2017-05

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ジェンダー統計に関する初の全国会議

 今年の4月27日と28日、江西省南昌市で「全国ジェンダー統計研究討論会議」が開催されました(半年以上前の話で申し訳ありません)。
 これは、国務院女性児童工作委員会と国家統計局社会科技局、全国婦連女性研究所が共催したもので、ジェンダー統計をテーマにした中国初の全国会議です。国連人口基金とユニセフが資金援助をしました。

 この会議では、国務院女性児童工作委員会副主任で、全国婦連の党グループ書記・副主席・書記処第一書記の黄晴宜さんが「ジェンダー統計は、男女平等という基本的国策を貫徹し、二つの要綱(中国女性発展要綱と中国児童発展要綱)を実施する重要な基礎工作であり、重点的に性別ごとの指標を一歩一歩国家の統計制度に組み込んで、部門の統計と接続させ、さらに正確に二つの要綱の実施進展状況を反映させなければならない」と述べました。

 この会議では、全国婦連女性研究所、中国社会科学院人口と労働経済研究所、ユニセフなどの専門家が発言し、各地の統計関係者も、実際のやり方や経験について意見を交流したとのことです(1)

 こうした会議が開催された背景の一つには、中国政府が国連の女性差別撤廃委員会に提出した報告に対する、同委員会の最終コメント(2006年8月。このブログの記事)があるようです。
 その最終コメントにおいて、女性差別撤廃委員会は、中国政府の報告には、性と地域、民族別のデータが十分に含まれていないことや、そのことが女性差別撤廃条約を履行するうえで障害になっている可能性があることに懸念を表明し、その点を改めるよう勧告していたのです(2)
 実際、国務院女性児童工作委員会の常務副主任の蘇鳳傑さんは、この全国ジェンダー統計研究討論会議について、女性差別撤廃委員会の最終コメントを実行する一環として位置づけています(3)

 この会議では、日本の法政大学経済学部統計研究所の専門家も意見を述べたことが報じられていますが(1)、その専門家というのは、おそらく秦小[にんべんに栗]さんのことだと思います。

 秦さんは、今年2月に発行された『日本統計研究所報』(法政大学日本統計研究所)の35号(27-61頁)に「中国のジェンダー統計データの充実度と改善方向―関連統計調査・ジェンダー統計集・統計分析書の検討を通じて―」という論文を発表しておられます(4)
 この論文の構成は以下のとおりです。
1. はじめに
2. 中国の男女平等促進体制
 2.1 中国の男女平等促進体制
 2.2 中国の主なジェンダー問題と『中国婦女発展綱要(2000-2010)』
3. 中国のジェンダー統計資料の作成過程と現状
 3.1 中国のジェンダー統計資料集およびジェンダー統計分析書の作成過程
 3.2 中国のジェンダー統計資料の指標体系の現状
4. 調査票、報告様式に遡っての検討――労働(有償労働)分野を例に
 4.1 中国の労働統計体系の特徴と問題点
 4.2 各報告様式、調査票及び統計結果表の特徴と問題点
5. 中国のジェンダー統計の整備に向けての提案
 5.1 ジェンダー統計の内容に関する改善方向
 5.2 ジェンダー統計の内容の改善に必要とされる制度体系と各関連機構の役割分担

 秦さんは、1章の「はじめに」で「本論文の課題は、中国における男女平等促進体制と主なジェンダー問題を概観した上で、ECEと日本のジェンダー統計指標を基準にして、中国のジェンダー統計データの充実の度合いを検討し、改善方向を示すことである」と述べます。

 2章では、秦さんは、中国では「90年代から2000年代にかけて、教育、妊産婦の健康などについてのジェンダー問題は改善されてきた。しかし、意思決定についてはほとんど改善されておらず、出生性比、経済参加、社会保障などについての問題はむしろ悪化している」と述べます。
 そのような認識にもとづいて、秦さんは「『中国婦女発展綱要(2000-2010)』は、中国の主なジェンダー問題の多くに対応しているが、①人口性比、非正規労働、職業訓練に対応する目標の導入、②企業の管理層への女性の参加に関する目標の拡大、③目標数値の設などについては、まだ改善される余地がある」と指摘しています。

 3章で、いよいよ秦さんは、現時点で国家統計局が出版した最新のジェンダー統計資料である『中国性別統計資料(1990-1995)』とWomen and Men in China―Facts and Figure―(2004年版)=『中国社会中的女人和男人─事実和数据(2004)』(中国統計出版社 2004年)(ネット書店「書虫」のデータベースの中のこの本のデータ)などのジェンダー統計資料を詳細に検討し、その結果、以下のような知見を導き出します。
 ・分野分割の状況を見る限り、中国のジェンダー統計は比較的揃っているように見える。
 しかし、
 ・時系列の統計が少ない。その理由は主に、個人に関する性別統計の多くが、人口センサスなどの調査間隔の長い資料に依拠していることにある。
 ・性と他の属性をクロスした統計が少ない。
 ・分野ごとに見ると、①「人口構成・変化」の分野については、(秦さんが考える)最重要指標のデータが揃っている。②「世帯、家族、婚姻関係、出産力」「学習・教育」「健康・医療」「意思決定」の分野については、最重要指標と重要指標の一部が揃っている。③「経済活動」「生活時間・無償労働」「社会保障・福祉」「安全・犯罪・司法」については、最重要指標さえ揃っていない。

 秦さんは、「中国のジェンダー統計データについては、男女格差が拡大している労働分野のジェンダー統計に多くの弱点が存在する」と指摘します。
 そこで、秦さんは4章で、労働分野を例にして、調査票や報告様式に遡って検討します。そうしたところ、改善されつつはあるが、重要なジェンダー指標に関する内容が調査票や報告様式に組み入れられていないという問題を発見します。ここでも、非常に突っ込んだ分析がなされてています。

 最後の5章では、秦さんは、中国のジェンダー統計の内容について、改善の方向を示します。まず、労働分野を例にして、報告制度、調査、報告集・統計書のそれぞれについて改善すべき点を示し、次に、『中国性別統計資料(1990-1995)』のような総合的なジェンダー統計資料についても改善方向を提言します。さらに、そのために必要な制度体系と各関連機構の役割分担についても提言なさっています。

 全体として、秦さんの検討は緻密であり、秦さんの提言が今後の中国のジェンダー統計に生かされることを希望します。

(1)「全国性別統計研討会議在南昌召開」(国務院婦女児童工作委員会HP)
(2)「国務院婦児工委簡報2007年第9期」(国務院婦女児童工作委員会HP)
(3)なお、秦さんの第50回(2006年度)経済統計学会での報告要旨はwebでも読むことができます(「中国のジェンダー統計について――労働統計を中心に――」[PDFファイル])
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