2017-11

国連の女性差別撤廃委員会、中国政府に最終コメント

 8月7日から25日まで、国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)の36回会期が開催されていましたが、その最終日の25日、女性差別撤廃委員会は、中国政府の第5次、第6次レポートに対して以下の最終コメント(勧告など)を出しました。

 ご存じの方も多いと思いますが、女性差別撤廃条約を批准した国は、条約の遂行状況を国連に定期的に報告しなければなりません。その報告に対して、どの国に対してもコメントが出されるわけです。
 日本に対しては2003年に出された最終コメントが、コース別雇用が男女差別の隠れみのになっていることや、一般職やパート・派遣などの賃金が低いところで女性が多く働いていることを問題として指摘し、是正を勧告したことは記憶に新しいと思います(詳しくは、日本女性差別撤廃条約NGOネットワークのHPの「第29会期女性差別撤廃委員会に関する活動(2002年~2004年)」の欄を参照してください)。

 今回の中国に対する最終コメントの全文は、ここをクリックしてください(pdfファイル。英語)。[追記]中国語版もupされました(うまく開けないときは、36回会期のページから開いてください)。前回の1999年の中国政府に対する最終コメントは、CEDAWのHPでは英語版しか掲載されていなかったのですが、今回は違うようです)。

 以下では、今回どういう点が問題にされたのか、大体の内容を紹介します(見出しは私が付けたものです)。ただし省略している部分がかなりありますし、翻訳も粗いものです。何かに使われる場合は、ナンバリングをもとにして直接原文に当たられるようお願いいたします(2011年6月28日、省略した部分を減らすとともに、翻訳を少し改善しましたが、なお省略している個所は残っています)。

肯定的側面

 5.女性差別撤廃委員会(以下、「委員会」と略す)は、2005年の婦女権益保障法改正、2001年の婚姻法改正(家庭内暴力禁止規定導入など含む)、2002年の農村土地請負法(結婚して家を出たり、離婚した女性の土地の割当ての規定など含む)の公布、2006年の義務教育法改正、中国女性発展要綱(2001-2010年)を歓迎する。
 6.(香港について)
 7.(マカオについて)

主要な関心事項と勧告([ ]内の見出しは、遠山による)

[女性差別の定義]
 9.委員会は、中国の国内法には、女性差別撤廃条約の第1条と合致した、直接差別と間接差別の両方を含む「女性に対する差別」の定義がまだ含まれていないことを引き続き懸念する。この点については既に前回の最終コメントでも述べたにもかかわらず、そうした定義は、2005年に改正された婦女権益保障法にも含まれていない。
 10.委員会は、上の点を改めるよう繰り返し勧告する。

[女性の権利の法的保障、女性差別撤廃条約の国内での活用]
 11.委員会は、中国政府が女性と子どもの権利の保護のための特別の法廷を設立したことを歓迎する一方、効果的な法的救済の規定がないために、女性が差別を受けた場合に司法へのアクセスが依然として限られていること―とくに農村では―を懸念をもって留意する。また、裁判所で女性差別撤廃条約がまだ活用されたことがないように思われることを留意する。
 12.委員会は、女性差別撤廃条約や一般的勧告や関連する国内法を、法学教育と司法職員(裁判官、弁護士、検察官を含む)の訓練の必修事項にするよう保障することを奨励する。委員会は、締約国に、女性が効果的な法的救済を受けられやすくし、また、そうした差別に対する救済策を女性自身が使えるように、意識を向上させ、敏感になる措置を取るように求める。

[統計]
 13.委員会は、中国政府の報告には、性と地域、民族別のデータ、女性の状況と男性の状況を比較したデータが十分に含まれておらず、そのため、条約がカバーするすべての領域と時代的変化という面で、女性の現在の状況を理解することができなくなっていることを懸念する。委員会は、さらに、そのような詳細なデータが欠けていたり、限られていたりすることによって、締約国自体が、政策や計画を設計・実施する上や、条約を広大な国土全体で執行した効果を監視する上でも障害になることを懸念する。
 14.上の点を改めるよう勧告する。

