2017-06

自作の痴漢反対ポスターを身につけて街頭や地下鉄・バス内で見せる全国各地のフェミニストのアクション

<目次>
はじめに
一 今年も公共交通での痴漢防止対策を求めて人民代表大会の議員に提案
二 なぜ作成した反痴漢ポスターが掲示されないのか?――「市民のパニックを引き起こす」「公益広告は政府しか出せない」
三 全国各地で一人ひとりが反痴漢広告の掲示板になる活動

 1.道行く人にポスターを見せる張累累さんの発想と活動 /2.「百人が反痴漢広告の掲示板になる」活動 /3. 全国各地の街頭、大学、電車・バスや駅の中で /4.通行人にポスターといっしょに写真に写ってもらう、賛同署名を集める /5.多い大学内での活動 /6.アンケートや取材も /7.グループとしての取り組み /8.ポスターを使った動画 /9.当局からの監視の目 /10.大型の固定掲示板よりは効果が低いが、それでも多くの人にアピールする活動として /11. 小括――運動の広がり、若い女性、多くは1人で
四 警察が呼びかけ人に中止を命令
五 上海地下鉄に反痴漢広告が登場
おわりに


はじめに

広州市では、地下鉄での痴漢(中国語では鉄道内のセクハラについても「セクハラ(性騒擾)」の語を使うが、本文では原則として「痴漢」という日本語訳を使う)の問題について、2012年9月、若い女性が広州地下鉄に痴漢防止措置を求める署名を利用者から集める運動をしたり、柯倩婷さん(中山大学中文系副教授)が広州市交通管理委員会と広州地下鉄総公司に対して、痴漢防止措置について情報公開申請や建議をおこなったりした(本ブログの記事「各地の弁護士・市民が地下鉄会社に対して痴漢防止策の建議・署名運動」参照)。

2014年11月には、中山大学の女子学生と市民が2人で、広州市交通管理委員会に行って、「公共交通でのセクシュアル・ハラスメントの防止についての建議の手紙」を手渡した(これは、前年の柯倩婷さんの建議の内容とほぼ同じだとのことだ)。12月には、その2人を含む5人が、広州市の交通管理委員会、地下鉄総公司、旅客輸送管理処、公安局(地下鉄分局・公共交通分局)と会談し、職員の研修などの点で前向きの回答を得た。その中で、万欽(万青)さんらの「痴漢防止の宣伝を強化する」という提案については、市の交通管理委員会と市の旅客輸送管理処の代表が、「もし婦女連合会が宣伝活動を主導して、ポスターや標語、ビデオ広告などの宣伝材料も提供してくれるなら、宣伝スペースを提供したい」と述べた(以上は、本ブログの記事「広州で若い女性たちが公共交通の痴漢対策について交通管理委員会、地下鉄公司、警察、婦女連合会などと会談――各地で『赤ずきん』姿で痴漢・セクハラ反対活動」参照)。

2016年の3~4月には、張累累さんらが設立した「F女権小組」が、広州の地下鉄に痴漢に反対する公益広告を出すためのクラウドファンディングをおこなった。「F女権小組」とは、広州で《陰道之道》(ヴァギナ・モノローグスの中国語版)の上演活動などをしてきたグループである。

4月28日、3人の青年が広州市交通管理委員会陳情事務局に行って、広州の公共交通でセクハラ反対の宣伝をするよう要求し、公共交通の中にセクハラ防止システムを作ること、ジェンダー平等意識を有する公益広告を出すよう申し入れた(13)

彼女たちは、自分たちが作成したポスターのパネルを持って行った。それは、痴漢の手を女性の手がつかみ、周りの者たちが「やめろ!」「やめろ!」「やめろ!」と声を上げている絵の右に、「誘惑は言い訳にならない。痴漢をやめろ」というスローガンが書かれたものだった(以上は、本ブログの記事「広州地下鉄にクラウドファンディングによって痴漢反対ポスターを掲示する試みなど――2016年の女性たちの公共交通での痴漢反対運動」参照)

一 今年も公共交通での痴漢防止対策を求めて人民代表大会の議員に提案

2017年1月12日、張累累さんは、今年は広東省の人民代表大会の代表[議員のこと]325人に対して、公共交通の痴漢防止システムを整備する提案をするように要望する手紙を送った。これまでも、3年続けて、フェミニスト行動派は、人民代表大会の代表に両会(全人代と全国政協)に公共交通の痴漢防止システムを整備することを求める建議の手紙を送ってきたが、今年は、広東省の人民代表大会の代表に要請したのである。

その具体的内容は、以下のとおりである。

1. 交通部門は、公共交通関連部門にセクハラ防止工作制度を制定するよう督促すること。この制度は以下の点を含む。防止の原則、訴えへの対応、職責の分担、処置のプロセス、監督・審査など。また、この制度を、下級の会社の従業員の研修と審査に組み込むこと。

2.交通部門は、公共交通関連部門に従業員のセクハラ防止研修をおこなうよう督促すること。研修の中では、次のことをおこなう。・会社にはセクハラを防止する法定の義務があり、従業員は会社を代表してこの義務を履行することが自分の仕事の責任であることを知らせる。・セクハラに関する認識の誤りを正す(「露出が多いとセクハラが増える」など、研究や証拠によって誤りが証明されている、いわゆる「常識」を正すことを含む)。・従業員のセクハラ防止業務の分担とプロセスを明確にする。・セクハラ事件に応対する具体的な方法を訓練する。

3. 公共の場所、公共交通の乗り物に、セクハラの訴えの方法を設置・公表する。たとえば、ホットラインを設置し、処理の責任者を公表して、それを地下鉄の目立つ場所に貼る。

4. 簡単に証拠をつかむ手段を設置する。現在、わが国の大多数の公共の場所と公共交通の乗り物には監視カメラがあり、痴漢が発生したら重要な証拠を提供できる。被害者が録画を調べる必要があるときには、責任者が簡単に証拠をつかむ手段を提供すること。

5. セクハラ防止の宣伝を強化する。地下鉄の中に不法分子を震え上がらせるスローガンを貼ると同時に、市民に主体的に制止あるいは通報することを呼びかける、たとえば、「セクハラは違法行為です、制止と通報にご協力ください」などと。

6. セクハラの「首問責任制 (最初に対応した職員が最後まで責任を持って対応すること)」を実行する。職員はセクハラの訴えを受けたら、直ちに制止して、加害者を取り押さえ、証拠を固め、すぐに警察に通報して、被害者にその他の必要な援助を提供しなければならない。

7. 微博(中国版ツイッター)のセクハラ防止の宣伝窓口としての機能を強化する。微博でセクハラ防止の訴えの方法を公表し、積極的に回答をし、微博上でのセクハラの訴えを処理する。被害者を責めたり、乗客の私的言論を暴露したりすることを杜絶し、公衆の監督を誠実に受け入れる。

8. 先進国・地域の公共の場でのセクハラ防止に関する合理的なシステムを参照する。

9. 公安部門と交通部門が協力して、公共運輸関連部門にセクハラ防止措置の整備を急がせること。(1)

2016年2月にも、全国8の省・市のフェミニストらが、10あまりの省の郵便局から合計一千通余りの公共交通の痴漢防止システムを作る提案を提出してもらうよう人民代表大会の代表と政治協商会議の委員に建議の手紙を出したが、上はその提案の内容とほぼ同じである。

なぜ作成した反痴漢ポスターが掲示されないのか?――「市民のパニックを引き起こす」、「公益広告は政府しか出せない」

広告会社は「商工審査部門は、この広告は『市民のパニックを引き起こす』と言っている」と述べた。何度も問いただすと、広告会社は彼らが修正したバージョンを出してきた。

そのバージョンは、「やめろ!」「やめろ!」「やめろ!」というセリフは同じだった。しかし、次の点が異なっていた。
(1)痴漢しようとする男の手を女の手が掴んでいる絵はなくなり、その代わりに、握りこぶしが2つ並んでいるだけの絵に変えられていた。
(2)「誘惑は言い訳にならない。痴漢をやめろ」というスローガンは、「誘惑は言い訳にならない。マナーを守った乗車を」に変えられていた。

これでは、痴漢の問題についての広告であることがわからない。ポスターに近づいて子細に観察すると、非常に小さな字で下の方に、これは痴漢問題について言っていることが書かれているが、パッと見た場合は全然わからない。

F女権小組は、修正するなら自分たちでやりたいと述べ、いくつかのバージョンを作った。たとえば、以下のようなバージョンである。
(a)絵は握りこぶしの絵に変えたが、スローガンは元通り「誘惑は言い訳にならない。痴漢をやめろ」のままにしたもの。
(b)絵は、元通り痴漢しようとする男の手を女の手が掴んでいる絵にしたが、スローガンを「痴漢を制止しよう 安全はみんなの力で」に変えたもの。

長い間待った後に、商工部門からの回答が帰ってきたが、それは「公益広告は、政府しか出せない」というものであった。すなわち、商業広告として出すしかないが「商業広告で出すのなら、画面を変えなければならない。こぶしの絵は、比較的デリケートであり、政府が出すとしてもきつすぎる。商業広告ならばもっと厳しい」と広告会社は言った。「どのように修正すればいいか」と尋ねると、広告会社は「こぶしや身体の部位はダメで、画面をもう少し柔らかくする(修正をする)」と言った。

そこで、F女権小組は、身体の部位の絵はやめて、可愛い小動物の絵にすることにした。

すなわち、豚の手を、猫が押さえて「NO!」と言い、周りの犬や馬たちが見つめている絵の右に「誘惑は言い訳にならない。痴漢をやめろ」というスローガンを書いたポスターにした。「為平女性サポートホットライン」の電話番号も入れた。

広告会社は、このポスターならばOKだと言ったが、その前提は政府部門か類似の機関の名前を広告の上に入れることであり、そうしないと政府が監督する公益広告にならないと述べた。

しかし、文化局はF女権小組の要求を拒否した。ある女性協会もF女権小組の要求を拒否した(2)

三 全国各地で一人ひとりが反痴漢広告の掲示板になる活動

 1.張累累さんの道行く人にポスターを見せる発想と活動

張累累さん(以下、累さん)が自分に何ができるのかを考えていたとき、突然、次のことを思い出した。去年、累さんが広州市交通管理委員会に行ったとき、広告のポスターを印刷して持って行った。その帰り道、そのポスターを持って人ごみの中を歩き、地下鉄に乗ったとき、累さんは、ポスターが非常に多くの人の目を引いていることに気づいた。

累さんは、そのことを思い出して、一人ひとりが掲示板になることを思いついた。「私たちは毎日多くの人とすれちがう。もしポスターを身につけていたら、多くの人が見るだろう!」と。

それから一カ月、累さんは、外出するときには、中国初の反痴漢ポスターになるはずだったポスターを身につけるようになった。「私はポスターを身につけて、出かけ、地下鉄に乗り、バスに乗り、活動に参加し、食事をし、酒を飲み、集会に参加し、散歩をし、服を買い、他の都市にも行った」。30日間、累さんは、毎日、それを微博に書いて、自分の一日の経験を写真と文字で伝えた。

