女性の同性愛者やバイセクシュアルに対するDV調査プロジェクトはじまる
今年9月から、「女性同性愛(バイセクシュアル)DV状況調査および反DVハンドブック作成」プロジェクトが始まりまりました。このプロジェクトのブログもできました(「女同(双)性恋者家暴調査」)。
このプロジェクトは、来年9月までに、北京・上海・成都・昆明などで女性同性愛者(バイセクシュアル)にDVについてのアンケート調査やインタビューをおこない、その報告を作成するとともに、レズビアンたちのための反DVハンドブックを作成するものです(「什麼是女同(双)性恋者家暴調査」)。
このプロジェクトを執行するのは、北京同語女性同性愛コミュニティ活動グループ(北京同語女同社区工作組)です(「同語」というのは、「同(性愛の)女」に音が通し、また「共同の言語」という意味もある)。ほかに、北京レズビアンサロンネットワーク(北京拉拉沙龍網絡)やLES+工作組、北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターも参加します。DV関係の人々も協力します(「項目領導及参与者」)
このプロジェクトは、「大多数の人はDVを『男性から女性への暴力』と定義しているために、同性愛のパートナーが受ける暴力と、異性婚においてレズビアンやバイセクシュアルが受ける暴力のような問題は忘れ去られている」と指摘します。
ここで言う、女性の同性愛者やバイセクシュアルに対するDVとは、以下の2つを指します。
1.女性どうしの親密な関係における暴力
このプロジェクトの人の友だちにも、以下のような事例があるとのことです。
・北京のある女性は、同性愛パートナーと別れようとして、住んでいる所に閉じ込められて、外と連絡が取れなかったため、窓を割って逃げるしかなかった。
・同性愛パートナーに殴られ、人身の自由を制限された。加害者は自傷行為をすることもあったが、被害者はDV反対組織に助けを求められなかった。
多くのレズビアンやバイセクシュアルは、自分がそうした性指向を持っていることを知られることを恐れているので、暴力をふるうパートナーから「おまえがレズビアン(バイセクシュアル)であることをばらすぞ」と脅されることもあるといいます。そして、そうされても、一般のDV電話相談は同性愛の問題に無理解なので、相談しにくいそうです。実際、「私はDV被害にあっている同性愛者だ」と言ってDV電話相談に相談しても、ソーシャルワーカーは、同性愛者の立場に立った回答をしてくれなかったとのことです。
2.異性婚においてレズビアンが受けるDV
多くのレズビアンによると、父母は、娘がレズビアンであることを知ると、罵ったり、侮辱したり、殴ったり、監禁したりして彼女たちを改造しようとするといいます。長い間、親と対峙していると心身が傷つき、その結果、自殺を試みる人もいるとのことです。また、夫から暴力を受ける人もいます。
たとえば――
・黒龍江省七河台市のある37歳のレズビアンは、女性どうしの親密な関係のために、家族に捨てられ、仕事もない。
・山東省のある農村のレズビアンは、結婚させられそうになって逃げようとした。けれど、無理やり結婚させられ、性関係を強要された。彼女は逃げようとしたが、夫や家族に殴られ、人身の自由を制限された。
・ある広東のレズビアンの医者は、自分はレズビアンであることを言って夫と離婚しようとしたら、夫に殴られた。夫は、彼女の職場にまで行って、脅したり罵ったりした。
以上のような状況に関しては中国では研究もなく、サポートもおこなわれていないので、このプロジェクトを開始するとのことです(以上は、「認真対待女同(双)性恋者遭受的家庭暴力――一個幾乎未被認識到的社会問題」)
すでに香港のレズビアン団体、香港女同盟会などは、2006年12月から2007年2月にかけて「同性パートナーDV研究アンケート調査」をおこないました(「香港女同盟会:『同性伴侶家庭暴力研究問巻調査』報告」)。
香港政府は「香港は同性婚を認めていないので、DV防止条例も同性間には適用されない」と言っているそうです。しかし、同性婚は認めていなくても、DV防止法が同性間にも適用される(ように改正した)国や地域はあります(ニュージーランド、オーストラリアなど。近隣でも、フィリピン、台湾)。
香港でのアンケート調査は、DVは同性パートナーの間にも存在しているのみならず、問題が深刻であることを明らかにしています(なお、この調査は、男性カップルについての調査も、3割程度含まれています)。たとえば――
