2017-10

職場の性差別についての調査報告

 6月12日、北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターが「中国職場反性差別」調査報告を発表しました。これは、同センターの「中国職場反性差別課題グループ」が昨年6月から今年5月にかけて、3000部のアンケート調査(有効回答2707部)や聞き取り調査によって、採用、賃金・待遇、昇進、セクハラ、定年の5つの面から職場の性差別の状況を調査したものです。全国の20あまりの省や自治区で、在職者、リストラ・失業した人、退職した人、求職中の人に対して調査しました。

 その主な結果は、以下のとおりでした。

 ・募集・採用の過程において、女性であることを理由に拒否された経験がある……23.6%
 ・自分のほうが男性よりも明らかに成績が優れていたのに、採用を拒否された経験がある……16%

 ・「結婚しない」という条項に署名を迫られたことがある……4.1%
 ・「妊娠しない」という条項に署名を迫られたことがある……3.4%
 (就職の際、「○年間は結婚(妊娠)しない」という誓約書にサインさせられることがあるので、その点について尋ねたものです)

 ・自分の職場では、女性労働者は、妊娠、産休、授乳期に職務を変えられ、降給される……20.9%、解雇される……11.2%

 ・自分の職場では、女性労働者は男性労働者より昇進の機会が少ない……33.9%
 ・性別が自分の賃金に影響している……66.2%

 ・「女性労働者の定年が男性労働者より早いのは、差別ではない」……6割近く、「差別である」……26.4%

 なお、「この調査の数値は女性労働者に対する隠れた差別を含んでいないので、このデータは実際の状況よりも低い」(報告の執筆者の1人である張帥弁護士)と考えられます。なぜなら、使用者は、多くの場合、求職者に対しては直接「女性だから採用しません」などとは言わずに、実際には性別でフルイにかけるからです。

 今回の調査結果をもとに、センターの「課題グループ」は、以下のような提案もしました。
 ・雇用差別に反対する専門の法律を制定する。その法律では、差別の定義や差別に対する法律的責任を明確にし、きちんとした救済の道筋をつくる。政府による労働監察を強化する。訴訟の際には、立証責任を使用者側に転換する。
 ・アメリカやイギリスのような、全国的なジェンダー平等政策の評価・監督機構を設立する(以上は、(1))。

 センターは、以上のような調査結果をもとに、シンポジウムもおこないました。そのシンポでは、金融危機の下で、性差別が強化されていることも報告されました(2)

 中国における職場の性差別に関してはすでに多くの調査・研究がおこなわれており、そのなかには賃金の差別自体について調査したものも少なくありません。しかし、これだけ多くの労働者を対象にして、さまざまな性差別について質問した調査は、あまりないように思います。

 この調査結果を見ると、どうも昇進の面では、日本の方が性差別が激しいように思われます。

 ただし、露骨に「結婚しない」「妊娠しない」という条項の契約を迫られたりするのは、中国の方が多いでしょう。また、定年差別については(この件は、このブログでもたびたび取り上げています[たとえば、「定年の男女差別は違憲」と訴え2006-08-18])、階層による意識の違いが大きいのですが、女性は定年が早い分、早く年金がもらえたりするので、全体としては、あまり差別とは感じていない人が多いようです。

 いずれにせよ、今後、業種や階層別のもう少し詳しいデータが発表されることになると思いますので、それを待ちたいと思います。→書籍として出版されました(本ブログの記事「『中国職場性差別調査』出版」)

 なお、「課題グループ」おこなった提案は、これまでも繰り返し提唱されてきたことです。この調査報告については劉凱玲さんが記事を書いていますが、劉さんも「問題の鍵は……女性の就業の権利を保護する法規の強制力が強くないために、就業の性差別は何度禁止しても、なくならないことにある」と述べています(3)

 呂頻さんもこの調査報告について記事を書いていますが、劉さんも呂さんも、政府の公務員採用の際にも性差別がある点を厳しく批判しています(この問題も、以前、ブログでも触れました[たとえば、中国の求人広告などの差別の研究2009-02-07])。呂頻さんは「こんな具合では……法律を制定して性差別を懲罰することはまことに困難だ」、「鍵は、政策決定者に、この問題を解決する意思があるのか否かにある」とはっきり述べています(4)

(1)調査顕示女性就業遭遇厳重性別歧視」『法制日報』2009年6月15日、「中国職場性別歧視状況研究報告発布」『中国婦女報』2009年6月15日、「四分之一応聘女性求職時因性別遭拒」『工人日報』2009年6月15日。
(2)2009年6月12—13日,中心在北京西蔵大厦挙行了“反職場歧視研討会”」(2009-06-17)北京大学法学院婦女法律研究与服務中心HP
(3)劉凱玲「破除“就業性別歧視”関鍵在執法」『中国婦女報』2009年6月15日。
(4)呂頻「遭就業歧視:為何未見女性訴諸法律」『新京報』2009年6月15日。
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