2017-06

高齢女性(1)――高齢女性のかかえる問題

 2005年末の時点で、中国では65歳以上の高齢人口の割合が7.7%になり(1)(日本は20%を越えていますが)、中国も、しだいに高齢化社会になってきています。
 それにともなって、中国でも近年、高齢女性の問題が注目されるようになってきました。今回と次回の2回に分けて、この問題に関する最近の会議などをいくつか取り上げてみます。

一、「高齢保障とジェンダー平等シンポジウム」(清華大学。2006年10月)

 たとえば、2006年10月、清華大学で「高齢[老年]保障とジェンダー平等シンポジウム」がおこなわれています(2)

 このシンポジウムで、中国老齢協会副会長の閻青春さんは、現在の高齢人口のうち、女性は男性より464万人多いと述べています。これは、女性のほうが男性よりも平均寿命が長いからですが、長く生きることは、必ずしも健康で生きられることを意味しません。
 全国婦連女性研究所の研究員の劉伯紅さんは、(1)高齢者には女性が多い、(2)彼女たちが社会の周縁集団になりやすいという二つの理由から、「高齢者問題の核心と実質は、高齢女性の問題である」と述べました。
 中国老齢科学研究センター研究員の徐勤さんによると、都市の男性の高齢者で貧困状態ある人は6.3%にすぎないのに、女性の場合は23.4%であるといいます。農村でも、貧困な高齢者は、男性は17.1%に対し、女性は20.4%に達しているとのことです。

 清華大学老年学研究センター教授の裴曉梅さんは、高齢女性が貧困に陥る原因は、社会保障の欠乏または不足であると指摘しました。現行の高齢者保障は、男性高齢者の87.1%をカバーしているが、女性高齢者については、55.1%しかカバーしていません。
 この点について劉伯紅さんは、世界の多くの国々では社会保障は労働とリンクしているため、労働市場の男女不平等が社会保障にも反映するので、女性は、就労の機会が少なく、賃金水準が低く、非正規部門の労働や家事労働に従事していることも多いため、年金などについても不利であると指摘しました。
 その一方で、政府の労働・社会保険部(日本で言えば厚労省に当たる)の養老保険局局長の焦凱平さんは、先進国のように、遺族手当を社会保険システムに組み込むことを提案しました。

ニ、『中国女性発展報告』より

 高齢女性の置かれているこうした問題点を、王金玲主編『中国婦女発展報告 No.1(´95+10)』の「第11章 高齢[老年]女性」(執筆者:徐勤、伍小蘭、王莉莉)の中から見てみましょう。この章で言う「高齢[老年]女性」は、60歳以上の女性を指すとのことです(中国の「高齢者[老年人]権益基本法」の「高齢者」の定義も60歳以上)。

 この章では、中国の女性の平均寿命が1990年は70.47歳だったのが(男性は66.84歳)、2000年には73.33歳に伸びた(3)(男性は69.63歳)とか、教育程度や収入、生活条件が改善されたとかの明るい面も書かれていますが、現在の問題点としては以下のことが列挙されています(4)。以下、簡単に紹介します。

