2015-04

国連女性差別撤廃委員会の中国政府第7次、第8次合併レポート審議・総括所見とNGO

<目次>
一、中国のNGOと女性差別撤廃委員会
 1.中国大陸のNGOが初めて政府レポート審議の際にシャドウレポート提出――全国婦連傘下の中国婦女研究会から独立したレポートも初めて出現、政府を厳しく批判
 2.女性差別撤廃委員会とNGOとの非公式会談
 3.「女性抗エイズネットワーク-中国」の王秋雲さんは出国を妨害され、出席できず
 4.国内で女性差別撤廃条約に関心を集めようとした葉海燕さんへの弾圧
二、中国の政府レポートの審議詳細――シャドウレポートが力に。まともに質問に答えない中国政府側
三、女性差別撤廃委員会の総括所見
おわりに

昨年(2014年)10月20日から11月7日まで、第59会期女性差別撤廃委員会が開催され、同委員会は中国政府の第7次、第8次合併レポートを審議して、総括所見を出した(1)

中国政府レポートの前回の審議がおこなわれたのは、2006年8月の第36会期だったので(本ブログの記事「国連の女性差別撤廃委員会、中国政府に最終コメント」参照)、今回は8年ぶりの審議だった。

一、中国のNGOと女性差別撤廃委員会

1.中国大陸のNGOが初めて政府レポート審議の際にシャドウレポート提出――全国婦連傘下の中国婦女研究会から独立したレポートも初めて出現、政府を厳しく批判

中国政府レポートは2012年に出されたが(「审议缔约国根据《消除对妇女一切形式歧视公约》第十八条提交的报告 缔约国第七次和第八次合并定期报告 中国」)、今回は、中国大陸のNGOも初めてレポート(「NGOレポート」、「シャドウレポート」、「オルタナティブレポート」、「カウンターレポート」などと呼ばれる)を出した。

1999年に女性差別撤廃委員会が中国政府レポートについて審議したとき、NGOの席には、若い中国女性2人の姿があっただけだった。当時は、中国大陸のNGOには、まだシャドウレポートを書くだけの専門的能力や勇気がなく、その2人はウォッチャーとして参加していた。

2006年に女性差別撤廃委員会が中国政府の第5次、第6次レポートを審議したときは、女性メディアウォッチネットワーク、家庭内暴力反対ネットワーク、北京大学女性法律研究・サービスセンターという3つのNGOが人員を派遣して参加した(本ブログの記事「女性差別撤廃委員会と中国のNGO」参照)。

ただし、このときも各NGOは、シャドウレポートは提出しなかった。「Human Rights in China(中国人権)」や「チベット女性協会」のような国外に拠点を置くNGOが提出した中国の女性の状況についてのレポートはあったが(本ブログの記事「チベット女性の状況」など参照)、中国大陸の団体が中国政府のレポートに対置して書いたレポートはなかった。

今回、中国についてのシャドウレポートは合計47本出ており(香港の団体が香港の状況について述べたものを含む)、それらは国連人権高等弁務官事務所のサイトに掲載されているが(CEDAW - Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women 59 Session (20 Oct 2014 - 07 Nov 2014) の「China」の「Info from Civil Society Organizations」の箇所をクリックすると出て来る)、そのうち13本は、中国大陸のNGOによるものだった(2)

中国大陸のNGOによるシャドウレポートは、おおまかに2つのグループに分けることができる。

第一のグループは、中華全国婦女連合会傘下の中国婦女研究会と結びついたNGOによるものである。これらのレポートは、各団体で女性差別撤廃条約の条文を分担して、それぞれの条文に関する事項ついて、努力と進歩(Efforts and Progress)、問題と挑戦(Gaps and Challenges)、応答(勧告)についての示唆 (Suggestion in Respose)を述べたものであり、比較的短く、5ページ程度のものである。論調がマイルドであることが特徴である。以下の9本がこれに属すると言えよう。

●Research Center for Human Rights and Humanitarian Law under the Law School of Peking University & Center for Gender and Law Studies, Institute of Law under the Chinese Academy of Social Sciences (CASS)(北京大学法学院人権と人道法研究センター[北京大学法学院人权与人道法研究中心]、ジェンダーと法律センター、中国社会科学院)⇒第1~3条(女性差別の定義、締約国の差別撤廃義務、女性の能力開発・向上の確保)について
●Women’s Studies Institute of China(中国婦女研究所[中国妇女研究所])⇒第4条と第7条(暫定的特別措置、政治的・公的活動における平等)について
●Media Monitor for Women’s Network & Women’s Studies of Jiangsu Province(妇女传媒监测网络と江苏省妇女研究所) ⇒第5条(役割分担の否定)について
●China Women’s University(中華女子学院[中华女子学院]) ⇒第10条(教育)について
●Beijing Zhongze Women’s Legal Consulting Services Center & China Association for Employment Promotion & Women’s Studies Institute of China(北京衆沢法律サービスセンター[北京众泽法律服务中心]と中国婦女研究所と中国就業促進会(中国就业促进会)⇒第11条(雇用)について
●Women’s Studies Institute of China & Shaanxi Research Association for Women and Family(中国婦女研究会と陝西省婦女理論婚姻家庭研究会[陕西妇女理论婚姻家庭研究会])⇒第12条(保健)について
●Institute of Sociology under the Yunnan Academy of Social Sciences & Gender and Development in China Network (GAD Network) & Beijing Zhongze Women's Legal Consulting Services Center(雲南社会科学院社会学研究所[ ]、中国におけるジェンダーと発展ネットワーク[社会性别与发展在中国]、北京衆沢法律サービスセンター)⇒第14条(農村女性)について
●Anti-Domestic Violence Network / Beijing Fanbao & Beijing Zhongze Women’s Legal Conslting Service Center & China Women’s University(家庭内暴力反対ネットワーク/北京帆葆[反对家庭暴力网络/北京帆葆]と北京衆沢法律サービスセンター)⇒一般勧告第19号(女性に対する暴力) (3)について
●Beijing Cultual Development Center for Rural Wimen(農家女文化発展中心[农家女文化发展中心])⇒移住女性の権利について

これまでにも、「北京+5」と「北京+10」と「北京+15」の際に、中華全国婦女連合会と中国婦女研究会がシャドウレポートを出したことはあるが(本ブログの記事「『“北京+15”中国女性NGOレポート』――中国政府の『北京行動綱領』の実施状況をチェック」参照)、女性差別撤廃委員会の中国政府レポート審査の際にシャドウレポートを出したのは今回が初めてである。

第二のグループは、中国婦女研究会傘下でない、中国のNGOによるものであり、いくつかの匿名のNGOが連携して執筆している(例外として、「女性抗エイズネットワーク-中国」のレポートは、組織の実名を出しており、このNGO単独で出している)。このように中国のNGOが中国婦女研究会と別個にシャドウレポートを出すのは、今回が初めてである。これらのレポートは、多くの条文について検討した分厚いものであり、非常に具体的で厳しい指摘や勧告案が書かれていることが特徴である。以下の4グループのもの(改訂版を含めればレポートは6本だが)がそれに相当する。

●Joint Chinese NGOs with the Assistance of Chinese Human Rights Defenders(CHRD、人权捍卫者)(2014.2.20)――中国のいくつかの人権NGOがCHRDの助けを得て、他の人権活動家、学者、弁護士とも相談して作成した。中国政府からの報復の心配があるため、NGOの名称は匿名にした。このレポートは、条約の非常に多くの条文について取りあげている。
●Chinese Human Rights Defenders(CHRD、人权捍卫者) & a coalition of NGOs(2014.9.30)――上の文書をより詳細にし、勧告案を付けている。
●The China Violence Against Women Concern Group(China VAW Concern Group)――このグループは、中国の女性の権利とジェンダー平等の活動家と専門家の連合である。このレポートは、職場でのセクシュアル・ハラスメント、学校での女児への性暴力、計画出産における女性への暴力、女性の人権活動家の状況について取りあげている。
●China LBT Ligbts Initiative(a caolition of China LBT Women NGOs)(中国性少数女性权益)(2014.2.20)――このレポートは、中国で活動している、コミュニティを基盤にしたLBTの女性のグループが、他の活動家や専門家の助けを得て作成した。中国政府からの報復の心配があるため、NGOの名称は匿名にした。このレポートでは、女性に対する暴力(とくに家族による暴力)、健康(とくに精神的健康)、雇用、結婚(とくに国際同性婚[パートナーシップ])について記述している。
●China LBT Ligbts Initiative(2014.9)
●Women’s Network Against AIDS,China(女性抗艾网络-中国)――レポートの内容は後述。

第三に、中国の国外や香港のNGOが中国大陸の状況について執筆したレポートもある。こうしたレポートは以前からあるものだが、これらの多くも、多数の条文にわたって、非常に厳しい指摘や勧告案を掲載している。

Chinese Human Rights Lawyers Concern Group(中國維權律師關注組)(香港)――このグループは、2007年、弁護士や立法会議員、学者、NGOの活動家らが設立した中国の人権弁護士の人権に関心を寄せている団体である。これレポートでは、女性に対する暴力(女性人権弁護士に対する暴力、人権弁護士の家族に対する暴力、学校での女児に対する性暴力)と女性障害者の権利に焦点。
The Chinese Working Women NetworkHong Kong Confederation of Trade Union[香港職工會聯盟]Labor Action ChinaWorker Empowerment(香港)
Human Rights in China(中国人権)(ニューヨーク、香港)――このレポートでは、データと情報の透明性と利用可能性、女性の権利が侵害された際の司法へのアクセス、政治的・公的活動における平等の問題を取り上げている。
The Dui Hua(対話) Foundation (サンフランシスコ) ――女性の囚人・勾留者の処遇について。
Tibet Watch(ロンドン、ダラムサラ) ――チベット女性の人権について。
The International Baby Food Action Network(IBFAN)――母乳哺育をめぐる諸問題について
The Humanitarian Organization for Migration Economics(HOME) (シンガポール) ――中国からの移民女性について。

今年3月から、フェミニスト活動家5人の勾留が問題になってきたので、ここでは、勾留を含む政治弾圧について取りあげたJoint Chinese NGOs with the Assistance of Chinese Human Rights Defenders(CHRD、人权捍卫者)のレポートを抜き書きしてみる。

2006年の最終コメント(CEDAW/C/CHN/CO/6、para22)で、女性差別撤廃委員会は、締約国[=中国]に「拘置所内での女性に対する暴力事件」の調査を勧告し、「締約国が女性に対するあらゆる形態の暴力に関するデータ収集を強化することを求めた」が、たとえば、北京で勾留された、女性の権利を擁護する活動家の曹順利と、いま勾留されている、2010年のノーベル平和賞受賞者である劉暁波の妻の劉霞に対する虐待は続いている。曹は拘留中に健康状態が急速に悪化したが、当局が曹に医療を受けさせなかった。曹の家族と弁護士の報告によると、彼女は拘留後、多くの重大な病が深刻化した。2013年10月、彼女の家族が保証人を立てて一時出所を認めるよう申請したが、当局はそれを拒否した。2013年9月から、曹は「挑発してトラブルを起こした」罪の疑いで朝陽区拘置所に勾留されている。劉霞は、2010年10月から中国政府によって不法に軟禁されている。彼女は家族や友人との接触を断ち切られた。彼女が秘かに送った手紙によれば、プレッシャーと孤立によって彼女の精神は崩壊寸前である。

人権グループと外国のメディアは、中国における勾留された女性(拘置所、監獄、精神病院、労働矯正[教養]所、「ヤミ監獄(不法な、間に合わせの監房)」、「収容教育所(ほとんどはセックスワーカーを収容する)」)に対する暴力事件をしばしば報じてきた。勾留中に、女性たちは、殴られ、足かせをはめられ、性的に攻撃されたり、辱められ(たとえば、服を脱がされる)、彼女たちを監視する者に強制的に投薬される。これらの暴力の形態と拷問の特定の型は、懲罰、脅し、強制のために用いられる。