[経済の成長・改革と男女の格差の拡大]
 15.委員会は、中国が近年経済成長を達成して貧困率を減少させたことは評価するが、その利益配分は都市と農村で不均等であり、女性は男性より利益を得ていないことを懸念する。また、経済の再構成やサービスの脱中央集権化がジェンダー特定的な結果をもたらしていること、とくに女性の雇用や健康、教育に影響していることを懸念する。
 16.委員会は、中国政府が、経済の成長と変化が女性に与える影響の測定を強化し、社会的支出(social spending)の増額を含めた方策をとって、経済成長や貧困率の減少から女性が男性と同等に利益を得られるようにするよう勧告する。経済の再構築が女性、とくに農村や辺境に住んでいる人々や少数民族にマイナスの結果を与えない方策をとるように勧める。

[男女の役割のステレオタイプ]
 17.委員会は、家族と社会における男女の役割と責任に関するステレオタイプが根強く存続していることを懸念する。それは、性別の不均衡や性別に基づく中絶をもたらす男児選好に反映している。委員会は、そうした広く行き渡っている態度が女性の価値を下げ、彼女たちの人権を侵害し続けていることを懸念する。
 18.委員会は、中国政府が条約の第2条(f)と第5条(a)にもとづいて、社会における男女の役割に関する伝統的なステレオタイプを克服する包括的なアプローチを取るように求める。そうしたアプローチは、法的・政策的および意識向上の方法を含んで行われなければならず、公的機関と市民社会を包括し、全住民、とくに男性と少年たちをターゲットにしなければならない。それは、テレビやラジオ、出版物を含むさまざまなメディアを活用しておこなわれなければならない。委員会は、中国政府に、2000年以来おこなっているカリキュラムや教科書の改革をジェンダーに敏感な視点で評価し、女と男の平等の原則を明確に述べることを保証するよう求める。

[人身取引、売春]
 19.委員会は、中国政府が、地域間協力や国際的な協力を含めて、女性と子どものトラフィッキングに取り組んでいることを認めるけれども、「刑法」における女性と子どものトラフィッキングの定義が、売春による搾取を目的にしたものに限定されており、国際的な定義と一致していないことを懸念する。また売春を犯罪化し続けていることは、ひもやトラフィッカーの起訴と処罰よりも、むしろ売春する者に不釣り合いに打撃を与えることに懸念を表明する。また売春する者が法的な手続きなしに行政的に拘留される危険があることにも懸念を表明する。さらにトラフィッキング(とくに国内のトラフィッキング)の広がりについてのデータと統計的インフォメーションが不十分であることも懸念する。
 20.委員会は、締約国が、女性と女児のすべての形態のトラフィッキングと闘う努力を強めるように勧告する。委員会は、締約国に、国内法の定義と国際的な定義を一致させ、また、人身取引に反対する国家行動計画の草案を迅速に完成させ、採択し、履行するよう強く促す。また、委員会は、売春女性の社会復帰と社会への再統合のための措置をとり、売春から抜けられるように他の生活をする機会を増やし、そうするように彼女たちに援助をし、また、正当な法的手続きなしに女性を拘留することを防止するように強く促す。委員会は、締約国に、地域間および国内のトラフィッキングの詳細なデータを系統的に収集し、被害者の年齢と民族的背景を説明するよう呼びかける。

[女性に対する暴力]
 21.委員会は、締約国が2001年に改正された「婚姻法」で家庭内暴力を明文で禁止し、女性に対する暴力を禁止するその他の措置をとったことを賞賛する。委員会は、女性に対する暴力に関する包括的な全国的法律(被害者に司法に対するアクセスを与え、加害者を処罰するもの)がないことと、女性に対するあらゆる形態の暴力に関する統計的なデータがないことを引き続き懸念する。また、委員会は、収容所(とくにチベット)において女性に対する暴力事件が報告されていることも懸念する。
 22.委員会は、女性に対する暴力に関する包括的な法律(女性と女児に対する、公私の領域におけるあらゆる形態の暴力を、刑法によって処罰できる犯罪を構成することを保障するもの)を採択するよう強く促す。委員会は政府に、一般的勧告19にもとづいて、女性と女児の暴力の被害者に即時の救済と保護を与えるよう求める。委員会は、被害者の司法と救済へのアクセスを高める――たとえば、司法官僚(裁判官、弁護士、検察官を含む)がジェンダーに敏感な視点で女性に対する暴力に対処する能力を高めたり、収容所における女性に対する暴力事件を含めて、女性の要求を確実に迅速に調査したりすることを通じて――ことを奨励する。委員会は、また、女性に対するすべての形態の暴力に関するデータ収集のシステムを強化して、次回のレポートにそれを含めるよう求める。