(一)経済
 1.収入源が単一で、水準が低い。男性高齢者は労働収入や年金がある人が多いが、女性高齢者は、家族の他のメンバーに養われている人が60%である(男性は27%)。
 2.社会保障の程度が低い。都市の高齢者で年金をもらっている人は、男性は85.6%だが、女性は57.7%である。平均月収は、女性高齢者の場合、都市では490元(男性の51.7%)、農村では124元(男性の68.3%)にとどまる。とくにリストラされた女性、障害のある女性、配偶者を失った女性、子どものいない女性は貧困に陥りやすい。
 3.消費水準が低い。都市では、高齢女性の一ヶ月の平均生活費は116.7元で、男性の66.7%、農村では39.3元で、男性の62.5%である。
(二)健康
 1.高齢男性より高齢女性は慢性病にかかっている人が多い
 2.高齢者のうちでも高い年齢の人の人数が、女性は男性よりずっと多く、そのため、高齢女性の日常の生活機能は、平均的に高齢男性より低い。2000年の調査では、都市の高齢者で日常生活活動能力(Activities of daily living; ADL)を喪失した人は、男性3.7%に対し、女性は6.7%で、男性の1.8倍である。農村では、男性6.9%に対し、女性は10.9%で、男性の1.5倍である。
 3.高齢女性の健康状況は悪いのに、持っている医療資源は少ない。公費医療を享受している人は、都市では、男性は72.9%だが、女性は49.8%。
 4.健康状況は悪いのに、高齢女性が医療支出は男性よりずっと少ない。都市では高齢女性の年間医療支出は494.0元で、男性の91%であり、農村ではわずか81元で、男性の61%にとどまる。
(三)社会的地位
 職業に就いている比率も少なく、党員や幹部である比率も、高齢男性より少ない。たとえば、高齢男性では、中共党員である比率が31.5%、民主党派の党員である比率が10%なのに対して、女性はそれぞれ8.0%と0.4%にすぎない。
(四)家庭的地位
 教育程度や就労率、経済的収入が低いため、青年・中年女性や高齢男性よりも地位が低い。
(五)合法的権益
 とくに農村女性や年金がない都市女性の場合、扶養、住宅、財産権、虐待・DV、婚姻の自由(再婚に対する子どもの反対)が問題になる。
(六)社会的適応性
 女性高齢者は、子どものころ教育を受ける機会が男性より少なかったうえ、高齢期になってから教育を受けることも男性に比べて少ない。そのため、詐欺の被害にあったりすることもある。
(七)余暇活動
 テレビと朝のトレーニングくらい。
(八)ケア
 女性の方が配偶者を亡くす率が高いので、配偶者に世話をしてもらえる率は、男性より女性の方が少ない(男性は、都市で75.4%、農村で60.7%であるのに対し、女性は、都市で35.6%、農村で28.7%にずきない)。また、社会的変化によって、伝統的な家族ケアは困難になりつつある。
(九)都市と農村の発展のアンバランス
 高齢女性のうち65.8%は農村に住んでいるが、農村には社会保障がほとんどない。また、農村の一部では高齢者世代の生活扶養については、下の世代に二の次にされている。また、都市では、仕事につきたくてもつけない人が多い。

三、全国婦連高齢者[老齢]工作会議(2006年11月)

 婦女連合会(婦連)も、そうした状況に対応をせざるをえません。
 
 昨年11月、全国婦連は高齢者[老齢]工作会議を開催しました(5)
 この会議で、全国婦連の副主席で、書記処第一書記、全国婦連高齢者[老齢]工作協調委員会主任の黄晴宜さんは、「高齢者女性工作は、婦連の工作の重要な内容である」と述べました。その理由の第一は、「わが国の高齢者人口の中の女性は男性より464万人多く、2049年にピークに達した時には、2645万人多くなり、そのうち50-70%は、80歳以上である」こと。第二は、「高齢者女性の多くは経済的に弱者の地位に置かれており、かなりの部分の人は収入がないか低すぎ、大多数はまだ養老保障制度の外に置かれている」ことだといいます。
 彼女は、各クラスの婦連に、(1)関連する法律や法規の制定に参与して高齢女性の利益を守ること、(2)高齢女性のための法律的援助やサービスを強化すること、(3)高齢女性の特徴にあった文化体育活動をすることなどを呼びかけました。

(つづく)

(1)「超1億,我人口急劇老年化 全国1%人口抽様調査統計結果還顕示,人口流動趨于理性化」『中国婦女報』2006年9月5日
(2)「老年婦女貧困問題亟待関注」『中国婦女報』2006年10月18日「譲老年婦女告別貧困」『中国婦女報』2006年11月27日
(3)先日のブログでも述べたように、2005年現在は74.1歳に伸びています。
(4)王金玲主編『中国婦女発展報告 No.1(´95+10)』(婦女発展藍皮書)(社会科学文献出版社 2006年)(ネット書店「書虫」データベースの中のこの本のデータ)409─416頁。
(5)「全国婦聯老齢工作会議挙行」『中国婦女報』2006年11月6日。全国婦連老齢工作会議は、これが2回目です。第1回全国婦連老齢工作会議は、1999年に開催された全国老齢工作委員会第1回会議を受けて、2000年1月に開催されています(同年3月には全国婦連から「老齢女性工作を強化することに関する意見」[「全国婦聯関于加強老齢婦女工作的意見」←ワードファイル]が出されています)。ですから、それ以来、6年ぶりの会議だったわけです。なお、黄晴宜さんの話はwebで読めます(「学習貫徹党的十六届六中全会精神認真做新形勢下老齢婦女工作」)
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