2017-09

館長雇止め・バックラッシュ裁判控訴審、結審

 三井マリ子さんは、2000年、大阪府豊中市の男女共同参画推進センター「すてっぷ」の初代館長(全国公募による、非常勤)として、独創的な企画を打ち出すなど全力で仕事を進め、その実績は市やセンターにも高く評価されました。しかし、そうした三井さんの仕事が目ざわりだったバックラッシュ勢力(男女平等の推進に反対する勢力)が市やセンターに圧力をかけ、その圧力に屈した豊中市などは、非常勤館長職廃止して館長を常勤化する「組織変更」をひそかにおこなって、三井さんを雇止めし、2004年、新館長への採用も拒否しました。

 三井さんは上のように訴えて、豊中市と「すてっぷ」を運営する「とよなか男女共同参画推進財団」を相手取って、損害賠償を求める裁判を起こしました。一審判決(2007年、大阪地裁)は原告敗訴で、現在は控訴審ですが、この裁判が、5月22日、結審しました。判決は秋ごろの予定です。

 この裁判ついては、私は特集ページを作成していますので(「館長雇止め・バックラッシュ裁判(原告・三井マリ子さん)」)、そのページをご覧いただければ、これまでの詳しい経過がお分かりいただけると思います。

 このブログでも、昨年、浅倉むつ子さんが意見書を出されたことまでお伝えしましたが(裁判をいっそう身近に感じさせる「人格権」の主張──浅倉意見書)、その後も、さまざまな点が議論になりました。

 今回は、そうした議論の中から明らかになったことのうちの幾つかを、原告の「第4準備書面」(原文(PDFファイル)│私が作成した要旨)と「第5準備書面」(私が作成した要旨)をもとに、自分なりにまとめてみました(正確には原文をご覧ください。なお、原告が控訴しましたので、控訴審では、原告のことを「控訴人」と呼ぶのが正しいのですが、ここでは便宜的に、「原告」と書きます)。

 《もくじ》
(1)原告排除は、市長が決めた「重要な政策的変更」
(2)組織変更を原告には隠し通した事実がさらに明らかに
(3)市が組織変更の理由として挙げた事務局長後任問題は、口実にすぎない
(4)不可解な、驚くべき主張の変更
(5)「バックラッシュ勢力に対して毅然として対応」?
(6)採用拒否の違法性をめぐって
(7)解雇に当たっての説明義務
付―ファイトパックの会のブログなどの問題について
  
(1)原告排除は、市長が決めた「重要な政策的変更」

 非常勤館長を廃止して原告を辞めさせる組織変更について、被告側は、一審では、「財政当局に対して組織変更の『考え方』を説明して、予算折衝した」と主張してきました。しかし、その際、「とりあえず現行の体制のままで」予算要求をするという通常ではありえないやり方をしており、これは豊中市財務規則違反でもあることを原告側は指摘しました。

 控訴審では、豊中市は主張を変え、2003年10月中旬、まず(財政当局ではなく)「市長に組織変更案の内諾を得て、予算確保のメドをつけた」と主張し始めました。豊中市の一審での主張は何だったのでしょうか? 市長が決めたとことを隠すためだったとしか考えられません。市長に対しては、原告の後任候補者のリストを示して承諾を得ることもなされており、その点から見ても、「原告排除は市長が決めた」と言えます。

 財政課を飛び越して「市長に内諾を得た」理由を原告側が問うと、豊中市は、財団の組織変更は「所轄部長段階で判断し、決定することができない」ような「重要な政策的変更」だったからだと答えました。こうした「重要な政策的変更の背景」には、バックラッシュ勢力の圧力が想定されます。

(2)組織変更を、原告には意図的に隠してすすめた事実がさらに明らかに

 2003年10月30日、財団の理事長は、組織変更については「館長を含む事務局が相談」するように指示しました。その翌日に事務局の運営会議が開かれたのですが、10月中旬には市長から「組織変更案の内諾」を得ていたのですから、通常なら、その組織変更案が諮られるはずです。ところが、諮られたのは、現行(当時)の体制のままでの予算要求説明書でした。

 このことは、組織変更を意図的に原告には隠して進めていく意図があったことを示しています。

(上(1)と(2)の点については、詳しくは、「第4準備書面第3」[←私が作成した要旨です。以下も同じです]、「第5準備書面第1」をご参照ください)

(3)市が組織変更の理由として挙げた事務局長後任問題は、口実にすぎない

 豊中市や財団は、組織変更が必要だった理由として、「Y事務局長の豊中市からの派遣期間が切れるのに、市からその後任を派遣することが困難だった」ということを挙げています。

 しかし、豊中市が一審では提出しなかった文書を、控訴審で提出させてみたら、その文書には、豊中市の関係者は、「非常勤館長職を廃止して事務局長に一本化する」という組織変更案を決定する直前まで、その後の事務局長も市から派遣する考えであったことが書かれていました。すなわち、豊中市らが主張している事情は口実にすぎないようであることがわかりました。

 それに対して被告側も反論しましたけれども、その反論は、上の文書に書かれている内容が事実でないとは言っておらず、急に話が変わった理由についても何も述べていないものでした。

(この点については、詳しくは、「第4準備書面第4の1」、「第5準備書面第2」を参照してください)

