2017-03

海南島「慰安婦」訴訟高裁判決、台湾と中国の「慰安婦」サイト

 3月26日、海南島「慰安婦」裁判の高裁判決が出ました。残念ながら、またも原告敗訴でした。

 今回の判決については、「中国人戦争被害者の要求を支える会」のHPに弁護団の声明が出ています(判決全文[PDFファイル])。

 詳しくはその声明をご覧下さればいいのですが、今回の判決は、「本件被害女性らは、本件加害行為を受けた当時、14歳から19歳までの女性であったのであり、このような本件被害女性らに対し軍の力により威圧しあるいは脅迫して自己の性欲を満足させるために陵辱の限りを尽くした軍人らの本件加害行為は、極めて卑劣な行為であって、厳しい非難を受けるべきである。このような本件加害行為により本件被害女性らが受けた被害は誠に深刻であって、これが既に癒されたとか、償われたとかいうことができないことは本件の経緯から明らかである」と認定し、被害の質的側面ににおいてもPTSDはもとより「破局的体験後の持続的人格変化」も認定している――ということです。

 ただし、2007年4月の最高裁判決が「個人の賠償請求権は、日中共同声明により『裁判上訴求する権能』が放棄された」と判断したことを踏襲し、控訴を棄却したということのようです。

 この裁判を支援してこられたのはハイナンNETです。この裁判で原告(控訴人)側は、上記の最高裁判決にも負けずに頑張ってこられました。たとえば、控訴審で出された「準備書面」(3)(2007年9月21日、ワードファイル)は、最高裁判決に反論するとともに、「たとえ最高裁判決を前提としても、この事件はその解釈適用の範囲外にある」と主張しています。高裁判決が上のような事実を認定しているのも、原告(控訴人)側が、証人を立てて争ったからです(本ブログの記事「海南島裁判の原告の証言その他」など参照)。

 また、ハイナンNETのメンバー20代の女性5人は判決を前に、海南島の原告らを訪ねる活動もなさったそうです(「中国海南島 原告のアポ(おばあちゃん)訪ねて」『しんぶん赤旗』2009年3月23日)。

 弁護団の声明は、以下の点も指摘しています。

 「本判決は、最高裁判決と同様、個人の賠償請求権につき、その権利は実体的には消滅しないと判示した。これは個人の賠償請求権につき、裁判上訴求する機能のみが失われたとするものであり、個別具体的な請求権について、債務者側において任意の自発的な対応をすることは何ら妨げられないとを認めたものである。 」

 「この点、日本政府も、二国間条約で損害賠償問題は解決済みであるとの主張しながらも、『慰安婦』の問題について解決されていない問題があると認め、1993年、河野洋平官房長官の談話(以下「河野談話」という)において、被害者に対して事実を認め謝罪をし、適切な措置をとることを表明した。」

 「したがって、本判決で損害賠償請求権が裁判上訴求できないからといって問題が解決されたわけではなく、未だ河野談話の見地にたって解決されなければならないことにかわりはない」

 弁護団の声明は、内外の世論についても触れています(最近の日本国内の動きについては、プログ「Gazing at the Celestial Blue」さんの「福岡市議会が『慰安婦』問題に政府が誠実に対応するよう求める意見書を採択」という記事に詳しく書かれています)。

 それと関連して、昨年末から今年初めにかけて、台湾と中国で相次いで日本軍「慰安婦」のためのサイトが出来ていることをご紹介します。

台湾のサイト

 台湾では、今年初め、婦女救援基金会が、「阿嬤のサイト──慰安婦と女性の人権バーチャル博物館サイト(阿嬤的網站──慰安婦與女性人権虚擬博物館網站)」(阿嬤とは老婦人の敬称)を開設しました。

 このサイトには、慰安所の写真・規則、慰安婦の証言、オーラルヒストリー、慰安婦についての調査、報道などが収録されています(婦女救援基金会のサイトの中の「慰安婦」コーナーにも、ある程度のものは掲載されていますし、すでに英語版もあるという点では、そのコーナーの方が便利ではありますが)

 婦女救援基金会は、心身に傷を負った元「慰安婦」のケアための様々なワークショップをしており、カウンセリングのほか、元「慰安婦」の方にさまざまな芸術的な創作をしてもらったりしています。そうして制作された作品なども、このサイトに収録されています。私はそうした試みについては詳しくはわからないのですが、婦女救援基金会が元「慰安婦」一人一人を主体として尊重なさっている様子が伝わってきます。

 1月13日に上のサイトのオープンの式と記者会見がおこなわれたのですが、その場に来ていた台北市の文化局長の李永萍氏は、早ければ民国101年(2012年)にも、「慰安婦」のために、バーチャルでない「女性人権館」を設立することを表明しました(「『阿嬤的網站──慰安婦與女性人権虚擬博物館』網站開幕記者会」)。

 ただ、上のサイトの慰安婦問題の年表「慰安婦議題大事記(1972~2008)」を見ても、生存している元「慰安婦」の方(もちろん確認できている方々だけです)が、2005年には、30人いらっしゃったのが、2006年には、27人、2007年には、23人、2008年には、20人となっており、慰安婦問題の解決は「まったなし」だと感じます。

中国のサイト

 中国では、上海師範大学の中国「慰安婦」問題研究センターの蘇智良教授らが「中国『慰安婦』資料館(中国“慰安婦”資料館)」というサイトを昨年末に開設しました。こちらはまだあまり内容がありませんが、今後、さまざまなページを作成する予定のようです。

 中国の「慰安婦」資料館はすでに実物もあり、上海師範大学の一角に2007年7月に開館しました。私はまだ行ったことはありませんが、200平方メートルのスペースの中に280件の現物や写真が展示してあり、ソウルや東京のものと比べると規模は大きくないかもしれないとのことですが、独自の展示しているそうです(中国首家“慰安婦”資料館開館 免費対外開放」『青年報』2007年7月6日、「国内首家慰安婦資料館在上海対外開放」『東方早報』2007年7月6日←ともに写真入りの記事です)。現在は、毎週火・木・土の9:00~16:00が開館時間です。

 台湾のサイトも、中国のサイトも、今後、英語版や日本語版も作成して国際的にアピールしていくようです。

[3月29日追記]

 海南島事件の高裁判決に関しては、プログ「Gazing at the Celestial Blue」さんの「『海南島戦時性暴力被害賠償請求』高裁判決のメモ」という記事も、ぜひご参照ください。
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