2016-08

あるNGOでのセクシュアル・ハラスメント事件が女性たちの連帯で解決へ

目次
 一 「1980青年学社」の曹小強によるセクハラに対する告発と曹の形だけのお詫び
 二 告発の広がりと被害女性8名の共同声明、1980青年学社も声明
 三 曹小強の3通目のお詫び、被害女性8名の応答
 四 趙思楽による事件の分析――とくにフェミニスト刑事拘留事件の際の弁護士によるセクハラとの比較

一 「1980青年学社」の曹小強によるセクハラに対する告発と曹の形だけのお詫び

「1980青年学社」は民間の教育団体(NGO)である。1980青年学社は、たとえば今年の夏は、北京・天津と広州で、10日ほど、大学生や高校生を集めて合宿をし、学者や専門家、NGO関係者などの話を聞いて議論をしたり、民間のNGOを訪問したりするなどの活動している(1)。1980青年学社は、この活動を「留学(游学)」と呼んでいるが、これまでもこうした活動をすすめてきた。曹小強は、1980青年学社で、年長の先輩として活動してきた。

ところが、この曹小強が女子学生に対して「微信」(インスタントメッセンジャーアプリの名称)によるメッセージでセクハラをしたことを、今年6月4日、その女子学生の友人が、証拠となるスクリーンショットを付して告発した。そのスクリーンショットによると、曹は、まず詩歌の議論をして、その女子学生に対して「詩歌があまりうまくない」と言い、彼女に「恋愛をしたことがあるのか?」、「セックスをしたことがあるのか?」と尋ねて、セックスの話を持ちかけた。さらに、曹は、性器の写真や男女が性交しているポルノ写真を送りつけ、その女子学生が嫌がっているにもかかわらず、何度もそうした写真を送りつけた。この告発の中には、被害者自身の訴えも書かれており、彼女が言い表すことができないほどの苦痛や驚き、羞恥、恐怖を感じたこと、その後も生活に深刻な影響を受けていること、こうした人が教育界と公益(=現在の中国では、民間のNGOというニュアンスがある語)界にいることが許せないこと、他に被害を受ける女性を出したくないということが書かれていた(2)

6月5日、曹小強は、女子学生に対する謝罪のメール2通を発表した。しかし、それはごく簡単なもので、自らの責任の取り方についても、具体的なことは記していなかった。また、1通目では、自らの行為の原因を「私個人の若年の衝動」に帰しており、2通目では「女性の人格と意思の尊重が不足していた」ことには触れたが、「異性との交際の基準の理解が不当だった」とも言っており、自らの教育者としての身分を利用したことなどには触れていなかった(3)

二 告発の広がりと被害女性8名の共同声明、1980青年学社の声明

上のような曹のお詫びでは、話は終わらなかった。

最初の告発が出てから12時間経たない間に、5人の女子学生が「自分も曹小強にセクハラされた」と訴えた。

そのうちの1人は未成年の高校生だった。彼女は、曹小強から無理やりキスをされ、胸に触られて、強姦されそうになった経験を述訴えた。すると、さらに6時間経たない間に、被害を訴えた女性は合計11人に増えた。

6月7日、そのうち8名の女性が共同声明を出した。

この共同声明では、曹のお詫びのおざなりさや、彼がそのお詫びを自分のネットワークの中には発表せずに自分と無関係な場に発表しただけであること、お詫びの後も上のような被害の訴えが相次いでいることなどを指摘し、「私たちは曹小強のお詫びを受け入れない。以下のことを厳しく要求する」と述べて、次のことを求めた。

1.曹は必ず新たに心のこもったお詫びの手紙を出して、自分の行為が劣悪なセクシュアル・ハラスメントであったことを認めること。

2.お詫びの手紙は必ず自分のSNSの場(影響を及ぼすことができる関係団体・グループの微信の公式アカウント、微博、自分の友人グループを含むが、それに限らない。自分の友人グループでの完全な発表を必ず含むこと)と少なくとも一つの公衆メディア、公益のセルフメディアで発表すること。

3.私たちは、法律にもとづく追加的な処罰をする合法的な権利を保留する。

4.私たちは、セクシュアル・ハラスメント行為についての社会団体の、事件の後の手立てとして、活動の規約に反セクハラ条項を入れ、セクハラ研修をおこない、セクハラ防止システムを構築することを提案する。

5.私たちは、適切な場で、曹のセクハラの常習犯としてのやり口を公開すし、被害者たちのため相互の心理的サポートを提供する。

6.この一連のセクハラ事件は、青年が学習と親善に力を尽くす公益の場で発生したものである。私たちは公益団体が、その流動的で偶発的な教師-学生/権力関係において、参加者の社会経験の乏しさを利用して、セクハラやその他の不法な侵害をしたものであることを重視するように訴える。私たちは公益圏全体がセクハラ防止のための制度の建設を重視するよう提案する。

私たちは以下のように考える。

曹小強はその教育者としての身分を利用として、指導・教育される身分の私たちにセクハラをおこなった。また、未成年の女子学生に対しても少しもはばかることなくセクハラをしており、その性質は劣悪である。その謝罪も、重要な点を避けており、いかなる反省も欠乏している。

曹小強は自分が公益圏の中で被害者よりも「キャリアが長く」、「地位が高く」、「いささか名声がある」という実際状況を利用して、意識的に権力関係を利用して、職権を使って、女子学生の指導者という名目で、女子学生と会ったり、ものごとをする機会を求めたりし、被害者に対して不適切な性の暗示/明示をした。たとえ彼が行政関係上は被害者と直接の関係はなくとも、権力関係上、彼は、居心地の悪い世論・環境を作り出したり、ひそかに報復したり、プライバシーを漏らしたり、デマを流すなどの方法によって、被害者に直接拒絶できなくさせた。公民の自律的な権力関係において上位の者は、権力関係で下位の者に対して自分から性の要求をする権利はない。

