2017-08

オリンピックでの女性選手活躍の陰で

 北京オリンピックでも、中国は女性選手の活躍が目だちました。中国選手が獲得した100個のメダルのうち、58個(金27、銀11、銅20)が女性選手によるものでした。しかし、その陰には、次のような問題があることが中華全国婦女連合会の機関紙『中国婦女報』でも指摘されています。

男女の選手の収入の格差
 まず、男女の選手の収入の格差です。国家が統一して授与する賞金以外の、年俸や試合の賞金、出場料などは、男女の選手の差が大きい(1)。その象徴として指摘されているのが、中国の男子サッカー選手と女子サッカー選手の収入の格差です。中国の男子サッカーは、北京オリンピックでは1勝もできずに予選落ちしましたが、女子サッカーは決勝トーナメントに進出しました。しかし、選手の収入はといえば、男子サッカー選手は、たとえば、中国のサッカークラブの一つである中超クラブの選手の年俸は3~40万元あるのに、女子サッカー選手は、収入が最高である大連実徳クラブでも、一カ月5000元に満たない(すなわち年間でも6万元に満たない)とのことです。もっとも女子バレーボール選手は、男子バレーボール選手の3倍の収入があるのですが、そうした事例はほんの一部にすぎず、女子サッカーや女子ソフトボール、女子ホッケーなどは企業からの賛助もわずかだそうです(2)

プライバシーを暴露したり、セクシーさにばかり注目する報道
 女性選手のプライバシーを暴露するような報道を問題にしている人もいます。たとえば、あるトランポリンの選手が幼い恋愛で駆け落ちしたとか、女子選手と男子選手との恋愛とか……(3)
 また、女性選手の容貌やスタイル、とくにセクシーさばかりを描写するような報道が多いことを問題にした記事もあります。たとえば、板飛込みの郭晶晶選手は、金メダルを取ることよりも、「くっきりした、あか抜けた顔だち」とか「セクシーな表情」とか「身体の曲線」ばかりが騒がれたということです(4)。「視覚効果」を狙って、女子選手にスカートをはかせるような国際的な競技団体の姿勢も問題にされています(5)

メダルを取れなかった女性選手たちの将来を憂える声
 「国を挙げてメダルを取る」という中国の「挙国体制」は、女性選手の育成に効果を発揮しており、メダルを取ればその後の生活の見通しも明るくなります。その一方で、何のメダルも取れなかった選手の未来を憂える声もあります。かつては世界記録を持っていたこともある女子重量挙げのチャンピオン・鄒春蘭選手が、退役後に公衆浴場の垢擦り労働者にならざるをえなかったという事例もあります(このことは中国でも問題になりました)(6)

スポーツの大衆的普及、女性間格差
 中国は、国民的なスポーツの面では遅れているという指摘も出ています。2006年の統計によると、中国の1人当たりのスポーツ用地の広さは1.03㎡にすぎず、1995年に0.65㎡だったのに比べれば広がったとはいえ、「本当のスポーツ大国とは比較にならない」とのことです(日本は中国の10倍だそうです)(7)。ですから、大衆的なスポーツ建設に対しても「投資と制度的保障が必要だという声も出ています。
 女性間の格差も指摘されています。上海では、20歳以上の女性のうち、3人に1人がフィットネスクラブのカードを持っていて、退勤後にバレーやヨガ、新体操の練習をしているのに、その一方で、ブルーカラーの女性は毎日、生きるために必死だという現実もあります(8)

 以上のような問題の中には、特殊中国的な問題もありますが、日本の女性スポーツ(選手)の境遇と共通する点も少なくないと思います。

(1)「我們関注体育場上的性別利益」『中国婦女報』2008年8月14日。
(2)「同工同酬,是対女運動員的尊重」『中国婦女報』2008年8月14日。
(3)「奥運賽場上的両性話題──人民網与情会商室訪談録(上)」『中国婦女報』2008年8月27日。
(4)佟吉清「競技場不是性感的秀場」『中国婦女報』2008年8月11日。
(5)「奥運賽場上的両性話題──人民網与情会商室訪談録(中)」『中国婦女報』2008年8月28日。
(6)「奥運賽場上的両性話題──人民網与情会商室訪談録(下)」『中国婦女報』2008年8月29日。
(7)李泓水「我們該享受体育的快楽」『中国婦女報』2008年8月13日。
(8)(6)に同じ。
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