2017-09

中国で派遣社員への強制転換ひろがる

百貨店が店員を強制的に派遣社員に転換。女性たち、裁判を起こす。(1)

 中国では、近年、全国の大型小売店やスーパーマーケットは、その店員をメーカーの派遣社員(「メーカー情報員(廠方信息員)」「ショッピングガイド(導購員)」などと称する)に強制的に転換させ、店との雇用関係を断ち切っています。それによって彼女たちの社会保険費の支払いを免れ、賃金の遅配欠配などにも責任を取らないようにするわけです。
 彼女たち派遣社員は、賃金は500~600元、それに数百元の奨励金をプラスしても、月収は1000元ほどです。ほとんど休日はなく、医療保険や養老保険などの福利待遇もないといいます。
 ある女性労働者は、「農民労働者(農民工)の権益は国家と全社会が重視するようになったけれど、私たち商業に従事している女性労働者の権益は、誰が守ってくれるの?」と言っています。

 たとえば、重慶百貨店株式会社の場合はこうです。
 重慶百貨店は、2001年、従業員を数名解雇しましたが、そのとき、彼女たちに要求されて賠償金を払わなければなりませんでした。こうした事態を避けようと重慶百貨店は、2002年から多くの店員に、メーカー(の派遣社員)へ転籍を強要しはじめました。彼女たちはメーカーの人など全然知りませんでしたし、転籍させられた後も、百貨店の指示によって売り場も、売る物も決められていました。

 2005年に重慶百貨店が食品部にスーパーマーケットを設立した際には、そこの店員はすべてメーカーと労働契約を結ばせて、派遣社員にしました。

 昨年(2007年)4月にも、多くの女性店員たちが、重慶百貨店に「あなたはここの人ではない」と言われて、メーカーの派遣社員であることを確認する書類にサインするよう強要されました。

 彼女たちはみな重慶百貨店で十数年働いてきました。そこで、女性労働者14名が、昨年12月21日、労働紛争仲裁委員会にそのことを訴えました。結ばされた労働契約にも、多くの法律・法規違反があったようです。署名が従業員の直筆でないこと、一つのメーカーとの契約期間が終了していないのに、別のメーカーとの契約していること、賃金が現地の最低賃金に達していないこと……。

 しかし、昨年12月25日の労働紛争仲裁委員会の判決は、「女性労働者と重慶百貨店が労働契約をしていた証拠がない」という理由で、原告敗訴でした。判決の後、重慶百貨店はメーカーにも圧力をかけて、彼女たちを雇い止めさせました。
 そこで、女性労働者らは、今年1月2日、裁判を起こしました。

 全国弁護士協会の労働法専門委員会秘書長の王傑さんは、「今年1月1日から施行された労働契約法は、臨時の仕事、補助的または代替的な仕事だけを派遣にできるとしており(66条)、店員は比較的安定した仕事なので、派遣にはできない。労働契約法の施行細則において、国家はもっと労働派遣に対して、きめ細かで厳格な制限をすべきだ」と言っています。

 王傑さんは、「現在、労務派遣を規制する法律の規定はきわめて少なく、基本的には立法上の空白点である」とも述べており、だから、今回の労働契約法では、次の3点を規定したのだと言います。
 1.労務派遣単位と派遣労働者は、2年以上の期限が規定された労働契約を結ばなければならない(58条)。
 2.派遣労働者は、使用者の単位の労働者と同一労働同一賃金を享受する(63条)。
 3.労務派遣は、一般に、臨時の仕事、補助的または代替的な仕事で実施する(66条)。
 王傑さんは、こうした規定ができた以上、「使用者が派遣労働者を使うことで見込める利益は以前より少なくなるから、労務派遣の市場の市場規模は縮小するだろう」と言っています。
 
 ただし、この労働契約法が施行される直前、むしろ企業は社員の派遣労働への転換をすすめました(重慶百貨店が2007年に店員を派遣社員にしたのも、その一つの例でしょう)。なぜなら、労働契約法には、不安定雇用の安定化につながる条項や解雇のための経費の増大につながる条項があるため、企業がそうした義務を回避しようとしたからです。そのことを、日本のメールマガジン「China Now!」が、以下のように報じています(この記事は、中国のサイト「民生観察」の記事を「China Now!」の編集委員会が翻訳なさったものです)。

