2017-03

中国の児童労働(1)──凉山彝族自治州から東莞市に連れて来られた児童

 今年4月、『南方都市報』が、広東省東莞市の大規模な児童労働の実態を報道しました。東莞市の児童労働者は、13─15歳で、四川省南部の凉山彝(イ)族自治州から連れて来られ、1日に12~15時間働かされていました。残業の際の割増賃金も、社会保険・医療保障などの基本的福利もありませんでした。彼らは「賃金は故郷の家に送る」と言われて、仕事がない日は、1日に10元の生活費(家賃を引けば5元)しか与えられませんでした。

 彼らは粗末な借家におおぜいで住まわされていました。子どもたちが故郷に逃げ帰ろうとしても、交通費は与えられていません。工頭からも、「逃げようとすれば殺す」と脅かされていました。きれいな女の子は日常的に強姦もされていました(1)

 「賃金は故郷の家に送る」と言われていましたが、毎月の子どもたちの賃金は、せいぜい1/3しか家には送られていませんでした。何重にも搾取が行われていたからです。児童労働者→小工頭(小ボス。凉山で貧困な家庭から「高給」をエサに児童を捜し集める)→大工頭(大ボス。企業を紹介する、証明書を偽造する、児童労働者の秩序を維持するなど)→ヤミの仲介者(黒仲介。組織全体と工場の間を仲介する)→工場という形で四重に搾取されていました(2)

 東莞市のある場所には、毎朝、百名近い子どもが街頭に並んで、選ばれるのを待っていて、そこに、職業仲介人や経営者がやって来て、トラックやワゴン車でその子たちを連れて行くそうです。賃金が安く、何の福利の保障も必要ないので、工場主に歓迎されるとのことです。子どもたちは、玩具やアパレル、電子の工場に連れて行かれます。

 ある新聞記者が、工場の経営者を装って、大工頭に接近すると、彼は、工場で労働者が実際に働いているところを見せてくれました。ある音響機器の会社では、彼が手配した女の子100人あまりと、男の子90人あまりが働いていたそうですが、記者はそのうちの数十名に会ったところ、20名近くの女の子は16歳未満でした。男の子の中には、9歳未満の子どももいました。

 大工頭は「戸籍を偽造して年齢を18歳以上に偽れば、検査を逃れられる」と言います。また、工場が普通工の名簿と臨時工の名簿とを別々に用意しておいて、労働部門が検査に来たら、普通工の名簿だけを見せたりしていました。また、あらかじめめ労働部門の検査を知っていて、その時になると、子どもたちを外に出すということもおこなわれていました。

 その大工頭によると、東莞は、児童労働の一つの拠点であり、東莞を円の中心として、深圳・広州・恵州などの地にも子どもたちは送られるということです(3)

 故郷の家には、ふつう、最初に500元から1000元が前渡しされていたようです。しかし、子どもを誘拐して来た場合もあり、故郷の家には一銭も送られていない場合もありました。父母が子どもを売ることもありました(4)

 『南方都市報』の報道は全国的に注目され、警察や労働行政も動きました(5)

背景の一つとしての貧困

 この事件の背景の一つには、辺地の農村の極度の貧困があり、この点は多くの人に注目されました。人々が悲哀を感じたのは、次の話です。故郷のお母さんを訪ねた新聞記者が「あなたの子どもは可哀想に、2、3日に一度しか米の飯を食べられない」と言うと、お母さんは「なに、2、3日に一度、米の飯を食べらる」と言って、何秒か前には子どもが失踪して涙を流していたのが、驚きと喜びの表情に変わったということです(6)

 「都市の農村の二元的構造が引き起こした都市と農村の発展のアンバランス」が問題だという指摘もありました(7)

凉山彝族女性児童発展センターの取り組み――女児の職業訓練

 貧困対策だけでなく、子どもたちに法定年齢になるまでに必要な技術を身につけさせて、明朗なルートできちんと就職させることも必要です。たとえば、『南方都市報』の記事の中でも、凉山彝族女性児童発展センターが「特に貧困な家庭の女児の技能訓練と就労配属クラス」を作り、3~5カ月間、無料で訓練をして、彝族の女児を大都市の企業に合法的に就労させていることが紹介されています(8)

 その凉山彝族女性児童発展センターのサイトによると、このセンターが設立した「竹核女子技能訓練センター」では、Mercy Corpsの資金援助を受けて、15─18歳の女児にさまざまな職業訓練をしています。4カ月間の基本的な教養・知識訓練と4カ月間の職業技能訓練があります。基本的な教養・知識訓練では、漢民族の共通語や彝族の文字、基礎的な数学などを学びます。職業技能訓練では、ミシンや家事サービスなどの都市での就職に役立つ訓練や、手工芸や農業技術など、家で事業をするに役立つ訓練をしています。訓練の終了後は、センターが選んだ企業の職を世話をしたり、村で事業をする人には小口の融資をおこなったりします(「女子培訓学校」欄[とくに「女子培訓中心介紹」]、「凉山彝族婦女児童発展中心最新介紹」)。

 なお、凉山彝族女性児童発展センターについては、「ともこ」さんのブログ「週刊中国的生活」に、今年3月、「山の中のNGO活動 1」「山の中のNGO 2 フィールド篇」「ハンセン病患者への活動@四川省」に、このセンターを訪問なさった時のことが書かれています。

 もちろん中国の児童労働に関しては、他にも多くの要因が指摘されています。今後、見ていきたいと思います(続く)

(1)「餓得受不了才能吃頓米飯」『南方都市報』2008年4月28日
(2)「四環利益鏈搾幹童工」『南方都市報』2008年4月28日
(3)「凉山童工像白菜般在東莞売買」『南方都市報』2008年4月28日
(4)「走出大山 大批被“拐”珠三角」『南方都市報』2008年4月28日。王金玲主編『跨地域拐売或拐騙──華東五省流入地個案研究』(社会科学文献出版社 2007年)(人身売買の流入地でのケーススタディ)も、トラフィッキングの目的の一つして「安価な労働力」という類型を掲げている(p.34-37など)。
(5)「“童工”引発全国関注」『南方都市報』2008年4月30日
(6)「東方早報:両三天能吃到一頓米飯是“幸福生活”?」人民網2008年5月4日、「童工現象的深層原因在経済」『中国信息報』2008年5月8日。
(7)「消除貧窮才不会遭遇童工之痛」『中国婦女報』2008年4月29日
(8)(1)に同じ。
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