2017-04

第4回北京クィア映画祭と同映画祭の歴史

 6月17日から21日まで、「第4回北京クィア映画祭[第四届北京酷兒影展]」が北京郊外の宋荘美術館と現象工作室で開催されました。主催者は、朱日坤、崔子恩、楊洋、石頭、范坡坡の各氏で構成する「北京クィア映画祭組織委員会」です。

 第24回トリノ国際LGBT映画祭で大賞を得た『無聲風鈴』(洪栄傑監督、Youtube)を皮切りに、50本あまりの映画が上映されました。中国本土の作品とともに、香港や台湾の作品も上映され、日本の《初恋》(今泉浩一監督、2007年)も上映されました(プログラム「第四届北京酷兒影展日程表(PDFファイル)」)。

 開幕式には200人あまりが参加しました。宋荘美術館の館長で「栗憲庭映画基金」の栗憲庭さんは、挨拶の中で「中国でインディペント映画を作るのは難しく、クィア映画を作るのは更に難しい。いかに難しくとも、みんなで勝ち取らなければならない。自由は与えられるものではなく、勝ち取るものだ」と述べました(以上は、(1))。

 今回は、これまでのクィア映画祭のうちで最も期間が長く、最も多くの映画が上映されました。

 これまでの映画祭は規模が小さく、また、しばしば途中で当局に妨害され、中断しています。以下、各回の概要を見てみます。

第1回中国同性愛映画祭[首届中国同性恋電影節](2001年12月14日~16日)(2)

 於:北京大学図書館南配殿
 上映作品
 ・《河流》(蔡明亮監督)
 ・《東宮西宮》(張元監督、1996年)
 ・《男男女女》(崔子恩監督、1999年)
 ・《今年夏天》(李玉監督、2000年)
 ・《旧約》(崔子恩監督、2001年))
 ・《藍宇》(関錦鵬監督、2001年)(Wikipediaの解説

 第1回は、「中国同性愛映画祭」という名称であった。北京大学の影視協会の張江南と楊洋という2人の学生と崔子恩監督が企画し、開催した。

 学外には「第1回中国同性愛映画祭」として宣伝したが、校内の場所を使用するには北京大学の共産主義青年団(共青団)の委員会の許可が必要だったので、大学の共青団には単に「同志文化祭[同志文化節]」をすると届けた。当時は、「同志」という言葉を「同性愛者、LGBT」の意味で使う用法は、中国大陸(とくに行政機関)では普及していないかったので、簡単に許可された。

 しかし、開会式の前、張江南は、共青団の委員会から「国家安全局の人が学校に来て、映画祭を監視しているかもしれない」と電話で知らされた。映画祭の2日目には、張は共青団の委員会に呼び出され、映画祭について説明を求められた。3日目には、はっきりと、共青団から「『上級機関』が映画祭を問題にしていて、次のの三つの質問をされた。一、映画祭を開催する目的、二、商業行為か否か、三、映画祭は好ましくない社会的影響を引き起こしているが、張が映画祭の影響をどの程度まで大きくしようとしているのか知っているのか。」などということを聞かされ、張は妥協せざるをえなくをなった。19日には、映画祭の活動は停止を命ぜられた。ただし、その時までに中国の映画は全て上映を終えており、まだ上映していかなったのは外国の映画だけだったのは、不幸中の幸いだった。

 終了後、張は国家安全局と党の中央宣伝部の人の審問を受けることになったが、恐れていたようなことは起こらなかった。その理由は、「上映禁止映画」を公開で放映したとはいえ、正式の上映とは見なされなかったことや、映画祭のテーマ自体は非合法ではなく、事前に許可も受けていたことなどである。 

第2回北京同性愛映画祭[第二届北京同性恋電影節](2004年4月22日~23日)(3)

 於:北京大学百周年記念講堂多機能ホール→平民映画映像空間
 上映作品
 《我們害怕(Shanghai Panic)
 《女同性恋游行日(DYKE March)
 《忘記她是他(Ignore the gender)
 《上海男孩(Snake Boy)
 《人面桃花(Beautiful Men)
 《少年花草黄(Withered in a Blooming Season)
 《胡蝶(Butterfly)
 《星星相吸惜(Star Appeal)
 《好郁(HoYuk-Let's Love Hong Kong)
 《301的法則(The rule of room 301)
 《宝宝(Baobao)
 《艶光四射歌舞団(Splendid Float)》

