DVに対して初の人身安全保護裁定
8月6日、江蘇省無錫市の崇安区人民法院が、中国で初めて、DVに対して人身安全保護の民事裁定を下しました。
許某と陳さんは夫婦でしたが、夫の許某は、妻の陳さんに対して、平手打ちをしたり、こん棒で殴ったりするなどの暴力をふるっていました。ですから、陳さんは、崇安区人民法院に離婚を求める訴えを起こしました。
その翌日、裁判官は陳さんの両腕にあざがあるのを発見し、陳さんも、裁判官に傷の写真やカルテを示して助けを求めました。
そこで、崇安区人民法院は、離婚事件を審理するまえに、「許某が、陳某を殴ったり、脅したりすることを禁止する」という民事裁定を下しました。
この裁定は、今年3月に、最高人民法院の中国応用法学研究所が出した「DVにかかわる婚姻事件の審理の指針」(「渉及家庭暴力婚姻案件審理指南」。以下、「反DV指南」と略す)に基づいたものです。「指針」では、離婚訴訟を起こすことが暴力を激化させる可能性があることを考慮して、こうした裁定を下すように書かれていました。「反DV指南」は法律ではなく、司法解釈(最高人民法院が決めた法律の解釈)でもありません。だから、そうした法律的な効力はないのですが、裁判官にとっては事件を処理する参考になるものだということです。
「反DV指南」によると、裁判所は、15日を期限とする緊急保護、あるいは3〜6ヶ月の長期保護の裁定を下すことができ、裁定に違反した場合の制裁もすることができるとのことです。また、警察にも告知して、警戒させることができるということです。
「反DV指南」は、以下の点でも重要であると指摘されています。
・DVの類型として、精神的暴力や性暴力、経済的支配も挙げている(これまでの司法解釈では、身体的暴力だけを暴力だとしていた)。
・DVの立証責任の転換をおこなった(原告が被害の事実や傷害の結果などを証明すれば、被告側に立証責任が移動する)(以上は、(1))
「反DV指南」は、全国の9の基層(末端)の法院で試験的に実施されており、その経験が将来的には司法解釈の制定や修正にもつながる可能性があるそうです(2)。
中国では裁判所が保護命令を出せる根拠になるような法律がないことが問題だと指摘されています。上のような裁定は、保護命令に比べればとても不十分なものだと思いますが、長い目で見れば、保護命令への一里塚にもなるのではないでしょうか?
(1)「中国発出首個人身安全保護裁定反家庭暴力」『法制日報』2008年8月18日。
(2)「“反家暴指南”終結最親密傷害」『新女報』2008年6月24日。「渝中区法院正式啓動《渉及家庭暴力婚姻案件審理指南》試点工作」(2008-6-4)(重慶市渝中区人民政府サイト)には、全国の9の基層の法院の一つである重慶市渝中区法院で、この「反DV指南」を実施するための具体的な方策など制定していることが書かれています。
許某と陳さんは夫婦でしたが、夫の許某は、妻の陳さんに対して、平手打ちをしたり、こん棒で殴ったりするなどの暴力をふるっていました。ですから、陳さんは、崇安区人民法院に離婚を求める訴えを起こしました。
その翌日、裁判官は陳さんの両腕にあざがあるのを発見し、陳さんも、裁判官に傷の写真やカルテを示して助けを求めました。
そこで、崇安区人民法院は、離婚事件を審理するまえに、「許某が、陳某を殴ったり、脅したりすることを禁止する」という民事裁定を下しました。
この裁定は、今年3月に、最高人民法院の中国応用法学研究所が出した「DVにかかわる婚姻事件の審理の指針」(「渉及家庭暴力婚姻案件審理指南」。以下、「反DV指南」と略す)に基づいたものです。「指針」では、離婚訴訟を起こすことが暴力を激化させる可能性があることを考慮して、こうした裁定を下すように書かれていました。「反DV指南」は法律ではなく、司法解釈(最高人民法院が決めた法律の解釈)でもありません。だから、そうした法律的な効力はないのですが、裁判官にとっては事件を処理する参考になるものだということです。
「反DV指南」によると、裁判所は、15日を期限とする緊急保護、あるいは3〜6ヶ月の長期保護の裁定を下すことができ、裁定に違反した場合の制裁もすることができるとのことです。また、警察にも告知して、警戒させることができるということです。
「反DV指南」は、以下の点でも重要であると指摘されています。
・DVの類型として、精神的暴力や性暴力、経済的支配も挙げている(これまでの司法解釈では、身体的暴力だけを暴力だとしていた)。
・DVの立証責任の転換をおこなった(原告が被害の事実や傷害の結果などを証明すれば、被告側に立証責任が移動する)(以上は、(1))
「反DV指南」は、全国の9の基層(末端)の法院で試験的に実施されており、その経験が将来的には司法解釈の制定や修正にもつながる可能性があるそうです(2)。
中国では裁判所が保護命令を出せる根拠になるような法律がないことが問題だと指摘されています。上のような裁定は、保護命令に比べればとても不十分なものだと思いますが、長い目で見れば、保護命令への一里塚にもなるのではないでしょうか?
(1)「中国発出首個人身安全保護裁定反家庭暴力」『法制日報』2008年8月18日。
(2)「“反家暴指南”終結最親密傷害」『新女報』2008年6月24日。「渝中区法院正式啓動《渉及家庭暴力婚姻案件審理指南》試点工作」(2008-6-4)(重慶市渝中区人民政府サイト)には、全国の9の基層の法院の一つである重慶市渝中区法院で、この「反DV指南」を実施するための具体的な方策など制定していることが書かれています。
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