・33%の人は、パートナーからDVを受けた経験がある。16%の人は「身体的暴力」「持続的な言語による辱め罵り」「精神的虐待」「行動の監視・コントロール」「性侵犯」をやった経験がある。
・女性カップルの場合だと、多いのは、「持続的な、言語による辱め罵り」「精神的虐待」「薬物による治療は必要でない身体的暴力」の順である(男性カップルだと、「友だちや家族に会ったり連絡したりすることを禁止する」「医者による治療必要な重大な身体的暴力」「同性愛者の活動への出席を禁止する」の順)。
・同性どうしの場合、体格の差が小さいせいか、20%の人は反撃している。
・同性パートナー間に独特のDVとして、「同性愛者(バイセクシュアル)であることをばらす」という脅迫や「同性愛者の活動に出席するのを禁止する」というものがある。
・世間には同性愛に対する偏見があるために、DVを受けても、74%の人は友だちや家族に訴えなかった。17%の人だけが親友に訴えた。DV電話相談に相談したのも、219人中、たった1人である。
彼女(かれ)らは、むしろ同性愛組織に電話したいが、そうした組織の大部分は会の住所もなく、専従もおらず、限界がある。
このプロジェクトを終了した後は、続いて、以下のようなことをやる計画のようです。
・各地のレズビアン(バイセクシュアル)コミュニティが、DV反対活動に取り組む。
・女性問題をテーマにした会議の時は、レズビアン(バイセクシュアル)も討論の議題にして、女性問題やDV問題の専門家にそうした問題を理解してもらう。
・テーマと関係した文化芸術活動(話劇など)をおこなう。
(「后続活動計劃」)。
たぶんDVの問題は、単純な意味での男性と女性の問題ではなく、(伊田広行さんの言葉を使えば)「カップル単位」的な考え方や制度の産物でもあるので、同性間でもこうした問題が起きるのでしょう。ただし、上の「2.異性婚においてレズビアンが受けるDV」は、男性の女性への暴力の場合が多いと思いますが……。
また、レズビアンの女性は、女性であることと同性愛者であることの二重の差別に苦しんでおられるということでしょう。
いずれにせよ、中国のレズビアンの人々は、こうした活動もすでに始めているということです。
[追記]
2009年7月、レズビアンのための反DVハンドブックが完成しました。→本ブログの記事「レズビアンのための反DVハンドブック刊行」参照。
このプロジェクトは、来年9月までに、北京・上海・成都・昆明などで女性同性愛者(バイセクシュアル)にDVについてのアンケート調査やインタビューをおこない、その報告を作成するとともに、レズビアンたちのための反DVハンドブックを作成するものです(「什麼是女同(双)性恋者家暴調査」)。
このプロジェクトを執行するのは、北京同語女性同性愛コミュニティ活動グループ(北京同語女同社区工作組)です(「同語」というのは、「同(性愛の)女」に音が通し、また「共同の言語」という意味もある)。ほかに、北京レズビアンサロンネットワーク(北京拉拉沙龍網絡)やLES+工作組、北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターも参加します。DV関係の人々も協力します(「項目領導及参与者」)
このプロジェクトは、「大多数の人はDVを『男性から女性への暴力』と定義しているために、同性愛のパートナーが受ける暴力と、異性婚においてレズビアンやバイセクシュアルが受ける暴力のような問題は忘れ去られている」と指摘します。
ここで言う、女性の同性愛者やバイセクシュアルに対するDVとは、以下の2つを指します。
1.女性どうしの親密な関係における暴力
このプロジェクトの人の友だちにも、以下のような事例があるとのことです。
・北京のある女性は、同性愛パートナーと別れようとして、住んでいる所に閉じ込められて、外と連絡が取れなかったため、窓を割って逃げるしかなかった。
・同性愛パートナーに殴られ、人身の自由を制限された。加害者は自傷行為をすることもあったが、被害者はDV反対組織に助けを求められなかった。
多くのレズビアンやバイセクシュアルは、自分がそうした性指向を持っていることを知られることを恐れているので、暴力をふるうパートナーから「おまえがレズビアン(バイセクシュアル)であることをばらすぞ」と脅されることもあるといいます。そして、そうされても、一般のDV電話相談は同性愛の問題に無理解なので、相談しにくいそうです。実際、「私はDV被害にあっている同性愛者だ」と言ってDV電話相談に相談しても、ソーシャルワーカーは、同性愛者の立場に立った回答をしてくれなかったとのことです。