 2.「百人が反痴漢広告の掲示板になる」活動

累さんは、もっと多くの人にそれをやってほしくなった。

5月1日、累さんは、NGO「広州新メディア女性ネットワーク」の微博である「@新媒体女性」とともに、「百人が反痴漢広告の掲示板になる」活動を呼びかけた。その具体的な進め方は、以以下のとおりだ。

1 参加希望者は、まず@新媒体女性の微博が今回の活動を呼びかけたエントリをリツイートするか、またはそのエントリを引用してコメントをする。次に、自分の住所と今回の活動に申請する理由や、ポスターを受け取ったら何をするかといった「申請理由」を一言書いて、私信で@新媒体女性に参加を申請する。

2 .@新媒体女性は、申請者の中から抽選で100人を選んで、ポスターを貼ったボードを発送する。多くの都市で活動をおこなうために、一つの都市の定員は5人までとする。

3. ポスターを貼ったボードを受け取った参加者は、それを身につけた自分といっしょに自分の都市を象徴するような建築物の前か公共交通機関に中で撮った写真を微博で発信する。その際には、「#私が掲示板だ。歩く反痴漢#」というハッシュタグを付ける。

この活動の最終的な目的は、1カ月後、つまり6月1日までに、集まったすべての写真と各人の活動、累さんが書いた政策の建議の手紙を、広州市交通委員会、広州市の地下鉄・バス会社に送ることだった。それらは同時に国の交通運輸部にも送り、政府部門が主導して全国に反痴漢広告を出すよう提案する(とくに広州で反痴漢広告を先行して掲示し、全国の先駆けにするように要望する)予定だった(3)

翌日の5月2日夕方には、申し込みをした人は50人を越え、全国の27市に及んだ(4)

5月3日には、申し込みが100人に達したので、ポスターを貼ったボードの提供を打ち切った。申し込みがあった都市は、北京・唐山・青島・ハルピン・ウルムチ・上海・成都・重慶・深圳・長沙・南京・西安・広州・仏山・蘇州・福州・武漢などだった。しかし、申し込みはまだ続いていたため、新メディア女性ネットワークは、申し込みが来たら、その人にポスターの原版を提供して、プリントアウトしてもらえるようにした(5)

さらに、ポスターの絵を描いたTシャツの注文の受け付けも開始した。送料込みで38元(≒600円)である(6)

なお、累さんは、女性たちの痴漢被害の経験――「いつ、どこで痴漢に遭ったか」「何が起こったか」「どのように感じたか」――を集めたエントリも書いて、女性たちが経験を分かち合えるようにした(7)

 3.全国各地の街頭、大学、電車・バスや駅の中で

累さんの微博(张累累累累)の中や「#私が掲示板だ。歩く反痴漢#」のハッシュタグの下に、5月2日から17日まで連日、さまざまな人が全国各地の街頭や電車・バス・駅の中、大学、ショッピングセンターなどでポスターを貼った掲示板(以下、基本的に「ポスター」と略す)を身に着けて歩いたり、手に持ってアピールしたりしている微博のエントリが掲載された。以下、それらのエントリをすべて見ていく(以下は、中国大陸内にかぎる(8))。

(なお日時については、その行動がおこなわれた日が微博の中に記されているものは、その日を記し、行動した日が記されていない記述については、微博で発信された日を記して、「(微博)」と付記する。ただし、微博は携帯電話などから手軽に発信するものであり、また、その日の夕方から夜にかけての発信が多いので、行動がおこなわれたその当日に発信されているケースが多いと思われるため、以下の記述ではその両者をあまり区別しない。)

浙江省の杭州では、5月2日、ある男性がポスターを貼ったボードを背中に付けたり、ときに手に持ったりしながら、大学を出発して、バスに乗り、宝石山に登り、西湖・保俶塔にも行った。ポスターは路上で振り返られる率がとても高かったという(微博)(9)。同日、別のある女性も、杭州で、掲示板を背中に付けて、バス停でバスを待ち、バスに乗り、あちこちの街頭を歩いた写真を微博に掲載している(10)

同日、別のある女性は、広東省の広州市の地下鉄の鷺江駅やゲームセンターでポスターを掲げた。彼女は、子どもの頃、多くの友だちがゲームセンターで痴漢に遭ったのに、どうしてよいかわからず、教師や親にも話せなかったので、小学教育からセクハラ問題を正視すべきであると記した(微博)(11)

5月2日には、内蒙古自治区の包頭でも、ある女性が、ポスターを商業施設らしき建物の駐車場で掲げた(微博)(12)

5月4日にも、広州市で、ある女性が、観光バスが走っているような街頭でポスターを掲げたところ、多くの人に周りから見られたと記した(微博)(13)

5月5日、江蘇省の無錫で、ある女性が、映画を見た後、映画館で広告を掲げた。残念だったのは、一緒にやってくれる人かなかったことだという(微博)(14)

同日、江蘇省の南京でも、ある女性が、他の方と2人で、ポスターを身につけて、南京大学から地下鉄二号線を回った(微博)(15)

5月5日には、広東省の恵州でも、ある女性がポスターを背中につけて、恵州学院から、恵州西湖、恵州商業歩行街、華貿天地に行った(微博)(16)

5月6日、上海で、ある女性がポスターを持って、人民広場に行き、喜茶(カフェの名称)の行列に並び、地下鉄8号線と1号線、2号線に乗った(微博)(17)。。

5月6日には、深圳でも、ある女性がポスターを掲げて、平安金融センター、地王大廈(別名は信興広場で、超高層ビル)、京基100(超高層ビル)、市民センター、kkmall(深南東路)、鄧小平の画像という新旧の名所に行った。彼女は地下鉄で写真を取っているとき、職員に阻止された。しかし、多く人が写真を撮り、これは何の活動かと問い、それに答えると、多く人が支持してくれたという(18)。深圳では、5月3日にも、別の女性が信興広場前で、ポスターを掲げている(19)

