2017-01

就職の男女差別裁判で、会社の謝罪も命じる初の判決

目次
はじめに
1.黄蓉さんと馬戸さんが起こした就職の男女差別裁判の判決――原告勝訴だが、慰謝料2000元のみ
2.高暁さんの裁判の第一審の経過
3.第一審判決(2016年4月)――勝訴だが、慰謝料はまたも2000元、謝罪なし
4.黄溢智弁護士の一審判決に対する評価
5.高暁さんが負った心の傷、損失、憤り
6.控訴審における請求と控訴理由
7.第二審判決(2016年9月)――書面での謝罪も命じ、訴訟費用も被告側の負担に。ただし慰謝料は2000元のまま
8.黄溢智弁護士の二審判決に対する評価
9.人力資源・社会保障局の責任を問う裁判は、一審敗訴
おわりに――馬戸さんも最後まで闘っている

はじめに

2012年以降、中国で「フェミニスト行動派」を自称する若い女性たちが、就職の男女差別について裁判を起こして、次々に勝利を勝ち取ってきた。それらは、まだ募集・採用段階における女性であることを理由として明示した直接差別に限定されているとはいえ、職種の面では、事務職から男性職へと対象を広げてきた。訴訟が受理されるまでの期間もしだいに短縮してきた。

しかし、判決において慰謝料が低額であることと会社の謝罪を勝ち取れていない点は限界だった。

けれども、それらの点に関しても、粘り強い運動が続けられ、昨年は謝罪などの面でも前進があったことを、以下、ご紹介したい。

1.黄蓉さんと馬戸さんが起こした就職の男女差別裁判の判決――原告が勝訴するが、慰謝料2000元のみ

黄蓉(仮名。以下の原告名もすべて仮名)さんは、東方調理職業技能訓練学校の文書作成業務の募集に応募した際、「男性のみ」の募集であることを理由に応募を拒否されたことを、2014年7月、裁判に訴えた。2014年11月、法院(裁判所)は、被告に対して、黄蓉さんに慰謝料2000元(約5万円)の支払いを命ずる判決を下した。これが、就職の男女裁判初の勝訴判決である(本ブログの記事「求人の男女差別で中国初の勝訴判決――慰謝料2000元の支払い命じる」参照)。

しかし、黄蓉さんは、書面による謝罪と慰謝料の増額も求めて控訴した。けれども、2015年2月、法院は、黄蓉さんの請求を棄却し、原判決を維持した(1)

2015年1月には、馬戸さんが、北京市郵政スピード郵便物流有限公司(北京郵政)が女性であることを理由に馬戸さんの宅配便配達員への採用を拒否したことについて、裁判に訴えた。2015年11月、馬戸さんは、黄蓉さんと同じく慰謝料2000元の判決を得た(本ブログの記事「就職の男女差別で2件目の勝訴判決――今回は宅配便配達という男性職。コック見習い採用の男性のみ求人も提訴」参照)。

馬戸さんも黄蓉と同様の趣旨の控訴をしたが、2016年3月、棄却された(2)

すなわち、職種こそ異なるが、同様の判決が下され、同様の趣旨の控訴がおこなわれたが、同様の控訴棄却が繰り返されたのである。

2.高暁さんの裁判の第一審の経過

広東恵食佳経済発展有限公司がコック見習い募集において高暁さんが女性であることを理由にして不採用にしたこと対して、2015年8月、高暁さんがは謝罪と賠償を求めて広州市海珠区人民法院に提訴した。

この裁判の経過については、本ブログでは、同年9月17日の第1回審理までしかお伝えしていなかったので、それ以後についてご紹介する。

第2回審理――被告側の新たな証拠にもとづく主張に反論

12月4日の第2回審理のとき、広東恵食佳経済発展有限公司(以下、恵食佳と略す)は新たな証拠を提出した。その一つは、4名の女性の厨房職員の労働契約と社会保険の記録である。恵食佳はそれによって、厨房でもけっして女性を採用していないわけではないことを主張した。