2006年の最終コメントで、女性差別撤廃委員会は「締約国に、女性差別撤廃条約第14条の推敲を強化するため、農村女性が農村発展政策と方案の設計・制定・遂行・監視に積極的に参加するよう必要なすべての措置をとることを勧告した」。第7条(2)は、「あらゆる選挙および国民投票において投票する権利ならびにすべての公選による機関に選挙される資格を有する権利」を保護している。中国では、2011年から2012年の間、独立の(中国共産党または政府の役人から選ばれていない)候補者として基層の人民代表の選挙に参加しようとした数名の女性が、政府当局からハラスメントや処罰を受けている。

たとえば、劉萍は江西省新余市在住のリストラされた労働者だが、基層の人民代表の選挙に立候補したところ、選挙前も選挙時も、身体的暴力と言語による侮辱、ハラスメントにあい、身体の自由を制限された。別の独立候補者である、広東省の李碧雲も、同様に選挙前も選挙時も、暴力的な身体的攻撃を経験した。選挙が終わった後も、この2人の女性は自由と人権を訴える活動を続けたために、ハラスメントと報復を受け続けた。彼女たちは、でっち上げられた罪によった勾留され、拷問と虐待を受けた。劉萍は、申し立てによると、逮捕の後だけでなく、勾留中の数か月間も拷問された。劉は、訊問されるとき、警官に金属棒で頭を突かれ、首と腕をねじられ、長い時間手錠をかけられた。彼女の弁護士が、裁判のときに拷問の問題を取り上げたが、裁判官は拷問によって聞き出したかもしれない証拠や自供を却下することを拒否した。裁判官は、拷問があったという申し立てを調査することも拒否した。李碧雲は2013年10月、仏山市で「公務妨害罪」の疑いで勾留された。彼女の弁護士は、1月13日に広東武警隊病院での面会後、彼女は非常に虚弱で、歩くのも難しいと述べた。李は、弁護士に、警官に脊柱を折られて意識を失ったと訴えた。彼女は順徳拘置所では、床の上で眠らなければならず、足枷を嵌められていたと述べた。


2.女性差別撤廃委員会とNGOとの非公式会談

10月20日、女性差別撤廃委員会が各国のNGOの意見を聞くために非公式会談をおこなった。

中国のNGOに割り当てられた時間は15分間だった。それを各NGOにどう割り当てるかの話し合いは、その前日に、一触即発の雰囲気の下でおこなわれた。テーブルの一方には、香港のNGOの代表たちが、そろって当時の雨傘革命のシンボルカラーである黄色のリボンを身につけて座っており、もう一方には、中華全国婦女連合会が率いるNGOグループが座っていて、ほかに、大陸の草の根NGOグループもいるという具合だった。話し合いは3時間続いたあげくに、膠着してしまい、なんの合意もできなくなったところで、International Women’s Rights Action Watch Asia Pacific(IWRAW)に属していた会議の主催者が仲裁をして、大陸の草の根NGOに6分間、香港の草の根NGOにも6分間、婦連などに4~5分間を割り当てた。

こうした状況の中、たとえば、大陸の草の根NGOの1つである「女性メディアウォッチネットワーク」(女声)は、1分間、話ができることになったので、次の話をした。

今日は2つのテーマを話します。第一は大学入試の性差別です。最近の報告にもとづくと、「211プロジェクト(1995年に教育部が、21世紀に向けて重点的に投資すると決めた約100大学のこと。現在112大学ある)」大学の59%が、2014年度学生募集の中で、差別的制限をしているか、女子学生を募集していません。それは、さまざまな専攻と学部に及んでいます。

第二は「収容教育」です。これは主にセックスワーカーに対する行政処罰で、裁判をせずに、6カ月から2年間、人身の自由を制限できます。これは違憲です。

それゆえ、私たちは、女性差別撤廃委員会が、中国政府に対して大学入試政策を再検討し、収容教育制度を廃止するように要求するように訴えます。

(4)

また、この昼食会では、香港のNGOである、知的障害者の団体「卓新力量」が、女性障害者の医療や労働の問題について報告したが、彼女たちの発言を聞き終わった女性差別撤廃委員会の専門家が、「あなた方がおっしゃった知的障害者に対する医療制度は、香港だけの状況なのか。中国の内地もそうなのか?」と質問した。しかし、その場にいた内地のNGOは何も答えられなかった(5)

このように香港のNGOの活動が大陸のNGOにインパクトを与える場面もあったようだ。

3.「女性抗エイズネットワーク-中国」の王秋雲さんは出国を妨害され、出席できず

10月22日には、女性差別撤廃委員会は、中国女性NGOと昼食会(ランチ・ブリーフィング)も開催した。

けれども、「女性抗エイズネットワーク-中国」の王秋雲さんは、「政府」にパスポートを取り上げられて出席できなかった。

「女性抗エイズネットワーク-中国」によると、10月10日、王秋雲さんは、パスポートを国保(=公安部国内安全局)に持って行かれた。王さんは、国保に「パスポートは『政府』が持って行った」と言われ、王さんが「どのレベルの政府か?」「どの部門か?」「どの人か?」と尋ねても、回答を拒否され、王さんが「なぜ私を行かせないのか?」と尋ねても、「上級機関の要求だ」としか答えてくれなかった。その後も、王さんのいる鶴壁市の国保・衛生局・街道辦事処は、王さんにしょっちゅう電話や訪問をして、市から離れさせないようにした。

中国のエイズ問題の女性活動家が出国を制限されたのは、最近1年間で、これで3回目だ。2013年11月には、女性抗エイズネットワーク-中国の袁文莉さんが、警察にパスポートを取り上げられて、第11回アジア太平洋地区エイズ会議に参加することができなかった。2014年7月には、女性活動家の葉海燕さんが政府に「パスポートを紛失」されて、第20回国際エイズ会議に参加することができなかった。

女性抗エイズネットワーク-中国の「シャドウレポート」は、以下のように指摘していた。

性文化のタブーと性道徳のダブルスタンダードのために、女性と子どもには、性や性行為、HIVに関する情報・教育が不足しており、中国のHIVの女性と子どもはとくに弱い立場に置かれている。貧困、暴力、権利のアンバランス、機会の不均等、社会的差別などの多くの問題、不利な社会的文化的環境、低い経済的地位、その他の不利な要素によって、女性がHIVに感染する可能性は大きく増加している。性行為による感染が中国のHIV感染の最も主要なモデルになるに伴って、女性のウィルス感染者数は上昇しつつある。女性HIV感染者とエイズに影響を受けた女性のために政府が政策を打ち出し、資金をサポートするよう期待する。中国の女性の中で蔓延しているエイズを食い止め、差別をなくすために、今回の女性差別撤廃委員会の審議がエイズというテーマに十分に注目するよう希望する。

今回の事態については、馮媛さんは、「このたびの女性差別撤廃条約の審議における女性感染者の『待遇』から考えると、エイズの女性に対する影響をなくすためには、医療問題にとどまってはけっしてならない。もしエイズの影響を受けた女性が公共・政治生活に参与することを保障できず、彼女たちの関する議題の決定的な場面で発言できなければ、彼女たちのエイズウィルスとエイズに抵抗・反撃する能力は打ち砕かれるであろう」と述べた(6)

4.国内で女性差別撤廃条約に関心を集めようとした葉海燕さんへの弾圧

一方、そのころ中国国内では、葉海燕さんが、女性差別撤廃条約に関心を集めようとして、裸の身体をベッドに横たえ、その身体の上に、「中国の女は目覚めよ」「『女性差別撤廃条約』をあなたは本当に知らないのか?」と書いたボードを載せた写真を微博(中国版ツイッター)で発表した。

しかし、11月1日、警察は、葉海燕さんが、「治安管理処罰法」が禁じている「公共の場所で故意の身体の露出」をしたとして、葉さんを勾留10日にした。

けれど、長平さん(ジャーナリスト、現在はドイツ在住)は、「治安管理処罰法」44条は、「他人に猥褻なことをし、または公共の場所で故意に身体を露出させ、情状が劣悪なものは、5日以上10日以下の勾留にする」というものであるが、この規定は非常に曖昧であるうえ、身体を露出する行為が侵害に当たるか否かは行為者と被害者との関係で決まるのであるし、さらに、葉さんの場合は女性差別撤廃条約にみんなの関心を集めようするための行為だから、「情状が劣悪」には到底当てはまらないと指摘している(7)

二、中国の政府レポートの審議詳細――シャドウレポートが力に。まともに質問に答えない中国政府側

10月23日、女性差別撤廃委員会は、中国政府第7次、第8次合併レポートを審議した。女性差別撤廃委員会の各委員の質問に対して、宋秀岩さん(国務院女性児童工作委員会副主任、中華全国婦女連合会副主席・書記処第一書記)ら中国政府側の人間が回答した。以下、事項ごとに主要な問答をまとめてみた。

差別の定義

問:私は、法律の枠組みと法律の中に差別の定義がないことを質問したい。(……)私たちは具体的な条項を見たいし、法廷で条約が援用されているかを見たい。
  ↓
答:(「婦女権益保障法」や「労働、教育、選挙の法律」を挙げて)私たちの法律には、条約の差別の定義を一字の違いもなくコピーした規定はないけれども、この規定はわが国の法律体系の中にすでに完全に具体的に表現されている。

女性の土地権と司法の独立

問:女性の土地の紛争の70%は、法廷が審理を拒絶している。どうしたら司法機関がもっと独立性を持てるかを知りたい。
  ↓
答(最高人民法院):われわれは、法院の審理においては、いかなる機関・団体・組織・個人の干渉も受けず、司法の審理の独立を守ると規定している。

売買春――収容教育制度と性病伝播罪

問:売春に関して、あなた方が提供している情報は少なすぎる。収容教育制度は、もっぱらセックスワーカーと客に対するものだが、この制度は人身の自由を6カ月から2年間制限するものであり、多くの人は差別的だと考えている。セックスワーカーは客よりも収容教育をされやすい。客は罰金払うだけでいいこともある。去年11月、あなた方は労働矯正を廃止した。そのことは賞賛に値するが、あなた方は、現在どのように収容教育制度を評価し、将来いつか廃止しようとしているのか。
 収容教育は行政処罰なのか? 調査した研究者は、これは憲法違反であり、セックスワーカーの健康にマイナスであり、彼女たちは(売春が地下にもぐるので)エイズに感染する危険が増えると言っている。
 病気を持っている売春者は(性病伝播罪によって)処罰するべきではない。私は、彼女たちに処罰ではなく、援助を提供するべきだと考える。
  ↓
答(人民代表大会法制工作委員会):収容教育の目的は法律・道徳教育と性病の治療の援助である。これらの措置は現在論争を引き起こしており、現在なくすかどうか私たちは研究しているところである。
 わが国は、重大な性病にかかっていることを知りながら売春する女性に対してだけ、刑事責任を追及している。その目的は性病の防止と公共の安全の維持であり、われわれは差別だとは考えていない。なぜなら、性病にかかっていることを知りながら買春する客も相応の責任が追及されるからだ(呂頻さん注:正しくないようだ。性病伝播罪は客を含まない)。

女性の政治参加――独立候補者

問:(中国共産党の推薦を得ずに)独立して立候補した女性が選挙のときに侮辱とハラスメントを受けたと聞く。あなた方は調査をしたか?
  ↓
答:中国の憲法と選挙法は、中国の18歳以上の公民はみな選挙権と被選挙権を持つと規定している。暴力的手段で選挙民の選挙権と被選挙権の自由な行使を妨害することは、選挙破壊罪になる。だから、もし委員がそのような事件を知っていたら、被害者に事件を中国の司法機関に提出して調査してもらうようお願いする。

問:私たちは、女性の候補者が虐待と暴力に遭ったという多くの資料を持っている。政府はそのことを知っているのか?
  ↓
答:私はその問題には答えたと思う。中国のいかなる公民も満18歳になりさえすれば、みな選挙権と被選挙権を持つ。だから、もしあなたが言う事件があるのなら、彼女たちは公安局に調査をしてもらうことができる。

NGOや活動家の女性差別撤廃委員会への参加の制限、報復

問(林陽子):私たちは、エイズの活動をしている一人の女性が、この会に出席したかったのに、結局、パスポートを押収されたと聞いている。このことを説明してください。
  ↓
答(外交部の孫昴?):私は委員にその状況を聞いたばかりなので、いま具体的な状況を把握していない。私は背景を少し説明する。いま毎年1億の中国人が出国としており、毎年10%ずつ増えており、人数は世界一である。(‥‥)出国の計画を計画した中国人のうちには、最終的にはそれが実現しなかった人もいくらかおり、その理由にはいろいろある。(‥‥)林陽子が挙げた一人の女性が行けなくなったことについては、私たちは、回答できるよう、もっと多くの情報を得たい。

