香港のセックスワーカーのための組織「青鳥」と「午夜藍」がサイト設立
香港にあるセックスワーカーのための組織は、「紫藤」(1996年設立。ブログ)が有名ですが、昨年「青鳥」もサイトを設立しました(「青鳥」のサイト)。
「青鳥(Action for REACH OUT)」は1993年に設立され、香港だけでなく、中国大陸やタイ、フィリピンなど外国から来たセックスワーカーのサポートにも力を入れています(「関於青鳥」)。
「青鳥」については、すでに岡崎千佳さんが「セックスワーカーをサポート 『青鳥』」として『女たちの21世紀』41号(2005年冬号)で簡単にレポートしておられます。岡崎さんによると、「青鳥」は、もともとはヨーロッパから来た3人の女性によって設立された団体だとのことです。
「青鳥」はサービスセンターも持っていて、そこでさまざまな活動をしています。たとえば──
・電話相談
・転介服務(referral service)‥‥セックスワーカーに法律相談、健康診断、臨時シェルターなどの紹介。
・朋輩教育(peer education)……訓練を通じて、セックスワーカーの自己主張、組織化、エンパワメントを助ける。
もちろん、センターの外でも活動をおこなっています。
・外展服務(outreach service)……セックスワーカーの仕事の場に出向いて、健康のための教育や権益擁護のための活動をする。
・公衆教育……セックスワーカーに対する市民の理解を深めもらって、誤解や偏見をなくし、セックスワーカーに対する関心や支持を獲得する。
・提案‥‥政府の政策や法律について研究や弾劾、提案をする。長期的にはセックスワークの非犯罪化を目標にしている。
・研究‥‥セックスワーカーのニーズや状況を研究する。職業上の安全・健康、法律上の権益、差別、スティグマについてなど。
このサイトでは、ニュースレター『Reaching Out 展翅』を読むこともできます(「青鳥通訊―《展翅》」)。
また、「研究」のページでは、次の2つの研究報告を全文、読むことができます。
1.香港の女性セックスワーカーの職業上の安全についてのアンケート調査報告(『香港女性性工作者職業安全問巻調査(報告)』[PDFファイル。中国語]2007年6月)
この調査で取り上げられているのは、客がコンドームを使用しない、客が事後に代金の支払いを拒絶する、客の暴力(同意していない性行為の強要など)、仕事場で強盗にあう、警官や警官だと自称する者に恐喝や強要にあう、といった問題です。
こうした問題の多くについては、客などに責任があるのはもちろんです。しかし、それだけでなく、この調査報告は、たとえば、セックスワーカーがコンドームを持っていると、警察にセックスワーカーだと思われて逮捕されるというような状況があって、そのことが、ますますセックスワーカーを危険にさらしているということも指摘しています。
香港では、セックスワークをすること自体は一応合法なのです。けれども、たとえば街頭に立つセックスワーカーに対して、警察は「不道徳な目的で他人をそそのかした」という名目で逮捕したりします。また、警官は、おとり捜査をする時に無料でセックスサービスを受けたり、セックスワーカーのプライバシーを侵害したりすることもあります。
セックスワーカーが客や警官から上で述べたようなさまざまな被害にあっても、セックスワーカーはこうした警察には行きにくいし、社会的にも孤立しているために声を上げることは難しいのです。
とくに大陸から越境してきた女性の場合は、仕事をすること自体が「逗留条件」に違反していて違法であるために、被害にあってもとりわけ警察に行きにくかったり、警官の恐喝にも抵抗しにくいなど、とくに危険にさらされやすいです。フィリピンから来た女性の場合は、ダンサーとして入国するのですが、英語力が劣っている人がいたり、酒場でずっと長時間働いていて、労働時間以外は代理人が手配した住居に集まって住んでいるために、社会的に孤立しやすいということも書かれています。
2.香港警察のセックスワーカーに対する態度についての調査(『青鳥就香港警員對待性工作者態度之調査』中国語版│英語版[いずれもPDFファイル]2005年7月)
こちらの報告書は、とくに警官の問題に絞って、その無礼さや不合理な応対、不合理な逮捕、逮捕・拘留期間における権利の剥奪について詳しく報告しています。
もちろん、報告書の1、2ともに、セックスワーカーの状態を改善するためのさまざまな提言もなされています。
そのほか、「青鳥」のサイトには、「青鳥」のざまざまな対外的な声明や文書・文章も収録されています(「対外声明」、「文件及文章」)。
「午夜藍(Midnight Blue)」というのは、男性セックスワーカーのための組織です(「午夜藍」のサイト)。労働運動家やジェンダー研究者、医者などによって設立されました。
「午夜藍」は、「紫藤」の一つのワーキンググループが発展して、独立した組織です。2003年以降、香港では男性のセックスワーカーが増え、エイズの感染率も高くなったので、2005年初めに「紫藤」が男性セックスワーカーのためのグループを設立したということです。
活動としては、以下のようなことをやっています。
・外展工作(outreach work)……主体的にセックスワーカーに接触して、健康や法律の相談を受ける。
・組織工作(organization work)……組織化にむけた訓練、ニュースレターの作成。
・側試服務(HIV testing)……無料でHIV検査。
(以上は、[中国語|英語])
このサイトは、まだ工事中のところが多いですが、セックスワーカーにとって必要な健康や法律の知識が得られるようになっているようです(健康資訊|法律資訊)。
追記:先日このプログでもお願いしたつくばみらい市のDV防止講演中止事件に関する署名、2600名の方が署名なさって、本日、上野千鶴子さんが同市に提出なさったようです(ブログ「みどりの一期一会」の記事)。ご協力ありがとうございました。