しかし、黄溢智弁護士によると、実際はこの4名の女性職員は、いくつかの職場に散在しているだけであるうえ、けっして直接厨房の仕事に採用されたのではなく、長年経ってからやっと厨房に関係する仕事につけたにすぎない。また、賃金水準も低く、広東省の最低賃金ギリギリでしかなかった。

つまり、被告が出した証拠は、むしろ自らの性差別を証明するものになった(3)

恵食佳が提出したもう一つの証拠は、厨房の男性が重ねた皿や品物を運ぶなど、重い仕事・力仕事をしている写真だった。

しかし、その写真も、その厨房には男性だけしかおらず、雇用における男女差別が存在していることを示しているものであり、また、そうした重い荷物を運ぶ仕事も、法規で決められた「女性労働者が従事してはならない仕事の範囲」には属さないことを示しているものだった。

さらに、高暁さんは、恵食佳が証拠として提出した写真の作業と自分も同じ作業をして、その写真を証拠として提出し、高暁さんにもできる仕事であることを示した(4)

また、被告側は、高暁さんの調理師免許が本物かどうか疑ったり、高暁さんが3カ月で初級調理師から高級調理師になれたのはおかしい、などと言ったりして、高暁さんが仕事につけないのは能力の問題であるかのような印象を与えようとした。

これに対しては、裁判官も、「性差別の議論に戻ってください」と2度も強調したほどだ。

しかし、裁判官は、その一方、高暁さんの弁護士に対して、「あなた方は、炒作(センセーショナルなやり方)はしないように」と言った(5)。これは、高暁さんが広東省人力資源・社会保障庁の庁長に対して、自分が作った料理を食べてもらうよう招待するから、広東省の飲食業における女性従業員の状況(比率の低さや女性差別の強さ)について話をしようと呼び掛ける手紙を出して(6)、マスコミなどにも取り上げられた(7)ことを指していると思われる。裁判官は、こうしたやり方は嫌うようで、この点は、社会運動的なやり方に対する嫌悪感なのかもしれない。

第3回審理――被告に名豪軒も加える

2016年3月9日の第三回審理では、高暁さんは、広州市越秀区名豪軒魚翅海鮮大酒楼(以下、名豪軒と略す)を被告として追加した。名豪軒は、恵食佳に委託して募集情報を発表した。恵食佳はそれを受けて広告を発表して、職位を募集したのであって、名豪軒も権利侵害行為の主体だったからである(8)

3.第一審判決(2016年4月)――勝訴だが、慰謝料はまたも2000元、謝罪なし

2016年4月3日、広州市海珠区人民法院は、恵食佳と名豪軒に対して、連帯して高暁に慰謝料2000元を支払うことを命じる判決を下した。

その主要部分は、以下のとおりである。

被告の両者は、募集広告の中あるいは実際の募集過程の中で、ずっと原告の能力について職務の条件を満たすか否かの審査をおこなわず、直接高暁の性別を理由として何度も高暁の応募を拒否し、原告に平等な面接試験の機会を与えることを拒否したことは、女性の応募者に対する区別および排斥であり、原告の平等な就業の権利を侵犯しており、原告に対する性差別であるので、原告の損失について、連帯して責任を負わなければならない。

この事件において、原告は、被告の就職差別の行為によって、気持ちが落ち込み、自信がくじけたと主張し、両被告に書面での謝罪を公開するするとともに、経済的損失、精神的損害の慰謝料などを賠償することを主張している。しかし、原告の気持ちが落ち込み、自信がくじけたことなどは主観的な描写であり、たとえ原告が述べた状況が本当にあったとしても、それは原告自身の耐える能力ともある程度関連があるため、権利侵害の程度を完全には反映していない。また、原告が提示した交通費などの領収書も、この事件と関係があることを証明できていない。被告の両者の過ちの程度および権利侵害がもたらした結果の大小を総合的に考慮すると、当裁判所は、被告の両者が連帯して賠償する原告の精神的損失の金額は、2000元が適切であると考える。(9)

