生育保険与父母假」(『中国婦女報』2009年6月23日)で、以下のように国外の情況を紹介しています。
 ・「生(出産)」面と「育(育児)」面の両方の制度があり、「生」に関しては、女性の産休と同じ時期の2~3カ月の間の休暇、「育」は、養育のための休暇である。
 ・個人の選択を重視する政策では、「男は外を主とし、女は内を主とする」という性別分業の下では効果が低いので、各国は、父親だけが取れる休暇を設けたり、父親が休暇を取ることを奨励したり、宣伝を強めるなどの試みをしている。
(3)譲男人産假来得更猛烈些吧」(2009-6-22)(社会性別与労動権益HP)に各地の規定が紹介してあります。
(4)李明舜「関于男性帯薪産假立法的幾個問題」(2009-6-21)社会性別与公共政策HP、李明舜「男性帯薪休産假 権利還是責任」『中国婦女報』2009年6月23日。
(5)王玉橋「男性該不該休産假?」(2009-6-20)社会性別与公共政策HP
(6)働くナビ:パパが育児休業を取りやすくするには」『毎日新聞』2009年5月25日。
(7)猪熊弘子「育児・介護休業法改正案で何が変わる? (3)非正規で働く人も救って!」all about妊娠・出産・育児2009年6月15日。
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