2017-06

セクハラをした社長を解雇した会社、元社長に敗訴

 本ブログの8月19日付記事でお伝えした、女性教師が校長のセクハラを訴えた裁判において、2月7日の一審判決に対して女性教師の側が控訴していた件ですが、9月26日に重慶市の中級人民法院(裁判所)での二審判決も、女性教師の側の敗訴でした。
 二審判決も一審判決と同様、(校長と女性教師との間の権力関係を無視して)女性教師のメールに明確な拒絶の表現がないことを根拠にしました。

 この事件を伝える『中国婦女報』の記事は、西南政法大学の民事法の専門家の侯国曜博士の言葉として「現在セクハラを裁判に訴えること少なくないが、勝訴はけっして多くない」という言葉を紹介し、その理由として、「立法のうえでセクハラの定義が明確にされていないこと」「証拠の収集が難しいこと」などを挙げています(1)
 
 同じ9月には、セクハラをした社長の契約を解除した会社が、その社長に訴えられた結果、裁判で敗れるという事件もありました。
 上海のある広告会社の社長(イギリス籍)が、2005年3月にアメリカの親会社の国際的グループがタイで開いた国際会議に出席した際、そのグループで働いていたシンガポールの女性労働者にセクシュアルハラスメントをしました。
 その女性労働者の訴えを受けて、その親会社と上海の子会社が調査し、この社長の労働契約を解除しました。
 しかし元社長は納得せず、労働仲裁に訴えたところ、元社長の訴えが認められました。そのため、会社は裁判に訴えました。

 9月8日の上海の静安区の人民法院の判決では、会社は敗訴しました。裁判所は、会社に対して元社長に4月以降の賃金を支払うことを命じました。
 その理由は、「会社は、元社長のセクハラ行為を裁判に訴えていない」「元社長と会社との労働契約では、重大な不良行為があった場合だけにしか契約を解除できないことになっており、それには当たらない」などというものでした。
 この判決に対しては、労働法の専門家から、「セクハラ行為をした本人が認めたならば、裁判所などの機関が認定しなくても、会社はセクハラを認定できる」「セクハラは容認できない重大な不良行為である。国際的な慣例ではとくにそうだ。会社の社長がセクハラをするなど、こうした国際的な会社にとっては大きく名誉を損なう」といった批判が出ています。

 また、元社長は「中国では現在まだセクハラに対する有効な立法がない。双方(元社長と会社)の契約では、セクハラは契約解除の理由に挙げられていない」とも主張していました。
 この点についても、ある弁護士からは「中国の現行の労働法にはセクハラのことは書かれていないけれども、憲法や婦女権益保障法などから見て、わが国の法律はセクハラ行為を明確に禁止している。女性差別撤廃条約も、企業は女性に安全な職場環境を提供するように規定している」という反論が出ています。

 女性の権利の問題に関心を持っているある人は、「この社長はわが国の法律の隙を突いているが、遺憾なことに一審の裁判所は、司法判断という形式によって彼の目的を実現させてしまった」と言っているそうです(2)

 私も、中国の法律のみならず、裁判所にもジェンダーバイアスを感じずにはいられません。

(1)「重慶女教師告短信性騒擾案二審敗訴」『中国婦女報』2006年9月28日。
(2)以上は、「総経理騒擾女員工被除名 上海首例性騒擾労動糾紛案用人単位一審敗訴 法院判決引発一片質疑」『中国婦女報』2006年9月12日。
関連記事

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://genchi.blog52.fc2.com/tb.php/21-be505d9a
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

プロフィール

遠山日出也

Author:遠山日出也
 検索から来られた方へ:このブログの記事を分類した一覧である「『中国女性・ジェンダーニュース+』記事総覧」を見ていただくか、下の「カテゴリー」欄を使われると、関連情報がご覧いただきやすいと思います。最近の行動派フェミニストについては、「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」をご覧ください。
 また、「中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。日本の問題の一部は、「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」や「館長雇止め・バックラッシュ裁判」でまとめています。
 恐れ入りますが、スパム対策などのため、コメントは私が拝見した後で表示させていただきます。
 私への連絡はこちらまで

最近の記事

月別アーカイブ

カテゴリー

最近のトラックバック

最近のコメント

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSフィード