2017-06

アステラス製薬の元上司らの証言、説得力なし

 9月20日につづいて(その時の報告)、昨日も、アステラス製薬の仙頭史子さんの男女差別裁判(支援する会のHP)を傍聴してきました。
 ただし、私は午後からしか傍聴できませんでした。また簡単なメモと記憶によって書いていますので正確でない箇所もあると思いますが、以下簡単に報告します。

 今回は仙頭さんの元上司らが4人、会社側の証人として登場しました。
 各証人は、それぞれもっともらしい理由を言って、仙頭さんに対する処遇を正当化しようとしました。

 〇仙頭さんは、はじめは藤沢薬品(のちのアステラス製薬)の研究所で業務をしていたのですが、女性は何年たっても単純なルーチン業務が中心だという男女差別がありました。
 そこで、仙頭さんは「結果が数字に出る営業職であれば男女差別されないのではないか」と考えて営業職に応募し、藤沢薬品で女性初のMR(製薬会社の営業職のこと)になりました。ところが、営業職で男性と同等の成績をあげても、賃金格差は開く一方でした。

 今回の証人尋問では、営業職時代の元上司が「仙頭さんは、目標を達成することは評価できたが、プロセス管理が不十分だった」と証言しました。
 「プロセス管理が不十分だった」というのは、「週報(?)」というその時々の報告書のようなものをきちんと出していなかったいうことだそうです。私はそれを聞いて「プロセスというのは、目標を達成するための手段にすぎないはずだが? 基本的には成果が上がっていればいいのでは? 少なくともそんなことで、このひどい格差が正当化されるはずはないが?」と素朴に疑問を感じました。
 案の定、反対尋問では、原告側の弁護士はその点を追及しましたが、まともな答えは返って来ませんでした。
 また「週報」の問題は、「チャレンジシート」という自分の今後の目標を書く書類のようなものを作る際にも、その点を別に指導していなかったそうです。この点から見ても、いったいそれがどれほどの問題なのかを疑問に思いました。

 〇藤沢薬品ではその後、1997年に職群制(いわゆるコース別)が導入され、営業職はC職群(いわゆる総合職)に分類されることになりました。仙頭さんは「これで私も総合職」とお喜びになったそうです。
 ところが、なんと藤沢薬品は、そのとたんに仙頭さんを子会社に出向させることによって、B職群(いわゆる一般職)に格付けしました。

 今回の証人尋問では、その当時の人事の人が、「仙頭さんを営業職から外したのは、適性判断と会社の営業戦略の変化、本人の希望によるものだ」と証言しました。
 ・「適性判断」とか「会社の営業戦略の変化」というのは、「会社は一般用試薬から、研究用試薬に重点を移行しようとしていた。仙頭さんは『不特定多数に会うのは苦手』と言っており、一人一人の先生に説明しなければならない研究用試薬の営業は苦手そうだった」といったことです。
 ところが反対尋問で、原告側弁護士が証人に、「『不特定多数に会うのは苦手』という言葉の意味を具体的に聞きましたか?」と尋ねると、証人は、「具体的には確かめていない」と認めました。実は仙頭さんが言っていたのは、講演などによって「不特定多数」に営業するのは苦手という意味であり、完全に意味を取り違えていたのです。
 また、弁護士さんが「仙頭さんは研究用試薬を売っていなかったのですか? 売っていたでしょう?」と追及すると、「売っていました」と認めました。
 ・「本人の希望」というのは、証人によると、「仙頭さんが、他の職種を希望すると言っていた」ということだそうです。
 しかし、反対尋問では、仙頭さんが言っていたのは遠い先の話であり、仙頭さんはむしろ今後の営業活動に大いに意欲を示した文書を残していたことが明らかになりました。
 「それなのに、なぜすぐに子会社に異動したのか」と追及すると、証人は説明できませんでした。

 〇藤沢薬品でもB職群からC職群への転換は一応出来たようですが、その際、直属の上司の推薦が必要だとのことです(こんなハードルがあったら、男女差別などなくならないことは明らかです)。

 今回の証人尋問では、直属の元上司は、「仙頭さんは、経営職(上のクラスの管理職)より(一般職の)主事になる方が良いと思った。仙頭さんは、経営職になるには、視野の広さや説得力・協調性に欠けていたからだ」と証言しました。
 「視野の広さや説得力・協調性に欠ける」と考えた理由として、元上司は、仙頭さんがどこかの会社の社長(所長?)と衝突したということと、(会社の経営のことを考えずに)高額の機械を買うことを主張したということを挙げました。
 ところがこの元上司、そうしたことを自分で直接見ていたわけではなく、人から聞いたにすぎません。反対尋問で「どういう理由で衝突したか自分で確認しましたか?」「どんな機械を何のために買うと主張したのか確認しましたか?」と尋ねられると、いずれも「確認していない」との答え。
 またこの上司は、仙頭さんのそうした問題点(だと今回主張した点)を本人に言っていたかと聞かれると、「本人には言っていない」と答えました。
 裁判の後の交流会で、「『視野の広さや説得力・協調性に欠ける』と主張したのは、女性に対する偏見を自分で告白しているようなものではないか?」という趣旨の意見が出ました。私も、反対尋問にこんな答えしかできないということは、その可能性が大いにあるように思いました。

 ○この裁判では、会社は、ある時期からは人事・賃金制度から性と学歴という属人的要素を排除して「職務と能力を中心した、公平で納得性のある評価」をするようにした、と主張しています。
 ところがこの裁判の中で、会社はその際に、社員には公開せずに「スタート考課」という人事制度を導入していたことが明らかになりました(住友金属の男女差別でも問題になっていた、いわゆる「闇の人事制度」です)。
 その中で、会社はこっそり社員を3ランクに分類していたのです。その分類は、それまでの性と学歴という属人的要素を強く受けた賃金実態をそのまま当てはめたものであり(たとえばアシスタントは+1、研究開発は+5が基本で、遂行能力を加味する)、結局は差別が固定化されたことが指摘されています。

 今回も、この「スタート考課」のことが話題になりました。私にはよくわからない点も多かったのですが、少なくとも仙頭さんの「職務と能力」をきちんと分析して考課を決めたという話はまったく出てきませんでした。
 仙頭さんのある上司は、当時の仙頭さんの考課ランク(これで賃金が決まる)が「+3」だったことを述べました。しかし仙頭さんが「+1」のスタート考課だけど、優秀だから「+3」という考課ランクになったのか、「+3」のスタート考課だけれども、最低限のことしかできないから「+3」なのかということさえ言えませんでした。

 その他、各上司は、仙頭さんに対する処遇を正当化しようと、いろいろ言っていました。しかし、反対尋問で追及されると、「確認していない」とか、「何らかの形で」とか、「具体的には覚えいていない」といった答えばかりが目立ちました。

 私は、「会社側証人がこの程度のことしか言えないということは、男女差別が原因だったことは間違いない」と強く思いました。

 裁判の今後の予定は、以下のとおりです。
11月20日(月)、13:30~16:30 大阪地裁202号法廷
 原告側証人として森さんが証言
12月20日(水)、10:00~16:30 大阪地裁202号法廷
 原告の仙頭さんが証言
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