2017-11

中国婦女第10回全国代表大会(3)──女性の期待と大会

 今回の大会に先だって、人民網や中国婦女網、中華女性網などのネット媒体が、「現代の中国女性の十大期待」というネット調査をおこないました。調査は、15の選択肢の中から10項目を選択するという形式でおこなわれました(1)。調査期間は、9月25日~10月26日で、3350人が投票しました。その結果、以下の10項目が上位に入りました(選択した人が多い順)(2)

1.「女性の公民は毎年1回、無料で産科の検査が受けられる」
2.「女性の雇用環境が改善され、雇用の性差別が阻止される」
3.「男女両性の定年が平等になる」
4.「職業女性が『出産』と『昇進』(との矛盾)の苦境を脱し、出産が職業上の発展の障害にならない」
5.「住宅の価格が合理的になり、各家庭がぴったりの住宅を持てる」
6.「女性がDVの被害にあったら、『110番』ですぐに援助が得られる」
7.「流動女性がみな出産保険に入る」
8.「メディアの女性像がいっそう積極的・健康的になり、女性の進歩と発展を正確に反映する」
9.「人民代表大会・政治協商会議の女性の代表の比率がたえず上昇し、もっと多くの女性が政界の上層に入る」
10.「男女平等の基本的国策が全面的に実現し、婦連の組織がさらに社会的影響力を持つ」

 以下の項目は、11位以下でした(順不同)。
 「全国的な反セクハラ専門の立法が早く制定される」「都市と農村の女性の創業が、さらに多くの政策的扶助と融資のサポートを得られる」「中国最初の女性宇宙飛行士が宇宙に行く」「レディーファーストが公共生活の基本的礼儀になる」「国家が政策を出して、男女の両性がともに家事労働を分担するように励ます」

 ただし、1位の「女性の公民は毎年1回、無料で産科の検査が受けられる」も、63.33%の人が選択したにとどまっています(3)。10位以内に入らなかった「全国的な反セクハラ専門の立法が早く公布される」も、44.36%の支持を集めているので(4)、少なくとも上位10項目の間には、それほど大きな差はなかったものと思われます。

 また、大会の代表(代議員)たちも、全国的な反セクハラ専門の法律を制定するよう求めるなど(5)、さまざまな問題を論じました(6)

 中国婦女第10回全国代表大会の活動報告は、以上のような女性の願いに応えるものだったでしょうか?

 大会の活動報告を見ると、まず、第3章の「今後五年の女性の発展の目標」で、経済・政治・社会・家庭における女性の地位向上について、それぞれ述べています。また、第4章では、「男女平等の基本的国策を宣伝し、やりとげる力を強める」「『2つの要綱』(2001─2010年の中国女性発展要綱と中国児童発展要綱)の重点や困難点の指標を推進実現する」「不断に権利保護活動の実効性を強める」などの点が書かれています(7)

 また、第4章の「男女平等の基本的国策を宣伝し、やりとげる力を強める」ことを述べた箇所には、「ジェンダー平等意識を政策決定の主流に入れることを全力で推進する」という文言もあり、この点に注目した記事もあります(8)。たしかに、以前の大会の活動報告にはこのような文言はありませんでしたから、この点は、何らかのメルクマールではあるのでしょう。

 しかし、第3章で「目標」として書かれているのは、たとえば経済の分野で言えば、「就労における性差別を一歩一歩改善し、男女の収入の格差がいっそう縮小する」というような一般的な目標であり、「就労差別禁止法」や「セクハラ防止法」(すでに民間では提唱されている)のような具体的な法律の制定を要求するようなことは書かれていません。政治分野の目標でも、一般的に「女性の代表を増やす」とか「女性の代表の働きを発揮する」いうことが書かれているだけで、たとえば「クオータ制」を導入するというような具体的な目標は書かれていないのです。

 この活動報告では、ネット調査で多くの人が期待していた「男女両性の定年を平等にする」とか、「DV」とか、「両性がともに家事労働を分担する」というようなことには、まったく言及されていません。もっとも、上で述べたように「中国女性発展要綱」を推進することは方針として書かれていて、この要綱は「女性に対する暴力」についても触れています。実際、少しは婦連もDVや男女の定年差別の問題にも取り組んでいます。しかし、活動報告の中で、そうした問題に対する具体的な目標を掲げていないのは、運動体としては弱いのではないかと思います。

 なお、ネットでの投票や代表(9)の議論においても、農村に残された女性や女性農民労働者のような本当の底辺の人々の声は十分出ていません。そうした人々の声はいっそう婦連の活動には反映されにくいのだろうと思います。

(1)「当代中国女性十大期待網絡調査」(人民網・中国婦聯新聞網)
(2)「当代中国女性十大期待網絡調査結果掲曉 “女性公民毎年一次免費婦検”居榜首」『中国婦女報』2008年10月27日。
(3)同上。
(4)「莫譲“潜規則”泛濫 反対“性騒擾”立法亟待加強」人民網2008年10月30日
(5)「中国十大代表呼吁 懲治性騒擾手段応更具操作性」『法制日報』2008年10月31日。この記事は、刑法の強制猥褻罪をすべてのセクハラに適用するわけにはいかないし、かといって治安管理処罰法では、「5日以上10日以下の拘留」だけであり軽すぎると指摘しています。立証責任の問題等についても規定するように代表たちは要求したということです。
(6)「婦女十大代表熱議婦女維権」新華網2008年10月31日
(7)黄晴宜「高挙中国特色社会主義偉大旗幟 団結動員全国各族各界婦女為奪取全面建設小康社会新勝利而奮闘──在中国婦女第十次全国代表大会上的報告」『中国婦女報』2008年11月1日
(8)佟吉清「社会性別主流化从源頭上賦権婦女」『中国婦女報』2008年10月31日
(9)大会の代表は、94.69%が大学や専科学院卒の学歴を持ち、50.86%が労働模範や「三八紅旗手」などの省・部クラス以上の栄誉称号を持ち、39.77%が婦女工作者であるなど(「半数以上代表曾獲省部級以上栄誉称号,近80%代表是“新面孔” 婦女十大代表具先進性和広泛代表性」『中国婦女報』2008年10月28日)、偏りが大きいように思います。
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コメント

維吾爾族的計画生育

遠山様、お久しぶりです。ウイグルでの計画生育のインタビューを載せてみましたのでご高覧お願いいたします。10年ぐらい前の話みたいです。
ウイグル人の婦連はこういうことに対しては、全く機能していないのでしょうね。

http://kok2.no-blog.jp/tengri/2008/11/reykadeer1.html
http://kok2.no-blog.jp/tengri/2008/11/reykadeer2.html

ありがとうございました

お久しぶりですが、貴ブログはときどき拝見しています。でも、最近多忙でしたので、うっかり見落としていました。お知らせ、ありがとうございます。婦連にとっては、「計画生育批判」も、「ウイグル」も、タブーと言っていいような問題だと思います。教えていただいた記事は、またご紹介させていだこうと思います。

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