「青鳥(Action for REACH OUT)」は1993年に設立され、香港だけでなく、中国大陸やタイ、フィリピンなど外国から来たセックスワーカーのサポートにも力を入れています(「関於青鳥」)。
「青鳥」については、すでに岡崎千佳さんが「セックスワーカーをサポート 『青鳥』」として『女たちの21世紀』41号(2005年冬号)で簡単にレポートしておられます。岡崎さんによると、「青鳥」は、もともとはヨーロッパから来た3人の女性によって設立された団体だとのことです。
「青鳥」はサービスセンターも持っていて、そこでさまざまな活動をしています。たとえば──
・電話相談
・転介服務(referral service)‥‥セックスワーカーに法律相談、健康診断、臨時シェルターなどの紹介。
・朋輩教育(peer education)……訓練を通じて、セックスワーカーの自己主張、組織化、エンパワメントを助ける。
もちろん、センターの外でも活動をおこなっています。
・外展服務(outreach service)……セックスワーカーの仕事の場に出向いて、健康のための教育や権益擁護のための活動をする。
・公衆教育……セックスワーカーに対する市民の理解を深めもらって、誤解や偏見をなくし、セックスワーカーに対する関心や支持を獲得する。
・提案‥‥政府の政策や法律について研究や弾劾、提案をする。長期的にはセックスワークの非犯罪化を目標にしている。
・研究‥‥セックスワーカーのニーズや状況を研究する。職業上の安全・健康、法律上の権益、差別、スティグマについてなど。
このサイトでは、ニュースレター『Reaching Out 展翅』を読むこともできます(「青鳥通訊―《展翅》」)。
また、「研究」のページでは、次の2つの研究報告を全文、読むことができます。
1.香港の女性セックスワーカーの職業上の安全についてのアンケート調査報告(『香港女性性工作者職業安全問巻調査(報告)』[PDFファイル。中国語]2007年6月)
この調査で取り上げられているのは、客がコンドームを使用しない、客が事後に代金の支払いを拒絶する、客の暴力(同意していない性行為の強要など)、仕事場で強盗にあう、警官や警官だと自称する者に恐喝や強要にあう、といった問題です。
こうした問題の多くについては、客などに責任があるのはもちろんです。しかし、それだけでなく、この調査報告は、たとえば、セックスワーカーがコンドームを持っていると、警察にセックスワーカーだと思われて逮捕されるというような状況があって、そのことが、ますますセックスワーカーを危険にさらしているということも指摘しています。
香港では、セックスワークをすること自体は一応合法なのです。けれども、たとえば街頭に立つセックスワーカーに対して、警察は「不道徳な目的で他人をそそのかした」という名目で逮捕したりします。また、警官は、おとり捜査をする時に無料でセックスサービスを受けたり、セックスワーカーのプライバシーを侵害したりすることもあります。
セックスワーカーが客や警官から上で述べたようなさまざまな被害にあっても、セックスワーカーはこうした警察には行きにくいし、社会的にも孤立しているために声を上げることは難しいのです。
とくに大陸から越境してきた女性の場合は、仕事をすること自体が「逗留条件」に違反していて違法であるために、被害にあってもとりわけ警察に行きにくかったり、警官の恐喝にも抵抗しにくいなど、とくに危険にさらされやすいです。フィリピンから来た女性の場合は、ダンサーとして入国するのですが、英語力が劣っている人がいたり、酒場でずっと長時間働いていて、労働時間以外は代理人が手配した住居に集まって住んでいるために、社会的に孤立しやすいということも書かれています。
2.香港警察のセックスワーカーに対する態度についての調査(『青鳥就香港警員對待性工作者態度之調査』中国語版│英語版[いずれもPDFファイル]2005年7月)
こちらの報告書は、とくに警官の問題に絞って、その無礼さや不合理な応対、不合理な逮捕、逮捕・拘留期間における権利の剥奪について詳しく報告しています。
もちろん、報告書の1、2ともに、セックスワーカーの状態を改善するためのさまざまな提言もなされています。
そのほか、「青鳥」のサイトには、「青鳥」のざまざまな対外的な声明や文書・文章も収録されています(「対外声明」、「文件及文章」)。
「午夜藍(Midnight Blue)」というのは、男性セックスワーカーのための組織です(「午夜藍」のサイト)。労働運動家やジェンダー研究者、医者などによって設立されました。
「午夜藍」は、「紫藤」の一つのワーキンググループが発展して、独立した組織です。2003年以降、香港では男性のセックスワーカーが増え、エイズの感染率も高くなったので、2005年初めに「紫藤」が男性セックスワーカーのためのグループを設立したということです。
活動としては、以下のようなことをやっています。
・外展工作(outreach work)……主体的にセックスワーカーに接触して、健康や法律の相談を受ける。
・組織工作(organization work)……組織化にむけた訓練、ニュースレターの作成。
・側試服務(HIV testing)……無料でHIV検査。
(以上は、[中国語|英語])
このサイトは、まだ工事中のところが多いですが、セックスワーカーにとって必要な健康や法律の知識が得られるようになっているようです(健康資訊|法律資訊)。
追記:先日このプログでもお願いしたつくばみらい市のDV防止講演中止事件に関する署名、2600名の方が署名なさって、本日、上野千鶴子さんが同市に提出なさったようです(ブログ「みどりの一期一会」の記事)。ご協力ありがとうございました。
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