この判決に対しては、「2000元の賠償は慣例になったのか?」という声も上がった(10)

4.黄溢智弁護士の一審判決に対する評価

高暁さんの代理人である黄溢智弁護士は、この判決文の中の性差別に関する認定や論理に関しては、評価した。また、以下に述べるように、女性差別撤廃条約との関係でも評価をしている。

原告に直接性別を理由として何度も原告に平等な面接試験の機会を与えなかったことは、「女性の応募者に対する区別および排斥であり、原告の平等な就業の権利を侵犯しており、原告に対する性差別となる」という認定は、女性差別撤廃条約の性差別に関する認定基準に合致しており、さらに司法判決という形式を通じて、現在の飲食産業に存在する性差別の問題を認定したことは、明示的な就職差別を減らすためにある程度役に立つ。

その一方、黄弁護士は、この判決について以下のように批判している。

しかし、この判決は、原告が要求した謝罪の請求を支持しておらず、精神的損害額も低すぎる。これでは、原告がこうむった実際の損失と権利擁護にかかったコストを補償できないだけでなく、女性が性別という理由だけで生活とキャリアの機会を失ったことによる精神的圧力を慰めることもできない。

同時に、就職差別をした被告に対しては、2000元の賠償は、2つの商業団体にとってはごく少ない支出であり、就職差別をした行為の重大性と比べて非常に不釣り合いである。

(11)

5.高暁さんが負った心の傷、損失、憤り

実際、原告の高暁さんが負った心の傷や損失は、上の判決が言うような主観的なものでも、軽いものでもなかった。

心の傷、憤り

高暁さんは子どものころから、中華料理のコックになることが夢で、広東料理のクラスに入って、刻苦勉励した。高さんの料理は先生や同級生にも賞賛され、良い成績を取り、コックの資格試験にも合格した。

ところが、恵食佳のコック見習いに応募すると、受付で「あなた本人が応募するのか」と驚かれ、実地試験もされずに、通知を待っているように言われ、その後、電話で「定員がいっぱいだ」と断られた。高さんは、次に名豪坊に応募したが、ここでも、「定員がいっぱいだ」と断られた。高さんは、やはり自分の性別が断られる原因なのだと思い、高さんは自分にコックの仕事ができることをわかってもらおうと、「私はコックの免許を持っていますし、苦しいことや疲れることも平気ですし、男子学生にできることは私もできますし」と続けざまに言ったが、相手は高さんが言い終わらないうちに、面倒そうな表情になって背を向けて出ていき、周りの人々は高さんに哀れみの視線を投げかけるだけだった。高さんは、その刹那、自分のすべてが否定されたと感じ、自分にはそれに抗う力が何もないと思い、意気阻喪した。高さんはうなだれ、ホテルから出て、よろよろ歩いていると、恵食佳がまた求人広告を出しているのを見つけたので、高さんは電話をかけたが、恵食佳は「わが社は、厨房では女は雇わないと規定している」と言われた。その瞬間、高さんは「この業界には自分は入れない」と思い、目が涙でいっぱいになった。

高さんは、こんな形で自分の夢が破れたとは信じられなかった。自分の能力によってではなく、性別によって排除されたことに、高さんは憤るとともに、どうしようもなさを感じた。

職業の道が断たれたことで、高さんはすっかり落ち込み、のちに病院でうつ病だと診断された。今でも高さんは薬を飲み続けている。その後も、高さんはホテルに電話して応募し続けたが、どこにも断られた。

高さんはあきらめずに、恵食佳を訴えた。しかし、裁判によって、高さんの病状はむしろ悪化した。恵食佳は事実を無視して、証拠を否認し、さらには高さんを貶め、人身攻撃をしたからだ。たとえば、恵食佳は、高さんが応募した時のことをよく覚えていることを「ずば抜けた記憶力を持っている」と風刺したが、高さんが深く傷ついた時のことをよく覚えているのは当然だった(12)