社会の構造を顧みることができる公民として、以下のように考える。

私たちは、この事件の本質は、けっして男女のいちゃつきが誤解を生じたことにはなく、権力関係が対等でない下で起きたセクハラ行為であることを見なければならない。権力関係が上の者の性の要求は、権力関係が下の者にとっては誘導と支配を意味する。曹小強は意識的・無意識的に自分の権力関係を利用し、まったく反省することなく多くの女子学生にセクハラ行為をおこない、その後の謝罪の中では、「年が若くて無知だった」という理由でセクハラ行為における支配欲と権力による放埓を覆い隠している。この点はすべての人が警戒し、対策を建てる必要がある。

声明人:8名の曹小強のセクハラの当事者
2016年6月7日(4)

6月7日には、1980青年学社も声明を出した。

1980青年学社声明

まず、私たちの活動グループ全体として再度おわびをする。私たちは曹小強個人の品行のためにお詫びをするのではなく、私たちを信じ、私たちを支えてくれている人にお詫びをする。私たち自身が問題をすぐに発見して適切に処理できず、学生及びその他の人を傷つけたことに、深くおわびをする。

第二に、曹小強の行為は、被害者を傷つけただけでなく、1980青年学社の名誉を大きく傷つけた。私たちは、1980青年学社は、人を用い管理する問題について全責任を負っており、友人各位の批判と提案を聞いて、完全な運営システムを作り上げることを厳粛に声明する。

第三に、私たちは、すでに不断に弁護士・先生・友人各位の援助を求めており、真剣かつ理性的にこの問題を解決する。私たちは、学社に反セクハラシステムを作って、もし学社のメンバーがいかなる類似の問題を起こした場合でも、私たちは全力で調査に協力し、解決のための意見とリソースを提供して、いかなる人であっても庇わず、遊学の安全を守ることを承諾する。この点については、各界の意見と援助を受けて、意見を積極的に採用する。

第四に、1980青年学社は、かつて初歩の段階において、資金・理念・経験・実践などのさまざまな要素の制約を受けていた。第一期の遊学の中で、私たちは曹小強に指導に来てもらい、曹小強も資金の面でサポートしてくれて、第一期の遊学活動の助けになったことがある。だからこそ、第二期の遊学活動をする際にも、私たちは彼を招いた。これについては私たちも承認した。私たちは、彼がかつて援助したことには感謝している。

第五に、曹小強がかつて学社に指導と援助をしたことは否定できないが、1980青年学社の管理クラスではけっしてなかったし、1980青年学社の活動および遊学活動の組織と運営に参与したことはない。私たちは2日前に曹小強のことについて知ったばかりである。彼の行為は、公益人と教育探索者としてのあり方にきわめて反している。1980青年学社は、2016年6月4日以降は、曹小強にはいかなる指導活動にも参与するような招待しないし、いかなる援助と参与も拒絶する。私たちは夏の北京・天津の遊学活動は、予定通りおこなう。(以下略) (5)

三 曹小強の3通目のお詫び、被害女性8名の応答

6月8日、曹小強は、以下のお詫びを発表した。

すべての人へ

私、曹小強は、被害を受けたすべての女性とこの事件に関心を持っているみなさまに対して深いお詫びの意を表明する。

私は、私の行為が劣悪なセクシュアル・ハラスメントだったことを認める。2013年から、私は、インターネット上で言葉によって、20人あまりの女性に次々にセクシュアル・ハラスメントをした。この一連の事件において、私は主に言葉、写真、動画などを利用するやり方で、自分のSNSアカウントを使って、女性たちに対して公然と言葉によるからかいと侮辱をおこなって、心理的な満足を得ようとした。さらに一部の女性に対しては、彼女たちが望んでいない状況の下で、公の場で身体の接触をした。

ここに、インターネット上に既に共同声明を発表している8名の女性に対して、心から申し訳ありませんでした、と述べる。同時に、まだ共同声明に名前を出していない被害者、および名前を出すことを望まない人に対しても、私がお詫びの意を伝える機会を与えていただくことを希望する。私はすべての懲罰を受け賠償をしたいと思う。

この3年間、私は自分の行為がセクハラになっていることを意識しておらず、2015年になって、私は自分のこのような行為は私に心理的問題があるかもしれないとある程度意識しはじめたが、恐るべき惰性になっていたために、今日のようにコントロールできない程度になり、6月4日、この事件が明るみに出た。そのとき、私はどうしてよいかわからず、どうすべきかを知らず、一度はそこから逃れようとした。数日間の反省を経て、現在私は、事件が起こした劣悪な影響がよくわかった。また、この事件の背景にある私の心理上の良くない、暗い、完全に間違った認知や、非常に低俗な、女性に対してまったく尊重しない誤った認識については、いっそうわかった。さらに私が自分の指導者・文化人・思想家という役割を利用・標榜して、性別・年齢・キャリアの差によって自分を飾り立てていたことが、私がセクハラをする道具になった。

現在、私はすでに社会におけるすべての職務・仕事・事務を停止している。私がかつて職務に就いたり勤めたりしたすべての組織と企業に対して、私は深くお詫びをする。私は、あなた方の信頼と期待に背いた。私がひそかに女性に対してハラスメントをしたために、それらの組織は私の行為についてずっと知らなかった。だから、私はほしいままに出鱈目なことをし、最後には大きな誤りをしでかしたのである。

