2017-05

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『中国の農村女性の状況調査』出版

 今年2月、甄硯主編『中国の農村女性の状況調査(中国農村婦女状況調査)』(社会科学文献出版社 2008年)(ネット書店「書虫」の「書虫データベース」のこの本のデータ)が出版されました。

 この本には、以下の1~3の3つの調査が収められています。いずれも、党の指導の下にある、中国唯一の全国的女性団体である中華全国婦女連合会(婦連)の下におこなわれた調査です。そのため、類似の調査と比べて、以下の特色があるように思います。
 ・いずれも大規模な調査である。
 ・一般の調査よりも明るい面が強調されている傾向が若干ある。また、直接、性差別について問うような質問は少ない。
 ・婦連の活動に関する調査が含まれている。下の1の調査に関しては、新農村建設、2の調査に関しては、西部大開発、3の調査に関しては、農民労働者支援をめぐる婦連の活動を改善する点にこれらの調査の大きな狙いがある。そのため、これらの調査報告には、婦連の活動などに対する提案も含まれている。

 調査の具体的な内容については、多すぎて書ききれませんが、以下、私がメモした中からいくつかの点を紹介してみます(ただし、婦連の活動に関する調査については、あまり書けていません)。

1.一万名の農村女性の新農村建設参与アンケート調査

 この調査は、2006年に、10の省(河北・吉林・江蘇・浙江・江西・河南・湖南・四川・雲南・甘粛)の村の女性に対しておこなった。東部・中部・西部の各地域をカバーしていることが特色である。

 「農作業は主に誰がしているか?」という問いに対しては、どの省でも、「夫婦で共同でしている」という回答が最も多く、全体の54.0%を占めている。ただし、「夫」という回答(14.0%)よりも、「自分(妻)」という回答(20.7%)のほうが多い。「自分(妻)」という回答は、とくに甘粛(32.4%)や四川(33.0%)で多く、男性が都市に出稼ぎに行っていることを示している。

 「家事は主に誰がしているか?」という問いに対しては、「自分(妻)」という回答が最も多く、49.2%である(「夫」は3.2%、「夫婦で共同」は40.4%)。この点に関しては、東・中・西部という経済発展の水準とは無関係だと指摘されている。ここからは、女性が、農作業も家事もやっているという状況が浮かび上がると思います。

 テレビの普及率は98.5%、洗濯機は74.1%、冷蔵庫は46.4%。テレビは、どの省でも97%を上回っている。しかし、洗濯機に関しては地域差が大きく、甘粛・湖南・吉林・江西の各省は60%程度しか普及していない。冷蔵庫は、甘粛・吉林で20%程度、雲南で30%程度、河南で37.6%、四川で44.7%しか普及していない。

 食事のための燃料は、柴(たきぎ)が47.1%、ガス23.5%、石炭21.6%、メタンガス6.2%。ガスが4割を越えているのは、浙江(49.0%)と江蘇(44.2%)だけである。

 家庭用水は、水道が54.8%、自家の井戸が39.3%、外で水を汲むが5.3%。水道は、江蘇(99.1%)、河北(92.5%)、浙江(87.0%)でよく普及している。外で水を汲む人が多いのは、甘粛(25.9%)、湖南(11.8%)。

 「現在の一番心配」は(多項選択)、「家族の病気」が62.7%、「子どもの教育費が高すぎる」が49.6%、「収入の保障がない」が41.3%、などとなっている。「出稼ぎに行ったことがある」人は、35.9%である。出稼ぎに行ったことがない人に、その理由を聞くと、「行きたいけれども、年寄りや子どもの世話をしなければならないので、行けない」が31.7%と最も多い。

 「農民のために政府に何をしてほしいか?」(多項選択)については、「農民も医療・養老保険に入れるようにする」が53.5%、「大学に合格した農村の子どもに、もっと学費の減免と優待政策をする」が42.0%、「農民のために、質が良くて安価な医療サービスをする」が38.6%。

2.西部の5000名の農村女性の発展状況アンケート調査

 この調査は、2007年に、西部(内蒙古・広西・重慶・四川・貴州・雲南・陝西・甘粛・青海・寧夏)の村でおこなわれた。

 調査対象者は26~46歳に集中しているが(79.8%)、平均就学年数は7年(4割あまりが小卒、5割弱が中卒、1割弱が高卒)。出稼ぎに行ったことのある人は、43.7%で東部よりも多い。

 一年の家庭の粗収入は12212.2元で、東部地区が23748.5元であるのと比べて、約半分である。女性の個人収入は1825.3元で、東部地区が5537.6元であるのに対して、非常に格差が大きい。また、67.6%の家庭には貯蓄がなく、57.7%の家庭に借金がある(原因は、家を建てた、子どもの進学、病気の治療など)。

 食事を作る燃料は、薪(43.8%)、石炭(22.7%)、ガスまたはメタンガス(18.2%)の順。水は、水道(60.7%)、自家の井戸(28.0%)、川や谷川の水を汲む(5.8%)の順。固定電話がある家は61.1%。

 98.2%の回答者が、家庭の経済状況に不満足である。経済状況が良くない原因は、「資金がない」「生産技術がない」「市場の情報がない」「家の中に病人がいる」「労働力が足りない」である。

 彼女たちが持ってる技術は、農作業(66.2%)中心。学んだのは、自学(55.0%)、家の中の年長者(46.9%)。生産における困難は、「資金がない」「生産技術がない」「良いアイデアがない」。