問:NGOのシャドウレポートは、政府の許可がないと委員会に提出できないのか? 中国の民間社会はますます多くの制限を課せられ、NGOに対する報復もあると聞いている。私たちは、NGOが今回の審議に参与することは安全であると確実に保証しなければならない。
  ↓
答:中国政府はNGOがジェンダー平等を勝ち取ることと女性の人権の面で役割を果たすことを歓迎する。今日審議に参加したことによって報復を受けるいかなる可能性もない。
 今日、多くの委員が中国は女性の権利とジェンダー平等に関するどのような法律を制定したかと尋ねた。この点は、はっきりした情報を伝えている。すなわち、ジェンダー平等と女性の権利の促進は、必ず法制の枠組みの中でおこなわなければならないということである。この数日、国内の法治も非常に関心を持たれている。それゆえ、私たちはNGOが中国の法律を守り、法律の枠組みの中で活動することを希望している。

大学入試の合格ラインの男女差別

問:大学では、男女の入学の合格ラインが異なるという現象があるという報告がある。警察関係の専攻など、若干の専攻では、女性には最大限の枠があるという。中国政府は、この問題をなくす措置を取るのか否か?
  ↓
答:性別を制限する出発点については、みんなの理解が異なっており、隔離と差別であると考える人もいれば、女性に対する保護だと考える人もいることである。これは正常なことであり、差別があれば意思疎通こそが必要である。小語種(英語以外の外国語)の性別の制限をなくしたことも、公益組織と教育部との意思疎通によってこそ実現した。

雇用

問:雇用の平等にもっと多くの工作をするべきである。
  ↓
答(労働と社会保障部):(「われわれの法律には各種の規定があり、各種の文書もある」といったことを述べた後に) 訴訟例については、私たちは、2013年、中国のメディアの多くが、山西の女子大学生が海淀の巨人学校を訴えた事件を報道し、最初の就職差別事件となった。後に海淀の裁判所の調停の下で和解し、会社は女子学生に3万元を就業平等資金として支給し、訴訟費も支払った。このように差別に対する訴訟例は存在しており、女性の法律意識の増強に伴ってより多くの女性が法律の武器を取るようになった。

計画出産

問:産児制限を強制している問題について、人口と計画生育法によると、計画出産に違反した人は費用を払わなければならないが、その罰金の額はいくらで、どの地方がそうしているのかを知りたい。地方で産児制限を強制している役人を処罰するように希望する。
  ↓
答:中国の計画出産法の規定では、各クラスの政府と職員は、厳格に法律にもとづいて行政をおこなわなければならず、公民の合法的権益を侵犯してはならないこと、侵犯したら責任を追及することを規定している。社会扶養費については、この税金徴集制度は、わが国が人口の増加を抑制するために取っている経済的制限措置であり、計画生育という国策を実現するための手段であって、出産の秩序に積極的な働きをしている。

女性の土地権

問:女性の土地権の問題は非常に重要である。中国は2007年に「農村土地請負法」を制定したけれども、まだ不十分である。またこの法律が執行されていない省がある。
  ↓
答(宋秀岩):中国の法律の規定から見て、女性の土地権は明確に規定されている。現実には、婚姻の変化によって、たしかに女性の土地権が侵害されるという現象が出現している。たとえば、出嫁女(結婚後もさまざまな事情で戸籍を実家の村に置いたままにしている女性)は、実家の土地を兄弟姉妹が耕作しているかもしれない。土地が徴用されたとき、彼女の兄弟姉妹が保障費を受け取るかもしれない。それは家庭の問題である。私たちは民間の調停によって家族に対する工作をする。

女性の勾留、ヤミ監獄

問:女性の拘禁について。私たちは監獄とヤミ監獄の中の女性について、身体と性の面で虐待されているという資料を持っている。
  ↓
答:他の国家と同様、中国にも監獄はあるが、それらは法律の枠組みの外で運営されている「ヤミ監獄」ではない。中国にはけっして法律の枠組みの外の「ヤミ監獄」は存在しないし、まして女性に対するそのような監獄は存在しない。もし勝手に拘禁場所を設置して、他人を拘禁したら、それは犯罪であり、具体的に言えば、中国刑法238条の不法監禁罪になる。

問:個人が何らかの動機で不法に他人を監禁することがあるのか? あなたがたは、勝手に陳情者を監禁する人がいると言うが、私にはよくわからない。
  ↓
答:委員は、彼らがどうしてそのような動機を持っているのかを問うたが、私の答えは、彼らの動機にかかわらず、私たちは法によって処罰しなければならないということである。

答:暴力の定義、被害者に対する庇護、加害者に対する懲罰はみな法律の中で具体的に示されるであろう。しかし、その法はまだ起草中であり、まだ全国人民代表大会にも提出されていないので、委員の問題は公布後に満足をいく回答ができるだろう。

婚姻と女性の財産権

問:離婚後の財産は、もともと出資した側に返さなければならないという。これは形式的には平等だが、実際は不平等である(婚姻法司法解釈三の、離婚後の不動産は登記している側のものになることを指している)。これは、夫婦の共同財産制に反している。何らかの方法で現在の婚姻法の問題をはっきりさせて、最高人民法院の司法解釈を取り消すべきである。

LBT

問:私たちは、同性愛・バイセクシュアル・トランスジェンダーの女性に対して差別があると聞いている。
  ↓
答:中国はいかなる人も法律の保護を受けており、性的指向によって差別されることはない。中国はこれらの人に対してますます寛容になっており、専門的な研究やサービスを提供する組織もある。政府の関連機構は、彼らに便宜を図るよう力を尽くしており、たとえば関係団体に登記を提供している。

選択議定書

問:あなた方は、条約の選択議定書の批准について討論しているのか?
  ↓
答:私たちはまじめに研究しているところだ。私たちはできるだけ早く進展させて、次の審議のときに委員会に進展を報告できるようにしたい。(8)

NGOからの情報提供が委員の質問に反映

女性差別撤廃委員会の委員の質問には、NGOのシャドウレポートや事前の非公式会談での意見表明が反映していることは明らかである。上記ではそれぞれ1団体のものしかご紹介しなかったが、それらの団体が情報を提供した諸問題(収容教育制度、独立候補者、大学入試の合格ラインの男女差別、ヤミ監獄)はすべて委員の質問に取り入れられている。

前進面も少しあるが、全体として、まともに質問に答えていない中国政府側の答弁

政府側の回答に関して言えば、収容教育の廃止や選択議定書の批准を考慮していることを表明した点は、前進と言えないこともない(9)

また、LBTの人権の問題に関して、「中国はいかなる人も法律の保護を受けており、性的指向によって差別されることはない」と述べたことについては、China LBT Ligbts Initiative(a caolition of China LBT Women NGOs)(中国性少数女性权益)が「これは、政府当局が初めて性的指向による非差別原則を述べたものであり、画期的な進歩だ」とした上で、「私たちは、中国政府が承諾を履行して、非差別原則を家庭内暴力防止や差別禁止立法の中で実行するとともに、立法・司法・法律執行・教育・福利などの機構に対する多元的ジェンダー教育を強化することを希望する」と述べて、(言質として)一定の評価をしている(10)

また、中国当局が、NGOについて、「ジェンダー平等を勝ち取ることと女性の人権の面で役割を果たすことを歓迎する」と言い、「小語種の性別の制限をなくしたことも、公益組織と教育部との意思疎通によってこそ実現した」と述べている点や、雇用差別に対する訴訟を取り上げた点は、中国の現状を肯定する文脈においてではあるが、フェミニストの団体・個人の活動を肯定した内容だと言える。

しかし、同時に、NGOについて、「私たちはNGOが中国の法律を守り、法律の枠組みの中で活動することを希望している」と述べている点は、違法行為(だと当局が認定した行為)があれば弾圧することも示唆していると言えるだろう。実際、「このような威嚇を含んだ承諾を聞いて、その場にいるNGOの代表は泣くに泣けず笑うに笑えなかった」という(11)

また、中国政府の回答は、実態を尋ねられているのに、法律の規定を答えることによって話をそらして場合が非常に多いことに大きな特徴がある。司法の独立や、独立候補者への侮辱・ハラスメント、計画出産、女性の土地権、ヤミ監獄についての質問の回答はすべてそうである。

王秋雲さんの出国の問題についても、知っていながら、知らないふりをして空々しい回答をしている可能性が大いに疑われる(本当に知らなかったとしても、それはそれで大問題だ)。独立候補者の女性に対する迫害について、警察や司法に訴えればいいと言っていることも、それで問題が解決するか否かを知らないとは考えられない。

また、誤りないし虚偽を答えていることもある。買春する人が性病伝播罪で罰せられることもあるとか、LGBT団体の登記を認めているとかという点がそれに当たる。

また、宋秀岩さんは、女性の土地権の問題について、「家庭の問題」であり、家族に対する「調停」によって問題が解決できるかのように述べたのは、この問題に対するまったくの無理解を示していると言えるだろう。

全体として、中国政府側の答弁は、質問にまともに答えようとしないものだったと言える(12)

三、女性差別撤廃委員会の総括所見全文(香港・マカオ除く)

以下では、中国についての女性差別撤廃委員会の総括所見を、香港・マカオ関係の個所を除いて、翻訳した(原文は、ここから、英語、フランス語、スペイン語、アラビア語、ロシア語、中国語の6カ国でダウンロードできる→「CEDAW/C/CHN/CO/7-8」)。なお、前回の総括所見については、本ブログの記事「国連の女性差別撤廃委員会、中国政府に最終コメント」参照してほしい。

議会

7.女性差別撤廃委員会(以下、委員会と略す)は、女性差別撤廃条約の完全な実施を保障する立法権の決定的役割を強調している(女性差別撤廃委員会の「女性差別撤廃委員会と議員の関係」に関する声明、2010年第45会期)。 委員会は、全国人民代表大会に、その権限にもとづいて、女性差別撤廃条約の現在と次の報告期間の間に、総括所見の実施に関する必要な措置を取るよう要請する。

女性に対する差別の定義

12.委員会は、以前の総括所見(CEDAW/C/CHN/CN6,para.9)を想起し、婦女権益保障法が2005年に改正されたにもかかわらず、締約国[=中国]の法律には、女性差別撤廃条約(以下、条約と略す)の第1条と合致した女性に対する差別の包括的定義が含まれていないことを引き続き懸念する。

13.本委員会は、以前の勧告(CEDAW/C/CHN/CN6,para.10)を繰り返して、締約国に、国家レベルの法律で、生活のすべての領域における直接的および間接的差別から女性を守るために、条約の第一条と合致した、女性に対する差別の包括的定義を採用するよう要請する。とくに、締約国は、セックスおよび/またはジェンダーにもとづく差別を、適切な執行メカニズムと処罰によって確実に禁止しなければならない。

司法の独立と司法へのアクセス

14.委員会は、以前の総括所見(CEDAW/C/CHN/CN6,para.11)を想起して、女性による司法的救済へのアクセスが困難であるというレポートが寄せられていることを引き続き懸念する。委員会は、また、とくに女性が関わる土地紛争に関して、裁判の判決や審理に影響するような司法に対する政治的干渉があるという報告を懸念する。

15.委員会は、以下の点を締約国に勧告する。
 (a)女性が、土地権の問題で困っている女性を含めて、司法に十分アクセスできるよう、法律援助の提供を含めて保障すること。また、女性の司法へのアクセスを容易にするために、もしそれが適切ならば、NGO団体を援助すること。
 (b)国家の政治的機構によるあらゆる形態の司法への干渉を防止して、司法の独立を確立し、女性の人権にかかわるすべての紛争が法の支配に従って解決されるようにすること。

国内人権機関

16.委員会は、締約国が、女性の権利を守り推進する広範な権限を持った、人権擁護のための国内人権機関の地位に関する原則(パリ原則) (法務省訳)に従った、独立した国内人権機関をまだ設置していないことを、懸念を伴って留意する。