中国の郵便局で労働契約法の施行を前に500人の労働者を派遣会社に強制転籍(2)

◆四川省の郵便局で「自主退職」を強要した大量雇い止め

 四川省凉山州郵便局で雇い止めにあった労働者500名の代表は何度もわれわれと連絡を取り、彼女たちの境遇を訴えてきた。本日、労働者代表から、完成したばかりの訴えが送られてきた。

 この労働者代表によると、2008年から新しい「労働契約法」が実施され、この法律によると、ひとつの事業所で10年以上働いている労働者は、雇用主に対して期間の定めのない雇用契約を要求することができる(14条:遠山注)。

 2007年11月、四川省の凉山郵便局の500名の臨時職員は期待に胸膨らませ2008年の到来を待ち望んでいた。しかし凉山郵便局は、派遣労働を実施するとして、彼女たちを派遣会社に転籍させ、雇用関係を解除し、500名の臨時職員の正社員への道を閉ざした。多数の人が派遣会社への転籍に仕方なく同意して、再び同じ職場に派遣されているが、あくまで派遣会社から郵便局への派遣であり、つねに解雇の危険にさらされている。

 500人の労働者の多くが10年以上の職歴をもっており、一番長い者で23年にもなる。新たに雇用契約をした場合、それまでの雇用年数と労働条件は考慮されなくなる(正社員化を要求する権利を喪失する:訳注)。再契約を拒否した少数の労働者も、わずかばかりの補償金のみで解雇された。解雇された労働者代表は、この間何度も陳情で問題を訴えてきたが、何ら成果がなかったと語っている。

 この労働者代表によると、四川省では凉山州郵便局以外でも同様の問題が発生しているという。

 「民生観察」は、これまでに湖北省武漢市の遠大製薬株式会社や中国銀行四川省支店などが、(社員7000人に「自主退職→再雇用」を強要した)華為公司にならって、「労働契約法」のしばりを回避しようとした事件を報道した。今回、四川省の郵便局で発生した労働者の権利を侵害する行為もまた、中国の企業が深圳の華為公司による7000人の「偽装解雇」を見習っている一例である。

 四川省の中国銀行のケースがメディアで報道された後、四川省労働庁は、その解雇は無効であるという判断を下したが、いままた四川省の郵便局で同様の事件が発生していることは、極めて遺憾であるといわざるを得ない。われわれは四川省政府と四川省郵政局が適切な措置をとり、多数の労働者の権利を守るよう訴える。

民生観察工作室
2007年12月14日

**********

◆四川省凉山州郵便局で解雇された500人の職員の訴え

 私たちは四川省凉山州郵便局で働く労働者です。私たちはそれぞれ3年~23年にわたって働いてきました。私たちは青春をこの仕事にささげてきました。昔180元だった賃金は今でも500元ほどにしかならず、年金、医療保険、住宅積立金、雇用保険にも加入させてもらえず、享受できるはずの権利も保障されておらず、祝日の休みもなく、人格的にも軽視され、さまざまな格差をつけて分断されています。

 わたしたちは、これまで何度も、同一労働同一賃金などが含まれる雇用契約を求めてきましたが、当局は私たちの要求を無視してきました。私たちは真面目に仕事をしており、真心込めてサービスを提供し、お客さんや局の管理者や同僚からも信頼されてきました。だからこそ、私たちは10年、20年と、この仕事に従事し、非常勤だからといって、あるいは待遇が不公平だからといって、郵便業務を投げ出したりすることもなく、青年から「おじさん」になるまで、少女から「おばさん」になるまで、郵便事業に最も貴重な青年時代をささげてきました。

 1994年、中華人民共和国労働法が公布され、1995年1月1日から労働者の権利と義務が明記された同法が施行されました。私たちはこの十数年の間、期間の定めのない雇用契約を結ぶよう要求してきましたが、まったく受け入れられませんでした。

 この労働法の定める権利と義務では、私たちは公平な待遇を受けてきませんでしたが、来年2008年から施行される新しい労働契約法は、私たちにわずかな希望を与えるものであり、まさに命綱のようでした。しかし、当局は今年9月中旬から、希望あふれる私たちの心に冷水を浴びせるようになりました。