やむなく菓子職人の道へ――それまでの金銭と時間は無駄に

高暁さんは、性差別が比較的少ない菓子作りの職場にしか入れなかった。それは彼女にとってまったく新しい領域だったので、見習い労働者から始めるしかなかった。毎日の仕事の量は多かったのに、賃金は非常に低かった。高暁さんは家賃を払い続けることができなかったので、友だちや仲間と別れて、やむなく勤務先が提供した宿舎に引っ越した。

高暁さんは、「たとえ好みの話は置いておいたとしても、広東料理を学んだときに使った金銭と時間が、なんと大きな無駄になったことか! 卒業したばかりでまだ収入がなく、理想を持った若い人にとって、時間と金銭と理想は貴重であり、踏みにじることは許されない」と語っている。

裁判に対する当局の圧力

訴訟を起こして以後、高暁さんがますます安らかに生活できなくなった原因には、当局からの圧力がかかったこともあった。広州市人力資源・社会保障局(以下、「人社局」と略す)は、家主と居住組織を通じて高暁さんの個人情報と生活状況を調査し、労働監察大隊は高暁さんの家まで訪ねて来た。さまざまなハラスメントの電話もかかってきた。故郷の村の中国共産党支部の書記まで、高暁さんの家族を訪ねてきて、高暁さんは党員だから、党組織とは関係がない活動は必ず上級組織に報告するように要求した。

全ての生活が安全でない感じに満たされたうえに、にっちもさっちもいかない経済状況によって、高暁さんはいっそう束縛され、呼吸することもできないほどになり、精神科の病院に「双極性障害(旧い呼び方では躁うつ病)」だと診断された(13)

6.控訴における請求と控訴理由

4月13日、高暁さんは控訴した。

控訴審では、被告に対して以下の請求をすることにした。

1.控訴人[高暁さん]に対して公開の書面で謝罪をする。
2.控訴人が応募したことによる経済的損失21元(交通費20元、電話料金1元)を賠償する。
3.控訴人に精神的損害の慰謝料40800元を賠償する。
4.一審と二審の訴訟費を負担する。

以下が、控訴理由(抜粋)である。

まず、控訴人の訴訟での請求の第1項は、「権利侵害責任法(侵权责任法)」第15条第(7)項によって被控訴人に謝罪を求めるものである。「民法通則」第134条第10項も、「謝罪」を、民事責任を引き受ける方法の一つとしている。原審の法院が認定した権利侵害の事実の上に立って、訴訟で謝罪を請求することは、事実の根拠も法律的根拠もあるので、原審の裁判所は支持すべきであった。

同時に、「最高人民法院の民事権利侵害の精神的損害賠償責任を確定することに関する若干の問題の解釈」第8条は、「権利の侵害が人に精神的損害を与え、その影響が重大なときは、人民法院は、人に侵害を停止させる、名誉を回復する、影響をなくす、謝罪するなどの民事責任を判決によって命ずるほか、被害者側の請求にもとづいて精神的損害の慰謝料を賠償させることができる」と規定している。(中略)

次に、原審の法院が両被控訴人に支払わせた2000元精神的損害賠償は低すぎて、控訴人が被った実際の損失と権利を擁護するために支払ったコストを補償できないだけでなく、女性が性別のみによって、生計を立て能力を発展させる機会を失ったことを慰藉することもできない。同時に、就職差別をおこなった2つの企業にとっては、2000元という賠償はきわめて低額な支出であり、就職差別という行為をすうという重大性にふさわしくなく、法律に背いた者や潜在的に法律に背いている者を震え上がらせることもできない。これは、国家の法律・政策の中で、女性の平等な就業権を確実に推進するという精神にも合致しない。

(中略)

以上、控訴人は原審の法院が両被控訴人に2000元だけしか精神的損害の慰謝料を払わせず、謝罪と経済的賠償を支持しなかったことは、法律の規定と男女平等の国策に合致しないと考えるので、「民事訴訟法」第164条にもとづいて控訴し、二審の法院が法にもとづいて判決を改め、控訴人の控訴の請求を支持し、女性の平等な就業権を確実に保証するよう求める。

(14)

7.第二審判決(2016年9月)――書面での謝罪も命じ、訴訟費用も被告側の負担に。ただし慰謝料は2000元のまま

2016年9月20日、広州市中級人民法院は、次の2点で高さんの請求を受け入れた判決を下した。

(1)謝罪の請求を支持した。

被告の広東恵食佳経済発展有限公司と広州市越秀区名豪軒魚翅海鮮大酒楼は、判決の効力が生じてから10日以内に高暁に対して書面で謝罪し(謝罪の内容は法院が審査して決める)、もし履行しないならば、法院が広州地区の公に発行されている新聞に判決書の主要な内容を掲載し、それにかかる費用は被告側が負担する。

(2)訴訟費用を相手側の負担とした。

一・二審の事件の受理費の各500元は、ともに広東恵食佳経済発展有限公司と広州市越秀区名豪軒魚翅海鮮大酒楼の負担とする

(15)

8.黄溢智弁護士の二審判決に対する評価

以下、黄溢智弁護士が、この判決について述べたことを記した。これまで述べたことと重複もあるが、最終審での判決についての論評なので、詳しくご紹介してみた。

以前の北京[の馬戸さん]と杭州[の黄蓉さん]の2件の裁判と比べると、この事件の判決が進歩であることは疑いなく、この判決は司法の男女平等な就業権の保護について、また一歩段階を進めた。(中略)

2008年に施行された「就業促進法(中华人民共和国就业促进法)」は、その前の「労働法」と「婦女権益保障法」にすでにあった女性差別を禁止する条項を重ねて規定したが、就業促進法の第62条(「本法に違反して就職差別をした場合は、労働者は人民法院に訴訟を起こすことができる」)で、差別を受けた者が直接法院に訴訟を起こす権利を明確にした。高暁はその条文に依拠して、恵食佳に謝罪と損害賠償の慰謝料を要求したのである。

性差別の存在を証明することはあまり困難ではなかった。恵食佳は一貫して男性だけを募集したことを否認したけれども、高暁は恵食佳の職員と何度も話をしたときに、いつも「厨房では女性は募集しない」と言われ、その後、恵食佳は、求人広告に「男性」という条件を入れるようになったことは、故意に差別をしていることを明確に示している。恵食佳は、人を雇う自主権を主張したが、これは差別をしてよい理由にはならない。人を雇う自主権も、法律が禁止している規定に違反してはならない。恵食佳は、厨房には4名の女性従業員がいるという資料を提供して弁解した。しかし、これらの女性従業員の資料は、むしろ恵食佳に性差別が存在していることをいっそう証明するものだった。別々のホテルに4人だけいる女性従業員は、10年近く仕事を続けた後になってやっと厨房と関係がある仕事(主要な厨房のポストではない)に従事することができたにすぎず、報酬や待遇も依然としてきわめて低かった。厨房の重要なポスト、ひどい場合はすべてのポストは男性が独占している。裁判所は、高暁が提供した証拠にもとづいて、恵食佳の被告の両者が、求人広告においても、実際の採用過程においても、高暁の能力がポストの条件を満たしているか否かをまったく審査せずに、直接高暁の性別を理由として何度も高暁の応募を拒否し、原告に平等な面接試験の機会を与えることを拒絶しており、これは、女性の応募者に対する区別および排斥であり、原告の平等な就業の権利を侵犯しており、原告に対する性差別であると認定した。

