2017-11

ウイグルの人権活動家・ラビア・カーディルさん大阪で講演

 先日私のブログで述べた、ウイグルの人権活動家のラビア・カーディルさんの大阪での講演会に、昨日、行ってきました。

 会場には、満員の50人以上の方が詰め掛けており、椅子が足りなくなるほどでした。
 ラビア・カーディルさんは、張りのある大きな声で話され、その講演はたいへん迫力のあるものでした。獄中ある子どもたちのことを語った際には、涙も流しておられました。
 以下、だいたいの内容を紹介しますが、メモに頼って書いたので、不正確な部分もあることをご了承ください。

 私の祖国の本来の名前は東トルキスタン。1949年にトルキスタンは、ソ連と中国に分割され、それ以来、私たちは50年以上、中国共産党の侵略の下で暮らしています。チベットとは地理的にも続いていますが、その運命も同じです。西トルキスタンはソ連が解体したときに独立しましたが、東トルキスタンは、まだ中国の一部です。
 私たちには、自分たちの歴史、言語、文化があります。中国とはつながりがありません。本来なら、自分たちの祖国や文化、言語を持てるはずです。

 中国が侵略してきたとき、現地の漢族は、軍人と軍人の家族だけで、人口全体の2%程度にすぎませんでしたが、「新疆ウイグル自治区」を立ち上げました。
 1954年に、まずウイグルの中の金持ちが、「西洋主義(?)」というレッテルを貼られて逮捕されました。1957年には、知識人や宗教家が「民族主義」というレッテルを貼られて逮捕されました。1966年と68年には、ウイグルで役職を持っている人が取り締まられました。

 自分の家庭に起こったことをお話しします。私はアルタイの商人の家庭で生まれ、幸せで平和な暮らしをしていました。しかし、だんだん平和な暮らしでなくなっていきました。
 まず、集中的に住んでいたウイグル人を分散させる政策が取られました。毎日のようにトラックが来て、近所の人をあちこちに連れて行くのです。私の家の前にもトラックが来ました。どこに行くのかや、何のために行くのかということも知らされませんでした。こうして私たちは、タクラマカン砂漠の中のアクスという町に移住させられました。
 当時私は13歳でしたが、教育の場も、近所の人も、故郷も失いました。

 その後いろいろありましたが、1978年以降、改革開放政策がはじまり、私は商売を始めました。中国共産党の侵略の結果、ウイグル人は、経済力も、教育も、独自の文化も、宗教的な価値観も奪われました。
 私の商売は成功し、中国の十大富豪の中の七番目にまでなりました。そこで、私はそのお金で学校を開き、奨学金も出して、ウイグル人の教育や文化のために努力しました。
 次に、私は政治の世界に入りました。自治区や全国の政治協商会議の委員になって、トウ小平や江沢民の前でも演説して、教育や経済、文化の面での民族の平等を訴えました。当時、私は、北京がウイグルの現地の状況を知らないことに問題があるのだと考えていたのです。

 しかし、ソ連が崩壊した時にウイグルの親戚の民族が次々に独立したことに危機感を抱いた中国は、そのころ、むしろ体制を厳しくしたのです。
 1997年にグルジャという町で、1万人を越す人がデモをしました。手に武器を持っていた人はおらず、平和的なデモでした。しかし、中国は軍隊で鎮圧しました。現場で407人の人が殺され、逮捕された人は6万人を越えました(デモに行った人の親戚や友人まで逮捕したのです)。行方不明の人は8000人を越えます。
 それからしばらく経って、トラックで引き回したうえでの、公開処刑がおこなわれました。
 当時、国際社会は何もしてくれませんでした。

 2003年には、ウイグル人が教育の場で、ウイグル語を使うことが禁止されました。
 2006(2000?)年からは、7-16歳の子どもたちが一年に数千人、内陸の方に連れて行かれて教育を受けさせられています。なぜ、自分たちが、自分の故郷で、自分たちの言語で教育をできないのでしょうか?
 1987年以降は、計画出産によって、人口が減らされました。その一方で、ウイグルには大量の漢人が移住しているのです。これは、民族を消滅させる政策です。

