2017-08

上海プライドウィーク

 今月は「プライド月間」でしたので、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)の人々の活動に関する報告が多くなりました。「プライド月間」とは、1969年6月にニューヨークで起きた、同性愛者らが警察による抑圧に対して立ち向かった「ストーンウォールの反乱」を記念してさまざまなイベントがおこなわれる月間です。

 中国におけるプライド月間の活動は、1996年6月、北京のバーで秘密裏にプライド月間の祝賀がおこなわれたのが最初で、2005年6月には初めて公然とレインボー色の凧を飛ばしました。今では30あまりの都市のLGBTの組織がプライド月間をテーマとした活動をおこなうようになっています(1)

 今年は、既に本ブログでお伝えした活動のほかにも、6月7日(日)から14日(日)までの1週間、「上海プライドウィーク[上海驕傲周]」がおこなわれました(そのサイト)。

 かつて2005年12月にも北京同性愛文化節が企画されましたが、直前に警察が介入して中止していますから、上海プライドウィークは、「中国初のLGBTのフェスティバル」(主催者)だと言えるように思います。

 上海プライドウィークは、以下の日程でおこなわれました。

6月7日(日)
 《Autopsy(解剖)》(Loo Zihan監督、2007年)、《Qeer China(誌同志)》(崔子恩監督、2008年)上映

 ・《Autopsy(解剖)》は、セクシュアリティに関する母と息子の対話で、7分ほどの短編です。
 ・《Queer China(誌同志)》は、中国の改革開放の30年間にLGBTに起きたさまざまな出来事を、30人あまりの著名人に対するインタビューによってまとめた映画です。今年4月に開催された第24回イタリアGLBT映画祭で、「最も観衆に歓迎されたドキュメンタリー賞」を受賞しました。
 ・オープニングナイト・ディナーもありました。

6月8日(月)
 パネル・ディスカッション「Bloom in the Little Garden:Evolution of Gay Shanghai(花開“小花園”座談会)」:魏偉(華東師範大学社会学部教授)、高燕寧(復旦大学公共衛生学院教授)、Lee San(上海のLGBT界の著名人)

 座談会では、以下のような内容が語られました。

 ・同性愛者の空間の変遷について──インターネットがなかった時代は、漢口路の小花園が上海の同性愛者の唯一の基地であった。次いでゲイバーができ、その次に同性愛者浴室ができた。さらに、未来ダンスホール[未来舞庁]が毎週金曜から日曜の夜を同性愛者だけのために開放し、1998年からは、ネット上に同性愛サイトが出来た。

 ・中国国内のメディアについて──高教授らが復旦大学で同性愛の課程を開設したところ、国外のメディアからは取材がひきもきらなかったが、国内の大きなメディアからは取材が全くなかった。中国の主流メディアは「エイズ防止」という文脈でしか報道しない。国内で復旦大学の同性愛課程を最初に報道した記者は、自分の名前でなく、実習生の名前で発表したが、その実習生の名前は、その後、その新聞の紙面に二度と出てこなかった。この「上海プライド」についても、真っ先に取材したのはBBCである。中国でおこなわれた活動を外国のメディアによって知らなければならないというのは、「中国のメディアに対する巨大な風刺」だと言える(2)

 今回の報道の一覧を見ても、その多くは英語によるものです。

6月9日(火)
 即興のパフォーマンスの夜

6月10日(水)
 《S/he(他/她)》(Gina Pei Chi Chen)、《Lost in You(啦啦啦)》(朱一葉監督、2006年)無料上映→中止

 ・《S/he(他/她)》は、ある女の子は男になりたかったが、思春期になって、それが不可能であることを知り、打ちひしがれる。しかし、女性兵士の人形を見て、女性の体と男性性とが両立できることを知り、男装をすることによって自分を受け入れる――といった話のようです。

 ・《Lost in You(啦啦啦)》は、この映画のブログもあります。話の内容は、2人の女性が愛し合うようになるが、「同性愛者」になることを恐れて、2人は別れる。1人の女性は平凡に男と生活することをめざすけれども、もう1人の女性は、相手を見守り、心の中の相手への愛情を守ることを選ぶ。彼女たちは別れても、彼女たちの魂は永遠の対話を続ける――という話のようです。

6月11日(木)
 ワイン・ビュッフェ

6月12日(金)
 《Destination Shanghai(目的地上海)》(程裕蘇監督、2003年)無料上映→中止

6月13日(土)
 バーでパーティ

 ・パーティは午後2時から10時までおこなわれ、全国各地から人々が集まりました。仮装や民族舞踊など、さまざまな活動がおこなわれました(3)
 ・公開で同性愛者どうしの結婚式もおこなわれ、3組のレズビンと1組のゲイのカップルが式を挙げました(4)