性差別を認定し、当事者が謝罪を要求した以上、判決で謝罪を命じることは、本来、道理にも、法にもかなっている。しかし、杭州の黄蓉の裁判から北京の馬戸の裁判に至るまで、法院は謝罪の請求を支持してこなかった。けれど、2008年に「就業促進法」が施行された後、B型肝炎の就職差別裁判が多く起こされたが、その多く判決の中で、各地の法院は、差別された応募者が企業に求めた謝罪の請求を支持したことを私たちは知っている。「謝罪」は、法律が規定した民事責任を引き受ける方法の一つである。謝罪は原状回復に重点があり、慰謝料は金銭的賠償に重点がある。法院はまず前者を考慮すべきなので、法院は精神的損害の慰謝料の支払いを判決で命じた以上は、謝罪も支持するのが当然である。広州市中級人民法院は、高暁の控訴意見を認めて、恵食佳に公開での謝罪を命じる判決を出した。訴えを起こして以降、差別をした側である恵食佳の態度は傲慢で、差別を認めないだけでなく、法廷で高暁をあざけって、高暁に二次被害を与えたので、この謝罪の判決は、高暁個人にとっては慰めになる。同時に、これは性差別を受けた者に対する司法的救済を完全なものにする上で有利であり、謝罪は金銭的賠償の不足をある程度補う。しかし、まったく不十分である。

3件の性差別裁判で法院が判定した損害賠償は、みな、わずか2000元である。馬戸の裁判では、この2000元の賠償は、訴訟費用さえまかなうことができず、まして公証費、旅費、仕事に支障をきたした出費などはまかなえなかった。この2000元は、企業にとってはきわめて低額な支出であり、就職差別という行為の重大性にふさわしくなく、法律に背いた者や潜在的に法律に背いている者を震え上がらせることもできず、国家の法律・政策において、女性の平等な就業権を確実に推進するという精神にも合致しない。私たちが多くの就職差別の判決を収集したところ、法院が、B型肝炎によって就職差別をされた応募者に対して与えた賠償は、就職の性差別の判決の中の2000元よりもはるかに高額だったことがわかった(16)。B型肝炎差別問題の解決と有効な司法的救済とは密接に関連していた。就職の性差別問題も司法のルートを通じて早急に有効な解決をする必要があるが、差別の被害者に対する賠償の基準を引き上げることによって企業の法律違反のコストを増加させることがそのカギとなる。

この判決のもう一つ進歩は、法院が訴訟費用の分配を改めたことである。この裁判の一審判決の受理費は500元だったが、一審の法院の判決は、高暁に476元を負担させ、会社は24元しか負担しなかった。この裁判は、平等な就業権に対する権利侵害の訴訟であり、財産についての裁判ではなく、人格権の裁判である。原審の法院は恵食佳の行為は就職差別だと判決で認定し、高暁の人格権が侵犯されたという訴えはおおむね認められたが、賠償金額上では、40800元の訴えとは開きがあったというだけである。しかし、原審の法院は、財産についての裁判として処理し、高暁が獲得した賠償金額の比率にもとづいてのみ訴訟費用を配分し、人格権の裁判の中で恵食佳の権利侵害行為が成立したことによって敗訴した責任を負わなければならないことを考慮していなかったため、大部分の訴訟費用を、差別を受けた被害者の側に支払わせた。一審の法院の訴訟費用に対する配分はきわめて不公平である。この問題は馬戸の裁判の中でも出現した。このことは、法院が扱った就職差別裁判の件数が少なすぎるために、普通の労働争議裁判と本当に区別して扱っていないことと関係があるのかもしれない。いっそう反差別裁判の司法的救済を整備し(受理した事件の内容?およびこうした事件の審理の規範を制定することを含む)、長期的には、反就職差別法を制定し、反差別システムを設立することも必要である。(17)

