2017-03

北京で初めて『陰道独白』が上演される

 この6月4日、北京の首都師範大学図書館学術報告ホールで『陰道独白』が上演されました。北京で初めての上演です(1)

 『陰道独白』は、もともとはアメリカの劇作家であるイヴ・エンスラー(Eve Ensler)が「ヴァギナ・モノローグ(The Vagina Monologues)」として書いたものです(邦訳は、岸本佐知子訳『ヴァギナ・モノローグ』白水社 2002年)。「女性への性暴力に対する告発と反抗であるだけでなく、女性の情欲の正視と肯定でもある新しい潮流」(栄維毅)という意味からも、中国でも注目されているようです(2)

 今回の北京での上演は、この演劇を見た多くの男性たちも皆泣き出すほどの感動を与えました(出演者は、男性1人を除いてみな女性)(3)

 この演劇が北京で上演されるまでは、紆余曲折がありました(4)

 中国大陸で初めて『陰道独白』が中国語で上演されたのは、2003年12月7日、家庭内暴力反対ネットワーク中山大学ジェンダー教育フォーラム(この2つのサイトから「陰道独白」で検索すると、多くの情報が出てきます)が共催して、広州美術館で上演したときです。監督は、中山大学教授の艾曉明さんでした。また、この上演は、単に英語を中国語に翻訳したのではなく、中山大学の演出グループの女子学生たちが、自らの経験に加えて、自分の母親や祖母、その他の女性を取材しておこなわれました(5)

 2004年の2月14日のバレンタインデーの前後には、専門の劇団が上海と北京でも『陰道独白』を上演しようとしました。しかし、この上演は禁止されました。このとき、艾曉明さんは「あたかも誰かが私の喉を絞めて、息をできなくさせたようだ」、「女性たちが自分の身体を語り、自分の経験を語り、自分の欲望と想像を伝える、その想像の権力が禁じられた」、「私は苦痛を感じた。私は女性が全体として差別され、自由に意志を表現し伝えることができないと感じた」、「多くの女性は、彼女たちが傷つけられ、セクハラされ、強姦され、暴力をふるわれても、意志を表現し伝えることができない」、「一つの作品の善し悪しは、誰もが批評することができる。しかし、ヴァギナのことを話すから上演を許可しないというのは、別問題である」と怒りました(6)

 ただし、同じ2004年の5月13日、上海で復旦大学の学生たちが、キャンパスの中で『陰道独白』を上演しました。復旦大学では、その後毎年『陰道独白』が上演されており、そのためのブログも設けられています(V-day在復旦)。内容も毎年そのつど異なっており、2006年からはレズビアンやセックスワーカーの視点も取り入れられています(7)
 (「V-day」とは、「女性が暴力と戦って勝つ」という理念のもとに、2月14日のバレンタインデーから3月8日の国際女性デーまでにおこなわれる各種の活動で、VはVictory、Valentine、Vaginaを表しています。国際的な運動ですが、拠点はアメリカにあります[V-Day Organization]。)

 また、2005年には、広西南寧華光女子中学の女子中学生(日本の中学生と高校生に当たる)も、劉光華校長の指導の下に上演し、広西の他の中学を巡回しました(8)

 今回の北京での上演は、大学の中での上演であり、より一般的な場で上演が可能なのかどうなかはわかりません。しかし、中国でも『陰道独白』の上演がさまざまな形で続けられていることは確かです。方剛さんは、『陰道独白』と同じように、『陰茎道白』を作成する構想を述べていましたが、そうしたことも大切だと思います。

(1)ただし、北京大学では、以前、北大劇社が『陰道独白』をもとにしつつも、それを大きく変えた『她*独白』という公演をしたことはあるようです(「北大劇社夏季公演《她*独白》」反対家庭暴力網|「我去看了北大的演出」V-day在復旦)。
(2)栄維毅「《陰道独白》与女性主義的理論和実践」『項目通訊』21期(反対家庭暴力網)
(3)荒林「終于在北京成功首演了《陰道独白》」両性視野サイト。出演者の感想もupされています(「健康与勇气:《陰道独白》在北京高校成功首演」両性視野)。
(4)明「情人節的礼物──美国経典名劇《陰道独白》介紹」女権在線サイト
(5)卜衛「戦勝暴力日(V-Day)与全球反対針対婦女和女孩的暴力運動」『項目通訊』21期(反対家庭暴力網)。
(6)「立法消除歧視 維護婦女権利 艾曉明教授2004年三八節前夕回答媒体採訪広東中山大学性別教育論壇網站」『項目通訊』21期(反対家庭暴力網)
(7)陳亜亜「関于復旦《陰道独白》我所知道的」女権在線サイト
(8)「成長:広西華光女中第20場《陰道独白》演出側記」「《陰道独白》広西高校巡演」(ともに反対家庭暴力網)。
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