2017-06

中国婦女第10回全国代表大会(2)──活動報告

 この大会では、中華全国婦女連合会の副主席で書記処第一書記の黄晴宜さんが「中国の特色ある社会主義の偉大な旗印を高く掲げ、全国各民族・各界の女性を団結させ立ち上がらせて、ある程度ゆとりのある[小康]社会を全面的に建設する新しい勝利を獲得するために奮闘しよう」(1)と題する活動報告をおこないました。

 この報告は、4つの章からなっています。

 まず、「一、過去5年間の回顧」では、中国共産党や政府の政策によって女性のための環境が整ってきたことや、女性が社会のために貢献したこと、婦連の活動が発展したことが賛美されています。

 「二、科学的発展観を深く貫き遂行しよう」では、中国共産党が昨年の17回党大会で打ち出した「科学的発展観」を女性運動や婦連の活動に生かすべきことを述べています。具体的には、女性のさまざまな問題を解決するためには、「社会経済の発展」(具体的には、党と国家が目指す「小康社会」の建設など)が必要であることや、逆に、「科学的発展」や「調和社会」実現のためには、男女平等が必要であることなどが述べられています。

 「三、今後5年の女性の発展の目標」には、政治や経済、社会、家庭における女性の地位を向上させることが書かれています。それとともに、女性自身が「科学的発展」や「調和社会」実現のために努力することを呼びかけています。

 「四、全力で婦連の活動の新しい局面を切り開こう」では、婦連の活動の目標として、以下の5点が掲げられています。
 (1)発展の機会をつかんで、女性が経済・社会の立派で急速な発展のために新しい貢献をするよう導く。
 (2)権利の保護の職能をきわだたせて、女性が最も関心があり、最も直接的で、最も現実的な利益の問題の解決を推進する。
 (3)優位性を充分に発揮し、社会の管理と公共サービスに参与する上でさらに大きな成果を勝ち取る。
 (4)持続可能な発展に立脚して、女性の事業の発展に有利な体系の建設を促進する。
 (5)勇敢に改革して新機軸を打ち出し、婦連自身の建設を全力で推進する。

 以上から見て、この報告は、題名にも現れているとおり、全体として見ると、女性を国家・社会に貢献させることを強調した報告だと言えるでしょう。

 ただし、厳密な比較はまだしていませんが、5年前の第9回大会の報告(2)に比べると、男女平等や女性の権利への言及が若干、増えているように思います。前回の第9回大会の報告も、今回の第10回大会の報告も、全体の構成は似ているのですが、今回は、「四」の(2)~(4)あたりを中心に、女性自身の権利や発展に関する方針への言及が前回より増加しているようです。

 なお、この大会では、スローガンとして、「ともに科学的発展を促進し、ともに調和社会を築き、ともにすばらしい生活を創ろう(共促科学発展 共建和諧社会 共創美好生活)」ということが打ち出されました(3)

 このスローガンは、「三」の後半に書かれており、女性に対する呼びかけです。大会閉幕時の『中国婦女報』の社説によると、以下のようなことを女性に求めたものだそうです。
 ・「ともに科学的発展を促進する(共促科学発展)」……科学的な発展に参与して新しいものを創り出す意識を強め、創造の活力を最大限に発揮し、経済社会の立派で急速な発展のために貢献し事業を成功させる。
 ・「ともに調和社会を築く(共建和諧社会)」……社会主義の核心的な価値体系に、家庭の調和、人間関係の調和、社会の調和を促進するために努力する。
 ・「ともにすばらしい生活を創る(共創美好生活)」……新しい思想・新しい理論・新しい知識によって自己を充実させ、女性特有の才気と知恵によって多彩な人生を創造し、男性と肩を並べて、いっそう幸福ですばらしい未来を共同で創り出す。

 大会のスローガンが、社会に対する要求ではなく、女性に対する要求になっているところに、婦連の限界や問題点が端的にあらわれていると思います。「科学的な発展」とか「調和社会」という言葉には、経済成長一辺倒ではなく多元的なものを認めるような側面もあるのですが、それらが、女性に対する要求として言われているがために、「科学」や「調和」のために女性が努力するよう求めるスローガンにしかなっていません。家庭や人間関係の「調和」を女性に求める根底には、女性のジェンダー役割も見えかくれしています。

 次回は、活動報告の中の男女平等に関する個所や、大会に対する女性の期待などにも触れたいと思います。

(1)黄晴宜「高挙中国特色社会主義偉大旗幟 団結動員全国各族各界婦女為奪取全面建設小康社会新勝利而奮闘──在中国婦女第十次全国代表大会上的報告」『中国婦女報』2008年11月1日
(2)顧秀蓮「以“三個代表”重要思想為指導 団結動員全国各族各界婦女為全面建設小康社会而奮闘──在中国婦女第九次全国代表大会上的報告」『中国婦女報』2003年8月27日
 構成は、以下のとおりでした。
 一、五年来の中国の女性運動の新しい発展と基本的経験
 二、「三つの代表」という重要な思想で、中国の女性運動を指導する
 三、新世紀の初めの中国の女性の事業の発展の目標
 四、新しい形勢の下での婦連の組織の主要な任務
 (1)広範な女性をある程度ゆとりのある[小康]社会を全面的に建設するために貢献するよう団結させ、動員する
 (2)婦連の組織のサービス水準を向上させるよう努力する
 (3)改革の精神で婦連の組織自身の建設を強化する
 (4)社会的で開放的な婦連の活動方式をいっそう完全にする
(3)「共促科学発展 共建和諧社会 共創美好生活 婦女十大発出新号召」『中国婦女報』2008年10月29日「(社論)共促科学発展 共建和諧社会 共創美好生活──熱烈祝賀中国婦女第十次全国代表大会閉幕」『中国婦女報』2008年10月31日

*以下に、これまでの大会の活動報告の題名やスローガンを列挙してみました(原文は「歴届婦代会文件」参照)。
第1回(1949年4月)
 活動報告:穎超「中国の女性運動の当面の方針と任務の報告」
 蔡暢、主席に
第2回(1953年4月)
 活動報告:穎超「四年来の中国の女性運動の基本的総括と今後の任務」
第3回(1957年9月)
 活動報告:章蘊「勤倹して国を建設し、勤倹して家事を切り盛りして、社会主義を建設するために奮闘しよう」
 スローガン:「勤倹建国・勤倹持家」
第4回(1978年9月)
 活動報告:康克清「新しい時期の中国の女性運動の崇高な任務」
 スローガン:「四つの近代化は女性を必要とし、女性は四つの近代化を必要とする」
 康克清、主席に
第5回(1983年9月)
 活動報告:康克清「発奮し自強し、女性運動の新しい局面を切り開こう」
 スローガン:「自尊・自愛・自重・自強」
第6回(1988年9月)
 活動報告:張幗英「自尊・自信・自立・自強し、 改革の難関にいどむ段階の勝利のために貢献しよう」
 スローガン:「自尊・自信・自立・自強」
 陳慕華、主席に
第7回(1993年9月)
 活動報告:黄啓璪「全国の女性は団結して、中国の特色を持った社会主義を建設するために努力し奮闘しよう」
第8回(1998年9月)
 活動報告:顧秀蓮「小平理論の偉大な旗印を高く掲げ、全国各民族・各界の女性を団結させ立ち上がらせて、わが国の世紀をまたぐ壮大な目標を実現するために努力し奮闘しよう」
 スローガン:「巾幗創新業(女性が新しい事業をおこす)」
 彭珮雲、主席に
第9回(2003年8月)
 活動報告:顧秀蓮「『三つの代表』という重要な思想を指導とし、全国各民族・各界の女性を団結させ立ち上がらせて、全面的に小康社会を建設するために奮闘しよう」
 スローガン:「創造新崗位・創造新業績・創造新生活」
 顧秀蓮、主席に
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