2017-05

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初等中等教育での性教育の要綱

 昨年12月26日、教育部は「小中学校健康教育指導要綱」(以下、「指導要綱」と略す)(1)を公布しました。これに伴って、1992年に公布された「小中学生健康教育基本要求(試行)」(以下、「基本要求」と略す)(2)は廃止されました。

 中国の学校では、「性教育」は、公的には「青春期教育」と呼ばれていますが、「青春期教育」は、この「健康教育」の一部として扱われています(3)

 1992年に公布された従来の「基本要求」と、今回出された「指導要綱」を比較すると、まず、全体として、今回の「指導要綱」の方が詳しくなっています。たとえば、従来は、小学校と中学校(初級中学[日本で言う中学]と高級中学[日本で言う高校]の両方を含む)とに分けて書かれていただけでしたが、今回は、小学校1─2年、3─4年、5─6年、初級中学、高級中学という5段階に分けて書かれています。また、小中学校で「毎学期6、7時間」の健康教育課を設けると明確に書かれたりもしています。

 そのうち、「青春期教育」に関する内容的な違いとしては、従来は、中学校になってから「青春期の生理衛生」を教えることになっていたのですが、今回は、小学校から「生長発育と青春期保健」という項目が入っています。具体的には、小学校1─2年では、「生命の妊娠出産・成長の基本的知識、『私はどこから来たか』を知る」という内容となっており、小学校3─4年で教えるのは、「人の生命周期(誕生・発育・成熟・老衰・死を含む)」と「児童青少年の身体の主な器官の機能を初歩的に理解し、自分を保護することを習得する」ことであるとされます。

 中国でも、小学生にとって、こうした教育はぜひ必要なものだと思います。というのも、2006年7月に四川省性社会学と性教育研究センターが生徒や保護者に対しておこなった調査によると、小学校1─2年生の58.4%は、父母に「私はどこから来たの?」と尋ねたことがあるそうですが、そのうち、「お母さんが産んだ」という回答を得られたのは、1/4にも満たなかったということです。また、小学校3─4年生のうちの1/2は、何を「性的侵犯」と呼ぶのがわからず、かつ、女児の方が、わからない比率が男児よりも高かったそうです(4)

 今回の「指導要綱」では、小学校5─6年になると、「青春期の成長発育の特徴」「男女の少年の青春期の発育の差異(男女の第二次性徴の具体的現れ)」「女子生徒の月経・初潮とその意義」「男子生徒の精通とその意義」などを教えることになっています。

 この点も重要で、上記の調査によると、小学校5─6年生の1/4の女子は月経が来るということを知らず、6割以上の男子は遺精をするということを知らなかったということです(5)

 従来の「基本要求」では、「中学生」が学ぶ内容として、「青春期の男女の少年の生殖系統の発育の特徴:生殖器官の発育、第二次性徴の出現、女性の月経の形成、男性の遺精の形成」ということが書かれていたので、その点から見ると、今回の「指導要綱」は、従来の「基本要求」よりも、2年早まったということになります。といっても、従来の「基本要求」も、一方では、「小学校高学年(5、6年)では、青春期の生理的変化の特徴と直面しうる若干の問題(女児の月経・初潮、乳房の発育、男児の変声など)を適当に入れる」ということも書いてあったのですが、上記の調査結果からみると、どこまで教えられていたかは疑問です。

 また、今回の「指導要綱」では、初級中学(日本で言う中学)では、「生活を愛し、命を大切にすること」「青春期の心理的発育の特徴と変化の法則」「にきびの発生の原因、予防の方法」「月経の期間の衛生保健常識、生理痛の症状と処理」「適切なブラジャーを選んで着ける知識」を教えるとされており、高級中学(日本で言う高校)では、「生活を愛し、命を大切にすること」「青春期によく見られる発育の異常は、不正常であることを発見したら、すぐに医者にかかること」「婚前の性行為が青少年の心身の健康に重大な影響を与えること」「婚前の性行為を避けること」を教えるということです。

 上記の四川省性社会学と性教育研究センターの調査によると、中学生(日本で言う中学生と高校生)のうち、7.7%は、異性と性行為をしたことがあるそうです(6)。今回の「指導要綱」が「婚前の性行為」に言及したのは、そうした背景があるからでしょう。しかし、「危険だからやめろ」というだけでは、単純な禁欲主義であるように思います。

 今回の「指導要綱」に対しては、「性の知識だけでなく、性道徳を教えるべきだ」という意見も出ており、その際に、国外の「性の乱れ」が引き合いに出されたりしています(7)。たしかに「性の知識」だけでは不十分なので、モラル的なことを教える必要はあるでしょう。しかし、私は、その際には、「人権」という軸が必要であると考えますが、今回の「指導要綱」ではその点が不十分なように思います。単純な禁欲主義になっているのは、そのためでしょう。

 私は、今回の「指導要綱」は、従来より詳しくなったことや小学校低学年から教育を始めるようにした点など、時代の変化を反映している面はあると思います。ただし、時代の変化に対して的確に対応しているかどうかは疑わしいと思います。

 また、肝心なのは、単に「要綱」に書かれたというだけでなく、実際に性の知識が小中学生に教えられるようになるかどうかなので、それをどう保障するのかも気になります。この点について、「指導要綱」は、従来よりは詳しく実施方法などを書いてはいますが、具体的な制度や予算措置への言及はなく、いまだ抽象的な議論にとどまっているように思いました。

(1)教育部関于印発《中小学健康教育指導綱要》的通知」(教体芸[2008]12号)(2008-12-26)
(2)中小学生健康教育基本要求(試行)」(1992年9月1日衛生部、国家教委、全国愛衛会発布)
(3)「健康教育」には、他に「健康な生活方式」・「疾病の予防」・「心理的健康」などの内容が含まれる)。
(4)八成中学生渇望性教育」『天府早報』2007年4月9日(四川性社会学与性教育研究中心HP)。
(5)中小学性教育終于上講台了」2008-12-29和平論壇より
(6)(4)に同じ。上海計画出産宣伝センターが上海市の初級・高級中学生1700名に対しておこなった調査でも、6割の生徒は、異性との親密な関係を正常なものとみなし、高級中学では10パーセントを超える生徒が身体的接触をしているという結果が出ている(「中学生性教育盲点多」『中国婦女報』2008年12月2日)。
(7)教育部《綱要》不足以矯正跛行性教育」新華報業網2008-12-29、「性教育:性道徳不該缺位」『中国婦女報』2008年12月30日。
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