5月6日、江西省の南昌でも、複数の女性が、八一館~万寿宮~八一大橋~銅鑼湾広場を回った(微博)(20)

5月6日、長沙市で、ある女性は、ポスターを掲げてあちこちを回った。太平街では、ポスターを掲げて中を歩いてはならないと警告されたが、見ていないところで掲げようと、地下鉄に乗って、五一広場、黄興広場、7UPビルに行って掲げた(21)

5月6日、吉林省長春市で、ある男性が中東市場のブタの像の前にポスターを置いた(微博)(22)

5月7日、広州で、ある女性がポスターを持って、地下鉄、バス、映画館など人が密集している場所に行ったら、多く人の目を引いたという(微博)(23)

5月7日、南京の新模範馬路で2人の女性が、ポスターを掲げている写真を微博にそれぞれ掲載した(微博)(24)

5月8日、湖南省長沙市で、ある女性が、地下鉄の中を含めた通学路で、ポスターを掲げて歩いたところ、見知らぬ人が何人も写真に撮ってくれて、長沙はけっして思ったほどひどく保守的ではなかったと述べている(微博)(25)

5月8日、新疆ウイグル自治区のウルムチでも、ある女性が、ショッピングセンターの中でポスターを背中に掲げて回った(微博)(26)

5月9日、湖北省の宜昌市でも、ある女性がポスターを身につけてバスに乗って、多くの人の目を引きつけた。ただ、乗客には小さい字は読めないので、大学内では人が多い場所にポスターを置いておいて自由に見てもらい、最後は教学楼の壁に張った(微博)(27)

5月12日、武漢で、ある女性がバスの中や地下鉄の駅などでポスターを掲げたところ、見た人はさまざまな表情を浮かべ、写真に撮る人もいて、楽しかったという(28)

5月12日、広東省の仏山で、ある女性が、同僚といっしょに、万達広場(中国の大都市にあるショッピングセンター)と千灯湖公園に行ってポスターを掲げた(29)

 4.通行人にポスターといっしょに写真に写ってもらう、賛同署名を集める

単にポスターを身につけて歩くだけでなく、通行人や友人にポスターといっしょに写真に写ってもらったり、ポスターを貼っているボードの裏に署名をしてもらったりすることによって、ポスターに賛同の意を表明してもらったりした人も多い。以下では、そうした活動を報告している微博を紹介したい。

ある女性は、5月5日から北京で3日間行動した。1日目は北京大学のキャンパスで活動した。彼女は、自分は「社交恐怖症の患者」だが、勇気を振り絞って行動したという。すると、ある学友が駆け寄ってきて、ポスターといっしょの写真を撮影させてくれて、心が温まったという。微博のエントリに添付されている写真の中には、本人がポスターを背負って構内を歩いている写真とともに、さまざまな人と本人とがポスターと一緒に写っている写真が10枚近くある
(30)。。

2日目は、誰か2人で活動したようだ。た。その人はポスターを付けた掲示板を背負って映画を見に行った。本人は地下鉄に行ったところ、ラッシュアワーに間に合ったので、多くの人に写真を撮られて、とても楽しかったという。映画館やデパートの入り口でも、多くの人の目を引いた。ただ、昨日と異なって、いっしょに写真に写ったり、署名をしてくれたりする人はいなかった(31)

3日目は、ポスターを付けた掲示板を背負って地下鉄や街頭に出かけて、署名や写真撮影などを求めた。そうして撮ったのであろう、街の人がポスターを前に掲げた記念写真も掲載されている。しかし、34回目の拒絶にあったときには、街頭で号泣したくなったという。「けれども、スーパーマーケット、街頭、地下鉄、バスの停留所で、私たちのポスターが多く人に見られさえすれば、私は勇気を奮い起して続ける」とその女性は書いている。なお、午後にはBCome小組(後述)のワークショップに出席したとのことであり、その写真も掲載されている(32)

山西省の太原では、大学生らしき女性が少なくとも7日間連続して行動している。微博で報告されているのは初日と7日目だけだが、初日は教室にポスターを持って行き、7日目には、街頭で、署名やポスターと一緒に写真に写ってもらうことをお願いしたようだ。拒絶されたことも多かったが、激励や支持をもらうことも少なくなかったとのことだ(33)

5月13日、ある女性が、浙江省の寧波のショッピングモールである天一広場でポスターを掲げて歩いたところ、多く人がこの活動を支持して一緒に写真に写ってくれて、感激した(34)

著名な活動家の中では、5月7日、李麦子さんが、北京の西壩河で活動して、さまざまな人がポスターを掲げている写真を撮った(微博)(35)

5月2日、猪西西さんも、杭州の小中学校補習センターで子どもたちにポスターを掲げてもらった写真を微博で発信した(36)

 5.多い大学内での活動

学生が多いのだろうか、これまでも触れてきたように、大学内での活動が目立つ。以下では、もっぱら大学内で活動した微博の報告を挙げていこう。

5月2日、広州大学城(大学関係者のニーズにもとづいて形成された町・地区)で、ある女性が、さまざまな場でポスターを掲げた写真を微博で発表した(37)。同日、別の女性も、広州大学城で、別の男性と協力して、ポスターと風景が一緒に写った写真を撮影して回っている(38)

5月3日、ある女性は、長沙市の大学(湖南女子学院と思われる)の図書館やバス停、街頭で本人や他の人がポスターを手に持ったり背中に付けたりしている写真を微博で発表した。教室に集まった学生たち26人が、ポスターを前にして腕でバッテンを作って痴漢にノーの意を表明している写真もある(39)