17.委員会は、締約国に、明確なタイムスケジュールを持って、女性の権利とジェンダー平等に関する問題をパリ原則(1993年12月20日、国連決議48/134によって採択)に従った、その権限に女性の権利とジェンダー平等に関する問題を含んだ、独立した全国的な人権機構を設立することを勧告する。

女性の地位向上のための機構とデータ収集

18.委員会は、国務院女性児童工作委員会が、人的・財政的リソースを増やす規定によって強化されてきたことに留意する。しかし、委員会は、国務院女性児童工作委員会は政策を遂行するための権限または財源がない単なる調整機関であり、法律や政策のジェンダー評価をする権限を持っていないというレポートがあることに懸念を有する。委員会は、また、国務院女性児童工作委員会と、締約国の女性の権利の問題のために活動している広範な民間組織との間との協力が乏しいことも懸念を有する。

19.委員会は、締約国に、国務院女性児童工作委員会を、財源と明確な権限を持った、女性の進歩を可能にする活動を効果的に担うことができる機構として強化を続け、中国女性発展要綱(2011-2020)に対してジェンダー評価をする権限を与え、民間組織との協力を強めるよう勧告する。

20.委員会は、2012年の女性と子どもの地位に関する包括的な統計システム(妇女儿童状况综合统计报表制度)を改訂したことを留意する。しかし、委員会は、女性の地位を評価するために必要な決定的ないくつかの情報が、女性の権利の問題に関する情報へのアクセスを不当に制限するさまざまな機密規定によって、国家機密に分類されていることに懸念を有する。委員会は、さらに、データの収集と共有のシステムが、条約の遂行に十分な監督と評価をするには弱すぎることにも懸念を有する。

21.委員会は、ジェンダー平等の主流化と女性の人権の擁護を目的とした政策と要綱の影響・効果にすべての利害関係者がアクセスできるよう、性別に分けたデータの収集・共有・宣伝にとっての障害(締約国の秘密法が引き起こした障害を含む)を研究するよう締約国に勧告する。この点で、委員会は、締約国に、女性の状況について統計的データに関する一般勧告第9号(1989年)に注意を払うよう要請する。

暫定的特別措置

22.委員会は、以前の総括所見(CEDAW/C/CHN/CN6,para.23)を想起して、条約の第一段落の第4条と暫定的特別措置に関する一般勧告第25号(2004年)にもとづいた、条約のすべての領域における女性のための実質的平等の達成を加速するための暫定的特別措置が十分使われなかったことを遺憾に思う。

23.委員会は、以前の勧告を繰り返して、締約国に、とくに民族的・宗教的少数者の女性と障害女性の権利の向上のため、女性と男性の実質的平等の達成を加速するための必要な戦略として、条約の第4条(1)と一般勧告第25号の暫定的特別措置にしたがって、条約のすべての分野において、暫定的特別措置を使うよう要請する。

固定観念と有害な慣習

24. 委員会は、以前の総括所見(CEDAW/C/CHN/CN6,para.17)を想起して、家族と社会の中の女性と男性の役割と責任に関する根強い固定観念の存続、たとえば、違法な強制的中絶・断種や違法な性別選択的中絶という方法によって不利な性比をもたらす男児選好の伝統を懸念する。

25.委員会は以前の勧告(CEDAW/C/CHN/CN6,para.18)を繰り返して、締約国に以下のことを勧告する。
 (a)女性児童工作委員会と他の関係者が、女性と男性の伝統的役割を強固にする社会的規範を変革し、女性と少女の人権を保障する積極的な文化的伝統と慣習を強化する努力を強めること。
 (b)性別を選択する妊娠中絶、強制的な中絶、女児殺しに対処するための現存の法的手段の執行を強めること。
 (c)ジェンダーについての固定観念をなくすためにとられた措置の影響を評価するために、締約国の独立した専門家の組織によって、定期的に監督と評価をおこなうこと。

女性に対する暴力

26.委員会は、家庭内暴力防止法の草案が第12期全国人民代表大会の常務委員会に付託されたことに留意する。しかし、委員会は、草案の内容、とくに保護命令と処罰、シェルター、採択までのタイムスケジュールについての情報がないことに懸念を有する。委員会は、また、女性に対するあらゆる形態の暴力(暴力の広がりや女性被害者に与えられる補償、有罪の判決を受けた加害者に対する裁判所の命令を含む)についての十分なデータがないことも懸念を有する。

27.女性に対する暴力に関する一般勧告第19号(1992)と以前の勧告(CEDAW/C/CHN/CN6,para.22)を想起して、委員会は、締約国に以下の点を勧告する。
 (a)家庭内暴力防止法を練り上げる際には、法律学だけでなく、条約と一般勧告第19号を活用し、法案を迅速に採択するとともに、ドメスティック・バイオレンスを含めた、女性に対する暴力に包括的に対処するものになるようにすること。
 (b)家庭内暴力防止法の草案を、保護命令が使用でき、暴力の犠牲者である女性が、十分で適切な施設のあるシェルターを利用できるものにすること
 (c)女児殺しを含めた、女性に対するあらゆる暴力の形態に関する包括的なデータ収集のシステムを引き続き強化すること。
 (d)女性に対するあらゆる形態の暴力の犠牲者が警察に通報するよう勇気づけること。
 (e)女性に対する暴力の訴えをきちんと調査し、そうした行為を起訴し、加害者を適切に罰すること。

人身取引と売春の搾取

28.委員会は、「人身取引防止のための中国の国家行動計画(2013-2020)」が発表されたことを歓迎する。しかし、委員会は、包括的な反人身取引立法がないこと、国内法が性的搾取、強制労働、強制結婚、不法な養子縁組を目的とした人身取引を含めたあらゆる形態の人身取引を刑事上の犯罪としている否かが不明確であることに懸念を有する。さらに、委員会は、労働矯正[教養]制度が廃止されたにもかかわらず、締約国が、売春女性を主な対象とした勾留を含む収容教育制度を用い続けていることに懸念を有する。

29.委員会は、締約国に以下の点を勧告する。
 (a)次期レポートでは、明確な人身売買の定義を伴った包括的な反人身取引立法の採択についての情報を提供し、またどのようにそれが国際基準と合致しているかを説明すること。
 (b)地域における人身取引防止のための情報交換と人身取引をする者を起訴するための他国との法律的手続きの調整を含めた、二国間・地域的・国際的な協力を目的とした努力を引き続き強化すること。
 (c) 労働矯正を受けたすべての女性に十分な保障をするとともに、女性の恣意的な勾留を正当化するために用いられかねない収容教育制度の廃止を考慮すること。

政治的・公的生活への参加

30.委員会は、締約国が、女性が政治的・公的生活への参与を向上させる上で前進を作り出したことと、少数民族の国政への参加と同様、すべてのレベルにおける女性の政策決定団体への参加目標を提起した中国女性発展要綱(2011-2020)を採択したことを留意する。また、委員会は、村民委員会には女性のメンバーがいなければならないことと女性が村民代表者会議の全参加者の3分の1以上を占めなければならないことを規定した村民委員会組織法改正を歓迎する。しかし、委員会は、このかん、人民代表大会・内閣・各省レベルにおいて女性が少なく、かつ女性があまり増えていないことを引き続き懸念する。また、チベット人・ウイグル人のような民族的・宗教的少数派の女性が、農村や内陸部の女性と同様に、政策決定機関に少ないことに懸念を有する。さらに、委員会は、独立した候補者として選挙に立候補した女性たちが虐待や暴力にあっているという報告に深い懸念を有する。

31.委員会は以前の勧告を繰り返すとともに、締約国に以下の点を勧告する。
 (a)中国女性発展要綱(2011-2020)の、全国的・地方的レベルでの、十分な財源を付けた実効性ある履行を確保する手段を導入すること。
 (b)より強制的な暫定的特別措置、すなわち、条約の第4条の第1段落および暫定的特別措置に関する委員会の一般勧告第25号(2004年)、女性の政治的・公的生活における、選挙で選出・任命される団体における全面的で対等な参加を加速するための一般勧告第23号に合致したクォータ制のようなものを採用すること。
 (c)村民委員会には女性がいなければならず、村民代表者会議の参加者の1/3以上の割合を女性が占めなければならないと規定している村民委員会組織法の改正を実効ある実施を確実におこなうこと。
 (d)独立候補者として選挙に立候補した女性に対する暴力と虐待の申し立てを徹底的に調査して、加害者を確実に起訴し、重く罰すること。
 (e)民族的・宗教的マイノリティ女性の参加を促進し、容易にするための特別な措置を採用することによって、国家人権行動計画を確実に履行すること。

人権活動家とNGO

32.委員会は、中国全土からNGOが委員会に積極的に参加したことを歓迎する。しかし、締約国が、NGOから委員会に提出された幾つかのレポートが、締約国の官吏に検閲されたという申し立てと、委員会にレポートを提出した幾つかのNGOの代表が締約国のレポートを批判したことによる報復を恐れているという申し立てに注意を払っている。委員会は、また、委員会に訴えをしようとし、締約国の審議を傍聴しようとした、少なくとも1人の女性人権活動家が旅行制限を課されたという情報にも注意を払っている。さらに、委員会は、市民社会の組織の設立に管理者が必要だという中国の法律がNGOの登記の不当な制限を引き起こしているという情報に懸念を有する。

33.委員会は締約国に以下の勧告をする。
 (a)委員会に情報を提供した人を含めて、女性の人権の擁護者を守るためにすべての必要な措置をすること。今後は締約国のレポート審議の傍聴を希望する個人/人権活動家に旅行制限が課せられないように措置をとること。
 (b)NGOが委員会に提出したレポートを政府の官吏が検閲したという申し立てを調査し、そうしたことを防ぐ措置をとること。
 (c)女性のエンパワメントと発展に関する締約国の努力を遂行する女性の権利団への女性の参加を促進するために、管理者なしでNGOが直接登記できるように、NGOの設立に関する国家の規定を再吟味すること。

教育

34.委員会は、締約国が女児の入学率を改善させ、教育によって成人女性を含めて非識字率を減少させ、2011年に「女性の科学技術人材の建設に関する意見(关于加强女性科技人才队伍建设的意见(word))」を出し、中国女性発展要綱(2011-2020)で明確な目標を提示したことを歓迎する。しかし、委員会は、大学の課程における性別分離と一部の大学のいくつかの学科で男児には合格最低ラインを低くしていることに懸念を有する。また、委員会は、知的障害を持った女性・女児、チベットやウイグルの女性・女児のような民族的・宗教的マイノリティの教育へのアクセスが限られていることにも懸念を有する。委員会は、さらに、両親が都市に移住した女児(いわゆる「留守」児童)の教育へのアクセスが限られていることと中退率についても懸念を有する。

35.委員会は、締約国に以下のことを勧告する。
 (a)入試の合格ラインが女性や女児に不利にならないよう保証することを含めて、女性・女児に男性・男児と対等に教育を与えること。
 (b)財政的・およびその他のリソースを増やして、民族的・宗教的マイノリティ女性・女児、とくにチベット人、ウイグル人、いわゆる「留守」女児に対して、漢語でない言語を話す学生に対して母語の教育をすることを含めて、必要なサービスを供給することによって、教育へのアクセスを保証すること。
 (c)障害、とくに知的障害を持った女性・女児のために、教育へのアクセスにおけるすべての障害物を取り除くこと。

雇用

36.委員会は、国家人権行動計画(2012-2015)に「女性の権利」という節が入ったこと、とくに雇用における性/ジェンダーにもとづく差別をなくす目標が提示されたことを留意する。また、委員会は、生育保険を規定した社会保険法(中华人民共和国社会保险法)(2011年7月施行)の制定も歓迎する。しかし、委員会は、以下の点に懸念を有する。
 (a)持続し、拡大しつつある男女賃金格差。その一部は、同一価値労働同一価値原則にもとづく法律がないことが原因となっていること。
 (b)労働市場における男女の水平的・垂直的職業分離と雇用における女性の低賃金部門への集中が続いていること。
 (c)男性と女性がそれぞれ60歳と50歳で、女性幹部は55歳であるという定年の相違。および、この定年の相違のために、女性はしばしば男性より年金が少ないために、定年後は、貧困に陥りやすいこと。
 (d)セクシュアル・ハラスメントに対して雇用主に責任を課す法律の規定がないこと。

