2017-06

「同性愛者の妻の会」開催、「同性愛者の妻の共同声明」発表

 3月27日と28日、青島で第1回中国同性愛者の妻の会(同妻会)(1)が開催されました。この会は、民間団体である「ピンクスペース性文発展センター(粉色空間性文化発展中心[Pink Space Sexuality Research Centre])」(2)が呼びかけ、組織したものです。

 この会には、男性同性愛者(ゲイ)の妻9人(すでに離婚した人が4人、結婚している人が5人)が全国各地(山東、遼寧、江蘇、河南、陝西、上海など)から集まりました。ほかに、既婚の男性同性愛者1人、恋愛中でエイズを感染させられた女性1人、ピンクスペース性文化発展センターの要員2人も参加しました。青島大学医学院附属医院教授の張北川教授もこの会を支持し、当日も講話をしました。

 中国には性的にアクティブな時期の男性同性愛者が少なくとも約2000万人いると言われ、そのうち結婚している人が80%(張北川氏)とか、90%(劉達臨氏)とかいいます。つまり、中国には、男性同性愛者の妻が少なくとも1600万人いるわけです。この点は、中国の場合、結婚圧力がまだ非常に強いこととも関係しているようです。

 同性愛者の妻は、精神的・性的満足が得られないだけでなく、多くの場合、粗末に扱われ、冷遇・無視されており、暴力をふるわれる人もいます。夫と離婚しようとしても、子どもや生活の問題、離婚に対する偏見など、さまざまな困難があります。

 しかし、同性愛者の妻のそうした境遇については、あまり知られてきませんでした。妻たちは、自分の性的欲求や夫が同性愛者であることを言いにくいのです。

 同性愛者の人権にについては、1990年代末以降、中国でも同性愛者の組織が結成されはじめ、社会的関心も少しずつ高まってきました。けれども、その陰にいる妻の人権については、まだ知られていません。

 そうしたなか、昨年から、ピンクスペース性文化発展センターは同性愛者の妻のための電話相談をおこなってきました(本ブログの記事)。また、インターネット上でも、同性愛者の妻たちは、「華人同妻網」とか「因愛而傷、天使折翅」とかいうブログサークルを作って、さまざまな交流をしてきました。

 会の当日、多くの参加者は、以前、ピンクスペース性文化発展センターのサイトでも報じられた体験談「私の夫は同性愛者だった」(「我的丈夫是同性恋」、本ブログの記事でも簡単に紹介した)と同様、夫から無視され、暴力もふるわれたことを語りました。それだけでなく、半数を越える人が、自殺を考えたといいます。

 もし夫が堂々と男を家の中に連れて来たら、妻はカヤに外に置かれますし、もし夫がこっそり夜に出かけると、妻は一人きりで、夜も眠れません。多くの妻は「夫を大切にすれば、夫は変わる」と思って努力しますが、そういうものでもありません。

 会では、離婚の困難さが語られるとともに、離婚した人からは「離婚を恐れてはいけない。離婚して初めて、生活は本来、幸せなものたりうることがわかった」という声も出ました。

 会では、参加者が直接顔を合わせて話し合えたというだけでなく、参加者が、みんなで他の同性愛者の妻が権利を勝ち取るのも助けていこうとを表明し、15条からなる今後の活動方針も立てました(「同妻家園目標及工作計劃(討論版)」)。その方針にもとづいて、同性愛者の妻の経験を集めて出版する計画をしたり(「徴集100名同妻的故事,歓迎大家参与!」)、インターネット上にフォーラムを作ったりしています(「錯愛同志論壇」、「天涯社区・同妻部落」)(3)

 さらに、以下のような「同性愛者の妻の共同声明(同志妻聯合声明)」を作成し(4)、発表しました(要旨です。詳しくは原文を参照してください)。

 1.同性愛者の妻の組織「同妻家園」を設立し、今後、さらに多くの同性愛者の妻に思いやりや援助を提供する。「同妻家園」の活動目標は、次のとおり──同性愛者の妻の生活状況調査をおこない、同性愛者の妻の経験を分かち合い、お互いに助け合い、欲求を表現しあい、権益を勝ち取ることを励まし、同性愛者の妻と既婚の男性同性愛者に援助を提供する。

 2.社会と関係部門(婦連、マスコミなど)に、同性愛者の妻に対する関心・研究・支持・援助を強めるように呼びかける。専門家や学者にも、同性愛者の妻に対する研究や援助を強めるよう希望する。