その女性は、5月5日も、同じ長沙市の中南林業科技大学に遊びに行ったとき、背中にポスターを貼ったボードを背負って歩いた。そのグラウンドに行ったときには、多くの人が見に来て、多くの人に活動が知られてうれしかったという(微博)(40)

5月8日には、湖南女子学院の社団連合会大会に持って行ったら、教室いっぱいの60人程度が手でバッテンを作って、セクハラにノーの意を表してくれた(41)。また、屋外の授業では、先生が音頭をとって、40人近くが手でバッテンを作った(42)。こうしたことが起きるのは、女性学教育が盛んな湖南女子学院だからだろうか。

また、5月4日には、杭州のある女性セクシュアルマイノリティが、浙江大学紫金港校区を、ポスターをバイクの後ろに付けた写真を微博で発表している(微博)(43)

5月6日には、山西省の太原市でも、ある女性が、ポスターを持って学校に行き、帰りは汾河公園に行って、夜になるまであちこちでポスターを掲げた(微博)(44)

同日、広東省の汕頭大学の学生の女性も、ポスターを背負って大学を一周した(微博)(45)

5月9日には、安徽省の馬鞍山市のある女子学生が、ポスターを教室に持って行ったところ、先生が話す時間をくれ、多くの学友も自分の意見や経験について話してくれて、感動したそうだ(微博)(46)

5月9日には、先述の、5月5日に恵州学院からポスターを背中に付けて外に出かけた女子学生が、学内でもその格好で授業に出たら、多くの学友が支持してくれて(署名が40筆ほど集まっている)とても感激したという(47)

5月9日には、福建省の漳州の大学地区でも、ある女性がポスターを掲げて回り、他の人にもポスターを掲げてもらった(微博)(48)

5月11日には、河北省唐山市の華北理工大学で、ある女性が、学校内を、ポスターを掲げて歩いた。多く学友が見てくれて、「それは何か」と問う人もいたので、私は「これはパフォーマンスアートだ」と答えた。しかし、ある女子学生が「あの人は病気だ」と言ったのは嫌だったという(49)

5月第2週の週末、ある女性が、ポスターを広東省広州市の広東培正学院で持って歩くと、学友たちがみんな支持してくれて、ポスターと一緒に写真に写ってくれて、広州のバスや地下鉄駅でも掲示してほしいと言われた(50)

写真を見るかぎり、今回の活動を全国でおこなった人のほとんどは若い女性である。また、大学生と思われる人も多い。

大学内では、そうした女性たちに人間的つながりがあったり、ときにはフェミニズムに好意的な教員がいたりするせいか、比較的好意的反応が集まりやすいようだ。あるいは、大学には年齢的にとくに痴漢被害に遭いやすい若い女性が多いという要因もあるのかもしれない。

 6.アンケートや取材も

今回の活動をした中には、アンケート用紙を自分で作って通行人からアンケートを集めながら、その場で話をした人もいた。上海のある女性は、5月7日の日曜日には、一日中ポスターを身につけて街を歩き回って人々の視線を集めた。そして、翌週の日曜の14日には、60人を目標にアンケート調査をして、26部集め、そのアンケート結果は累さんに送るとのことだ。体力的にも心理的にも大変だったが,通行人がポスターと一緒に写真を撮るなどしてくれたことに励まされたと記している(51)

5月7日、西安でも、ある女性が、広告ボードを掲げて、街頭や地下鉄の車内・構内で注目を集めて宣伝しながら、取材もした(微博)(52)

5月10日、広東省の東莞では、ある女性が、バスの運転手に痴漢への対応を取材した(微博)(53)

 7.グループとしての取り組み

5月13日、武漢で、ある女性が、仲間たちと一緒に1日に二万歩歩いて、武漢大学、中南財経政法大学、武漢科学技術館、武漢美術館、戸部巷、公園などに行って、ポスターの裏に署名を集めたり、ポスターと一緒に写真に写ってもらったりした(54)

このように仲間たちとともに活動した女性たちもいる。グループとして取り組んだことが微博でわかるのは、以下の団体である。
・「BCome小組(@BCome小组)」――『ヴァギナ・モノーグス』の中国版である『陰道之道』を上演してきた北京の劇団。
・「PLUS青年空間」――西安でジェンダー/セクシュアリティの問題に取り組んでいる団体。
・「蘇州大学青春同伴教育社(蘇大青同社)(@苏大青同社)」――以前は、「蘇州大学ジェンダー性的指向平等促進協会」と称していた団体。
・恵州反セクハラグループ
・「トランスジェンダーセンター(@跨性别中心)」――2016年5月に、広州にF女権小組のh.cらによって設立された団体。
・雲南大学ジェンダー平等促進グループ

5月7日、Bcome小組のメンバーは、ポスターを手に持って北京の各地を駆け回って、通行人に私たちへの支持を呼びかけた(55)。そうすると、子どもからも署名が集まったり、年上の女性が痴漢の被害者を責めることに強く反対する意見を述べたりした。また、最初は「性教育は子どもとお母さんの問題だ」と言っていたお父さんもいたが、彼も説得して自らの責任を感じてもらったりした(56)

5月8日には、西安で「PLUS青年空間」のメンバーとボランティア5人が、西安培華学院、陝西師範大学、西安郵電大学、西安政法大学、西安財経学院、西京学院と付近の繁華街やバスステーションを回った。西安地下鉄2号線では、多くの駅で車両を行き来して、ポスターを掲げ、大きな声で「セクハラに反対する! 痴漢をやめろ! 勇気を持ってNOを言おう!」というスローガンを叫んだ。後ろで嘲笑する人もいれば、拍手する乗客もいた。大学では「キャンパスはこんなにきれいなのに、セクハラがあるのか?」と尋ねられることもあれば、うなずいて賞賛され、好意的に見られることもあった(57)

