2017-11

スポーツ用品産業労働者の搾取・虐待の解消めざす「プレイフェア2008」キャンペーン

 いま、北京オリンピックに向けて、「プレイフェア2008」キャンペーンがおこなわています。このキャンペーンは、オリンピックの「フェアプレイ」原則が働く現場にまで及ぶよう、オリンピックを陰で支えている世界のスポーツ用品産業で働く労働者の権利尊重を求めるものです(「プレイフェア2008」のサイト[日本語、英語、中国語])。このキャンペーは、クリーン・クローズ・キャンペーン(CCC)国際労働組合総連合(ITUC)国際繊維被服皮革労組同盟(ITGLWF)がコーディネイターになっておこなわれています。他にも、多くの労働団体やNGOがサポーターになっています(日本の「連合」もサポーターです)。

 私は、このキャンペーンのことを、先日送られてきた『CAWネットニュース』(CAWネットジャパン発行。CAW=アジア女性労働者委員会)23号の記事で知りました。その記事は、「スポーツウェア産業を実際に支えているのは、開発途上国の衣料労働者であり、その多くは女性であることを忘れるわけにはいけません。衣料労働者は、多国籍スポーツウェア会社を頂点として、途上国の製造業者、下請工場、孫受け工場、家内労働者に至るまで、数多くのサプライ・チェーンに組み込まれ、過酷な労働条件で働いています」と述べたうえで、クリーン・クローズ・キャンペーンの機関紙に掲載されていた“Beijing Olympics Here we come”CCCnewsletter 24,Oct 2007)という文章の翻訳を掲載したものでした(中村洋子訳)。

 その記事にも書かれていたことですが、この「プレイフェア2008」キャンペーンは、以下の組織が、労働者の権利を保障するためにそれぞれの役割を果たすよう求めています。
 1.国際オリンピック委員会(IOC)
 2.国内オリンピック委員会とオリンピック組織委員会
 3.スポーツウェアブランド
 4.スポーツウェア、スポーツシューズ、五輪ロゴ商品を供給する企業(サプライヤー)
 5.政府
 6.とくに中国政府
 7.投資家
(詳しくは、それぞれをクリックしてみてください)

 昨年6月には、この「プレイフェア2008」は、北京オリンピックのライセンス商品を供給している中国の工場で、労働者の権利が非常に侵害されていることを指摘した調査報告書(No medal for the Olympics on Labour Rights(英語版)|奥運労権零奨牌:奥林匹克標志生産工作環境調査報告(中国語版)[ともにPDFファイル])を発表しました。
 この調査報告書は、中国の4つの工場で、次のような実態があることを明らかにしています。
 ・最低賃金を下回る給与
 ・長時間労働、強制的残業
 ・不合理な罰金や賃金カット
 ・安全衛生上の問題
 ・労働契約がないこと
 ・法律で認められた産休の欠如
 ・社会保障がない
 ・労働組合がない
 ・児童労働
 ・査察のための検査官を欺くための偽の給与明細の作成
(4つの工場とは、いずれも広東省にある、東莞市の利奇文教用品有限公司、深圳市の裕栄昌軽工製品有限公司、東莞市の意高皮革製品有限公司、深圳市の飛達帽業控股有限公司です)

 この調査報告書に対して、北京オリンピック組織委員会と中国政府は、指摘された4つの工場のうち、3つの工場では時間外労働が横行していること、残りの1つの工場では児童労働の事実があったことを認める声明を出し、これらの企業との契約を停止ないし破棄すると述べました。

 「プレイフェア2008」は、北京オリンピック組織委員会と中国政府が調査報告書にもとづく対応をとったことは評価しました。しかし、「プレイフェア2008」は、企業との契約を破棄することは労働者をさらに窮地に追い込むだけであり、労働団体とも協力して労働条件を改善することこそが求められていると指摘しました。
 また、北京オリンピック組織委員会の声明は、しかるべき賃金が支払われていなかった労働者に対する保障や救済について触れておらず、この点に関しても「プレイフェア2008」は失望を表明しました。
 また、北京オリンピック組織委員会の声明は、企業の社会的責任(CSR)の問題に重点が置かれていて、労働者自身を中心にすえる視点がありませんでした。「プレイフェア2008」は「全世界のサプライチェーンにおける持続可能な改善は、労働者が自分たちの意思で選択した団体、すなわち自主的な労働組合を通じ、自由に自分たちの利益を代表することができるようになってはじめて達成できる」と指摘して、中国政府に結社の自由と団体交渉権を認めるよう求めました(以上は、「北京オリンピック組織委員会の声明に対する返答」より)。

 こうした問題に関しては、国際オリンピック委員会(IOC)のイニシアチブも必要なのですが、IOCもきちんとした対応をしませんでした。「プレイフェア2008」は、この点についても批判をしています(「『IOCはプレイの質を上げるべき』、Playfair2008」)。
 「プレイフェア2008」のサイトでは、IOCのロゲ会長に、オリンピック関連商品の生産をしている労働者の権利侵害に対して、IOCとしても責任を持って対処するように要望するメッセージを送ることができるようになっています(「フェアプレイをするようIOCに伝えよう!」)。私も送りました。

 なお、今号の『CAWネットニュース』には、「プレイフェア2008」についての記事だけでなく、CAWネットジャパンとワーキング・ウィメンズ・タマリバの女性たちが香港の家事労働者組合を訪問した記事や、「衣服をつくる女性たち ジェンダー・世界の衣料産業・女性たちの運動」という連載の[3]「女性たちの疲労と病気1 衣料労働者の健康に及ぼす性別役割の影響」という記事も掲載されていて、興味深いです。
 私は、多くの方にCAWネットジャパンにもご加入いただいて、こうした問題を知っていただいたり、解決する行動をしていただきたいと思います(CAWネットジャパンの紹介)。
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