[暫定的特別措置の活用]
 23.委員会は、締約国が、条約の第4条第1款と委員会の一般的勧告25にもとづいて、暫定的特別措置を十分活用して、現在の条約が規定しているすべての領域で、できるだけ早く女性が事実上の平等を獲得できるようにしていないことを懸念する。
 24.そうするように勧告する。

[女性の政治参加]
 25.委員会は、中国政府が採用した、すべての政治および公的生活への女性の代表を保障する条項を歓迎しつつも、女性の代表の低い水準(少数民族女性、公的・政治的レベル、政策決定をする職位、外交部を含む)が続いていることを懸念する。また委員会は、提案されている村民委員会組織法の改正が、村民委員会への女性の平等な参加を要求していない点も、懸念をもって留意する。
 26.委員会は、締約国が、暫定的特別措置を含めて、選挙で選ばれる機構と任命される機構に女性が迅速に平等かつ十分に選出されるように、地方的・全国的レベルで、また、外交部を含めた政府のすべての部局で、適切な数値的な目標・標的・タイムテーブルを作成するなど、持続的な措置をとるように奨励する。委員会は、締約国が、現在と未来の女性の指導者のために、指導力と交渉能力に関する研修プログラムをおこなうよう勧告する。

[農村女性]
 27.委員会は、農村女性の、教育や保健、雇用、リーダーシップへの参与や土地などの財産における不利な地位にひき続き懸念を持つ。また、委員会は、農村の少数民族女性(チベット女性を含む)の状況を懸念する。彼女たちは、性別・民族・文化的背景・社会的経済的地位などによる何重もの形態の差別に直面している。委員会は、農村の女児の文盲率と中途退学率が高いことを引き続き憂慮する。委員会は、農村地区の保健施設と医療人員の欠如、高い妊産婦死亡率、医療費の上昇にも懸念を表明する。委員会は、農村で土地がない人の70%は女性であること、農村地区における女性の自殺率の高さが続いていることも留意する。
 28.委員会は、締約国が「条約」の第14条の遂行のために、農村の発展のための政策と計画の設計・発展・遂行・監督に対して農村女性の積極的参加を強化するように、すべての必要な措置をとるよう勧告する。それには、すべての女児が9年制の義務教育(いかなる雑費も学費もない)を修了することを保証することが含まれなければならない。また、農村地区で、無料ヘルスケアとサービスに農村女性がアクセスできるようにすることも、緊急に求められている。委員会、締約国に、農村で土地を持たない者の中に女性が多い理由をさらに深く検証し、救済のための適切な行動――女性に対して差別になる農村の慣習を変革する手段と措置を含めて――をとるように促す。委員会は、農村地区において、女性の自殺率をいっそう下げるために、上質なメンタルヘルスとカウンセリングサービスが利用できるようにするよう勧告する。委員会は、締約国に、少数民族の女性が直面している何重もの差別を撤廃し、彼女たちの実質的な平等を促進するための総合的なアプローチをとるように強く促す。委員会は、締約国に、次回のレポートでは、少数民族の女性を含めた農村の女性の性別のデータ、とくに彼女たちの教育・雇用・健康・暴力被害に関する包括的な情報を提供するように求める。