9.人力資源・社会保障局の責任を問う裁判は、一審では敗訴

2015年6月、高暁さんは、広東省人力資源・社会保障庁にも、恵食佳の採用の性差別について訴えを提出した。これはのちに、広州市人力資源・社会保障局に取り次がれた。

しかし、11月24日、高暁さんは、広州市人社局から、「調査したところ、恵食佳は男性に限定して採用を拒否したという事実を否認しており、また、高暁はすでに訴訟を起こしているので、受理せず、法律的手続きによって処理してほしい」という回答を受け取った。その回答には印章も押されていなかった(18)

高暁さんは、「就業促進法」「人材市場管理規定」などの法律法規は、労働行政部門は企業の就職差別に対して監督責任があることを規定しているので、たとえ裁判が起こされていたとしても労働行政部門は訴えの受理を拒否できないと考え、広州市人社局と広州市労働保障監察支隊を相手取り、以下のことを求めて裁判を起こした。
・人社局が高暁さんの就職差別の訴えを受理しなかったという行政行為は違法であることを確認すること。
・人社局に高暁さんの就職差別の訴えを受理するように命じること。

2016年5月24日、その裁判の1回目の審理が広州市鉄道運輸第一法院でおこなわれた。その日の午前中、女子学生の王月さんら数人の青年が、広東省の人社庁に行って建議の手紙を渡して、人社庁が就職の男女差別を重視し、それを監督するシステムを作るよう訴えた。その際、青年たちは、人社庁の前で、黒い中華鍋を手に持って、「就職差別にコストはない、黒い鍋は女性には背負わせない」という、性差別的現状を批判したプラカード掲げてアピールした。人社庁の陳情室の職員は、彼女たちの手紙を受け取り、事情を聞いた後、人社庁は高暁の事件をずっと重視しているし、たしかに就職の性差別はずっと存在しているので、この件には注目していきたいと述べた。青年たちは、午後は法院に行って裁判を傍聴した(19)

しかし、9月13日、広州市鉄道運輸第一法院が下した判決は、高暁さんの就職差別の訴えを受理することを求める請求は支持せず、人社局の回答に印章が押されていない点のみを違法とするものだった。

高暁さんは控訴した(20)

おわりに――馬戸さんも最後まで闘っている

2016年3月に控訴が棄却された馬戸さんも、それで諦めたわけではない。

まず、馬戸さんは、「申訴」をおこなった。申訴とは、すでに効力を発した判決について上級裁判所に改めて審理を要求することである。中国は二審制だが、そうした道もあるのである。しかし、これは失敗に終わった。

さらに、馬戸さんは、2017年1月5日、北京市人民検察院に「抗訴」の申請をおこなった。抗訴とは、検察院が法院の判決に対して不服な場合、再審をおこなうことである。馬戸さんの場合、高暁さんの二審判決と異なり、勝訴とはいえ、謝罪は獲得できなかったし、訴訟費用のうち2129元のうち、北京郵政は100元しか負担せず、残りは馬戸さんが負担する判決だった。その一方、北京郵政が馬戸さんに支払った精神的損害賠償(慰謝料)の金額は、(これは高暁さんの場合も同じだが)2000元にすぎなかった。その点について変更を求めたのである。

2016年8月22日、最高人民法院のウェブサイトは、「社会主義の核心的価値観を発揚した典型的判例」の一つとして、馬戸さんの裁判の判決を挙げた。そのこと自体は注目すべきだ。しかし、最高人民法院は、慰謝料は、募集要項の「過ちの程度」にもとづいて決めたと記した。また、就職の性差別をしようとした企業に「威嚇」を与えるものだとも記した。

それに対して、馬戸さんは次のように述べている。「法院はどのようにして過ちの程度を測ったのか? 2000元だけで賠償できるとは、どの程度なのか?」「賠償金額が2000元だけだというのは、企業に対する威嚇なのか、それとも権利を守る者に対する威嚇なのか、私にはわからない。北京郵政が登記している資本は4000万元だ。」「男女平等という社会主義の核心的価値観はこんなにも安いのか?」と(21)

