2017-08

セクハラの司法解釈について民間で専門家が建議稿を発表

 2月29日、中国法学会「DV反対ネットワーク」中国社会科学院法学研究所「ジェンダーと法律研究センター」と「職場でのセクハラ反対課題グループ」が共催した「職場でのセクハラ反対の課題の成果発表会および司法解釈(1)研究討論会」が、「人民法院がセクハラ事件を審理する若干の規定」という司法解釈の専門家建議稿を発表しました。

 中国では、2001年に初めてセクハラ訴訟が起きました。また、2005年に婦女権益保障法が改正された際、セクハラ禁止規定が設けられました。

 しかし、セクハラ訴訟の数は多くなく、また、その半分以上は原告の敗訴に終わっています。それは、セクハラ訴訟には、「立件が難しい」「証拠を取るのが難しい」「賠償が難しい」などの問題があるからだといいます。建議稿を起草したメンバーの一員である薛寧蘭さん(中国社会科学院法学研究所研究員)は、「婦女権益保障法の規定は、原則しか述べておらず、使いにくいのです。多くのセクハラ事件の原告は、証拠が足りないために敗訴します」と言っています。

 ですから、この建議稿は、セクハラに対して境界線を定め、セクハラに対する民事賠償の範囲を明確にするとともに、その審理と執行の手続きに関しても、セクハラ事件の特殊性に符合した規定を設けたそうです。また、セクハラに対する使用者[用人単位]の義務と責任も規定しました。

 この建議稿を作成するにあたっては、2005年から2007年までの3年間にわたって、全国の女性の被害者やその同僚、親族、弁護士、裁判官などを訪問・取材したうえで検討を重ねたそうです。

 この建議稿は、一部の人民代表や政協委員にも渡されました(2)

 こうした提案が人民代表や政協委員の手に渡ったからといって、それがそのまま実現するわけでは全然ありません。けれども、長い目で見ると、きちんとした調査研究をおこなって提案を作成したということは、意義を持ってくると思います。

 つい先日の『中国婦女報』にも、ある女性がホテルのトイレで盗撮にあって110番したところ、警察もホテルもなかなか動こうとしなかったという話が書かれていました(3)。その紙面で、宋美婭さんは、セクハラという人権問題に対する警察やホテルの冷淡さを厳しく指摘するととに、「DVも以前は私事・家庭内のことであるとして警察も放置していたけれども、数年来の各方面の宣伝などによって、警察や検察、裁判所もDVを重視するようになった」と述べて、セクハラに関しても、法律業務に従事する人々が努力するように訴えていました(4)。上のような法律関係者の努力が実ることを期待したいと思います。

(1)木間正道・鈴木賢・高見沢磨『現代中国法入門[第3版]』(有斐閣 2003年)は、「司法解釈」について、以下のように述べています。
 「人民法院の裁判例には一般に法的拘束力はないが,最高人民法院が正式に公布した裁判例は下級法院が類似の事件を処理する際の参考に供されている。しかし,それよりも重要な法源としては,最高人民法院と最高人民検察院が発する[司法解釈]とよばれる文書である。下級の法院・検察院からの問い合わせ,照会[請示]に対する回答という形をとる[批復],[答復],[復函],[通知]などと,主要な制定法の細則を条文形式で体系的に示す[意見]とがある」(97頁)。
(2)「性騒擾司法解釈有了専家建議稿」『中国婦女報』2008年3月3日。なお、昨年の全国政治協商会議でも、中国社会科学雑誌社の哲学編集室主任の柯錦華委員が、セクハラの司法解釈について6つの面(1.基本原則、2.セクハラの定義、3.賠償責任、4.使用者の責任、5.審理の手続きと執行の手続き、6.証拠原則)から提案をおこなっています(「“性騒擾”応做六方面的司法解釈」『中国婦女報』2007年3月9日)。
(3)湯計・張麗娜「“遭到性騒擾還没地児説理了?”」『中国婦女報』2008年2月28日。
(4)宋美婭「事関人権,豈可冷淡」『中国婦女報』2008年2月28日。もちろんDVに関しても、中国では全国的なDV防止法がないなど、まだまだ課題はありますが。
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