私は私がこれまでに傷つけた女子学生に対して、すべての責任を取りたい。それは以下の点を含むが、これらにとどまらない。

1.すべての被害者にお詫びする。また、このお詫びの手紙は私の自身の友人グループなどのSNS上でおこなう。

2.負うべき法律的責任を負う。

3.女子学生が求める心理的援助の費用と精神的損失の賠償をする。

4.第三者の、信頼性がある場でも発表する。

5.社会各界からの譴責と批判を受け入れる。

6.心理の医者の治療に積極的に協力する。

7.正面から責任を引き受け、逃避や責任逃れをしない。

同時に自分が泣いてお詫びを述べている動画も公表した(6)

この謝罪を受けて、6月9日、先に共同声明を出した被害者8名は、以下の応答を発表した。

私たちは、最大の善意によって、曹小強のこのたびの謝罪が自己反省の意識を持ち、私たちの訴えも尊重したものであると信じる。慎重な考慮を経て、私たちは曹小強の謝罪を受け入れることに決定し、今後曹小強が彼の承諾したことを一つ一つ実現するよう希望する。私たちも、適切な方法で彼が自分の承諾したことを実行するかを監督する。また、曹小強が謝罪の手紙の中で、「この三年間、私は私の行為がセクハラになっていると意識していなかった」と反省しているのであるから、私たちは彼が主体的に反セクハラワークショップに参加し、この面の認識を強めることを望む。私たちも彼に具体的なワークショップの情報を提供できる。

承諾の中の第3条の「女子学生が心理的援助のための費用と精神的損失の賠償をする」という点に関しては、多くのセクハラ事件は発生して数年がたっているが、現在また明るみに出されたため、当時心理的な傷を負った女子学生が自己の損失をあらためて評価しなければならない。また、一部の当事者はいまなお精神的・心理的な悩みを抱えている。私たちは、各自の具体的情況にもとづいて、いっそう意思疎通と相談をして、具体的な賠償の案を作成する必要があると考える。私たち以外の被害者に対しては、曹小強はお詫びの手紙の承諾のとおり、彼女たちと連絡を取り、誠実に謝罪と相応の賠償をするべきである。

最後に、私たちはまだ法に訴える合法的な権利を放棄していない。

私たちは、曹小強に対して人身攻撃や報復をするつもりはなく、ネット上で彼に対する悪意の推測がおこなわれることも望まない。しかし、私たちがいっそう望まないのは、私たちが公けしたことによる二次被害を受けることである。私たち女子学生に対してエリート的な説教や悪辣な攻撃をする人は、セクハラは社会問題であり、曹小強一人だけが「悪魔」なのではなく、私たちのような被害者は珍しくないということを認識してほしい。私たちを攻撃しているとき、あなたがたの身の回りの女性――それは娘や妻、母親かもしれない――も、セクハラにあったことがあるか、あっている危険がある。

私たちは、セクハラ事件に関心を寄せる人は、まず何がセクハラであるかをはっきり認識して、セクハラの形態は多様で、情況は複雑であることを知ってほしいとずっと思っている。(……)

ある人は、公の場で公然と他人にセクハラをする。たとえば、公の場で身体をさらけ出したり、微博で言葉によるセクハラをする。ある人は、公の場では、自分のイメージを良くするよう気をつけているが、私的に被害者と一人で接触するときには、行きすぎた性の要求をする。けれど、事件が発覚すると、彼らの今までのよいイメージによって、公衆は彼に同情しがちだ。しかし、私たちは必ずセクハラという事実自体を正視しなければならないと考える。過ちや罪を犯した人の良いイメージは、彼に免責を与える特権にはなりえず、年が若いことも、すぐれた才能も、後ろ盾も、特権になりえない。もしこれらのいわゆる技能が免責の通行証になるのならば、この社会は何の公正さがあると言えるのだろうか。

(……)私たちは、こうした議論が多くの人にセクハラの危険性を認識させ、セクハラ防止措置と正しいジェンダー教育が広く採用されることにつながることを望む。(7)

四 趙思楽による事件の分析――とくにフェミニスト刑事拘留事件の弁護士によるセクハラ事件との比較

フェミニストの趙思楽さん(2014年に、セックスワーカーを裁判なしで拘留できる「収容教育制度」についての情報公開申請を、裁判という手段を含めておこなったことで有名な女性)は、今回の曹小強によるセクハラ事件について、「事件の勃発から基本的解決まで1週間もかからなかった。その過程では被害者を責める言論もあった(8)とはいえ、去年の『フェミニスト事件』弁護士セクハラ事件と比べて、その結果も、速度もずっと良かった」と評価した。

「『フェミニスト事件』弁護士セクハラ事件」とは、以下のような事件である。

2015年3~4月、フェミニスト活動家5女性が刑事拘留される事件が起きたが、その際、彼女たちについた王秋実弁護士が、職権を利用して、当事者の家族や仲間に対してセクハラをおこなったことが明るみに出た。5人の拘留中は、捕まっている人の救援に悪い影響があることを怖れて被害者や支援者も黙っていたが、フェミニストで5人の支援者の一人である猪西西さんが公開書簡を出して、王弁護士に対して、公に声明を出して謝罪し、二度とそうしたことをしないことを表明するよう求めた。