 ・また、この日、サイト「陽光地帯」が設立した「陽光閲覧室」という、lGBTのための小さな図書室もオープンしました(5)

6月14日(日)
 スポーツ競技(水泳・バドミントン)、カラオケ大会(英語)、ディナー
 
 ただし、中国の政治的制約のためにパレードはせず、行事は、すべて私人の場所でおこなっています(6)

 上海プライドフェスティバルを主催したのは、上海LGBTです。上海LGBTとは、LGBTの人々によるメーリングリストです(Shanghai LGBT)。今回の活動の発起人は、上海在住のアメリカ人の女性であるティファニー・リメイ(Tiffany Lemay)さんとハンナ・ミラー(Hannah Miller)さんのお2人です。ティファニー・リメイさんは、「私たちは、この活動によって同性愛者集団の社会的な可視度を高め、多くの同性愛者がカミングアウトできるようになることを望んでいます」と話しています(7)。アメリカ人のお2人が表に立ったのは、そのほうが受け入れやすい(弾圧されにくい)と思ったということもあります(8)

 主催者は、合計3000人が参加したと発表しました(延べ人数だと思われます)(9)。ただし、『大公報』によると、参加した同性愛者の大多数は上海で生活している外国人で、中国人の割合は2割前後だったそうです。

 しかし、「数年前だったら、上海はこのような活動はできなかっただろう」とも言われています。また、「上海は、内地の他の都市と比べて、同性愛者の集団の存在を受け入れる力が大きい」ということも指摘されています。

 『大公報』の記者が取材したところ、上海の当局も比較的寛容で、活動に対して「三不」の原則(支持しない、反対しない、提唱しない)を採ったということです(10)

 ただし、上でも触れていますが、6月9日と6月12日の映画上映は、上海市工商局の要求で中止させられました。工商局は「上映を引き受けた場所が映画上映許可証を持っていないので、警告をした」と述べているのですが(11)、China Daily紙は「上海プライドウィークの目的は、より多くのLGBTにカミングアウトできるようにすることなのに、政府の干渉は、明らかに間違ったシグナルを送った。それは、もうこの国では非合法ではない、LGBTの人々の基本的市民権を否定するメッセージである」と批判しています(12)。パレードができない点も含め、こうした面での問題や不安はまだ残っているようです。

(1)目的地:同志月,驕傲夜」(2009-6-12)淡藍網
(2)この座談会に関しては、以下の画像があります。「独家組図:上海同志驕傲周活動花絮(1)」(2009-6-8)陽光地帯網、「同(2)」、「同(3)」、「同(4)」、「同(5)」、「同(6)」、「同(7)」、「同(8)」、「同(9)」、「同(10)
 以下の(1)~(3)には、座談会の内容もかなり詳しく書かれています。「上海首届同性恋文化節:上海同志談空間変遷(1)」(2009-6-9)陽光地帯網、「同(2)」、「同(3)」、「同(4)」、「同(5)」、「同(6)」、「同(7)
(3)実拍上海同志驕傲周精彩変装秀(1)」(2009-6-)陽光地帯網、「同(2)」、「同(3)」、「同(4)」、「同(5)」、「同(6)」、「同(7)」、「同(8)」、「同(9)」、「同(10)
(4)独家実拍:上海同志驕傲周四対同性恋情侶挙行婚礼」(2009-6-13)陽光地帯網
(5)以下の(1)と(8)に閲覧室の様子がわかる写真があります。ごく小規模なものです。「上海首個同志閲覧室誕生(1)」(2009-6-14)陽光地帯網、「同(2)」、「同(3)」、「同(4)」、「同(5)」、「同(6)」、「同(7)」、「同(8)」、「同(9)」、「同(10)
(6)上海同性恋節“不搞大游行”」(2009-06-07)愛白網(BBC中文網からの転載)。
(7)同性恋者“上海驕傲周”民間活動挙辨中」(2009-06-11)愛白網
(8)(6)に同じ。
(9)『上海驕傲周』在高潮中落幕」(2009年6月22日)北京拉拉沙龍HP
(10)“同志”狂歓“上海驕傲周” 上海“恐同”此情不再度」『大公報』(香港)2009年6月15日。
(11)同性恋者“上海驕傲周”民間活動挙辨中」(2009-06-11)愛白網
(12)Gay Festival Teaches Tolerance(包容──同志驕傲周給我們的功課)」China Daily(中国日報)2009-6-10
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