37.委員会は、締約国に以下の点を勧告する。
 (a)国家人権行動計画(2012-2015)、2007年の就業促進法、他の関連する法律のもとで構造的不平等と職業分離をなくす努力を強めるとともに、同一価値労働同一価値原則を規定するとともに、雇用における差別について裁判に訴える女性たちのために紛争解決メカニズムを規定した法案を採択することによって男女賃金格差を縮小する措置をとる努力を強めること。
 (b)男女の定年を平等にする努力を加速し、高齢者の年金の平等を確保すること。
 (c)職場でのセクシュアル・ハラスメントについて雇用主に責任を課す法律の規定を採択すること。

健康

38.委員会は、妊産婦死亡率の顕著な改善と、女児と男児の性比の不均衡をもたらす強制的中絶や強制的断種とともに、非医学的な胎児の性別鑑定と性別選択的中絶の問題を抑制する努力を歓迎する。しかし、委員会は、それらの不法な慣習が国内で続いており、女児、とくに障害をもつ女児殺しが、完全には根絶されていないことを引き続き懸念する。委員会は、また、最近締約国の一人っ子政策は緩和されているにもかかわらず、一人っ子政策に違反した女性たちは罰金を課せられ、有給の産休を剥奪され、子どもを登記する際にいくつもの困難を経験する状態が続いていることにも懸念を有する。さらに、委員会は、家族計画の手段は、結婚している女性しか利用できず、性および出産の健康に関する効果的で年齢に合った教育が学校でおこなわれていないことに懸念を有する。

39.委員会は、以前の勧告を繰り返し、締約国に以下の点を勧告する。
 (a)しばしば非医学的な胎児の性別鑑定や性別選択的中絶、強制的中絶、強制的断種、女児殺しをもたらす男児選好の伝統を断ち切るために、法律の執行と意識の向上を含めた努力を強化すること。
 (b)一人っ子政策に違反した女性たちに対する制裁を止め、彼女たちの子どもの登記にとってのすべての障害をなくすよう考慮すること。
 (c)嬰児殺し事件を徹底的に調査し、加害者を適切に処罰すること。
 (d)婚姻の状況に関係なく、すべての女性に無料の家族計画の手段を提供し、学校で性および出産の健康に関する年齢にあった教育をおこなうこと。

40.委員会は、締約国がHIVの検査と相談のサービスを開始したことに留意する。しかし、委員会は、HIVに感染した女性の数が増加していることとHIV/AIDSとともに生きる女性に対する差別と社会的スティグマが存続していることに懸念を有する。

41.委員会は、締約国がHIVととともに生きる女性たちに対する差別をなくすための措置をとり、そうした女性たちをケアするコミュニティの女性組織にサポートを提供するよう勧告する。

農村女性

42.委員会は、農村地域の貧困縮小について締約国がおこなった努力と進歩に留意する。また、2007年に物権法を採択した後、締約国が、女性が関わる土地契約紛争に対して、調停や開発に伴う補償によって対処したことにも留意する。しかし、委員会は、多くの農村女性が請け負う土地がないままであることに懸念を有する。

43.委員会は締約国に、特に農村地域で女性の土地へのアクセスを制限しているすべての障害を除去し、それらの紛争の際に、女性に有効な救済策を与える調停や解決をおこなうよう要請する。

結婚と女性の財産権

44.委員会は、土地に関する女性の財産権を守る締約国の努力に留意する。しかし、委員会は、2011年8月9日に最高人民法院がおこなった、離婚または相続の場合、最初の出資者に財産権を戻すという婚姻法の解釈に関する決定に懸念を有する。その決定は、間接的に女性を差別し、彼女たちから財産権を奪うものである。委員会は、また、農村地域の伝統と慣習のために、女性がまだ彼女自身の名義の土地を所有または登記できず、婚姻の状態が変化すると土地所有権が失われる危険があることに懸念を有する。

45.委員会は、締約国が、農村および都市において、女性の土地に対するアクセスと権利を妨げるすべての法律、習慣、伝統をよく調査し、女性が婚姻状態に関わりなく財産権を完全に享受できるように、条約の第16条と委員会の一般勧告第29号(婚姻、家族関係及びその解消の経済的影響) (13)にしたがった効果的措置をとること。

複合差別

46.委員会は、チベットやウイグルの女性のような民族的・宗教的マイノリティ女性や障害を持った女性が、複合的で交差的な形態の差別に遭い続けていることに懸念を有する。委員会は、とくに民族的・宗教的マイノリティ女性が、健康・教育・雇用の権利がいまだに限られていることに懸念を有する。

47.委員会は、締約国に、民族的・宗教的マイノリティ女性と障害を持った女性の文化的アイデンティティ・慣習の享受、健康、教育、公共生活への参加をしばしば損なっている複合的で交差的な形態の差別を除去することを目的とした努力を精力的におこなうことを要請する。

勾留されている女性

48.委員会は、中国で勾留されている女性の人数が増加し続けていることに懸念を有する。委員会は、また、女性刑務所の数が限られているために、女性たちがしばしば、家族から遠く離れた、暴力と虐待の危険がある超満員の場所に入れられていることに懸念を有する。さらに、委員会は、女性の陳情者が多く勾留されると申し立てられている、中国の「ヤミ監獄」として知られる非正規の勾留施設についての情報に懸念を有する。

49.委員会は、締約国に以下の点を勧告する。
 (a)女性の犯罪行為の原因に対処することを目的とした予防的なプロジェクトによるものを含めて、勾留されている女性の人数を減らす措置を取ること。
 (b)刑務所が超満員である問題を解決するために、国際基準に従って女性の勾留施設の状態を改善し、さまざまなカテゴリーの被拘禁者を分けて収容することを保証し、「女性被拘禁者の処遇及び女性犯罪者の非拘禁措置に関する国連規則」(バンコクルール)に従って、十分な健康施設とサービスを供給すること
 (c)ただちに不法な交流施設(「ヤミ監獄」)を廃止し、国家の者でなくとも、そうした悪事を働く者を適切に処罰すること。

また、この総括所見では、中国政府に2018年11月に第9次定期レポートを提出するよう要請するとともに、「フォローアップ行動」として、「78.委員会は、締約国に、2年以内に、書面の形式で、上の15の(a)(b)、31の(b)(d)(e)に含まれる勧告を履行するためにとった手段を説明するよう要請する」としている。すなわち、それぞれ簡単に言えば、女性の土地権に関する司法へのアクセス、司法の独立、選挙でのクォータ制、独立候補者に対する暴力と虐待、民族的・宗教的マイノリティ女性の政治参加のためのクォータ制の件について早急に措置をとるよう求めている。

馮媛さんは、今回の総括所見は、以前のものと共通する問題も多いが、とくに「条約の実施の面では、とくに立法メカニズムについての勧告」「NGOと女性人権活動家」「国家人権機構」「複合的で交差的な形態の差別」に重点が置かれることに特色があると述べている(14)

また、女性差別撤廃委員会の総括所見には、各団体がシャドウレポートで取り上げた事項が反映していること、委員の質問に対する中国政府側回答は、まったく有効ではなかったこともわかる。

おわりに

中国のNGO、とくに自律性の強いNGOが初めてシャドウレポートを提出して、それが総括所見にも反映された意義は大きい

中国のNGOが初めて女性差別撤廃委員会の審議の際にシャドウレポートを提出したこと、しかも、中国婦女研究会によるものだけではなく、より自律的なNGOによるものも含まれていたこと、それらのシャドウレポートとロビイング活動によって、女性差別撤廃委員会の委員の質問もより鋭いものになって、それが総括所見、勧告の内容にも反映したという点で、今回の女性差別撤廃委員会の審議は大きな意義を持つものだったと思う。

フェミニスト活動家の拘留事件との関連で

また、2015年3月からのフェミニスト活動家の拘留事件と関連で見ると、中国大陸のNGOが、この時点でシャドウレポートにおいて、女性の人権活動家や独立候補者に対する暴力や虐待(病気でも釈放しない、ベッドに寝かせないといった形態を含めて)を詳しく取り上げていることが注目される。また、主に売春した女性に対するものだが、「恣意的な勾留」を正当化する収容教育制度の問題を取り上げたことも重要だ。もちろん収容教育制度の問題を含めて、多くのテーマに行動派フェミニストたちが取り組んできた課題も多く取り上げられている。「ヤミ監獄」の問題は、以前本ブログでも取り上げたように。女性の土地権の保障を訴える陳情者がしばしば監禁されるという点で、男女平等という観点からも重要である(本ブログの記事「農村での土地権侵害に対する「出嫁女」の闘い――陳情、デモ、裁判、インターネット、パォーマンスアート」の「1.陳情とその困難」の「2.陳情狩りとヤミ監獄、行政拘留」参照)。ただし、中国大陸のNGOはそうした訴えを匿名で出さざるをえなかった状況も見なければならない。

女性差別撤廃委員会の総括コメントも、馮媛さんが指摘しているように「NGOと女性人権活動家」の問題を重視しており、女性の独立候補者に対する暴力や虐待の申し立てに関する調査を2年以内という期限付きで要請するとともに、女性人権活動家の出国制限、シャドウレポートに対する報復の問題が取り上げたことは注目される。さらには、勾留されている女性の問題が独立した項目として扱われて、彼女たちに対する暴力と虐待、「ヤミ監獄」、収容教育制度の廃止にも言及されたことは重要である。

ただし、収容教育制度の問題などを除いて、「報告」や「情報」、「申し立て」に対する懸念・関心という表現になっている点は、女性差別撤廃委員会の調査能力や権限の限界なのかもしれない。

(1)女性差別撤廃条約を批准した国は、「この条約の実施のためにとった立法上、司法上、行政上その他の措置によりもたらされた進歩に関する報告」(女性差別撤廃条約第18条)を国連に定期的に提出しなければならない。国連の女性差別撤廃委員会はそれを審議して、勧告などのコメントを出す。
(2)以上は、冯媛「消歧公约中国审议15年:妇女NGO的参与」女声网2014年10月21日、「中国妇女组织积极参与联合国消歧委员会第59届会议」妇女研究网2014年10月24日。
(3)一般勧告第1号から第25号までの日本語訳は、「女性差別撤廃委員会による一般勧告(内閣府仮訳)(PDF)」。
(4)以上は、冬旸「一分钟的发言机会」女声网2014年10月22日。
(5)冬旸「残障妇女在中国?极缺关注——记香港权利组织在NGO午餐会的发言」女声网2014年10月23日。
(6)以上は、冯媛「消歧委员与中国NGO见面 女性抗艾网络代表被缺席」女声网2014年10月23日。
(7)以上は、「 Ye Haiyan, Rights Campaigner, Is Detained Over Photo Posted Online」New York Times 2014.11.5、「葉海燕的裸照擊傷了誰?」東網2014年11月7日、女权之声的微博【兑现承诺,放过叶海燕】2014年11月10日 14:15
(8)以上は、吕频,JESS,张平,冯媛「消歧公约审议现场直播记录」女声网2014年10月23日。とくにそのポイントを取り上げたものが、吕频「政府代表回复消歧审议,哪条最神?」(女声网2014年10月24日)である。
(9)冯媛「收容教育制度:“正在研究是否废止”」(女声网2014年10月27日)は、収容教育の廃止を研究中であるという点を見出しにしている。ただし、この記事も触れているように、収容制度についての情報開示を求めた趙思楽さんによる裁判は、この答弁がおこなわれたのと同じ23日に敗訴している。
(10)中国性少数女性权益(China LBT Rights Initiative)「中国政府首度明确表示同性恋不会被歧视」女声网2014年10月27日。
(11)女权之声的微博【性别平等与外交技巧——围观审议有感】2014年10月25日 18:00
(12)马兰「七大招轻松过关联合国审议」は、中国政府代表が委員会の委員の質問をやりすごす7つの手段を挙げている。それは、1.聞こえない(またはときどき聞こえない)ふりをする、2.否認+回避、3.問われていないことを答える、4.(1つだけ、良い)例を挙げる、5.焦点をぼかす、6.「私は知らない。知ったらきっと処理する」と言う、7.最後の手段は、法律の条文を読むこと、である。
(13)邦訳は、「一般勧告第29号 女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約第16条に関する一般勧告 婚姻、家族関係及びその解消の経済的影響(PDF)」。
(14)冯媛「[公约审议]带回家的功课:结论性意见向中国政府建议」原刊:2014年10月24日 発表:2014年12月17日。

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拘留中のフェミニスト活動家5女性の状況、国内外の支援運動、弾圧の背景など

<目次>
 1.拘留中の5女性の状況――さまざまな人権侵害。また、これまでの活動をすべて問題にされるが、罪は認めず支援に感謝
 2.NGO――家宅捜索、ウェブサイトの消失・更新停止など
 3.国内外で広がる支援、諸外国の政府も声明
 4.中国政府、国内の支援運動を弾圧、外国の要請も拒否
 5.弾圧の背景など――習近平政権が強調する伝統的家族(女性)観や彼女たちの組織的・思想的自律性や行動力などが原因か。
 6.まだの方は、署名をお願いいたします!