 第2回は、「中国」から「北京」に名称を改め、北京愛知行研究所の責任者・万延海と現象工作室の責任者・朱日坤の協力・支持を得た。

 この時は、北京大学影視協会は、北京大学百周年記念講堂の使用を許可してもらうために、「性の健康とエイズ予防の教育的ドキュメンタリーの上映をする」と届け出た。宣伝は第1回目より慎重にして、情報は3日前まで封鎖し(とくに映画祭の場所や時間)、入場券の販売も私的にEメールだけでおこなった。

 しかし、開幕式が始まる10分前に「第2回北京同性愛映画祭」と書いたポスターが見つかり、「講堂の使用は、高尚で学術的な上演に限る」という理由で追い出された(開幕式の前に既に何本か映画を上映していたので、この日も、まったく上映ができなかったわけではない)。

 翌日は平民映画映像空間に移動して開催し、1日半で終了した。上映地点の変更については、公表せずに、観衆の一人一人に電話で知らせたので、上映活動への干渉はなかった。

第3回北京クィア映画祭[第三届北京酷兒影展](2007年12月2日~?)(4)

 第3回から、「同性愛」から「クィア」に名称を変更した。もともとは2007年9月に予定していたが、資金や場所、時間の関係で、12月になった。

 当時、ちょうど「栗憲庭映画基金」が「第2回インディペンデント映画フォーラム」をやろうとしていたので、その下に「クィア映画フォーラム」を特設する形でおこなった。インターネット上では宣伝せず、宣伝は、直前にメーリングリストでおこなっただけだった。

 この時は、南京でも、南京大学の影視協会と協力して、上映をおこなった。その時に上映されたのは、以下の作品である。

《春歌》(孟諾)
《屋脊上的男人》(張磊)
《箱子》(崔霖)
《祝福你親愛的》(筷子兄弟)
《真心話大冒険》(陳双慶)
《陽春之春》(楊平道)
《我們》(思奇)
《美麗情人》(劉啓兵)

 今回の第4回目の映画祭がとくに干渉されずに開催できた背景には、社会的な変化があることは間違いないと思います。「数年前は、LGBTが北京で公然と活動をしようとしたら、すぐに警察が関心を持って、ただちに中止するよう要求したが、社会の観念が変わった」という指摘もあります(5)

 組織委員の1人である楊洋さんは、予定通り開催できるかどうかずっと心配していましたが、無事に開催できてホッとしているということです。ただし、楊さんによると、「今回の映画祭を、首都の中心から比較的離れた新興芸術区の宋荘で開催し、宣伝もせず、『同志』という言葉の代わりに、『クィア』という言葉を使った」というのは、控えめさを保つためだそうです(6)

 今回の映画祭の模様を写した写真は、以下に多数掲載されています。

現場報道:第四届北京酷兒影展開幕(組図)(1)」2009-6-17淡藍網
同(2)」同
同(3)」同
同(4)」同
同(5)」同
同(6)」同
同(7)」同
同(8)」同
淡藍記者手記第2日:緊張中的閑情逸致(組図)(1)」2009-6-19淡藍網
同(2)」同
同(3)」同
同(4)」同
同(5)」同
淡藍網独家:第四届北京酷兒影展円満落幕(組図)(1)」2009-6-22淡藍網
同(2)」同
同(3)」同
同(4)」同
同(5)」同


(1)第四届北京酷兒影展開幕」(2009-06-18)愛白網(写真多数)、「第四届北京酷兒影展啓事」(2009-02-15)北京酷兒影展博客。
(2)北京同志影展史話(一)」、崔子恩「愛――首届同性恋電影節致辞」(ともに北京酷兒影展博客、英訳あり)、陳礼勇「首届中国同性恋電影節夭折内幕(1)」「同(2)」(新浪網読書頻道)。ただし、「北京同志影展史話(一)」と陳礼勇「首届中国同性恋電影節夭折内幕」とでは、若干、記述に違いがあり、上では両者を混ぜて記述していますので、正確には原文を確認してください。
(3)北京同志影展史話(二)」、「原計劃放映日程」、「電影節地点変更短信」(いずれも北京酷兒影展博客、英訳あり)。
(4)酷兒影像,影響中国+北京同志影展史話」の范坡坡執筆箇所、「酷兒論壇南京巡回」(北京酷兒影展博客、英訳あり)。
(5)中国同性恋突破重囲 展示新風貌」(2009-6-22)淡藍網
(6)北京同志影展順利開場,組織者如釈重負」(2009-6-22)娯楽信息与休閑論壇
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