ところが、多くの人は、それに対して、「なぜこの公開書簡を出す必要があったのか」、「この書簡が王秋実に対してどんな影響を与えるのか心配だ」などと言った。

こうした状況に対して、やはりフェミニストで5人の支援者の肖美腻(肖美麗)さんは、「私は性暴力に反対する活動をしているので、被害者を責めるロジックはよく知っている」が、「ほんとうにフェミニズムの話題が私たち自身に起きたときの、多くの友人の行為には、失望したし、辛かったし、傷ついた。」「もし私たちがセクハラを受けても声をあげることさえしなければ、その反セクハラ運動の意義はどこにあるのか?」と訴えた。

4月23日、王弁護士は声明を出して謝罪し、二度とこうした事件を起こさないと述べた。

しかし、猪西西さんや肖美腻さんは、この声明は、セクハラを「冗談」だと言って、自分の職権を利用したことも反省していないので、「お詫びではなく、弁解だ」と批判した。さらに、彼は、別の場では、批判について「意に介していない」、「どうしようもない」と言っているのに、彼が所属する北京紀安徳(紀安徳=ジェンダー)相談センター(LGBT団体)は、彼を「給与停止と反省」ですませたことも批判した(本ブログの記事「フェミニスト活動家5女性の釈放とその後の困難、闘い、弁護士によるセクハラ」参照)。

しかし、猪西西さんや肖美腻さんの訴えは、受け入れられることなく現在に至っている。

趙さんは、「『フェミニスト事件』弁護士セクハラ事件は、集団のセクハラに対する容認度が低く、声を上げる自覚が強かったからこそ、明るみに出た。実際は、民間グループでのセクハラと性差別という現象はよくあることなのに、大部分はうやむやになっており、公になることさえ少ない。このたびの曹小強のセクハラ事件をこのような結末にすることができたことは、現在のところ最も良いセクハラの解決の事例だと言いうる」と述べた。

趙さんは、今回の事件が良い結果になった原因には、客観的な要素もあるし、処理のプロセスが妥当だったためでもあると言う。

趙さんは、「客観的な要素」としては、以下の2点を挙げている。

(1)この事件が基本的には公益教育領域の内部で発生しており、異なる集団の相互関係という要素はなかったこと。王秋実のセクハラ事件は、フェミニストグループと人権派弁護士グループとの両者が関係していて、事件が最初からグループ間のある程度の不信と衝突を引き起こした。

(2)曹小強は公益教育領域の中で「一定のキャリアのある先輩」にすぎず、「業界内の有力者」ではなかったこと。しかし、問題が、リソースを掌握していたり、ジャンルを象徴する名誉ある人物に向けられたら、どのような結果になるだろうか? この点は検証する必要がある。

趙さんは、「処理のプロセス」という要因に関しては、以下の2点を挙げている。

(1)もっとも力になったのは、被害者が共同で声を挙げて、権利を守ったことである。それによって相互のサポートと保護ができたし、問題の重大さが体現でき、訴えの力が倍増した。

(2)当事者の友人や曹小強と関係がある機構が、事件の勃発から、隠しだてをするのではなく、援助を求めることを選択し、彼女たちが相談したジェンダーと法律の専門家、NGO内部のセクハラ問題を処理した経験のある公益人(9)が、問題を解決する上で不幸を生じさせなかった。

趙さんは、「全体として言えば、民間のセクハラ問題については、以前は沈黙が守られていた。『フェミニスト事件』弁護士セクハラ事件で沈黙は破られたが、権利を守るのは難しかった。しかし、『曹小強事件』では、是非の上では基本的に解決した。比較的早く欧米のNGOの活動規範と倫理に接触した公益領域で真っ先に前進があったのは、女性の権利団体の過去20年間における研究や意識の養成と不可分である」と述べた(10)

趙さんの分析に付け加えれば、王秋実弁護士の事件の場合は、今回よりも、運動がより体制批判的で、権力からより強く弾圧されている中での事件だったために、加害者への追及がやりにくかったという背景もあるように思う。

日本においても、「労働運動でもその他の社会運動でも、野宿の問題でも、もうセクハラだらけモラハラだらけ」(11)と言われるような現状がある。また、最近の東京都知事選の野党共同候補のセクハラ疑惑についての発言の中にも、性暴力を軽視した見地からのものが少なくなかったことが指摘されている。

そうした意味では、社会運動内部のセクハラは、日本も中国も取り組みはまだ端緒的だし、それだけに、お互いに参考にしうる経験があるだろうし、ともにそうした経験を積み重ねていくことが求められていると思う。