1.拘留中の5女性の状況――さまざまな人権侵害が加えられ、これまでの活動をすべて問題される、しかし罪を認めず支援に感謝

痴漢対策を訴えるために、今年の国際女性デー前日にバスの中でステッカーを配布するなどのアクションを計画していた若いフェミニストたちが3月6日~7日に警察に拘束され、中核的な活動家5人がその後も釈放されていない件(本ブログの記事「国際女性デー直前に中国の若いフェミニスト活動家10人逮捕、5人が今も釈放されず」参照)のその後について、ご報告させていただく。なお、彼女たちのこれまでの活動の年表と本ブログの諸記事へのリンクは「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」をご覧いただきたい。

その前にお断りしなければならないのは、先日の記事には記述が不正確だった点があることだ。韋婷婷さんの代理人の王秋実弁護士は、「最近メディアは、5人の女の子がすでに逮捕されたと報道し、5人の女の子がすでに刑期5年の罪で起訴されたという情報さえあるが、それらは事実ではない。5人の女の子は刑事拘留されているだけで、逮捕はされておらず、まして法廷で審理されている段階ではない」(1)という声明を出している。また、当初拘留されたのは、10人ではなく、9人だったようだ。これらの点について記述が不正確だったことをお詫びしたい。

さて、この間、彼女たちと面会した弁護士から、それぞれの状況が伝わってきた。

【1】武嶸嶸さん――B型肝炎を発病しているのに、薬を取り上げられ、治療も受けられず。その後病院に移されたが釈放されず

3月16日、王飛弁護士が武嶸嶸(ウー・ロンロン)さんと面会したところ、武さんは「私は慢性B型肝炎(中度)を患っていて、かつ発病期なのに、留置所は治療をしてくれず、身につけていた薬も押収されたので服用できない。伝染するのが心配だからと、毎日(ベッドでなく)床で寝させられている(遠山注:実際は、B型肝炎ウィルスHBVは、HIVウィルス同様、体液を交換しなければ伝染しない)」と述べた。

その後、王飛弁護士が留置所に何度も掛け合ったところ、留置所側は「もう武嶸嶸はベッドで寝られるようにしたし、病気はちゃんと治療する」と約束した。けれども18日にもう一度、武さんと面会したら、武さんは「あいかわらず床で寝ていて、なんら治療は受けていない」と言った(2)

王飛弁護士は、「2回の面会したとき、武嶸嶸の顔色は蠟のように青ざめていた。彼女は、発病期なので、いつも疲労を感じており、夜、眠る時も肝臓の部分が痛み、朝、起きると口の中には血痰があると言っている」と述べている。武さんの夫によると、武さんは肝臓病で今年2月に、12日間入院し、退院した時も「注意して休息すること」「1か月したらまた病院で検査をし、具合が悪い時は医者にかかること」という注意を与えられていた。

武さんの友人の野靖環さんは、「警察は、第二の曹順利事件(人権活動家が、彼女たちと同じ「寻衅滋事(挑発してトラブルを起す)」罪で逮捕され、拘留中にさまざまな病気を発症し、治療も受けられずに死亡した事件(3))を引き起こそうとしているのではないか?」と心配している(以上は、(4)

その後、弁護士が連日病気の治療の問題について留置所と交渉したところ、19日に、「もう公安病院に検査のために入院させた」と答えた。しかし、その後の詳しい状況は不明だ(5)。23日、梁小軍弁護士が武嶸嶸さんに面会しようとしたが、できなかった(6)

ただ、武嶸嶸さんは、3月16日に面会した王飛弁護士によると、自分はけっして違法な犯罪活動をしていないと述べ、各方面から支持に感謝しているとのことである(7)

【2】王曼さん――連日の真夜中までの訊問のために心臓病を発病、病院に。

3月20日、趙霞弁護士が、公安病院で王曼(ワン・マン)さんに面会した。王さんは連日、訊問が頻繁でかつ常に真夜中まであるので身体が疲労し、心臓病を発病して、現在は公安病院で治療を受けているという。病状はすでにコントロールされており、当面の危険はないが、弁護士としては、もう拘留を続けるべきではないと考えている(8)

【3】李婷婷(李麦子)さん――真夜中までの尋問や労働で2時間しか寝られない夜も。汚い言葉で人格的侮辱も

3月20日と23日、燕薪弁護士が李婷婷(李麦子)(リー・ティンティン、リー・マイズ)さんに面会しようとしたが、留置所側に拒絶された(9)

3月25日、燕薪弁護士はやっと李さんに会えた。李さんは、訊問の状況について、「土曜日は休みなのを除いて、毎日2、3回尋問がある。通常11時までおこなれわれ、夜中の1時半になることもあり、今日は2時から4時まで当番を割り当てられたが、6時には起床しなればならないので、2時間しか寝られなかった。また、訊問課長ともう一人の警官は、いつも汚い言葉で李さんの人格を侮辱し、わざと煙を顔に吹きかけることもある」と述べた。

警官は、李さんがやろうとした3月8日の痴漢反対ステッカーによる宣伝や、李さんがこれまでにやってきた、(トイレの男女の便器数の不公平さに抗議するための)男子トイレ占拠、傷を負った新婦のコスプレ(をしてDV反対を訴えたこと)、(大学入試の男女差別に抗議して)坊主頭になったことなどのフェミニズムの宣伝について訊問して、李さんに誤りを認めるように要求した。それに対して、李さんは、「それらはみな性差別に反対し、ジェンダー平等を提唱する、非常に意義があることだ。パフォーマンスアートという方法をとったこともあるが、いかなる誤りでもまったくなく、まして犯罪ではない」と述べて、誤りを認めることを拒否した。

李さんは数日間気分が落ち込んでいたが、そのときに、以前男子トイレ占拠をして警察に呼び出されたときに、あるフェミニストの先輩がショートメールをくれて、「フェミニズムの事業をすることによってあなたは辛い目にあうだろう」と言われたことを思い出した。李さんはこの言葉を思い出すたびに全身に力がみなぎると語った(10)

【4】鄭楚然さん――重度の近視なのにメガネを取り上げられる

3月17日、胡貴雲弁護士が、鄭楚然(ジョン・チューラン)さんに面会した。鄭さんは、重度の近視なのにメガネがないので、物を見るのに苦労するが、同室の人も良くしてくれるし、飲食や生活も問題はない。胡弁護士が、鄭さんに、中山大学を含めた世界各地の団体と個人、メディアなどの激励と注目を伝えると、鄭さんは、胡弁護士に託して、みんなへの感謝の意を示した(11)

【5】韋婷婷さん――メガネがないために不便。何度も同じことを尋ねられて疲労。

3月17日、王秋実弁護士が、韋婷婷(ウェイ・ティンティン)さんに面会した。韋さんの精神状態は良く、韋さんは、自分が女性のためにやったことは国家の政策と法律の規定に合致しており、なんら違法な犯罪行為ではないと考えている。ただ、留置所にはメガネがないので、800度の近視の韋さんには不便を強いられているが、外部の声援の情報を聞いて感動して涙をこぼしたとのことである(12)

最近は訊問の頻度が高くなり、韋さんも「もう疲れてしまった」と言う。韋さんは「多くの問題は何度も尋ねられたことだ。3、4年前の研修の経験についてさえ尋ねられたけれども、時間が経ちすぎたのでもうはっきり覚えていない。また、訊問している警官は、多くの活動は許可[批准]されていないから違法だと言って、違法だったと認めろと言う」と述べた。それに対して、弁護士は、「なんら違法ではないし、まして犯罪ではない。あなた方は集会やデモ、大きな集団活動をしたわけではないのだから、許可を得る必要はまったくない。一万歩譲って、たとえあなたが違法だと認めても、罰金、せいぜい治安拘留であり、刑事拘留はできない。まして人を捕まえてきた後に違法だと認めろと言うのは、罪名をでっち上げることだ」と述べた(13)

以上から、拘留中の女性5人に対して、さまざまな形で人権侵害がおこなわれていることがわかる。

まず、総じて、弁護士がなかなか面会できないという状況がある。

また、深刻なことに、連日の真夜中までの訊問とか、それによって睡眠を取らせないとか、病状から言っても釈放すべきような人からも薬を取り上げるとか、その結果として入院に至らしめても釈放しないといった状況がある。メガネが没収されたままであることも人権侵害であるし、人格的侮辱も加えられている。

さらに、李婷婷(李麦子)さん、韋婷婷さんに対する尋問から見ると、単に今年の国際女性デーの活動計画だけでなく、彼女たちのこれまでの活動全体を問題にし、違法と見なしているようだ。

ただし、それにもかかわらず、これまでに自らの罪を認めた女性はおらず、外からの激励に感謝しているという点も共通している。

2.NGO――家宅捜索、ウェブサイトの消失・更新停止など

【1】彼女たちの活動を支えた北京益仁平センターに家宅捜索

3月24日の早朝、差別反対運動をしている民間団体である北京益仁平センターの事務局に、約20名の警官らしき者たちが捜査に入り、ドアをこじ開け、物品を差し押さえた。彼らは4、5時間の捜索の後、事務局の財務証票やパソコンなどを差し押さえて持って行った。

北京益仁平センターは、2012年に「ジェンダー平等」プロジェクトを開始し、多くのフェミニスト活動家を育成・支援してきた団体であり、今回拘留中の若い女性たちの研修などもおこなってきた(14)

【2】ウェブサイトの消失、更新停止、エントリ削除

若いフェミニストグループの中核になっていた「性別平等工作組(正式名称は、中国語は「性別平等倡導行動網絡」、英語は「Gender Equality Advocacy and Action Network」)」のウェブサイトがなくなってしまった(現状)。このウェブサイトは街頭パフォーマンスアートをはじめとした、さまざまな活動を伝える写真が満載のカラフルなサイトで、アドレスのxbpdは「行動派(xingdongpai)」を意味していたと思う。

女声網」は無事だが、更新は完全に停止している。こちらのサイトは、以前からあったNGOである女性メディアウォッチネットワークのサイトだが、彼女たちの活動を伝える上で「性別平等工作組」のサイトと同じく重要な役割を果たしてきたサイトである。

微博(中国版ツイッター)に関しては、アカウント自体が削除された微博は見当たらないし、フェミニスト行動派の微博(女权行动派很好吃)も無事である。しかし、どのアカウントのものであれ、今回の事件関係の発信は、非常に頻繁に削除されている。

3.国内外で広がる支援、諸外国の政府も声明

【1】国内

3月11日頃から、鄭楚然さんが卒業した中山大学など、広州の10大学の学生・卒業生は、署名運動を始めた。その署名は、以下のように訴えている(その一部)。

広州の大学生として、私たちはみんなに訴える:
一貫してジェンダー平等を推進し、立派な都市の建設に力を尽くした若い公益人で、広州の中山大学の卒業生である鄭楚然に声援を送り、彼女の境遇が一日も早く妥当な形で解決し、今後も行動の力によって私たちの社会のために、もっと多くの正のエネルギーを作り出し、若者の努力によって共に調和した幸福な社会を促進させるよう訴える。

私たちは、各大学の学校側にも訴える。中山大学の学校側が、中山[孫中山、孫文]先生の学校創立の理念を受け継ぎ、鄭楚然校友に声援を送り、関係各方と協調して、事件の適切な解決を積極的に促進するように求める。現在いたるところで見られる女性を差別し、女性をモノ化する社会環境の中で、鄭楚然と彼女の友人の行動は積極的な力に満ちており、社会進歩の方向を代表している。中山大学はこのような理想と気持ちを持った学生を生み出したことを光栄に感じるべきである

