2017-08

上海市婦連が父親の育児休暇を提案

 先日、上海市婦連が、母親の出産時に少なくとも10日間の「父親が世話をする休暇(父親照顧假)」を設ける提案を上海市の人民代表大会と政治協商会議に提出しました。上海市婦連は、3月に開催される全国レベルの人民代表大会と政治協商会議には、関係する法律の条項を改正する提案をするそうです(1)

 昨年の全国人民代表大会では、浙江工業大学財貿管理学院院長の程恵芳さんが「夫の有給の産休制度を設立する建議」を提出しました。「女が産褥についている期間に、男が産休を取る」という発想のもので、夫が産休期間は、7日~15日にする提案です(2)。今回の上海市婦連の提案も、内容的には程恵芳さんのものと似ていますが、今回は婦連としての提案です。

 この上海市婦連の提案は、上海社会科学院家庭研究センター(上海社会科学院家庭研究中心)の徐安さんらの研究成果にもとづいています(3)

 その研究成果は、昨年8月に、張亮・徐安『父親の参与研究:態度と貢献、効用』(4)として出版されています。この研究によると、妻の出産の時に付き添った夫は、上海の市区で19%、郊外区で6%だけだったそうです。子どもの誕生から満1カ月までの間に1日も休暇を取らなかった夫が、市区で32%、郊外区で24%もいました。3日以上休みを取った夫は、47%だけでした。

 こうしたことの一因は、夫の仕事の多忙さのようです。64%の市区の夫と54%の郊外区の夫が「もっと子どもの相手をしたいけれども、仕事が忙しすぎて時間がない」と答えています(5)。近年、社会の競争が激しくなって、仕事のプレッシャーが増すにしたがって、子どもの出産時に夫が取る休みの日数は減ってきており、1990年代には父親の平均休暇取得日数は8.3日だったのが、2000年以降は7.6日に減ったそうです(6)

 中国では、各地方の法規で、子どもが1人だけで、晩婚晩育(遅く結婚し、遅く出産する)の夫婦に対しては、結婚休暇や産休の日数を増やすとともに、夫にも、子どもの世話をするための休暇を与えています。

 しかし、徐安さんと張亮さんは、そうした休暇は、あくまでも出産を抑制するための褒賞・優待であって、ジェンダー平等の視点や子ども本位の原則によるものではないことを指摘しています。また、地方によって、夫に与えられる休暇の日数の差も大きく、大多数は10─15日ですが、河南省は1カ月ある一方、上海では3日(7)しかありません。

 女性の産休自体は90日で、晩婚晩育の人は120日と、十分な期間があり、むしろ少し長すぎるのではないかと、徐さんらは言います。産休が長すぎると、その間に時代の変化についていけなくなったり、女性を雇うコストが高くなって、女性が職場から排斥される結果を招くかもしれないと言うのです。だから、徐さんらは、今後は父親の育児休暇を増やすべきだと主張しています。

 また、徐さんらは、父親の育児休暇は、スウェーデンやノルウェーのように、父親しか使えないものでなければならないことも指摘しています。北京の場合、遅く出産した女性労働者にプラスされる30日の休暇が「夫も享受できる」という規定になっており、そうした面で不十分さがあります(8)

(1)上海市婦聯将向“両会”建議増設帯薪“父親照顧假”」『中国婦女報』2009年1月9日。
(2)男人休産假,共同分担人類再生産責任」『中国婦女報』2008年3月14日。「程恵芳代表、男性職員にも『産休』を」中国網日文版2008-03-10
(3)家庭研究中心成果為市婦聯関于増設“父親假”的提案提供依据」(中国家庭研究網09/01/03)
(4)張亮・徐安『父親参与研究:態度、貢献与効用』(上海社会科学院 2008年)──上海社会科学院の「新書介紹」ページのこの本のデータ、ネット書店「書虫」の書虫データベースのこの本のデータ
(5)以上、(3)に同じ。
(6)“育児假”鼓励男性進入家庭角色」『中国婦女報』2009年1月15日。
(7)上海市人口と計画生育条例(上海市人口与計劃生育条例)の33条で、「本条例の規定に符合する出産が遅い(晩育の)女性は、国家が規定する産休のほかに、晩育休暇を30日増やし、その配偶者は晩育世話休暇を3日享受する」と規定されています。
 なお、同条例の24条によると、晩婚とは、初婚の時に男の場合は満25歳、女の場合は満23歳になっていることで、晩育とは、第一子を出産するときに満24歳になっていることです。
(8)以上、(3)に同じ。
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