(1)@兔子走丢了「 1980青年学社暑期游学招募(京津部)(报名截至5.20) 」NGOCN(公益服务网)5月12日 12:15、@兔子走丢了「1980青年学社暑期游学招募(广州部)(报名截至5.31)」NGOCN(公益服务网)5月12日12:04。
(2)曹小强?懒叔?青年才俊?性骚扰女同学你还要不要脸」青年思潮2016年6月4日。
(3)8名曹小强性骚扰事件当事人联合声明」女权之声的博客2016年6月7日 18:47、「8名曹小强性骚扰事件当事人联合声明」女权之声的微博 2016年6月7日 18:47。
(4)同上。
(5)1980青年学社声明」微头条2016年7月16日 05:54。
(6)以上は、@豆沙边「独家:曹小强回应性骚扰事件」NGOCN(公益服务网)2016年6月8日 18:14:55より。
(7)以上は、「公益圈性骚扰丑闻8名受害人联合声明:性骚扰概念急需普及」新媒体女性的微博2016年6月9日 21:13:12。
(8)この点は、上の被害者8名の応答の中でも触れられている点だが、公開された微信のやり取りを見て、「被害者があまりきっぱり拒絶していない」と責める人などがいたようだ。それに対しては、加害者と被害者の地位や権力の違いを見落としている、などの批判がなされている(「问句“约吗”有多难? | 公益界性骚扰丑闻男方公开道歉」新媒体女性2016年6月8日 18:04:28)。
(9)1980青年学社の夏季遊学の指導者の中に、趙思楽さんが「フェミニスト活動家、コラムニスト」という肩書きで名を連ねている。また、黄葉韻子(黄葉)さんも、「大学読書サロン黄油詩社の一人、フェミニスト行動派」という肩書きで名を連ねている(@兔子走丢了「1980青年学社暑期游学招募(广州部)(报名截至5.31)」NGOCN(公益服务网)5月12日12:04)。黄葉韻子(黄葉)さんは、2015年に、うつ病の治療方法にもジェンダーバイアスがあることや、女性には外出やスポーツが奨励されない状況を批判するために、北京から広州までの徒歩旅行を試みたことで有名である(本ブログの記事「林鯨らの『性暴力反対・海南島一周自転車ツアー』と黄葉らの『直男癌に抗する、うつ病女性のフェミニズムウォーク』(北京~広州)」参照)。彼女たちが力になったのかもしれない。
(10)以上は、赵思乐「思乐女谈 -性骚扰的民间解决方案」東網2016年6月11日。
(11)[共同討議] 山下耕平、馬野骨介、高橋淳敏、野崎泰伸、上間愛、生田武志、栗田隆子「『自立』そして『支援』とは何か―反貧困運動と自立支援をかえりみる」(『フリーターズフリー』第3号)の馬野骨介の発言より(16頁)。
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広州地下鉄にクラウドファンディングによって痴漢反対ポスターを掲示する試みなど――2016年の女性たちの公共交通での痴漢反対運動

目次
はじめに――2012年~2015年の痴漢防止措置の要求運動
一 人民代表大会と政治協商会議の議員への痴漢防止措置要請
二 広州地下鉄にクラウドファンディングによって痴漢反対広告を出す運動
 1.地下鉄が措置を取らないので、自分たちでクラウドファンディング
 2.広州市交通管理委員会への申し入れ
 3.フェミニスト行動派の役割と彼女たちの微博の一時封鎖
おわりに――日本の痴漢撲滅ポスター、公共広告のあり方など

はじめに――2012年~2015年の痴漢防止措置の要求運動

広州市では、地下鉄での痴漢の問題について、2012年9月、若い女性が広州地下鉄に痴漢防止措置を求める署名を利用者から集める運動をしたり、柯倩婷さん(中山大学中文系副教授)が広州市交通管理委員会と広州地下鉄総公司に対して、痴漢防止措置について情報公開申請や建議をおこなったりした(本ブログの記事「各地の弁護士・市民が地下鉄会社に対して痴漢防止策の建議・署名運動」参照)。

また、2014年11月には、中山大学の女子学生の万欽(万青)さんと市民の于磊さんが、広州市交通管理委員会に行って、「公共交通でのセクシュアル・ハラスメントの防止についての建議の手紙」を手渡した(これは、前年の柯倩婷さんの建議の内容とほぼ同じだとのことだ)。12月には、万欽さんと于磊さんを含む5人が、広州市の交通管理委員会、地下鉄総公司、旅客輸送管理処、公安局(地下鉄分局・公共交通分局)と会談し、職員の研修などの点で前向きの回答を得た。その中で、万欽(万青)さんらの「痴漢防止の宣伝を強化する」という提案については、市の交通管理委員会と市の旅客輸送管理処の代表が、「もし婦女連合会が宣伝活動を主導して、ポスターや標語、ビデオ広告などの宣伝材料も提供してくれるなら、宣伝スペースを提供したい」と述べた。

同年の年末には、「フェミニスト行動派 (行動派フェミニスト、女権行動派)」の微博(中国版ツイッター)が、バスや地下鉄のセクハラ反対運動をするためのボランティアを募集し、来年、広州や杭州、北京などで活動をおこなうと述べた(以上は、本ブログの記事「広州で若い女性たちが公共交通の痴漢対策について交通管理委員会、地下鉄公司、警察、婦女連合会などと会談――各地で『赤ずきん』姿で痴漢・セクハラ反対活動」参照)。

毎年2~3月、中国では各地および全国の人民代表大会や政治協商会議が開催される。中国のフェミニストたちは、この2つの会(両会)の代表や委員(日本で言う議員)たちに向けて、女性のための政策を提案してもらうよう働きかけをおこなう。

2015年1月、万欽さんたちは、広州市の人民代表大会の代表に、彼女たちが書いた「公共交通のセクハラ防止メカニズムを構築する建議」を審議するように求めて、119通の書留と140通の電子メールを送った(1)

その結果、多くの代表が彼女たちに回答を寄こして建議に関心を示し、その半数近い人が、大会に提案か建議を出すことを考えたいと述べた(2)

ところが、フェミニスト活動家5女性が、国際女性デー前日(3月7日)にバスの中でステッカーを配布するなどの痴漢反対アクションを計画していたところ、3月6日~7日に、警察に拘束される事件が起きた。

彼女たちは4月に釈放されたが、その後、こうした若い行動派フェミニスト(フェミニスト行動派)の活動は非常に困難になった。

一 人民代表大会と政治協商会議の議員への要請

しかし、2016年も、全国のフェミニストが、人民代表大会の代表や政治協商会議の委員に公共交通の痴漢対策についての議案を提出するよう要請する手紙を送った。

すなわち、2月2日、全国8の省・市のフェミニストらが、10あまりの省の郵便局から合計一千通余りの公共交通の痴漢防止システムを作る提案を提出してもらうよう建議の手紙を出した(3)