5月11日にも、PLUS青年空間の満文雅さんという女性が、西安の曲江文化聚集地~西安欧亜学院~城南バスステーション~地下鉄の三爻駅~地下鉄の南稍門駅~西安ホテル~飛行場バス~咸陽国際飛行場~東大街と回って、ポスターを掲げた(58)

5月15日には、PLUS青年空間の満三順(=満文雅?)さん、在如さん,アメリカから来たDevidyal(雅心)さん、Beth Gulleyさんがいっしょに西安で、ポスターを持って歩いた。当日のルートは、小寨、鐘楼、ショッピングセンター(賽格、金莎、世紀金花付近)、地下鉄(スタジアム~南稍門~鐘楼駅),回民街(イスラム人街)だった(59)

江蘇省の蘇州大学青春同伴教育社は、5月13日に蘇州地下鉄の車両内や、蘇州の街頭・広場で宣伝活動をする計画を立て(60)、当日、少なくとも地下鉄1、2、4号線とその駅で、5人が宣伝をしたことが記されている(61)

広東省の恵州でも、セクハラ反対の小さなグループの6人ほどが、さまざまな場所でポスターを掲げた(62)

5月2日、広州のトランスジェンダーセンターも、屋外での活動は確認できなかったが、メンバーがポスターを持った写真を微博に掲載した(微博)(63)

5月7日、雲南大学ジェンダー平等促進グループが、ポスターを前に持ってみんなの写真を写した(微博)(64)

また、各大学から来た大学生の競歩のトレーニングキャンプが、5月7日、福建省の福州大学でおこなわれたが、それに同大学から参加したある女子学生が、ポスターを背中に掲げて参加した。彼女は、ポスターの由来を説明して、参加者に宣伝に協力してくれよう頼み、15人が、ポスターを前に置いて、手でバッテンを作って痴漢に「ノー」の意を示した。そうした事例も生まれている(65)

 8.ポスターを使った動画

数人で、歌と踊りを交えて、ポスターを使って痴漢反対を訴える動画を作成した人々もいる。羅志祥の曲「你干嘛(何するの?)」の替歌だそうだ(動画→「【反性骚扰MV之你干嘛?!】」九拾一个人工作室2017年6月1日)。

 9.当局からの監視の目

広州市従化区のある女性は、ポスターを持って外出すると「特別な安全感を感じる」と言っている(66)。セクハラに「NO!」を言う意思が周囲に伝わるので、セクハラに遭いにくい感じがあるのだろう。

しかし、その一方、警備員や警官から監視や追跡を受けた女性たちもいる。

5月13日、ある女性は、北京の三里屯で若い仲間といっしょにポスターを掲げた。彼女たちは噴水の中央に立って、周りの多くの通行人から注目されたが、ショッピングンセンターの警備員と私服警官にもじっと見られていた。彼らは、「ショッピングンセンターでプラカードを掲げて写真を撮ってはいけない」と言った。彼女たちが歩くと、虎視眈々と見ていた(67)

さらに、5月6日、成都で活動したある女性は、「プラカードを掲げて街を歩かなれければ、国家の女性に対する『関心』はわからないし、なぜ反痴漢広告が封殺されているかもわからない。私たちが広告ボードを持って通りを行くと、あちこちに警備員が虎視眈々と見ていて、駆け寄ってくる警備員や、付いてきて観察する警備員もいて、本当に怖かった」(68)と述べている。

 10.大型の固定掲示板よりは効果が低いが、それでも多くの人にアピールする活動として

武漢の武漢大学や万林芸術博物館でポスターを掲げたある男性は、「このポスターは小さすぎて、歩いていても、あまり関心を持つ人がおらず、社会的影響は比較的小さい。今後はそれぞれ都市のバスステーションと地下鉄の駅にみな、痴漢反対の大型の固定掲示板を設けてほしい」とのべており(69)、この意見に対しては累さんも同意している(70)

しかし、まだ公の場でポスターが掲示できない状況の下では、そうした影響力の比較的低い宣伝であっても、全国各地で様々な女性たちが取り組んだのである。

蘇州大学青春同伴社も、「街頭宣伝の影響力は結局限られているけれども『最も難しいことだが、やる人は必ず必要だ』。一面では、私たちは街頭活動を放棄するべきではない。大規模なデモがない社会では、当然手段を尽くして目立つ方法で私たちは大衆の目に入るようにしなければならない」と指摘している。

ただし、蘇州大学青春同伴教育社が、それに続けて、「もう一方で、私たちは意識を育てることも放棄してはならず、対談会・講座・ワークショップ・社会的サービスなどを組織することを通じて、私たちの理念をその中に入れ、知らず知らずのうちに影響を与えて、一人ひとりの公民の素養を高めなければならない」(71)と述べているように、街頭以外での活動も重視しているのは当然である。

 11.小括――運動の広がり、若い女性、多くは1人で

この活動の参加者は、微博で活動を発信したことが確認できる人数だけで50人以上にのぼっている。その中には、グループとしての活動を報告している人もいるので、そうしたグループの一人ひとりを含めれば、70人程度はいるように思われる。

ポスターを見せて歩くと注目を浴びた場合が多いことは、さまざまな人が述べている。すなわち、現場でポスターを目にした人数も、相当に多い。

また、活動の参加者は、道行く人や友人にポスターとともに写真に写ってもらったり、ポスターの裏に署名をしてもらったりすることによって、賛同の意思表明も、かなり集めている。もちろん、それを断った人も大勢いるだろうから、働きかけた人数はかなりの数になると思われる。