 2006年6月からは、ウイグル族の各家庭の娘を、内地に労働に行かせる政策が取られるようになりました。「就職させる」という名目なのですが、数百万人の漢人がこちらに来て就職しているのに、なぜなのでしょうか? はじめは「16歳から25歳までのきれいな娘」という条件でしたが、きれいな娘がいなくなったからでしょうか、最近は「きれいな」という条件を外しました。政府が発表した数字でも、1年間にカシュガルだけで24万人を行かせたそうです。娘を行かせないと取り締まられます。

 また、ウイグルでは核実験が45回以上おこなわれました。すぐ近くに人が住んでいる場所でするので、多くの人が死に、出生児の異常も多いです。政府の内部資料でも70万人の人が命を落としたということです。

 ウイグル自治区は、中国で唯一、政治犯を死刑に処している地区です。2004年9月14日に現地の政府のトップ・王楽泉が「2004年1-7月に、22の組織のメンバー55人を死刑にした」と言いました。
 最近は、私たちは「テロリスト」というレッテルを貼られるようになりました。

 私が逮捕されて6年間監獄にいました。2年間は真っ暗な部屋で過ごしました。当時は「民主はこの世の中に存在しない」と思ってきましたが、アムネスティをはじめとする国際組織の力で釈放されて、少し考えが変わりました。
 しかし、私が中国に残してきた5人の子どものうち、2人の子どもは9年の懲役、1人の子どもには7年の懲役に処せられました。他の子どもや孫も監視下に置かれています。
 オリンピックを控えて内情を知られるのを恐れるからか、今年5月から、ウイグル人のパスポートは強制的に回収され、国外に出さないようにされています。

 ウイグルは資源が豊富で、天然ガスや石油が出ます。しかし、わが祖国の資源は、剥奪されています。農民の土地も、内地から来た人に奪われています。

 私は訴え続けて、国際社会を動かします。
 日本になぜ来たか? 日本には親密感を抱いていますし、日本はアジアで唯一民主主義が進んだ国です。行政に圧力をかけてもらいたい。アジアにおける人権・民主のため、日本が先頭に立って何とかしてほしい。
 この21世紀は人権問題が重視される世紀です。アメリカ・ヨーロッパではかなり反対をおこなっている。皆さんを通じて、行政に圧力をかけてほしい。

 以上がラビア・カーディルさんの講演の大まかな内容ですが、グルジャでのデモと核実験については、水谷尚子『中国を追われたウイグル人』(文春新書 2007年)の第三章「イリ事件を語る」と第四章「シルクロードに散布された『死の灰』」に、それぞれ詳しく書かれています。

 また、若い女性が就労のために連れ出される問題については、世界ウイグル会議のサイト(日本語版が最近出来ました)に日本の各新聞の記事が紹介してあり、とくに朝日新聞と産経新聞に、以下のように詳しく書かれています。
 「カーディルさんの説明では、自治区政府は、06年から就職あっせんとして、ウイグル人の未婚女性を山東省などの都市に派遣し始めた。派遣先の縫製工場やナイトクラブなどでは外出が禁止され、月給は約束の4分の1しか払われない。今年7月には自治区内で、娘の返還を求める親らのデモがあったという。
 中国国内のウイグル人は約840万人。カーディルさんは、働きに出たウイグル女性と漢族男性の結婚が増える可能性も指摘し、『漢民族に同化させ、民族を消す手段。弾圧が一歩進んだ』と強く批判した。」(『朝日新聞』2007年11月9日)
 「昨年だけでも合計24万人の女性のウイグル女性が北京・天津・青島などの都市になかば強制的に移住させられ、苛酷で安価な工場労働などに就かされているという。ウイグル人口を減らし、漢民族の女性不足をおぎなう冷酷な政策の一環として、総計40万人のウイグル女性を移住させる計画だとされる。」(『産経新聞』2007年11月11日)。

 私は、日本は、欧米に比べて、こうした国内外の少数民族の人権のための運動も弱いように思います。
 上で簡単に紹介したラビアさんのお話からわかるように、これは、きわめて深刻な問題です。中国国内で少数民族の人権のための運動をすることは、今は不可能に近いのですから、国際世論などの力で圧力を掛けるしかないと思います。もちろん、日本の対外援助にも民衆の視点やジェンダーの視点だけでなく、こうした少数民族の視点も必要でしょう。