広州、淄博、重慶など8地の十人余りがこの活動に参加した。その中の一人の張累累さん(仮名)がこの活動に参加したのは、「メディアで女性が痴漢にあったという報道がしょっちゅうあります。また、自分がバスや地下鉄に乗ったときの経験からも、公共空間にはこういう多くのまだ明るみに出ていない危険が存在しており、女性にきわめて大きな不安を与えています。しかし、有効な救済システムはないので、痴漢にあっている女性はいつも助けがない状況に置かれています」という理由からだった(4)

この手紙の中で、彼女たちは、以下のような建議をおこなった。

1. 交通部門は、公共交通関連部門にセクハラ防止工作制度を制定するよう督促すること。この制度は以下の点を含む。防止の原則、訴えへの対応、職責の分担、処置のプロセス、監督・審査など。また、この制度を、下級の会社の従業員の研修と審査に組み込むこと。

2. 交通部門は、公共交通関連部門に従業員のセクハラ防止研修をおこなうよう督促すること。研修の中では、次のことをおこなう。・会社にはセクハラを防止する法定の義務があり、従業員は会社を代表してこの義務を履行することが自分の仕事の責任であることを知らせる。・セクハラに関する認識の誤りを正す(「露出が多いとセクハラが増える」など、研究や証拠によって誤りが証明させているいわゆる「常識」を正すことを含む)。・従業員のセクハラ防止業務の分担とプロセスを明確にする。・セクハラ事件に応対する具体的な方法を訓練する。

3. 公共の場所、公共交通の乗り物に、セクハラの訴えの方法を設置・公表する。たとえば、ホットラインを設置し、処理の責任者を公表して、それをバス・地下鉄の目立つ場所に貼る。

4. 簡単に証拠をつかむ手段を設置する。現在、わが国の大多数の公共の場所と公共交通の乗り物には監視カメラがあり、痴漢が発生したら重要な証拠を提供できる。被害者が録画を調べる必要があるときには、責任者が簡単に証拠をつかむ手段を提供すること。

5.セクハラ防止の宣伝を強める。バス・地下鉄の中に不法分子を震え上がらせるスローガンを貼ると同時に、市民に主体的に制止あるいは通報することを呼びかける、たとえば、「セクハラは違法行為です、制止と通報にご協力ください」などと。

6.セクハラの「首問責任制 (最初に対応した職員が最後まで責任を持って対応すること)」を実行する。職員はセクハラの訴えを受けたら、直ちに制止して、加害者を取り押さえ、証拠を固め、すぐに警察に通報して、被害者にその他の必要な援助を提供しなければならない。

7.微博(中国版ツイッター)のセクハラ防止の窓口としての機能を強化する。微博でセクハラ防止の訴えの方法を公表し、積極的に回答をし、微博上でのセクハラの訴えを処理する。被害者を責めたり、乗客の私的言論を暴露したりすることを杜絶し、公衆の監督を誠実に受け入れる。

8.先進国・地域の公共の場の痴漢防止に関する合理的なシステムを参照する。

9.公安部門と交通部門が協力して、公共運輸関連部門に痴漢防止措置の整備を急がせること。(5)

以上の建議は、2014年11月の万欽(万青)さんと于磊さんの広州市の交通部門に対する建議と内容はほぼ同じである。ただし、緑色の箇所が変更ないし付加されている。この点は、一つには、2014年11月の建議は広州市の交通部門に対するものであったのに対して、今回は、国の交通部門に対するものだったからであろう。また、「4」の点は、中国におる監視カメラの普及と関係があるのかもしれない。

張累累さんは、「もうすぐ春節です。人民代表大会の代表が手紙を受け取ったら、返事やフィードバックをしていただくとともに、女性の権益のために的確な行動をして、女性が安全な空間の中で生活できるようにしてほしいと思います」と述べた(6)

これに対して代表たちがどのように反応したかについての報道は見当たらない。実際に回答がなかったのか、回答があっても報道されなかったのかは不明だが、この点は、前年のフェミニスト5女性の刑事拘留以降の運動に対する抑圧の強化と関係しているのかもしれない。もっとも、馮躍さんという男性の代表が、この年、全国人民代表大会で公共交通の痴漢問題で立法の提案をしているが、これは法律上の責任や賠償の問題で改善を図る提案であり(7)、彼女たちの建議とは少し異なるもののようだ。

二 広州地下鉄にクラウドファンディングによって痴漢反対広告を出す運動

1.地下鉄が措置を取らないので、自分たちでクラウドファンディング

2016年の3~4月には、「F女権小組」が、広州の地下鉄で公共空間でのセクハラ(痴漢)に反対する公益広告を出すためのクラウドファンディングをおこなった。「F女権小組」とは、広州で《陰道之道》(ヴァギナ・モノローグスの中国語版)の上演活動などをしてきたグループである。

F女権小組がこのクラウドファンディングをしたのは、「国内のフェミニストの仲間が公共空間のセクシュアル・ハラスメントに反対するために政策提言活動をたくさんしているにもかかわらず、関係部門は何の行動しない」という状況に対して、「それなら、自分で広告スペースを買って地下鉄の状況を少しでも変えたほうがよい」と考えたからだ。

以前から中国のフェミニストも指摘しているように、外国には痴漢を制止するための公共広告がたくさん出されている(8)

彼女たちは、まず3月8日―3月15日の期間に、広告のスローガンを募集した(9)

彼女たちは、広州地下鉄の乗降客の多い「S級」・「A++級」と呼ばれている駅に3.5m×1.5mの横長の広告を出そうと計画し、そのために4万元集めることを目標にクラウドファンディングをおこなった(10)