フェミニスト行動派の女性たちは、2012年7月に最初に就職の男女差別を裁判に訴えた曹菊さんの訴えを裁判所に受理させるだけのために、1年以上もの期間、さまざまな努力を重ねた(「求人(募集)の女性差別に対する初の提訴をめぐって」「求人の男女差別をなくすための女性たちの粘り強い行動」)。

上で述べてきたことからは、そうした闘いは、さまざまな困難にも負けず、今なお続けられており、わずかずつだが成果も勝ち取ってきていることがおわかりいただけよう。

(1)求职遭歧视案续:女生二审胜诉却仍未获道歉」搜狐2015年2月5日(来源:大河网-大河报、原題:「案件二审维持原判女生仍未获道歉」)。
(2)女权之声【马户诉就业邮政性别歧视案终审判决结果:维持原判】3月2日 14:30
(3)广东就业性别歧视案一审第二次开庭」女权之声的博客2015年12月4日。
(4)女权行动派更好吃的微博【“我们没有歧视女性,女人真的做不了大厨”】2015年12月4日 14:26、「想做女厨师不成 她要做饭请厅长吃」『南方都市报』2015年12月9日。
(5)注(4)の箇所からここまでは、法官捎话给:原告你们不要炒作」新媒体女性的博客2015年12月5日。
(6)厅长,女大厨请你吃饭,约吗?」2015-10-19 女权行动派很好吃。
(7)想做女厨师不成 她要做饭请厅长吃」『南方都市报』2015年12月9日。
(8)遭遇性别歧视的女厨师终于赢得道歉!」女权行动派很好吃2016年9月20日→「遭遇性别歧视的女厨师终于赢得道歉! 」女权之声2016年9月21日 15:08:57
(9)性别歧视2000块就了事?想当大厨被拒的她发起众筹继续上诉」女权之声2016年4月18日 11:33。
(10)广州就业性别歧视第一案一审判决:赔偿2000块成为惯例?」女权之声2016年4月5日 16:13。
(11)以上は同上。
(12)以上は、「“性别歧视不足以阻止我”……去炒菜!」女权之声2016年8月19日 13:54:54(作者: 女权行动派吃不完)。
(13)以上は、(10)に同じ。
(14)以上も、(10)に同じ。
(15)以上は、「遭遇性别歧视的女厨师终于赢得道歉!」女权行动派很好吃2016年9月20日→「遭遇性别歧视的女厨师终于赢得道歉! 」女权之声2016年9月21日 15:08:57
(16)黄弁護士が調べたところ、2008年、2009年のB型肝炎の就職差別裁判では、裁判官は1万5000元の精神的損害賠償の判決を下したこともあるし、広西と武漢では、それぞれ1万元、5000元の精神的損害賠償を命じているとのことだ(「违规成本只要2000块? 广州就业性别歧视第一案判决遭炮轰」自由亚洲电台2016年4月7日)。
(17)黄溢智「高晓案胜诉对完善我国反歧视司法有何意义?」女权之声2016年9月21日 17:55:23。劉明輝弁護士(中華女子学院法学院教授)の判決に対する評論は、刘明辉「女大厨遭遇就业性别歧视:判决赔礼道歉为何如此艰难?」橙雨伞公益的微博2016年9月29日 11:00:53参照。
(18)法院纵容人社局对就业性别歧视不作为! 刚胜诉的高晓马不停蹄上诉」女权之声2016年9月29日 17:11:07(来源:微信公众号“女权行动派很好吃”)
(19)この段落と上の段落については、@小田切菜「女青年背黑锅现身人社厅,呼吁关注厨师行业招工性别不平等」2016-05-25 15:19:54、明燚feminist的微博2016年5月24日 17:31
(20)以上は、(18)に同じ。
(21)只值2000块的社会主义价值观」2017-01-05 马户 女权行动派很好吃
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