2017-07

第1回全国十佳「時代男性」の選出

 『中国婦女報』(北京)、『現代女報』(大連)など、中国の女性紙9紙による、第1回全国十佳「時代(現代的な)男性」選出活動が、昨年の12月から今年8月までおこなわれました。

 この活動は、中国と国連人口基金による「第六周期ジェンダー平等プロジェクト」(2006年~)の一環でもあります。「第六周期ジェンダー平等プロジェクト」は、「リプロダクティブ・ヘルス」「ジェンダー平等」という理念とともに、「男性参与」という理念を重視しています。この場合の「男性参与」とは、リプロダクティブ・ヘルスや家族の養育、家事労働への全面的な参加を意味します(1)

 「時代男性」の選出基準は、以下の点でした。
 1.男女平等意識を持ち、女性を尊重し、思いやっていること。
 2.家庭責任を平等に分担し、家族の発展・調和に重要な貢献をしていること。
 3.自分の職業に立脚して、男女平等と女性の発展の事業を推進していること(2)

 これまで中国では、家族の介護も仕事も頑張っているような「良い嫁(妻)」を表彰することはよくおこなわれてきました。しかし、男性の家庭役割を表彰することは少なかった(一部の地方で、少しおこなわれたことがあるだけ)。
 そのせいでしょう、西安市民の李さんは「こうした活動はなかなかいい。女性を評価して選出することが多すぎ、男性を評価することは本当に少ない。忙しくても、家に帰ったらいつもどおり家事をするような男性を表彰したら、男性中心主義の人に刺激になるだろう」と語っています(3)

 女性/ジェンダー研究者の栄維毅さんは、上記の1.の「女性を思いやる」という基準については、自分だったら、この基準を「女性の言うことに耳を傾ける」と定義すると言います。なぜなら、「愛しているから仕事をさせない」という男性もいるからです。
 けれど、栄さんも、2.の「家庭責任を平等に分担する」という基準は「非常に正しい」と言います。また、3.の「自分の職業に立脚する」という基準については、単に「妻の身の回りの世話をしたり、きちんと子どもの世話をすれば、いい男だ」というような考え方と違って、現代的で良い基準だと述べます(4)

 各地でさまざま形で選出活動が繰り広げられた末、最終的に次の10人の男性を全国の「時代男性」に選出しました(5)

郎景和(北京協和医院産婦人科主任)
 産婦人科医療に尽くし、すぐれた業績。また、一人ひとりの患者を平等に尊重した。(6)
李建華(雲南省薬物依存防止研究所副所長)
 ジェンダー視点でエイズや性病、薬物依存の防止をおこなう(7)
李中華(空軍某試験飛行団副団長、空軍大佐)
 危険な試験飛行の仕事を長年やりつつ、家にいるときは妻を思いやり、家庭の仕事も分担する。妻も夫に尽くす(8)
馬李(徐州市家庭内暴力庇護センター主任)
 DV被害者に食や住まいを提供し、心理相談や法律援助もおこなう「徐州モデル」を作る(9)
施崋山(江西省貴渓市公安局流口派出所政治指導員)
 誘拐されて売り飛ばされた女性や子どもを、危険を顧みず全国各地で180人救出。
韓偉(大連韓偉企業集団理事長)
 「中国の鶏王」と呼ばれる農民企業家。妻の許淑芬(世界のアワビ王)とお互いに支え合って、養殖業で成功。
劉日(山西潞鉱業集団常村炭鉱副隊長)
 23年間、妻とも協力して、妻の父母を介護しつつ、仕事でも優秀な成績を収める。
李明舜(中華女子学院副院長)
 婦女権益保障法の改正や家庭内暴力防止法の建議稿を作成にジェンダー視点で取り組む。中国初のホワイトリボン運動の発起人にも(10)
田輝(宝鶏市疾病予防制圧センター伝染病予防治療課長)
 PKOでハイチに行った妻の李華が任務を遂行できるよう、家庭と子どもを支える。
傅勝龍(娄底大漢集団理事長・総裁)
 会社内で「調和[和諧]家庭」構築の活動をすすめる(十佳和睦家庭や模範夫、良い嫁の表彰など)。家庭でも妻や家族を思いやり、大切にする。

 ただ、彼らを紹介した文を読むかぎりの話ですが、以下の点が気になります。
 (1)従来の男女を逆にしたにとどまる感が強いものもある(李中華、劉日、田輝)。その中には、国家や軍事への貢献が強調されている例もある(李中華、田輝)。
 (2)(1)の点とも関連するが、家族単位の調和を強調する傾向がある。選出基準自体にも「家庭の調和」という言葉が掲げられてており、「調和家庭」の構築活動も表彰の対象になっている(傅勝龍)。この意味で、現在の婦連の活動の枠内にとどまっている面もある。
 (3)仕事関係の表彰でも、『中国婦女報』の記事を読んだだけでは、いまひとつ男女平等やジェンダーの観点がよくわからないものもある。

 しかし、いずれにせよ、全国規模で男性の家庭役割や男女平等への貢献を表彰したのは恐らく初めてのことであり、新しい動きだと言えると思います。

(1)「男性参与是主題 性別平等是目標」『中国婦女報』2007年2月14日。
(2)「誰是我們尋找的“時代男性” 全国9家女性報媒聯手挙辨評選活動,推動広大男性参与性別平等事業」『中国婦女報』2006年12月1日。
(3)「“時代男性”尋找活動進入中期」『中国婦女報』2007年1月16日。
(4)栄維毅「什麼是好男人」『中国婦女報』2007年2月16日。
(5)「中国首届十佳“時代男性”評選進入公示階段」『中国婦女報』2007年8月8日「中国首届十佳“時代男性”当選人物公示」『中国婦女報』2007年8月8日「“時代男性”感言:真情流露那一刻」『中国婦女報』2007年8月21日
(6)「郎景和:給治婦女是善良表達」『中国婦女報』2007年3月20日。
(7)「李建華:一家防艾工作者性別視角」『中国婦女報』2007年3月12日。
(8)「李中華:試飛譲我更愛妻子」『中国婦女報』2007年3月15日。
(9)「馬李:我的工作就是為了消除家暴」『中国婦女報』2007年3月7日。
(10)「李明舜:性別意識給了他“第三只眼”」『中国婦女報』2007年3月17日。
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