(4)驚くべき主張の変更

 財団の組織変更は、2003年5月初めの段階では、「中長期的展望」でおこなう予定でした。しかし、5月末以降、急に組織変更の画策を進行させました。6月以降、豊中市は、市民や原告に対する態度も変えおり、この点について、原告側は、「バックラッシュ勢力からの圧力によって原告排除をすすめたのではないか?」と一貫して追求してきました。

 ところが、被告側は、控訴審の最終段階になって、「『中長期的展望で組織変更を考える』とは言っていなかった。そうではなく『(館長が)中長期的展望を持って財団運営に臨んでもらうために、常勤化を直ちにせねばならない』と言っていたのだ」ということを言い始めました。これは、被告側がこれまで言ってきたことと全く異なります。

 このように主張を変えたこと自体、組織変更案を急に作成し、即実施した事実が説明がつかないことを示しています。

(この点については、詳しくは、「第5準備書面第3の(2)」を参照してください)

(5)「バックラッシュ勢力に対して毅然として対応」?

 豊中市は「市はバックラッシュ勢力に対して毅然として対応してきた」と主張しましたが、その主張に対しても、原告側は、さまざまな点から反論を加えました。

 この箇所は一つ一つの事件について論じているので、詳しくは「第4準備書面第2」や「第5準備書面第9」を参照していただきたいと思います。

 一つだけ議論を紹介すると、豊中市は、ファックス事件(すてっぷの事務局長が、バックラッシュ派の動きについて書いた文書を、理事らにファックスで流した事件)に関して、「原告には(バックラッシュ派の関係者に対して)お詫びを求めたことはない」と主張していました。

 それに対して、原告側は、「部長・北川議員面談結果にもとづいて打ち合わせ」と題する文書を提出しました。その文書には、人権文化部長とバックラッシュ派の議員とが会談した後、市の方針として、原告にも謝罪させることに決めたことが記載されていました。被告側の主張の虚偽が明らかになりました。

(6)採用拒否の違法性をめぐって

 この点については、「第4準備書面第7」や「第5準備書面第6」に詳しく書かれています。

 この箇所もさまざまな論点がありますが、原告側は、主張の一つとして、「豊中市とバックラッシュ勢力との間に、男女共同参画基本条例の制定と引き換えに、原告を館長から下ろすという密約があったのではないか」という疑惑を指摘してきました。

 それに対して、被告側は「男女共同参画基本条例は広範、重要な内容を有するものであり、原告の排除と比較できるようなものではないことは明らかだ」と反論しました。被告側が、条例の「広範、重要な内容」として挙げたのは、条例の基本理念のほかに、男女共同参画条例苦情処理委員会や訴訟に対する資金貸付です。

 しかし、苦情処理委員会は、委員会への申し出自体が年に1件程度であり、訴訟に対する資金貸付もおこなわれていないなどの実態を原告側は明らかにしました。いくら条例だけあっても、すてっぷの事業などによって、しっかり運用していなればダメなのです。

(7)解雇に当たっての説明義務

 もう一言付け加えると、私のような非正規の者にとっては、雇止めの際の「説明義務」の問題も重要です。

 豊中市は、原告に対して、組織変更や雇止めについて「説明義務」を果たさなかっただけでなく、「意図的に情報を秘匿」(一審判決の言葉)しました。それだけでなく、市長が原告排除をとっくに決めていた11月8日になっても、「第一義的には三井さんにお願いするということです」と虚偽の事実まで告げています(そう述べた事実自体は、被告側も認めています)。

 こうしたやり方を容認していては、非正規雇用の労働者にとって、未来はないと思います。私は、この点にも注目しています。

 この点について詳しくは、「第4準備書面第5」や「第5準備書面第7」を参照してください。

付―ファイトパックの会のブログなどの問題について検証

 最後に一言付け加えると、この裁判の支援運動団体である「ファイトバックの会」で起きた問題については、すでにこのブログでも述べましたし、まとめサイトに詳しく書かれています(ファイトバックの会 謝罪問題まとめ@wiki)。

 「ファイトバックの会」は、そのブログで、証人の桂さんに対して誹謗中傷をしました。そのことを桂さんに指摘されましたので、私も、他の人々の協力して桂さんに対する謝罪を進める努力しました。しかし、結局、会としてはきちんとした謝罪ができないままです。そればかりか、少なからぬ会の世話人が、謝罪をすすめる立場に立った世話人を排除して、「ニュー世話人会ML」というメーリングリストを秘密裏に立ち上げるなど、謝罪派の人々を不当に排除しつづけました。

 こうしたことがなければ、この裁判の支援運動も、より良いのものになったでしょうし、もっと前進もしたであろうと思うと、私は無念でなりません。

 こうしたことを2度と繰り返さないために、私は他の人々とともに、昨年来、研究会をしてきました。その結果、ファイトパックの会のブログや会のあり方自体に、それ以前から様々な問題があったことがわかってきました。私自身も、研究の過程で、初めて気づいた点や反省した点が多かったです(たとえば、今回、私は、被告側の文書は一部を読んだだけで、主に原告側の文書だけをもとに書きましたが、本来は被告側の文書ももっときちんと確認したうえで報告するほうが望ましいのです)。先日、公開での研究会でその成果を報告しましたが、いずれ、このブログでもご報告するつもりです。
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