2.異性婚においてレズビアンが受けるDV
多くのレズビアンによると、父母は、娘がレズビアンであることを知ると、罵ったり、侮辱したり、殴ったり、監禁したりして彼女たちを改造しようとするといいます。長い間、親と対峙していると心身が傷つき、その結果、自殺を試みる人もいるとのことです。また、夫から暴力を受ける人もいます。
たとえば――
・黒龍江省七河台市のある37歳のレズビアンは、女性どうしの親密な関係のために、家族に捨てられ、仕事もない。
・山東省のある農村のレズビアンは、結婚させられそうになって逃げようとした。けれど、無理やり結婚させられ、性関係を強要された。彼女は逃げようとしたが、夫や家族に殴られ、人身の自由を制限された。
・ある広東のレズビアンの医者は、自分はレズビアンであることを言って夫と離婚しようとしたら、夫に殴られた。夫は、彼女の職場にまで行って、脅したり罵ったりした。
以上のような状況に関しては中国では研究もなく、サポートもおこなわれていないので、このプロジェクトを開始するとのことです(以上は、「認真対待女同(双)性恋者遭受的家庭暴力――一個幾乎未被認識到的社会問題」)
すでに香港のレズビアン団体、香港女同盟会などは、2006年12月から2007年2月にかけて「同性パートナーDV研究アンケート調査」をおこないました(「香港女同盟会:『同性伴侶家庭暴力研究問巻調査』報告」)。
香港政府は「香港は同性婚を認めていないので、DV防止条例も同性間には適用されない」と言っているそうです。しかし、同性婚は認めていなくても、DV防止法が同性間にも適用される(ように改正した)国や地域はあります(ニュージーランド、オーストラリアなど。近隣でも、フィリピン、台湾)。
香港でのアンケート調査は、DVは同性パートナーの間にも存在しているのみならず、問題が深刻であることを明らかにしています(なお、この調査は、男性カップルについての調査も、3割程度含まれています)。たとえば――
・33%の人は、パートナーからDVを受けた経験がある。16%の人は「身体的暴力」「持続的な言語による辱め罵り」「精神的虐待」「行動の監視・コントロール」「性侵犯」をやった経験がある。
・女性カップルの場合だと、多いのは、「持続的な、言語による辱め罵り」「精神的虐待」「薬物による治療は必要でない身体的暴力」の順である(男性カップルだと、「友だちや家族に会ったり連絡したりすることを禁止する」「医者による治療必要な重大な身体的暴力」「同性愛者の活動への出席を禁止する」の順)。
・同性どうしの場合、体格の差が小さいせいか、20%の人は反撃している。
・同性パートナー間に独特のDVとして、「同性愛者(バイセクシュアル)であることをばらす」という脅迫や「同性愛者の活動に出席するのを禁止する」というものがある。
・世間には同性愛に対する偏見があるために、DVを受けても、74%の人は友だちや家族に訴えなかった。17%の人だけが親友に訴えた。DV電話相談に相談したのも、219人中、たった1人である。
彼女(かれ)らは、むしろ同性愛組織に電話したいが、そうした組織の大部分は会の住所もなく、専従もおらず、限界がある。
このプロジェクトを終了した後は、続いて、以下のようなことをやる計画のようです。
・各地のレズビアン(バイセクシュアル)コミュニティが、DV反対活動に取り組む。
・女性問題をテーマにした会議の時は、レズビアン(バイセクシュアル)も討論の議題にして、女性問題やDV問題の専門家にそうした問題を理解してもらう。
・テーマと関係した文化芸術活動(話劇など)をおこなう。
(「后続活動計劃」)。
たぶんDVの問題は、単純な意味での男性と女性の問題ではなく、(伊田広行さんの言葉を使えば)「カップル単位」的な考え方や制度の産物でもあるので、同性間でもこうした問題が起きるのでしょう。ただし、上の「2.異性婚においてレズビアンが受けるDV」は、男性の女性への暴力の場合が多いと思いますが……。
また、レズビアンの女性は、女性であることと同性愛者であることの二重の差別に苦しんでおられるということでしょう。
いずれにせよ、中国のレズビアンの人々は、こうした活動もすでに始めているということです。
[追記]
2009年7月、レズビアンのための反DVハンドブックが完成しました。→本ブログの記事「レズビアンのための反DVハンドブック刊行」参照。
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