F女権小組は、資金集めのためのパーティーも4月24日におこなうと発表している。その呼びかけ文やポスターは、「みだら (騒)」という言葉を前面に打ち出している。これは2012年に上海地下鉄の痴漢反対パフォーマンスアートで唱えられた「私はみだらでもいいが、あなたのセクハラは許さない」というスローガンとも関係があろう。このパーティーでは、バニーガールや民謡歌手が出演したり、仮装高潮大会をするなど、いろいろ企画が立てられたようだ(11)

彼女たちは、4月27日までに、1100人余りの人から3.8万元あまりを集めることができた。また、デザイナーは無償で広告のデザインをしてくれた。資金を出してくれた多くの人は収入のない大学生であり、数元、数十元を寄付してくれた(12)

2.広州市交通管理委員会への申し入れ

彼女たちは、上述のように2014年12月に、市の交通管理委員会(市交委)が「もし婦連が私たちに痴漢に反対するスローガンとポスターを提供するなら、私たちは宣伝の方法とスペースを提供してもいい」と述べたことを思い出した。宣伝に参加した高原さん(仮名)は、「私たちにはもうデザインのプランがあるのだから、市交委に行って、本当に私たちにスペースを提供するのか尋ねたほうがいい」と述べた。

4月28日、3人の青年が広州市交通管理委員会陳情事務局に行って、広州の公共交通でセクハラ反対の宣伝をするよう要求し、公共交通の中にセクハラ防止システムを作ること、ジェンダー平等意識を有する公益広告を出すよう申し入れた(13)

彼女たちは、「誘惑は言い訳にならない。痴漢をやめろ」というスローガンの入ったポスターのパネルを持って行った。そのポスターでは、痴漢の手を女性の手がつかみ、周りの者たちが「やめろ!」「やめろ!」「やめろ!」と声をかけている(写真はこの記事の一番上→「广州公共交通工具应加强反性骚扰宣传」)(14)

市交委の陳情事務局の人は、このことを指導部に知らせた。市交委は1時間議論し(彼女たちは、その間待って)、建議の手紙を受け取ったものの、明確な回答をせず、15日以内に受理するか否かを考え、60日以内に処理した結果を考えると述べるにとどまった。

張累累さんはクラウドファンディングもおこなってきたのだが、彼女は、「私や私の身近な友人を含めた多くの女子学生は、みな痴漢にあったことがありますが、有効なサポートをいつも得られていません。これが、私たちが何とかして現状を変えたい理由です」と述べた(15)

張累累さんによると、セクハラ反対運動をする仲間は2~30人いて、その大部分は大学を卒業後あまりたっていない1990年代以後の生まれで、少なくない人が自分自身か周りの友人が痴漢に遭ったことがあるという。張累累さんは1993年生まれで、去年武漢大学の出版専攻を卒業して、今は広州で生活している(16)

残念ながら、彼女たちが申し入れをした後、進展があったという情報は見当たらない。

たしかに2014年に広州市交通管理委員会は宣伝スペースを提供したいと述べた。しかし、それは官制の女性団体である婦女連合会がポスターなどを提供することが前提だった。純粋の民間グループがポスターを作成しても、掲示はできないということなのだろうか?

3.フェミニスト行動派の役割と彼女たちの微博の一時封鎖

このクラウドファンディングと広州市交通管理委員会への申し入れに関しては、「フェミニスト行動派(女権行動派)」の微博アカウントとヴァギナ・モノローグスの中国語版の上映運動をおこなった「F女権小組」が中心的な役割を果たしている。ここから見て、行動派が中心になって行った活動だと考えられる。

ところが、上の運動をすすめている最中の3月末、フェミニスト行動派(女権行動派)の新浪微博のアカウント「女権行動派更好吃(女权行动派更好吃、女権行動派はますますおいしい)」が抹消された。新浪微博のユーザーサービスセンターは、その理由について、「有害情報の発信などの規約違反をしているから」だと述べた。行動派の女性が運営してきた「AntiPETD女権博士組織」のアカウントもログインできなくなった。

張累累さんは、「この微博は、フェミニズム活動とフェミニズムの文章以外の情報は発信してないのに、不当だ」と思った。張累累さんたちの分析によると、その原因は、最近、「広州地下鉄の反セクハラ広告のクラウドファンディング」をしたことかもしれないと言う(17)。この活動は、現在のところ、広告費のクラウドファンディング以外の行動はしていないのだが、彼女たちの一人の友人は、この活動のために、警察が家に来たという(18)

やむなく張累累さんは、「女権行動派吃不完(女权行动派吃不完、女権行動派は食べきれない)」(これは、女権行動派抓不完[女権行動派は捕まえきれない]のもじりで、弾圧に屈しないという意味が隠されている)という新しいアカウントを登録しようとした。だが、「このニックネームは登録できない」という表示が出た。張累累さんは、さまざまな似たような名称を試したが、「女権」という二字が入っていると登録できない。「人権」の二文字が入っていても登録できるのに、「女権」ではだめなのだ。張累累さんは、やむなく「権(权)」の文字を「木」と「又」の2つに分けて、「女木又行動派吃不完」という微博を登録した(19)

この事件は、日本の『朝日新聞』でも取り上げられた(20)

趙思楽さんは「『女権』が禁句(敏感詞、政治的にデリケートな言葉)になった」と述べた。趙さんぱ、中国の公式の場では、「婦女」が最も使われ、「男女平等」がそれに次ぎ、「女性の権益」「女性の権利」はあまり使われず、「女権」や「ジェンダー平等」はほとんど使われないことなどについて分析している(21)。ただし、4月13日には、「女権行動派吃不完」アカウントの登録に成功し、現在も発信を続けているので、「女権」の語が登録できないということ自体は一時的な現象だったようだ。