 昨日の講演会では、中国政府への抗議はがきなども配布され、さっそく私も書きましたが、今後ともこうした問題に関心を払うとともに、できることをやっていきたいと思います。

[追記]
 コメント欄でお知らせいただいた「東トルキスタンに平和と自由を…」のサイトに、東京講演の報告が掲載されています。大阪講演では話されなかったことや、私がきちんとメモできなかったことも書かれていますので、こちらもご覧ください。
 ウイグル女性の域外就労問題に関しても、このサイトが産経新聞の詳しい記事を紹介していらっしゃいます(「ウイグル女性の強制移住」)
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コメント

こんにちは。おじゃまします。
大阪講演の様子が詳しくレポートされておりとてもよかったです。

私は東トルキスタンの問題を広めようと思い、数人の仲間とHPを開設しております。今回のラビアさんの東京講演のレポートも載せています。
東トルキスタン問題は、日本ではまだマイナーですが、今回のラビアさん来日と世界ウイグル会議の日本サイト開設で、だんだんと盛り上がっていくのではないかと期待しております。
東トルキスタン問題はどちらかというと中国が嫌いな右寄りの人のほうが関心が高いのですが、遠山さんのようにジェンダー問題に取り組まれる方が、人権問題として取り上げてくださったことは、本当に嬉しく励まされる思いです。
これからも東トルキスタン問題について取り組んでいただけますようよろしくお願いします。

 貴サイトも拝見したこともありますが、粘り強く東トルキスタンの問題に取り組んでおられるご様子で、貴重なサイトだと思っていました。
 たしかに今までの日本では、一般レベルでは、むしろ「左寄り」の人がこうした問題に対する関心が足りなかったように思います(もちろん水谷尚子さんやアムネスティなどは、まったく「右寄り」ではないにもかかわらず、大きな役割を果たしておられるわけですが)。「日本自身が直接の加害者である問題を第一にすべきだ」という発想も、一つの視点としてはありうるでしょうし、日本と中国とは、良かれ悪しかれ関係が深いだけに、いろいろ難しい面もあるのかもしれません。水谷さんが今回出版された『中国を追われたウイグル人』の「おわりに」で触れておられるように、訴え方にも難しさがあるように思います。
 しかし、いずれにせよ、ウイグル(東トルキスタン)に関しては、まだ彼(彼女)らの訴え自体が知られていないわけですし、全世界的に支援を強めないといけない以上、日本の政府や世論が無関心であるという状況は変えていかなければならないと思います。私も、今後折に触れて取り組みたいと思います。
 中国女性に対する認識としても、少数民族の女性を「お飾り」や「添え物」扱いにするのではなく、少数民族の視点ゆえに見えてくる問題を大切にしたい思います。

お返事ありがとうございます。
本来人権問題に取り組むのに、右も左もないはずだと思っております。何を優先すべきか、どこを強調すべきかという違いが生じるのは仕方がないとは思いますが、こと東トルキスタン問題に関しては右の側のネット上の扇情的な行き過ぎと、左の側の言及の少なさとがあまりにも差がありすぎたように思います。
この問題が一般の人に広く知られるようになれば、メディアで取り上げるようになると思いますので、そのときに冷静に問題に取り組む状況になっていくものと期待しております。そのような状況をつくるためにも、私達も情報発信を続けていきたいと思います。
中国女性をはじめとした女性問題に取り組まれる遠山さんから見た、ウイグルなど少数民族問題についてのこれからの分析・論述を勉強させて頂きたいと思っております。よろしくお願い致します。

「何を優先すべきか、どこを強調すべきかという違いが生じるのは仕方がない」が、「本来人権問題に取り組むのに、右も左もないはずだ」という点、おっしゃるとおりだと思います。
 私も、雑誌にでも今回の講演のことを投書します(採用されたら、このブログでもご報告します)。
 なお、私は少数民族の女性のことは、ようやくこれから勉強しようと思っているところで、たぶん今後もspinelさんの勉強になるようなことはとても申せないと思いますが……。

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