3月12日時点で、この署名に応じてネット上に氏名を公表している人が107人(うち中山大学の在学生51人、卒業生31人)がいた(15)

3月12日、李麦子(李婷婷)さんが卒業した長安大学がある西安の大学でも、5人を支援する署名運動がおこった。この署名は、以下のように訴えている(一部)。

李麦子が男子トイレ占拠活動を起こし、都市管理委員会に手紙を書き、大学で女子トイレの改築をすすめたことは、すでに衛生部・住宅建設部の政策の改善にも結びついた。DV反対の写真を集める活動に参加し、裁判の現場ではDV被害者のKIMに何度も声援を送った。また、教育部の学生募集の性差別に反対した。

私たちと李麦子は、西安という悠久の歴史と輝かしい文明の古都の学生であり、私たちは、彼女が女性に対する差別をなくし、ジェンダー平等を推進する事業のために貢献したことを誇りに思う。

ここに私たちは呼びかける。北京の警察は「法によって国を治める」という環境の下ですべてを厳格な法律的手続きによって行わなければならない。辱めたり中傷したりしてはならず、疲労させて訊問してはならず、拷問による自白の強要をしてはならない。弁護士との面会を許可し、医者にかかり薬を飲むことを許可し、基本的人権を保障し、秘密に拘禁してはならず、公開で公正な裁判をして、彼女に自分を弁護する権利と機会を与えなければならない。(16)

3月12日には、韋婷婷さんが卒業した武漢大学でも署名運動が起こった。この署名は、要求内容は西安の署名と似ているが、韋さん自身ついては、以下のように説明している。

韋婷婷は武漢大学社会学系社会学専攻2005年級の校友で、武漢大学の人類学専攻修士課程を卒業した。在校期間は、《ヴァギナ・モノローグ》を上演し、さまざまな形でフェミニズム思想をキャンパスに引き入れ、多くの学生を啓発した。卒業後はLGBTたちの行動に心身を投入している。(17)

さらに、全国18省市34人の女性弁護士が、「[北京市公安局によって]数名の女性の権利の唱導者が拘禁されたことについての通報の書簡」を出した。通報先は「公安部、北京市人民検察院、全国婦連」だから、この書簡自体に効果があるとは考えられないが、法的な不当性がアピールされていると言えよう。下はその一部である。

公安部、北京市人民検察院、全国婦連:

彼女たちに対する逮捕・ハラスメントは、わが国の女性児童権益保護法の女性の権益保護についての関連規定に対する重大な違反であり、女性の合法的権益を侵害した責任者たちは、行政・民事・刑事責任を法にもとづいて負わなければならない。それゆえ、私たちは、ここに、公安部、北京市人民検察院、全国婦連に対して、北京市公安局の違法行為を通報するとともに、次のように訴える。

一、北京の警察はただちに違法行為を停止し、拘禁された女性の権益の唱導者をただちに釈放し、彼女たちから押収した物品を返却し、他の女性の権益の唱導者に対するハラスメントと威嚇を停止すること。

二、北京市の人民検察院は、警察が法律の規定に反して公民を勝手に拘留した違法行為に対して法律的監督をおこない、北京の警察にただちに違法行為を是正し、関係する責任者を調査し処分すること。

三、全国婦連はただちに捕まえられ拘留された女性の権益の唱導者の合法権益を擁護し、上述の部門に違法行為を調査・処分することを自ら要求すること。

四、私たちは事件の展開を注意深く見守って、これらの女性の権益の唱導者に対して必要な法律的援助をおこなう。(18)

なお、国外からだが、3月13日、フェミニストアーティストの李心沫さんも、ドイツのウィースバーデンでの個展の開幕式で、5人の釈放を要求した。李さんは、身体にも「Free Maizi li(李麦子を釈放せよ)」などと釈放を要求する5人の赤い文字を書いて訴えた(19)

また、中国の国内外で、ネットユーザーが一人一枚の写真で5人に声援を送る運動も始まった。これはFacebookの「Free Chinese Feminists」を利用したものだ。このページは、現在、英文で最新情報が読めるページになっている。

また、今回の大きな特徴として、労働者、とくに深圳の労働者や広州大学城の環境衛生(清掃)労働者からの支援の声が大きいことがある(20)。これはとくに鄭楚然さんが彼(彼女)らを支援したことによる(この点については、鄭楚然「ルポ:女たちのたたかい-広州大学城の環境衛生労働者のストライキ」、「中国:囚われたフェミニズム 労働者たちが支援に駆けつける」を参照されたい)。工評社という体制外に近いサイトも、「労働者の権利と女性の権利が別々だったことはない」(21)として、彼女たちの支援を呼びかけている(後述)。

【2】国(地域)外の民間団体

まず、3月10日、アムネスティ・インターナショナル中国チームが、彼女たちはまだ弁護士と接触できておらず、拷問などの虐待の危険があることをアピールした。その後、アムネスティ・インターナショナルが「Free The Five」アクションを開始した。

また、おりしも3月9日~20日に、ニューヨークで国連女性の地位委員会が開催されていたが、女性団体が、5人が釈放されないかぎり、中国が国連と今年9月に開催しようとしている「世界女性サミット」(22)をボイコットすることを呼びかけた(23)

また、開発における女性の権利協会(Associantions for Women's Rights in Development[AWID])、イシス・インターナショナル(Isis International)、女性の人権のための緊急行動基金(Urgent Action Fund for Women’s Human Rights)、人権と発展のためのアジア・フォーラム(The Asian Forum for Human Rights and Development)、貧困をなくすためのグローバル・コール(Global Call to Action against Poverty[GCAP])などの国際女性団体も5人の釈放を要求した(24)

3月11日には、台湾の婦女新知基金会が、以下のことを要求する署名運動を開始し、以下の点を要求した(25)

1.中国政府が女性の権益とジェンダー平等を顧みないことを譴責し、拘留されているフェミニズム運動家をすみやかに釈放することを要求する。
2.台湾の女性/ジェンダー/人権団体には、この署名に連署し、海峡を隔てたジェンダー運動の仲間たちに声援を送るよう要請する。
3.馬政府には、両岸の経済・貿易交流だけを重視するのではなく、両岸のジェンダーおよび人権の発展のための交流も重視することを要求する。また、政府はすみやかに外交ルートをつうじて、拘留されている者に関心を示して、釈放するよう求める。

3月14日、マレーシアの26の人権団体が5人の釈放を求める共同声明を出した(26)

3月17日、ドイツ最大の女性人権団体「TERRE DES FEMMES(女性地球)」が、ただちに5人を釈放するよう要求する公開書簡を出した(27)

3月18日、世界フェミニストたちが、1週間で100ヵ国あまり、2500名以上の署名を集めて、国連本部の向いでも小さな集会をおこなった([動画] FREE OUR SISTERS NOW! )(28)

同じ3月18日には、韓国の市民団体が中国大使館前で集会を開いて、40団体と150人が連署した声明書を発表し、5人の釈放を要求した(動画)(29)

私たちは、女性とセクシュアル・マイノリティに対する暴力に反対し、すべての人の自由の権利を擁護する韓国の社会運動団体と個人として、逮捕された5名の活動家と政府に弾圧されて苦境にある中国のフェミニストLGBT活動家たちに、心から深い支持と連帯の情を表明する。私たちは、ある個人の生活も国境を越えた他の人の生活と結びついていると信じる。

私たちは中国政府に対して、拘禁されたフェミニストLGBTの5人の活動家をただちに釈放して、フェミニストLGBTを含めた活動家と社会運動に対する弾圧を停止するよう訴える。私たちは中国政府に対して、健全な集会、結社、言論の自由と権利を保障するよう訴える。拘禁された活動家が安全に釈放されるまで、フェミニストLGBTの活動家と社会運動に対する弾圧を停止するまで、私たちは全力を尽くしてあらゆる方法で彼女たちとともに闘い続ける。

3月21日には、香港の新婦女協進会(The Association for the Advancement of Feminism[AAF])、アムネスティ・インターナショナル香港(國際特赦組織香港分會)、職工盟婦女事務委員会(Women's Affair Committee of Hong Kong Confederation of Trade Unions)、大専同志アクション(大学や専門学校で活動するLGBTの人権団体)(大專同志行動 Action Q)など4団体の30人近くの人々がデモをおこなった。彼女たちは、「セクハラ反対には道理がある。フェミニストを釈放せよ」とスローガンを叫びつつ、中央人民政府香港特別行政区駐在連絡事務局(中聯辦)に行って、その看板のプレートに世界各地から寄せられた署名を入れた袋を貼りつけ、以下の点を要求した。

 1.中国政府は、ただちに無条件に武嶸嶸、鄭楚然、李婷婷、韋婷婷、王曼を釈放するよう要求する。
 2.彼女たちが釈放される以前は、定期的に何の制限もなく弁護士・家族と面会でき、何の制限もなく彼女たちが求める治療が受けられるようにし、拷問やその他の虐待はしないよう保障するよう要求する。(30)

この署名は先日呼びかけさせていただいたもので、世界各地から2033人の個人署名と71団体がこの日までに集まった。下に署名した方全員のお名前がある。
【關於敦促中國政府釋放女權活動家的聲明】

当日の活動を担った団体の一つである「大専同志行動」の李徳雄さんは、「中国共産党は、中国人民と同じように香港人民も圧迫しようとしており、香港でのジェンダーに関する運動も取り締まられるのではないかという心配が強まっている」と語った(31)

3月23日には、アメリカのフェミニズム団体、「ストップ・ストリート・ハラスメント」と「スラットウォークDC」が、ワシントンの中国大使館前で抗議行動をした(動画:Support the Five Feminists from DC)(32)

スペインの「連帯のための同盟」(Alianza por la Solidaridad)も署名運動を開始している(33)

【3】諸外国の政府も声明

3月12日、EUの外交事務と安全政策のスポークスパーソンが、中国政府はただちに5人を釈放することやただちに弁護士や家族と面会させるよう求める声明を出した(34)

3月14日には、アメリカ合衆国国連大使のサマンサ・パワー(Samantha Power)がツイッターで直ちに5人を釈放するように求めた(35)

3月24日には、イギリスの「外務および英連邦省」のスポークスマンが「私たちは、中国政府に、中国の憲法と国際的人権に合致した言論の自由を行使したために拘留されているすべての人々を釈放するよう求める」と述べた(36)

3月25日、カナダの外務国際貿易省も、「カナダは、セクシュアルハラスメントに対する平和的運動をした5人の女性が拘留され続けていることに深い関心を持っている。カナダは中国政府に対して、これらの女性を釈放することを求める」という声明を出した(37)

4.中国政府、国内の支援運動を弾圧、外国の要請も拒否

以上のような動きに対して、中国政府は弾圧や拒絶をした。

まず、政府当局は、大学に対して、学生が署名運動をするのを阻止するように求めた。ネットにはその通知の内容も書き込まれた。それは、「各学院は迅速に行動して、学年・クラス、学生の中に入って、状況を調査し、教育と忠告・制止をし、積極的に有効な措置をとって、断固として旗幟鮮明に、学生がこのような連署や声援を送る活動に参加しないよう教育し、導かなければならない。もしそのような状況があれば、ただちに学生部の思想教育事務局に知らせるようにお願いする」というものだった。

実際、中山大学で「フェミニストを釈放せよ」という署名に参加した人は、みな学校側の指導員に呼び出されて、以下のようなことを言われて脅され、止めるように言われた。
 1.「档案(身上調書)に良くない記録を付けるから、今後の進学や就職に影響するぞ」
 2.「まだことの顛末がはっきりしないのに、衝動的にやるな」
 3.「あなた方は利用されている」
 4.「政府が逮捕したのは、大兔(鄭楚然のペンネーム)たちがやっているこのような『公共交通での性暴力反対』は集団的活動で、他に目的があるかもしれないからだ」(38)

他の大学の署名運動に関しても、同様の措置が取られたと考えられる。

また、武さんの状況が心配なので、20日、北京の人権活動家の野靖環さんたち16人が海淀留置所に行って、所長と交渉しようとした。しかし、彼女たちは、みなパトカーに乗せられて派出所に連行された。とくに野靖環さんは、一人で蘇家坨派出所に連行され、その後連絡が取れなくなり、十数時間後にやっと釈放された(39)