[女性の雇用労働]
 29.委員会は、同一労働や同一価値労働に対する同一賃金を保障する法的規定の欠如、賃金格差が存続していること、インフォーマルセクターへの女性の高度な集中、一部の女性労働者がさらされがちな有毒で有害な環境、競争的な労働市場における収入の減少など、雇用部門で働く女性の状況を懸念する。レイオフされた女性の再雇用を促進するさまざまな努力は評価するが、ジェンダーがレイオフの第一の理由になっていることも懸念する。委員会は、また、労働法規の監督が限定的であることと、そうした規定の侵害を通報する女性が非常に少ないことも懸念する。委員会は、職場でのセクシュアル・ハラスメントも懸念する。
 30.委員会は、締約国が、垂直的・水平的職務分離を克服し、婦女権益保障法を含めた法的枠組みの監督と効果的執行を強化し、ジェンダーにもとづく女性の差別的レイオフを含めた労働法の侵害に対して女性の効果的救済を保障するために、より進んだ措置をとることを勧告する。委員会はまた、女性が同一労働と同一価値労働に対して同一の賃金と同一の社会保障とサービスを受け取ることを保障する措置を取るよう訴える。委員会はまた、締約国に、女性労働者が危険な作業環境から守られ、公的および私的部門の中の雇用の場での女性に対する差別(セクシュアル・ハラスメントを含む)をおこなった者が適切に制裁されることを保証するように奨励する。

[計画生育]
 31.委員会は、性別を選択する中絶や女児殺しなど禁止する法的手段や2006年に始まった「女児愛護」行動のような全国的運動に留意しつつも、性別を選択する不法な中絶や女児殺し、女児の不登記・遺棄が存続していることや強制的中絶について引き続き懸念している。また女性と女児のトラフィッキングの増加をもたらしかねない性別比の逆転について懸念する。
 32.委員会は、締約国に、選択的中絶と女児殺しに対する現存の法律の執行の監督を強化するとともに、権限を乱用する公務員を制裁する公正な法的手続きによって、それらの法律を執行するように強く促す。委員会はまた、少数民族の女性に対する地方の家族計画官僚の虐待と暴力(強制的不妊手術と強制的中絶を含む)の報告を調査して起訴するように締約国に強く促す。委員会は、締約国が家族計画官僚に、ジェンダーに敏感な研修を義務付けるよう勧告する。委員会は、締約国に、すべての女児(とくに農村地帯の)が出生時に登録されるよう保証する努力をひきつづき強化するよう奨励する。委員会は、さらに、締約国に、保険制度と老齢年金を住民全体(とくに農村地帯)に拡大し、農村でまだ強固な男児選好と一人っ子政策の否定的な結果としての生別比の逆転の原因を解決するように勧告する。

[脱北女性]
 33.委員会は、締約国が1951年の「難民の地位に関する条約」の締約国でもあるにもかかわらず、女性の亡命者や庇護申請者を保護する法律または規則がないことを懸念する。委員会は、北朝鮮から来た女性の状況、すなわち地位が不安定なままで、虐待やトラフィッキング、強制的な結婚と事実上の奴隷状態の犠牲者になっているか、なる危険が特にあるという状態にとくに懸念を表明する。
 34.委員会は、締約国に、女性の保護を保証するためにも、国際基準に合致した、難民と庇護申請者の地位に関する法律と規定を制定するよう訴える。委員会は、締約国が国連難民高等弁務官事務所と緊密に協力して、庇護申請者/難民の地位を認めるプロセスの中に、女性ジェンダーに敏感なアプローチを十分に統合するよう訴える。委員会は、締約国が国内における北朝鮮の女性難民/庇護申請者の状況を調査して、彼女たちが不法な居留外国人であるがために、トラフィッキングと奴隷的な結婚との犠牲にならないことを保証するよう奨励する。

 女性差別撤廃委員会は中国の政策に一定の評価を与えつつも、中国の女性差別問題を包括的に厳しく指摘し、改善を勧告したと言えるでしょう。中国国内では指摘しにくい問題もかなり含まれています。
 こうした国連からの指摘や勧告は、以前は中国国内では(私が日本で入手できるような文献を見るかぎり)活字になりませんでした。しかし、2004,5年頃からは中国国内でも、こうした指摘を受け止めた議論が散見されるようになりました。
 今度の勧告も、中国国内でも少しでも活用されることを願います。
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