活動に参加した人は、写真で見るかぎり、大半が若い女性である。先述のように、大学内での活動が多く、学生の比率もかなり高いようだ。

この活動をグループでおこなったケースもあることは、運動として重要だ。ただし、全体としては、1人でやっているケースが目立つ。1人でやるのはとくに勇気が必要だっただろう。

もっとも、微博の中には、周りに人が写っていない場所で建物とポスターを写した写真を掲載している例もわりあいある。そのケースでも微博に掲載することで広く発表しいることにはなるので、それなりの意義もあり、勇気も必要だと思われる。

いずれにしても、中国の場合、日本に比べても権力からの監視が強いし、露骨なのだから。

地域としては、北京市、河北省唐山市、山西省太原市、内蒙古自治区包頭市、吉林省長春市、上海市、江蘇省の南京市、無錫市、蘇州市、浙江省の杭州市、寧波市、安徽省馬鞍山市、江西省南昌市、湖北省の武漢市、宜昌市、長沙市、広東省の広州市、東莞市、恵州市、仏山市、汕頭市、深圳市、福建省の福州市、漳州市、陝西省西安市、新疆ウイグル自治区ウルムチ市、四川省成都市、雲南省雲南市の27市に及んでいる。

多いのは、広州市、杭州市、北京市、長沙市などフェミニズムの活動が盛んな地域であるが、先述のように、より多くの都市でおこなうために、ボードの提供は1都市5人以内にしたので、さほど特定の都市が突出しているわけではない。

四 警察が呼びかけ人に中止を命令

5月17日、張累累さんの家に彼ら(と書かれているが、警官であることが後述されている)がやってきて、次のように言った。
「あなたが呼びかけたこの反痴漢アクションを止めさせなさい」
「広州では今年後半にフォーチュン・グローバルフォーラムがあるから、引っ越して広州から出ていきなさい。仏山の千灯湖に行けばいい。近いし、にぎやかだ」

これは、累さんがこの一年間で求められた3回目の引っ越し要求だった。

彼らは言った。
「あなたのこの活動は、影響が大きくなりすぎた。必ず止めるように」
「女権五姉妹が反痴漢のアクションで捕まったが(2015年3~4月、フェミニスト活動家の五女性が刑事拘留されたことを指す(72))、あなたのこの行動の性質は、彼女たちとどこが違うのか? あなたはそう思わないのか?」

累さんには警官が言うことがわからなかった。
「私にはわからない。彼女たち[女権五姉妹]は乗客に反痴漢の宣伝をして、その後、乗客が望んだら、反痴漢のステッカーを身につけてもらおうとした。なぜそれが捕まえられるようなことなのか? もし彼女たちが捕まえられなくても、あなたは法を犯していると言うのか?」
「私にはわからない。なぜ、もう金を集めて作ってある反痴漢広告を出すのがこんなに難しいのか? なぜ、最後には私たちの身体をメディアにして出したこの広告も、阻止されるのか?」

累さんは、正式に「私は反セクハラ広告ボードのアクションから手を引く」と宣言し、その後、全国の動きもストップした(21日に、先述の汕頭大学の女子学生がポスターを付けた掲示板を背中に付けて何かの「サロン」に行き、そのサロンの仲間が室内で自分の前に掲げたくらいである(73))。

しかし、張さんは、セクハラの被害にあったことがあるのは自分一人ではないし、多くの女性が被害にあっても、「あなたは悪くない」と言ってもらえず、サポートされない状況があると述べる。

だから、累さんは、「今日、外出する前、しばらく躊躇したが、私は反痴漢のTシャツを着た。私は広告ボードを身につけて外出しないけれども、私は何を着るかを決めることができる」と言っている。

累さんは、「この1年間に、私は3回、引っ越しするように迫られた。去年の6月初め、関係部門は私たちに3日以内に引っ越しするよう要求した。11月には、また協警(治安維持のために半職業的な警察業務の協力者)の暴力的な法律執行にあって、片警(地区を担当する警官)は家主に私たちのことをバラした。それを公開して訴えたため、どうにか引っ越しをしなくて済んだ。今回、彼らはまた、広州を代表して、私を歓迎しないと言って、私と肖美麗を仏山か他の都市に引っ越すよう言った。私は自分が路頭に迷わないかどうかわからない。みんなに注目してほしい」と言っている(74)

なお、その後、この中止命令について述べた記事と、二で記した広告会社との交渉について述べた記事は、いずれも閲覧できなくなった。

六 上海地下鉄に反痴漢広告が登場

上海地下鉄に「今天咸猪手 明天变猪头」という広告が掲示されたことが6月14日、「女権の声(フェミニズムの声)」と「女権行動派(フェミニスト行動派)」の微博アカウントで報じられた(75)。私は中国語のニュアンスはよくわからないが、「今日の咸猪手(口語で痴漢の意)は、明日にはブタの頭になる」という文字が大きく書かれており、鳥がブタを食べようとしているように見える漫画が描かれている。

広告を出したのは「看看新聞」であり、上海テレビ・ラジオ局傘下のメディアなので、中国では公的機関だと言えるだろう。

「女権の声」の微博のエントリは、460を越える「いいね」が付き、50回以上転載され、「女権行動派」の微博のエントリは、280を越える「いいね」が付き、550回以上転載されているので、かなりの反響があったといえよう。

「女権の声」の微博は、このポスターについて、「人を驚かせ、喜ばせるものだと言える。張累累#私が掲示板だ。歩く反痴漢#活動に啓発されたものかどうかはわからない」と述べ、「この広告の言葉について、どう思うか」と問うた。