 ここには書ききれませんけれども、この調査には、とくに婦連の政策に関する質問が多いです。また、この調査の報告は、以上の調査結果をもとに、女性に対する資金の提供、科学技術・職業訓練についてさまざまな提案をしています。また、出稼ぎには行きにくい女性のために地元の産業を振興することなども提案しています。それらの提案は、みな、女性の要求の独自性に注目した提案ではあるのですが、男性と女性とのトータルな関係を変えるという意味での「ジェンダー」視点のある提案は乏しいように思います。

3.都市に行って働いている1千名の女性のアンケート調査

 この調査は、2006年に、北京・上海・南京・厦門・成都・石家荘・瀋陽・鄭州・紹興・東莞の10都市で、農村から来た女性労働者を対象におこなったものである。

 調査対象者の年齢は、30歳以下が63.2%である。学歴は、初級中学以上が48.7%で、高級中学以上も38%おり、小学校以下は13.4%だけであり、農村女性にしては高いと指摘されている。未婚が49.7%で、既婚が47.3%である。既婚の場合、78%は夫と一緒に生活している。

 職業は以下のとおり。
 ・54.8%がサービス業の従業員で、そのうち飲食サービス業の服務員が22%、酒場や旅館の服務員が13.6%、清掃労働者が12.1%、美容業の服務員が11.7%。
 ・23.6%が工場の労働者で、そのうち衣服の加工が34.5%で、玩具の加工が33.6%。
 ・野菜や果物を売ったり、小さな食堂をしたりなど、その他の職業の人が12.1%。
 ・会社の職員や管理者になっている人も、それぞれ8.4%、10.3%。

 月収は、800元程度が最も多く(500元以下が25.2%、501~700元が23.4%、701~900元が23.1%、901~1100元が13.2%、1100元以上が15.1%)、平均は926元(収入がない人と10000元以上の人を除いて計算)。配偶者の月収は1000元程度が最も多く、平均は1750元。

 出稼ぎの動機は、「家では金を稼げないから」(36.9%)、「個人の発展に有利だから」(26%)、「世間を知りたい」(24%)など。後二者の動機は、若い世代に多い。故郷に仕送りをしている人が52%(していない人も32%いるが、もともと一家で都市にいる人が17%)で、1年に2000元程度する人が最も多い。モノを故郷に送っている人は73%(カラーテレビ、携帯電話、冷蔵庫など)。

 毎日の労働時間は、8時間以下は35.2%、9~10時間が40.0%、11~12時間が15.1%、12時間以上が9.7%。しかし、法定の割増賃金をもらえているのは28%だけ。休暇は、月に4日が34.2%、2日が19.7%、1日もない人が17.5%、3日が8.2%、1日が7.8%。会社と労働契約をしているのは、48.2%にとどまる。

 何の社会保険にも入っていない人が49.1%。基本的医療保険に入っている人が22.3%、基本的養老保険(日本で言う年金)に入っている人が18.8%、失業保険は15.8%、労災保険は15.4%。出産保険は0.8%。産休中は基本賃金を下げられたり、無給の人が30.1%で、妊娠や出産で辞めさせられる人が21.0%。

 職場が食・住の面倒をみている人が56.2%で、特に工場の労働者の場合は75.1%に達する。その場合、2人か3人で同じ部屋に住むことが一般的だが、5人以上の場合も37.5%、10人以上が3.7%。

 余暇の過ごし方は、テレビを見る(72.8%)、睡眠(70.5%)、街をぶらつく(60.5%)、世間話をする(50.5%)、本や新聞・雑誌を読む(50.7%)である。「睡眠」が多いことに労働のきつさ、労働時間の長さが反映している。

 病気になった場合、「まず我慢する」が26.5%、「自分で薬を買って飲む」が36.9%、「診療を受ける」が36.6%(そのうち「正規の病院に行く」は24.8%)。医療費の問題が大きい。

 ただし、都市に来て自分の生活が「ずっと良くなった」という人が28.5%、「いくらか良くなった」という人が58.2%である。具体的には「知識・教養を学んだ」(44.4%)や「世間を知った」(42.4%)という精神的な面が多く、それに次いで、「金を稼げた」(38.2%)である(この点については、調査対象に30歳以下の若い人が多かったこととも関係があると推定されている)。また、自分を「幸福」、「わりあい幸福」と感じている人が50.2%で、「ふつう」が42.4%である。ここらへんは、故郷の農村の貧しさの反映という面もあるでしょうが。

 生活に対する(精神的な)圧力について尋ねると、「収入が少なく、保障がない」(62.5%)、「都市に家がなくて、気持ちが落ち着かない」(54.5%)、「学歴が低く、技術がない」(54.4%)、「仕事がきつすぎる」(50.2%)、「仕事が良くない、あるいは不安定」(49.8%)という答えが多い。「都市に家がなくて、気持ちが落ち着かない」という答えは、25歳以上で多い。

 一番心配していることは、「仕事が不安定」(77.3%)、「病気になる」(69.9%)、「賃金のピンはね、遅配欠配」(43.6%)、「子どもが正規の学校に入学できない」(38.3%)である。

 85.3%は婦連を訪問したことがない。ただし、訪ねたことのある人の中では、都市に行った後に訪ねた人が多い(9.2%)。政府への希望としては、「都市と農村の戸籍の区別をなくす」(85.3%)、「都市で仕事をする女性に職業訓練をする」(68.1%)、「都市に行って仕事をする者の権利の保護を助ける専門の機構を作る」(62.2%)、「都市に出て仕事をする女性を社会保険に入れるよう使用者を監督する」(61.3%)が多い。

 以上、農村女性がさまざまな困難を抱えていることや、同じ農村でも地区による格差が大きいこと、政府の農民に対する医療や教育、社会保障政策の問題点などがわかります。なお、この本には、出稼ぎ女性31名に対するインタビューも、60ページ近くにわたって収録されています。
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