 9月末から面接や試験が行われ始め、当局側に言いくるめられた職員が「請負契約」に同意し、11月には派遣会社に移籍させられてしまいました。これまでの職歴や待遇などに対する保障は一切なく、雇用が確保されただけでした。補償を要求したものは強制的に解雇されることから、凉山州郵便局の500人は、仕事がほしい一心で、派遣会社との雇用契約を選択し、補償を放棄しました。また解雇された人も訴えても勝つ見込みがないとのことから、ごくわずかの補償金を受け取って自らの権利を放棄してしまいました。

 これで勢いづいた当局は、たった何人かの臨時職員でなにができる、夢でも見てるんじゃないか、などと公言しています。私たちは、共産党17回大会での公約や新しい労働契約法が滞りなく実行されるのだろうかと不安を抱かずにはおられません。

 今年10月、私たちは凉山州郵便局人事部門に対して、私たちを平等に扱ってほしい、10年以上働いている労働者と期間の定めのない雇用契約を締結してほしい、という要求を出しました。しかし担当者は私たちの要求を拒否しました。

 10月末、私たちは別なルートで、期間の定めのない雇用の締結を申請しました。二日後、再び申請を拒否する回答が示されました。11月、当局は逆に、私たちが派遣会社(泰宇公司)と労務派遣契約を締結するよう要求してきました。この雇用契約を締結すれば、これまでと同じ部署で働くことができると言われました。これはおかしい、と思いました。それまでのところで働くのに、どうして郵便局とではなく、派遣会社と雇用契約を結ぶ必要があるのか、と。

 この雇用契約のどこに、本来有するべき平等な待遇や平等な権利、平等な福利厚生などが反映されているのでしょうか。いまのところ、わたしたち十数人が派遣会社との雇用契約にサインをしていません。昨日、当局は無理やり引継ぎを行おうとしました。私たちは今日も出勤しましたが、当局からはもう来なくてもいい、といわれました。

**********

 日本の労働者の状況と共通している点もたくさんありそうです。上の二つの記事は、ともにサービス業の女性労働者の話ですから(郵便局は女性だけではないですが)、ジェンダーとも関係があるかもしれません。

(1)「重慶百貨渉嫌“転派遣”違法用工」『法制日報』2007年12月23日(写真あり)、「重慶百貨渉嫌“転派遣”案:女工仲裁敗訴」『法制日報』2008年1月6日。なお、一応中華全国総工会も、労働契約法上の義務を回避するために、労働者をいったん辞めさせて新しい労務契約を結ばせるような行為には警告を発しているようです(「全総:堅決制止用人単位“勧辞”職工」『中国婦女報』2007年12月3日)。
(2)「China Now!」38号(2007年12月28日)より。「China Now!」のアドレスは、新ブログがhttp://chinanow.blog28.fc2.com/、旧サイトがhttp://www5f.biglobe.ne.jp/~chinanow/です。また、この記事の原文は、「四川郵政局効傚“華為”非法解聘大批員工」(民生観察2007/12/14)です。メールマガジンは、申し込めば送ってもらえます。
 ※なお、ニュースサイト「捜狐」も、労働契約法上の義務を回避するために雇い止めをおこなったり、派遣労働者を使用したりしている問題について、特集を組んでいます(「労務派遣“三岔口” 労働合同法之労働派遣専題」)。
関連記事

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://genchi.blog52.fc2.com/tb.php/147-5abe409f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

プロフィール

遠山日出也

Author:遠山日出也
 検索から来られた方へ:このブログの記事を分類した一覧である「『中国女性・ジェンダーニュース+』記事総覧」を見ていただくか、下の「カテゴリー」欄を使われると、関連情報がご覧いただきやすいと思います。最近の行動派フェミニストについては、「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」をご覧ください。
 また、「中国女性・ジェンダー関係リンク集」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。
 恐れ入りますが、スパム対策などのため、コメントは私が拝見した後で表示させていただきます。
 私への連絡はtooyama9011あっとまーくyahoo.co.jpまで。

最近の記事

月別アーカイブ

カテゴリー

最近のトラックバック

最近のコメント

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSフィード