2017-07

「セクハラで初の刑事処罰」

 成都市のある会社の人事担当者の男が、新しく会社に入ってきた女性従業員に交際を申し込みましたが、断られました。すると、その男は、女性を抱き締めて、無理やりキスしようとしました。女性は大声で助けを呼んだため、隣の部屋の同僚が警察に通報し、その男は逮捕されました。今年6月、裁判所は、その男に対し、「人事を管理する権限を利用し、女性を侮辱した行為は刑事処分に値する」として、女性に対する強制わいせつの罪(刑法237条)で、拘留5ヶ月の判決を下しました。

 中国では、2005年に「婦女権益保障法」が改正された際、セクハラを禁止する規定が入りました。この事件について、多くの中国のメディアは、「国内で初めて『セクハラ』によって刑罰に処せられた事件である」と報じました。

 四川省婦連の法律顧問の江敏弁護士は、「この事件は、『セクハラ』は犯罪にならないと思っている人に対する警告である」と述べています(以上は(1))。

 ただし、判決の中には、「セクハラ(性騒擾)」という言葉はまったく出てきません。というのは、婦女権益保障法の中には「女性に対してセクハラをすることを禁止する」といった文言しかなく、これは、刑事処分の根拠になるようなものではないからだそうです。というか、民事でも、判決文の中にはまだ出てきていないかもしれません。

 また、警察や検察の中には、「男の行為は違法行為ではあるが、犯罪とはまではいえない」という意見もありました。けれど、女性が抵抗したため、男が女性の首を絞めた際に、喉に傷を負わせていて、悪質であるため、「一般の人が理解するセクハラを越えて、犯罪を構成する」から、検察が刑事責任を追及したという事情もあるようです(以上は(2))。

[2008年12月29日追記]
 この事件の報道に関しては、のちに明確に「典型的な誤報事件」であるという指摘がされています。その理由は、上の記事でも少し触れていますが、改正後の「婦女権益保障法」は確かに「セクハラ」を規定したけれども、同法の58条は、セクハラを治安事件あるいは民事事件として規定しているからです。この事件は、刑法に以前からある「女性に対する強制わいせつ罪」によって起訴され、処罰されたものであり、「セクハラ」や「婦女権益保障法」とは全く関係ないからです(12月29日付の本ブログの記事2008年「中国10大セックス/ジェンダー事件」参照)。私は、上の記事を書いた時点では、誤報であることを明確に指摘できなかったことをお詫びするとともに、今回、この記事のタイトルにカギカッコ(「」)を付けるという変更をしました。

(1)「国内首例性騒擾獲刑案成都判決」『中国婦女報』2008年7月16日。日本でも「中国:セクハラ裁判で有罪判決 法施行以来初めて」(『毎日新聞』2008年7月16日)と報じられています。
(2)「“首例性騒擾判刑案”曝盲区」『青年周末』2008年7月24日(「“首例性騒擾判刑案”曝盲区 判決書没提性騒擾」「社会性別与発展」サイトへ転載された同じ記事[リンク切れの場合に参照])。
*その他、『検察日報』もかなり詳しく報じています(「解読国内首例性騒擾獲刑案:界定盲区還需要多久」2008年7月16日)。
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