2017-04

市婦連の主席のブログ

 河南省平頂山市の婦女連合会(婦連)の主席は、婦連の活動の中で思ったこと、感じたことをつづるブログを今年の2月から始めました(「主席博客」)。
 婦連の幹部がブログをやるのは異例です。ブログを開始した際のコメント欄にも「政治に携わる女性が公開のブログを設置するのは、勇気が必要だ」というコメントが寄せられました。

 このブログ主は、単に婦連の公式見解を述べるのではなく、婦連の主席として、男女平等のために何ができるかをまじめに考えています。
 たとえば、「婦女節(国際女性デー)」に関して、当日の婦連の活動について、「一つの儀式や、幾枚かの掲示板、一回の活動では問題を解決しきれない」と思っていろいろ悩んだり(「関于“三八”活動」)、商業活動で「婦女節」を「女人節」と言っているのを聞いて、「『婦女節』というのは、『三八国際労働婦女節』の略称のはずなのに、『女人節』と言うと、女っぽいニュアンスだ」と違和感を感じたりしています(「婦女節──女人節?」)。

 とくに興味深いのが、「ジェンダー理論訓練クラス(性別理論培訓班)」に参加したときの「訓練記録」です。こうした訓練クラスの記録は他にもありますが、私が見た中では、このブログの記録がいちばん詳細です。

 この訓練クラスがどういう経緯で開催されたのかはよくわかりませんが、市の婦連の幹部・執行委員、市の党委員会の教師、ジャーナリストなど50人が参加し、2006年11月24日から11月26日までおこなわれました。
 ファシリテイター(協作者)は、王雪萍、陳建華、董琳、喬香萍の各氏で、みな河南省婦女幹部学校の教員ですが、董琳さんは、河南社区教育中心(河南コミュニティ教育センター)というNGOの研修部の責任者でもあるようです。

 この訓練クラスは、講義形式ではなく、参加者が主体的に参与する形でおこなわれました。
 たとえば、24日の午後は、グループどうしで討論をしました(「性別理論培訓班(培訓記録)(二)」)。この日は、「指導者がよく言うセリフである」、「女性の資質[素質]を向上させることが、男女平等を実現するカギだ」ということについて、「同意」「反対」「中立」の3つのグループに分かれて討論しました。
 「同意」するグループは、人数が比較的少なく、かつ男性でした。「反対」するグループの人数が多く、このグループの人々は、「男女不平等を引き起こしている真の原因は社会の主導的地位にいる男性であり、けっして女性ではない」といった意見を出します。
 また、現実の政策についても討論がおこなわれました。たとえば、(改革開放以後)第二回目の農村の土地請負政策で「土地の請け負いは30年間変えない」と規定していることに対して、参加者からは「農民の土地に対する投資を刺激するためなので、広範な農民の利益を考えている」という声が出ます。それに対してファシリテイターは、「こうした政策では、農村の女性は離婚したら土地を失うので、暴力を振るわれても離婚できない」ということを説明しました。

 25日の午前中は、ジェンダーのメカニズムについての議論がなされます。ここでは、たとえば「伝統的なジェンダーの男性に対するマイナスの影響は何か」を話し合う中から、「ジェンダー平等を推進することは、男性を敵とするものではない」という認識を多くの人が獲得します(「性別理論培訓班(培訓記録)(三)」)。

 25日の午後には、婦連の活動や労働組合の女性労働者に対する活動について議論しています(「性別理論培訓班(培訓記録)(四)」)。
 ここでは、舅・姑に尽くし、夫や子ども助ける「良いお嫁さん(好媳婦)」を、婦連や労働組合が表彰していることが議論になりました。
 ファシリテイターは、「その基準は何だろうか?」とか、「女性の家庭役割を表彰しているのではないか?」と問いかけます。
 それに対して参加者は言います。「婦連は女性の創業や就労の援助もおこなっている」。また、「婦連は『力が思うにまかせず』、社会的な大きな環境の政策の影響を受けている。大衆組織は伝統的な男性統治の制約を受けていて、必ず党の中心的活動をめぐって活動しなければならず、いかんともしがたい時がある」、「党委員会や政府に婦連の活動を支持させようとすれば、必ず党委員会と政府の活動と符合した活動をしなければならず、そうして初めて認可される」という事情も語られました。
 それでもファシリテイターは言います。「双学双比(女性が基礎的教養を学び、科学技術を学び、発展を比べ、貢献を比べる活動)と五好家庭(尊老愛幼、男女平等、夫婦和睦、勤倹持家、鄰里団結‥筆者注:尊老愛幼、夫婦和睦、勤倹持家などの点で実際上は女性役割が強調される)の選出――この二つをすることは、一方で女性の社会的参与と社会的責任を重視しつつ、もう一方で女性の伝統的役割を強調することである。私たちがこのようにすることは、女性の人生の負担を重くしていないだろうか?」

 訓練の最後(26日午前)には、各人がジェンダー平等を推進するための行動計画を立てました(「性別理論培訓班(培訓記録)(五)」)。
 たとえば、婦連の主席は、次のような計画を立てました。
 (1)ジェンダー平等の理論および関連の講座を党の学校のカリキュラムに入れる。
 (2)女性の政治参加を推進する活動を強める。
 (3)講師団を組織して、ジェンダー理論を宣伝する。
 (4)女性の人権のための集まりをして、捨てられた女児や土地を失った女性、暴力を振るわれて自殺した女性の問題を通じて、伝統的なジェンダー規範を告発する。
 (5)「五好文明家庭」創建活動を改善し、男性の家事分担を宣伝したり、優れた母親だけでなく優れた父親も表彰したりする。
 (6)「男性解放サロン」の設立を助ける。
 それらに対して、みんなで議論します。たとえば(1)については、「党の学校は容易に受け入れないだろう」とか、「指導部に宣伝することが必要だ」「講師を養成することが必要だ」とか。

 また、個人として、「夫に家事を分担させる」などの計画を立てた人もいました。

 以上からわかるように、この訓練クラスは、抽象的なジェンダー論を勉強するようなものではなく、現実の政策や婦連の活動を検討し、変革することを狙いにしています。もちろん、こうした訓練クラスが可能なのは、さまざまな条件があるごく一部の婦連なのでしょうが‥‥。

 では、上で立てた計画は、その後どの程度実行できたのでしょうか?
 平頂山市の婦連のホームページで見るかぎり、具体的な婦連の活動はあまり変わっていないようです。相変わらず「良いお嫁さん(好媳婦)」のコンクールもやっています(「市“十佳好媳婦”評選活動掲曉」)。もちろん党からの制約もあるでしょうし、「十佳好媳婦」のサイト(専用のサイトまである。「2006鷹城“十佳好媳婦”評選」)を見ると、多くのマスコミも関わっているので、そうした問題もあるのかもしれません。
 けれど、婦連のホームページに「ジェンダー理論」と「男性解放サロン」という2つのコーナーが設置された点は、変化です。これらのコーナーは、内容的には、既成の議論の紹介が主ですが(たとえば方剛さんの本からの抜粋)、こうしたコーナーは、他の婦連のホームページにはほとんど見られないものです。
 また、婦連の主席が今年2月からこうしたブログを始めたのも、もしかすると、この訓練の影響かもしれません。 
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