それに対しては、このエントリを転載しつつ、歓迎するコメント(「良い」「悪くない」「進歩だ」「上海は国際都市に恥じない」)をする人々がいたとともに、以下のような注文を付けるコメントもあった。
・「明日ではなく、今日」でなければならない。
・「もっとはっきり書くと良くなる。婉曲すぎる」

「女権行動派」の微博は「痴漢に反対するもっと多くの広告を」と書いた。

このエントリについては、張累累さんが転載しつつ、「ああ、ついに反痴漢広告が登場した。少し感激している」とコメントした。

こちらの方では、「地下鉄の痴漢ホットラインも設ければ一番いい」といった注文がついた。

おわりに

これだけ全国各地で多数のフェミニストが街頭行動をしたことは、少なくとも女権五姉妹事件以後はなかった。いや、参加者数と広がりにおいては、2012年のフェミニスト行動派の活動開始以後すべての活動の中でも、有数のものではないか。

もってとも、マスコミが報道しなかったので、広く知られなかったと思う。また、ポスターはそれほど大きいものではなかったし、スローガンを叫ぶような音の出る活動は少なかったようなので、現場でも、あまり大きなインパクトは与えなかったかもしれない。

しかし、警官が「あなたのこの活動は、影響が大きくなりすぎた」と述べたように、多くの人が参加した広がりがある活動だったからこそ、警察の弾圧を引き起こしたという面は見ておかなくてはならない。

そして、一部で要求が実現した! 下からの活動は禁止しつつ、要求は一部取り入れるというのは、当局が下からの活動をいかに忌避しているかを示しているそれと同時に、曲がりなりにも要求が一部実現したのは、運動が大きく広がった成果であろう。

活動への弾圧という点だけ見ると、「中国はひどい」とも言える。弾圧については、見過ごせまない。

しかし、かたや日本でも、牧野雅子氏らが明らかにしているように、鉄道に掲示されている痴漢防止ポスターには、本当に女性の立場に立ったものはほとんどなく、マスコミにも電車内での痴漢問題の深刻さを伝える記事や痴漢の加害をなくすための考察はほとんどないのだから、「五十歩百歩」の状況だと言えよう。

むしろそうした中で、中国でも、ある意味日本以上に勇敢に、この問題について活動がおこなわれていることにこそ、注目しなければならないと思う。

(1)以上は、「我们要反性骚扰广告!要在公共空间安全出行的自由!」女权之声2017-01-13(女权行动派很好吃 [ID:genderequality ]の微信からの転載)。
(2)以上は、「中国第一支反性骚扰广告为何历时一年人无法上架?」2017-03-15 F小组 F女权小组(現在閲覧不能)
(3)以上は、累/新媒体女性「行动!这个女孩将成为中国首个反性骚扰肉身广告牌」新媒体女性2017-05-01 14:27:05。
(4)累/新媒体女性「加入反性骚扰百人计划,改变你的城!」新媒体女性2017-05-02 16:09:36
(5)新媒体女性的微博【#我是广告牌,行走反骚扰#百人征集活动报名已截止】【没申到?别着急,求原图和T恤的看下文 】5月3日 18:00
(6)炒鸡可爱反性骚扰t恤【38包邮!】
(7)张累累累累「短故事征集|关于性骚扰,每个女人都有一些事情要分享」新媒体女性2017-05-08 20:59:04。なお、張累累さんは、この文で、女性専用車両の類については、「こうしたやり方は、女性は弱いから保護が必要で、男性全体を潜在的加害者と見なすステロタイプなイメージにもとづいて、女をある空間に入れるものである。もし女性がそれに従わずに痴漢にあったら、非難される。管理者は明らかに安全の責任を女性の乗車の自由を束縛する権力に転化している」と述べている。これは、いささか単純な考え方のようにも思うが、女性専用車両の類の限界や問題点を明らかにした原則的な発想だとは言えると思う。
(8)Eveeeeeen 的微博5月5日 07:21、dvd二号机的微博5月5日 13:02は、カナダのバンクーバーでの活動を報告し、明燚feminist5月7日 19:47は、香港での活動を報告している。
(9)Owen-Zhang1995 的微博5月2日 15:25
(10)老年人_哆啦A英的微博5月2日 21:30
(11)嘛都不董斯拉特國際的微博5月2日 16:01
(12)牛田地主家的天海祐世 的微博5月2日 12:09
(13)夶棋的微博5月4日 19:39
(14)LP____萍的微博5月5日 23:50
(15)Brainy-TheNewSexy的微博5月5日 20:26
(16)GVHY的微博5月5日 23:02
(17)希姫_荣安的微博5月6日 14:50
(18)PePper_GrAss的微博5月6日 20:46
(19)AnnaChung0206的微博5月3日 19:17
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(67)爱吃玉米的兔子君的微博5月15日 13:47
(68)古敏怡的微博5月6日 17:53
(69)呼吸困难生存更困难的微博5月6日 16:08
(70)张累累累累的微博5月6日 16:11
(71)苏大青同社的微博5月14日 11:29
(72)本ブログの記事「国際女性デー直前に中国の若いフェミニスト活動家10人逮捕、5人が今も釈放されず」「拘留中のフェミニスト活動家5女性の状況、国内外の支援運動、弾圧の背景など」「フェミニスト活動家5女性の釈放とその後の困難、闘い、弁護士によるセクハラ」参照。
(73)生命的意义在于静止x的微博5月21日 00:04
(74)以上は、「他们说:你必须叫停你发起的反性骚扰行动」张累累累累2017-05-18 23:30:14(現在閲覧不能)
(75)女权之声的微博6月14日 07:42 、女权行动派吃不完的微博6月14日 07:53
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