また、地下鉄に広告を出すためのクラウドファンディングに関しても、反逼婚広告を出すためのクラウドファンディングは、表現こそ穏健にされたものの、弾圧はされていない(「家族などからの結婚圧力(逼婚)を批判する若い女性たちの運動――2014年~2016年」参照)。

とすると、この微博に対する弾圧は、当時おこなわれた広州地下鉄に痴漢反対広告を出す運動が、微博アカウント「女権行動派」が前面に出た行動であり、前年に刑事拘留の口実にもされた公共交通での痴漢反対運動だったことと関係がありそうな気がする。

おわりに――日本での痴漢撲滅ポスター、公共広告のあり方など

日本では、警察などによって痴漢撲滅を呼びかけるポスターが鉄道に貼られている。しかし、「『痴漢撲滅系ポスター』調査プロジェクト」(ツイッター)は、それらにはさまざまな問題点があることを指摘している(具体例の分析)。

それらに比べて、F女権小組が作成したものは、効果のほどは不明だが、被害者非難を含まないのはもちろん、強姦神話も批判しており、口調やデザインからは、真剣に痴漢をなくそう意図がストレートに伝わっているように見える。

日本でも民間の女性団体・人権団体がこうした広告を出す試みがあってもいいように思える。ただし、日本では公共広告と言えば、ACジャパンなどが出すものであり、民間団体が出すものではないと思われている。この点がネックになるのだろうか? だとしたら、それでいいのだろうか?

「意見広告」として出す方法はあるかもしれない。しかし、公共交通機関は、意見広告を掲載することをあまり認めていないように思う。それ自身正当かどうか疑問だし、痴漢反対の広告は政治的な意見広告と同一に扱うべきではないとも思う。日本では、前回取り上げた「逼婚(父母などからの結婚催促・強要)」に反対するポスターを公共交通機関に掲示することも難しいのではないか。

もう少し調べてみる必要があるが、こんな疑問が出てくる。

といっても、日本ではすでに曲がりなりにも公的機関に痴漢撲滅ポスターを作らせる段階にいっており、実際、欧米では日本よりきちんとした痴漢反対のポスターなどもあるのだから、いま日本で最も大切なのは、痴漢取り締まりをしている警察などに正確な認識を持ってもらい、効果的なポスターなどを作らせることだ、とは言えるのだろうが‥‥。

(1)女乘客游说人大代表建立公共交通性骚扰防治机制」2015年1月16日 13:15:42 (来源:女权行动派很好吃微信公众账号)。
(2)防治公共交通性骚扰 从立法做起 数名人大代表阳光回复女乘客公共交通性骚扰建议信」女权行动派很好吃的微博2015年1月29日 16:32
(3)女权行动派很好吃「反对公交性骚扰,TA们给一千多名人大代表寄了信」女权之声的微博2016年2月4日 14:12
(4)八地青年致信千余名人大代表:我们要公交防治性骚扰机制」就业性别歧视监察大队 2016-02-03 20:05:30。
(5)女权行动派很好吃「反对公交性骚扰,TA们给一千多名人大代表寄了信」女权之声的微博2016年2月4日 14:12
(6)八地青年致信千余名人大代表:我们要公交防治性骚扰机制」就业性别歧视监察大队 2016-02-03 20:05:30。
(7)全国人大代表建议完善公共交通性骚扰立法」南方网2016年3月30日 20:22:43(来源:重庆时报)。
(8) 以上は、F女权小组「广州地铁反性骚扰广告众筹」女权之声的微博2016年3月16日 11:42。
(9)女权行动派很好吃的微博3月10日 20:38
(10)广州地铁反性骚扰广告众筹
(11)F女权小组「【广州反性骚扰愁款趴】4月24日晚体育西路, 购票即送醉熊!」2016年4月24日。
(12)广州公共交通工具应加强反性骚扰宣传」新快网2016年4月29日。
(13)女权行动派吃不完「90后青年约谈广州市交委,要求公交反性骚扰宣传」女权之声的微博4月28日 15:07
http://weibo.com/ttarticle/p/show?id=2309403969253463207504→(ほぼ同じだがタイトルなど変更) @小田切菜「90后女生约谈广州市交委,要求公交反性骚扰宣传」2016年4月28日 15:13:22
(14)广州公共交通工具应加强反性骚扰宣传」新快网2016年4月29日。
(15)以上は、女权行动派吃不完「90后青年约谈广州市交委,要求公交反性骚扰宣传」女权之声的微博4月28日 15:07 http://weibo.com/ttarticle/p/show?id=2309403969253463207504→(ほぼ同じだがタイトルなど変更) @小田切菜「90后女生约谈广州市交委,要求公交反性骚扰宣传」2016年4月28日 15:13:22
(16)广州公共交通工具应加强反性骚扰宣传」新快网2016年4月29日。
(17)女权之声的微博【“女权”二字不能提,新浪微博这是要封杀女权?!】3月31日 12:17
(18)趙思樂「思樂女談:當「女權」成為敏感詞」東網2016年2月4日。
(19)女权之声的微博【“女权”二字不能提,新浪微博这是要封杀女权?!】3月31日 12:17
(20)(消される言葉 天安門事件から27年)デモ参加後、消えた戸籍」朝日新聞デジタル2016年6月2日。
(21)趙思樂「思樂女談:當「女權」成為敏感詞」東網2016年2月4日。
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