 3.社会の関係部門に、同性愛に関する科学的な知識の教育を強めるよう呼びかける。

 4.家族と社会は、子どもに対して結婚するように圧力を加えてはならず、同性愛者だという性的指向がわかっている未婚の男性同性愛者は、異性愛の女性との結婚を拒絶するように呼びかける。多くの同性愛者が同姓婚の実現を希望しているが、もし未婚の同性愛者が異性との結婚を拒絶しなければ、同性婚の提案が実現する上での困難は増大する。同時に、ジェンダー平等の声がますます高まっている今日において、同性愛者が自らの性的指向を隠して、事情を知らない異性と結婚することは、女性の権利に対する不尊重と軽視である。

 5.同性愛者の妻たちに、DVに対して「ゼロトレランス」の態度をとって、DVを拒絶するよう呼びかける。同性愛者の婚姻の中で、多くの同性愛者の妻が、肉体的にも精神的にも傷を受けている。

 6.同性愛者の妻たちに、エイズを積極的に予防・検査して、エイズと性病の感染を防止するよう呼びかける。同性愛者の妻に関する調査によると、少なくない妻が夫に性病を感染させられている。

 7.同性愛者の妻たちに、行動し、声をあげ、積極的な態度で勇敢に不幸な婚姻に立ち向かい、勇気を持って自らの性生活と幸福を表現し追求するよう呼びかける。積極的に同性愛者の妻の組織や社会各界の援助を求めよう。

 8.社会と家族に、離婚した女性や男性を、とやかく言ったり、差別したりしないように呼びかける。

 男性同性愛者の妻の問題は、セクシュアルマイノリティの問題、男と女の問題、結婚制度の問題などが交差した地点で発生した問題だと思います。同性愛者に対して偏見のある女性もいるでしょうし、難しい問題もありそうですが、今回の動きは全体として歓迎できるもののように感じます。

(1)「同性愛者の妻」と言っても、中国では制度的に同姓婚が認められていない以上、この場合の「同」は、男性の同性愛者である「ゲイ」のことですし、単に「同志」と言った場合、男性を指すようなニュアンスがないとは言えないので、ここは、「ゲイの妻」と訳したほうがいいかもしれません。けれど、ここでは字義どおりに「同性愛者の妻」と訳しました。
(2)何小培さんらがおこなっている、女性の性の権利を提唱する団体。活動対象は、女性のエイズウイルス感染者、女性のセックスワーカー、ゲイの妻、レズビアン・女性のバイセクシュアル、トランスセクシュアル、障害女性、シングルマザーなど。
(3)この会については、粉色空間「首届中国同妻会議在青島召開 相互支持争取権利」(2009-04-01)愛白網、何小培「首届中国同妻会議紀要」(『粉色空間通訊』第2期)、「同妻見面会」(特立独行的猪的博客)、「大陸(内地)首届"同妻"問題討論会(同妻会)在」(張北川的博客)参照。
(4)この声明は、当日発表されたものではなく、いったん草稿を作成して(「中国同妻聯合声明(初稿,請大家提出意見)」2009-04-08)、みんなに意見を提出してもらた上で、4月15日に発表されています。草稿と比べて決定稿の方が、「1」で、既婚の男性同性愛者への援助を表明したり、「4」で、同性愛者に対する結婚への圧力を指摘するなど、より男性同性愛者に配慮したものになっている個所があります。
関連記事

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://genchi.blog52.fc2.com/tb.php/243-c531b1e3
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

ゲイと結婚した妻たち@中国

ゲイと結婚した妻たち@中国

«  | HOME |  »

プロフィール

遠山日出也

Author:遠山日出也
 検索から来られた方へ:このブログの記事を分類した一覧である「『中国女性・ジェンダーニュース+』記事総覧」を見ていただくか、下の「カテゴリー」欄を使われると、関連情報がご覧いただきやすいと思います。最近の行動派フェミニストについては、「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」をご覧ください。
 また、「中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。日本の問題の一部は、「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」や「館長雇止め・バックラッシュ裁判」でまとめています。
 恐れ入りますが、スパム対策などのため、コメントは私が拝見した後で表示させていただきます。
 私への連絡はこちらまで

最近の記事

月別アーカイブ

カテゴリー

最近のトラックバック

最近のコメント

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSフィード