2017-06

中国婦女第10回全国代表大会(1)──規約改正

 10月28日から31日まで、中国婦女第10回全国代表大会が開催されました。中国婦女全国代表大会とは、中国共産党の指導の下にある女性団体である「中華全国婦女連合会」が、5年に1度開催する大会です。

 この大会では、主席が顧秀蓮さん(略歴)から陳至立さん(Wikipediaの記述)に交代するなどの変化がありました。2、3回に分けて報告しようと思います(児童労働問題の続きは、また後ほどいたします)。 

 この大会では、中華全国婦女連合会の規約[章程]が、かなり改正されました。改正されたのは、主に「総則」と第1章の「任務」の部分ですので、その2カ所がどのように改正されたかを以下で示してみます。赤字が新たに付け加わった文言です(1)


総則

 中華全国婦女連合会は、全国の各民族・各界の女性が、中国共産党の指導の下に、いっそうの解放を勝ち取るために団結した社会的大衆団体であり、党・政府と女性大衆とを結びつける橋梁・紐帯であり、国家政権の重要な社会的支柱である。

 中華全国婦女連合会は、憲法を根本的な活動規準とし、法律と「中華全国婦女連合会規約」に基づいて独立して自主的に活動する

 中国女性は、中国の特色を持った社会主義を建設する重要な力である。中華全国婦女連合会は、マルクスレーニン主義・毛沢東思想・小平理論と「三つの代表」という重要な思想を行動の指針にし、科学的発展観を深く貫き実行する。社会主義の初級段階においては、婦女連合会は、中国の特色ある社会主義の偉大な旗印を高く掲げ、党の基本理論・基本路線・基本綱領と基本的経験を堅持し、マルクス主義の女性観を堅持し発展させ、男女平等の基本国策を貫いて、広範な女性を団結させ、導いて、いくからゆとりのある[小康]社会を全面的に建設し、社会主義の物質文明・政治文明・物質文明を推進するうえで積極的な役割を発揮しなければならない社会主義の経済建設・政治建設・文化建設・社会建設・エコロジカルな[生態]文明建設において積極的な役割を発揮し、富強で民主的で文明的で調和がとれた社会主義の近代的な国家の建設のために奮闘しなければならない

 婦女連合会の基本的な職能は、女性の権益を代表・擁護し、男女平等を促進することである(この文自体は以前から存在したが、この文の前で改行することにより、新しい段落にした)

第1章 任務

 第1条 女性を団結させ、動員して、改革開放と社会主義近代化[現代化]建設に身を投じさせ、経済の発展と社会の全面的進歩を促進する科学的な発展を推進し、社会の調和を促進する

 第2条 広範な女性を教育し導いて、自尊・自信・自立・自強の精神を発揚し、総合的資質を向上させ、全面的発展を促進する。マルクス主義の女性観と男女平等の基本的国策を宣伝し、女性の全面的発展に有利な社会的環境をつくりだす

 第3条 女性を代表して、国家と社会の仕事[事務]の民主的決定[決策]・民主的管理・民主的監督に参与し、女性と子どもに関する法律・法規・規則[規章]と政策の制定に参与し、社会の管理と公共サービス[服務]に参与し、女性の人材を養成・推薦し、女性・児童の発展要綱の実施を促進し、女性と子どもの合法的権益を擁護する。

 第4条 女性の子どもの合法的権益を保護し、各レベルの国家機関に関連する意見と提案を出し、関係部門・単位に、女性と子どもの権益を侵害する行為を調査・処置することを要求し、助け、被害にあった女性と子どもを援助する。

 第4条第5条 女性の仕事と生活に関心をよせ、サービスのルートを広げ、サービスの陣地を建設し、公益事業を発展させ、ボランティアの隊伍を発展させて、女性・子どもと家庭のために服務する。社会の各界と連係して、社会の各界と協力して女性と子どものために具体的なこと[実事]を推進する。

 第5条第6条 各民族・各界の女性の大きな団結を強固にし、拡大する。香港特別行政区・マカオ特別行政区・台湾地区および華僑と海外の中国人の女性・女性組織との親睦[聯誼]を強め、祖国統一の大事業を促進する。世界各国の女性と女性組織との友好・交流を積極的に発展させて、理解・友誼・協力を促進し、世界平和を擁護する。


 以上からは、だいたい、以下のような点が言えると思います。
 1.今回の規約改正によっても、中華全国婦女連合会が、中国共産党の指導の下に、女性を国家目的のために動員する団体としての性格が強いこと自体は変わっていない。
 2.「科学的発展観」など、今日の政権のスローガンを取り入れている。
 3.以前の規約と比べれは、女性と子どもの権益や男女平等、婦女連合会の自主性が強調されている。

 3.の点に関しては、文言上はかなり大幅な改変となっており、1988年の第6回大会が、以下のような改正をおこなって以来の改正ではないかと思います。
 ・1988年の中国共産党第13回大会で提唱された「政治体制改革」の「職能をはっきり分ける」という要求により、「婦連の職能」を「女性の利益を代表・擁護し、男女平等を促進する」と明確に規定した。
 ・婦連の役割として、「総則」からは、「児童少年を養育・教育して健康に成長させる」ということを削除した。
 ・第3条として、「女性を代表して、社会の協商・対話に参加し、民主的管理・民主的監督に参与し、女性と子どもに関する法律・法規・条例の制定に参与する」という、ほぼ現行の第3条と同様の規定が設けられた。(2)

 ただし、今回の第10回大会での改正では、第2章以下(「第2章 組織制度」「第3章 全国組織」「第4章 地方組織」「第5章 基層組織」「第6章 団体会員」「第7章 婦女連合会の幹部」「第8章 経費と財産」「第9章 会のマークと会の旗」)は、ほとんど変わっていません。

 婦女連合会の経費が「主に政府の支出による」という文言(第35条)も変わっていませんので、女性の権益や男女平等を主張するための制度的・財政的な保障は明確でないように思います。けれど、婦女連合会が、規約上は、そうしたものを重視しだした背景には社会の変化があることは間違いないでしょう。

(1)これまでの規約は、「中華全国婦女聯合会章程(中国婦女第九次全国代表大会部分修改,2003年8月26日通過)」『中国婦女報』2003年8月27日、改正された規約は、「中華全国婦女聯合会章程(2008年10月31日中国婦女第十次全国代表大会通過)」『中国婦女報』2008年11月1日、改正された箇所についての説明は、「関于《中華全国婦女聯合会章程修正案》的説明」『中国婦女報』2008年11月1日参照。
(2)以上に関しては、「関于修改中華全国婦女聯合会章程的幾点説明(1988-09-01)」全国婦連HP、「中華全国婦女聯合会章程(1988年9月6日 中国婦女第六次全国代表大会通過)」(『中国婦女報』1988年9月7日)参照。第13回大会の「政治体制改革」は、翌年の天安門事件により後退しますが(その後、また部分的に進められる)、1980年代末以降、婦女連の政策決定への主体的参加が、若干ではあるが、活発化したことは、この規約と関係していると言えるように思います。
 なお、規約の歴史的変遷も、以下、ついでに大まかに見ておきます。
 1949年の第1回中国婦女全国大会で採択された規約は、以下のようなものでした。
 第1章 総綱
 第1条 本会の名称は、中華全国民主婦女連合会と定める。
 第2条 本会の主旨は、全国の各階層・各民族の女性大衆を団結させ、全国の人民とともに、帝国主義に徹底して反対し、封建主義と官僚資本主義を打ち倒し、統一した人民民主共和国のために奮闘し、また、女性に対する一切の封建的な伝統習俗を廃棄し、女性の権益と子どもの福利を保護し、積極的に女性を組織して各種の建設事業に参加させ、男女の平等、女性の解放を実現する。
 この時の規約は、「経費」についても、「本会の経費は募金、生産事業を興す、会員の会費徴収などの方法で集める(16条)」となっていました。
 1957年の第3回大会で採択された規約以降、「中国共産党の指導の下」という文言が入ります。第3回大会の規約では、会の名称は「中華人民共和国婦女連合会」と改められ、また,経費についての規定はなくなっています。
 1978年の第4回大会で採択された規約では、会の名称が「中華全国婦女連合会」と改められました。
 1988年の第6回大会で採択された規約から、経費についての規定も設けられ、現行の規約と共通する部分が大きくなります。
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