中国政府は、外国政府の声明に対しても、拒否する姿勢を示した。

たとえば、EUの声明は、「欧盟在中国」というEU在中代表団の公式微博にも掲載されたが、その声明は微博から削除された(40)

また、24日のイギリスの外務および英連邦省の声明に対しても、翌25日、中国外交部の華春瑩スポークスパーソンは、定例記者会見で、「いかなる人も中国に彼女たちを釈放するよう要求する権利はない」「中国の司法の主権に干渉することを止めるよう望む」と述べた(41)

5.弾圧の背景など――習近平政権が強調する伝統的家族(女性)観や彼女たちの組織的・思想的自律性や行動力などが原因か。

「工評社」という体制外の労働運動グループと思われる団体が、「当局に弾圧されたフェミニズム運動に重大な関心を持て:彼女たちと私たち一人一人の被抑圧者は深い関係がある」という論文を発表したが、その中で、今回の弾圧の原因などにも触れている。

以下はその抜き書きであるが、簡単に言えば、彼女たちのような非常に温和な運動が弾圧されたのは、近年習近平政権が女性役割や伝統的家庭観を強調していたこととフェミニズムとが相反していたことや、彼女たちは自らの体系的思想や組織を持ち、国家から独立していて、行動力があり、政府の政策決定にも関与しようとしたことが弾圧の原因になったと述べている。

工評社は、この事件はおそらく中華人民共和国建国以後、当局が初めておこなった、フェミニズム活動グループに対する大規模な政治的迫害であり、また、2015年に国家が暴力的に民間の社会運動を弾圧する最初の重大なシグナルだと考える。

2012年から今まで、「フェミニスト行動派」がとりあげたテーマは、数えきれない。(……)彼女たちは、勇敢に「行動派」の旗印を掲げ、さまざまな創意あるパフォーマンスアートと政策の唱導をつうじて自らの理念を実践した。とくに述べておきたいのは、鄭楚然という「挑発してトラブルを起こす」罪をかぶせられたフェミニスト行動派は、ずっと労働者、とくに女性労働者の権益の問題に非常に関心を寄せていたことである。

今までのところ、彼女たちの活動のやり方はまだ非常に温和であり、いったんは統治階級によって有益な社会活動の補充だと見なされ、政府側のメディアでも広く肯定的な報道がなされ、多くの政府側部門が彼女たちの訴えに何度も公に返答をし(……)てきた。それゆえ、このたびの空前の大規模なフェミニズム活動家に対する弾圧は、非常に意外で、すっかり驚かされ、わけがわからないと感じられた。まさか公共交通の痴漢防止のシステムを作ることを唱える公益活動さえ、デリケートなタブーになったのではあるまい? いまなぜ、官庁が、このように温和で、以前は政府側のメディアでも肯定的な報道が少なくなかった社会活動さえ容認できなくなったのか? フェミニズム活動グループに対する、このまれに見る大規模な弾圧は、誰にとって、どのような危険信号なのか?

直接的には、その前の2つの事件が注目に値する。去年10月、「広州市非法社会組織取り締り工作細則(意見募集稿)」が広州各地の社会運動公益界の集団的なボイコットにあって、民間で政治的騒動を引き起こしたことと、今年2月22日(旧暦の新年4日)に、18名のフェミニストが春節の夕べの差別に反対するネット上の署名運動を起こしたことである。わずか数時間内に1300あまりの署名が集まって、すぐさま全国の各大メディアとネットの報道の焦点となり、広い範囲で討論が起きた。この2つの事件は、社会の公共生活でも文化領域でも、政府側の主旋律が、民間の社会活動に対して無視・抑圧したことを表しており、後者はますます大きくなりつつある影響力と独立した意志、なかでも、フェミニズム運動がこれらの民間運動の中の最も自覚的な一つだということを示した。それゆえ、国際女性デーの前夜の逮捕は(……)おそらく国家のフェミニズム活動とその他の民間社会活動に対する系統的な弾圧の開始である。

私たちは、一つの重要な原因は、フェミニストが唱える、両性の平等を勝ち取って父権制が決めた女性の社会的役割に反対するという「異端の理念」が、当局が宣伝する主旋律に「逆らった」ためであると考える。ここ数年来、社会保障システムの重大な欠陥が明らかになって、公式のイデオロギーが日増しにお笑い草になってきて以後、国家は、社会を安定させ、青年を抑えつけるために、年長者や夫、夫の家の権威を強化し、女性の権益と青年の自由意志を犠牲にした基礎の上に家族関係を構築しようとして、家庭倫理・伝統的道徳を強力に宣伝してきた。たとえば、注目に値するのは、先ごろ、習近平がとくに「社会生活と家庭生活での女性の独特の役割を発揮させることに重点を置く」と明確に指示し、政府当局側の婦女連合会がさらに直接にそれを「家庭を社会主義の核心的価値を養育し実践する立脚点にする」と解読して、伝統的家庭観を強力に宣伝した。

国家がこのたび広範囲でフェミニズムの活動を暴力的に弾圧したもう一つの、さらに重要かもしれない原因は、この社会運動は、行動があり、組織があり、影響があり、すでに形が出来上がっていて、自らの思想ないし社会生活圏があり、自らのシステムを形成しているだけでなく、国家の主流の言葉に屈服せず、柔軟で強い独立性があって、さらに不合理な政策を変える行動精神と新進気鋭の遊説能力を持っていることである。公式のメディアの報道によると、公衆の視野の中で活動しているフェミニズム組織は10前後あり、いつも組織されてフェミニズム活動に参与している若い人は数百名前後いる。たとえば有名なフェミニズム団体「フェミニスト行動派」は100名あまりの中核的メンバーを有している(42)。彼女たちはうまく微博・微信を運用してコミュニケーションしており、街頭パフォーマンスアートなどの方法でニュースを作り出し、かつ即座にメディアに情報を提供し、意識的に政府の政策決定に関与しようとしてきた。

一般の文化活動と異なって、彼女たちは、広範な女性の権利擁護のために、実際の行動をする性質を持っている。また、一般の権利擁護活動と異なって、彼女たちは自らの体系的な思想文化を持っていて、かつその思想体系は、国家・資本・統治イデオロギーに対して批判的性質を持っており、同時にまた、それを行動に移して政府の関係部門の政策決定を変えてきた。その結果、彼女たちの主張は情理に合ったもので、活動方法も非常に温和だったにもかかわらず、彼女たちの勢いが大きくなったとき、国家が弾圧する必要がある不調和な異端になる。

実際、他の領域では、弾圧はすでに発生している。フェミニズム団体の受けた弾圧は、もちろん最も早いものでも、最も厳しいものでもない。

しかし、私たちは、このたびのフェミニズム運動が遭遇したまれに見る広範囲の弾圧は、2つの点でとくに重大な性質を持っており、すべての進歩的な労働者、被抑圧者と社会の解放に努力している人々が深い関心を持ち、声援を送るべき理由があると考える。

第一に、この弾圧されたフェミニストは、女性の権益のために誠実に奔走してきただけでなく、労働者を含む多くの被抑圧集団の権利擁護を支持してきたし、それぞれの社会運動の相互の支援のために貴い努力をしてきた。

たとえば捕まった(……)フェミニスト活動家の鄭楚然は、数年来ずっと珠江三角州の労働団体と交流や協力をし、深圳の女性労働者の活動に参加してきており、2013年には刑務所に入れられたストライキの労働者代表の呉貴軍を支援する活動に参加し、2014年には広州大学城の環境衛生(清掃)労働者の集団的権利擁護運動に参加した。また、同様に弾圧された杭州のフェミニズム活動家の武嶸嶸は、エイズ公益機構で仕事をしてきて、B型肝炎の母親が集団で主張した「B型肝炎の子どもの教育を受ける権利」に協力し、女性セックスワーカーの生存状況の調査とエイズ防止活動をして、2011年から性差別に反対する活動に専門的に従事し始めた。

第二に、去年、政府当局が「非法社会組織の取り締まり」と密接に関連する「社会組織管理辦法」が今年1月1日から施行が開始される。三八国際女性デーの前夜のフェミニズム団体の弾圧(これ自身が、国家機構の広範な女性たちへのブラックユーモア的な嘲りである)、は「社会組織管理新政」が念入りに選んだ1回目の弾圧である。新法の1回目の弾圧が、行動が温和な女たちに対してだったことは、それ自身が非常に重大な政治的シグナルである。このシグナルは実はすべての民間団体に向けられている。このように温和な組織が弾圧されるなら、弾圧を免れることできる者がいるか否かは、推して知るべしである。

今、彼女たちが国家の弾圧を受けているときに、まさか私たちは対岸の火事を見るように見てみぬふりをするのではあるまい?(43)

中国のメディアで長いあいだ活躍してきて、現在はドイツ在住の長平さんも、以下のように述べた。

習近平の就任以来、政府側のメディアは、欧米式の民主や報道の自由などに主張に対して「肝心のときには、あえて剣を抜かなければならない」と繰り返している。メディアは厳格に統制され、市民の権利を主張するNGOは次々とつぶされ、異議申し立てをする人々に重い刑を課されて投獄された。しかし、フェミニズムはまだ「欧米の価値観」というレッテルを貼られず、多くのフェミニズムNGOは政府部門の各級の婦女連合会と協力関係を保持していた。

しかし、若い世代の女性がしだいに独立したフェミニズム意識を持つようになり、習近平政府の父権帝国の夢想と矛盾するようになった段階で、すでに矢は弦につがえられた。中共が去年発表した「9号文書」のなかの「7つのこと(欧米の憲政民主、世界に普遍的な価値、市民社会、新自由主義、欧米の新聞観、歴史虚無主義、改革開放への疑い)を言わない」ということの多くは、フェミニズム思想と抵触する。

中国の陰暦の正月の前夜、習近平は中共中央・国務院の春節の祝賀会での講話で、「家庭を重視し、家庭教育を重視し、家風を重視する」ことを要求した。すぐさま上演された中国中央テレビの春節の大晦日の交歓の夕べでは、孝道が宣伝の重要なテーマになり、番組ではいまだかつてない性差別が出現した。フェミニズム団体は抗議の署名を発起し、中国中央テレビの思想統制と洗脳教化を批判し、春節の大晦日の交歓の夕べの放映停止と娯楽市場の開放を要求した。

「あえて剣を抜いた」中国政府が、フェミニスト行動派を取り締まるのは必然である。(44)

以上のような考察から見ると、今回の弾圧の原因は、習近平政権が強調する伝統的家族(女性)観や彼女たちの組織的・思想的自律性や行動力などが原因だったと言えそうだ。

私は、それに加えて、彼女たちが、工場労働者や他のマイノリティとも連帯をはかろうとしていたという、まさにそのことが弾圧の原因となったのではないかと思う。学生と知識人だけではなく、他の広範な人々と結びつくことが、政権にとって脅威になったのではないだろうか。

また、中山大学元教授の艾暁明さんは、現在の政府のやり方と中国の「維穏[=社会の安定維持]」政策が矛盾していることを指摘している。

このたびの攻撃・抑圧は、非常に愚かなやり方であり、非常に専横で、わからずやで道理をわきまえないやり方でもある。それは、現在の維穏[=社会の安定維持]メカニズムは、国家が長いあいだ唱えている男女平等という文言とは完全に相反していることを暴露した。私たちの国家の女性の権益を保護する法律の中では、家庭内暴力にも性暴力にも反対する文言があるけれども、維穏メカニズムはこれらの言葉と完全に反しており、まったく引き裂かれた関係である。(45)

いま、両会(全国人民代表大会や全国政治協商会議)では、公共トイレの女性便器を増やす建議が議員(代表や委員)によっておこなわれている。その一方で、それを議員に持ち込んだ民間の運動家は牢獄につながれているという矛盾が指摘されている(46)。この矛盾は、艾暁明さんが指摘したことが現実の中に現れたものだと言えるだろう。

6.まだの方は、署名をお願いいたします!

以上で述べたように、今回の事件は、5人の女性が現在置かれている状況という意味でも、今後の中国社会の人権や民主主義を左右するという意味からも、非常に重要です。中国内部でも困難な中で支援をしている方々もおり、国際的な運動は外国の政府も巻き込む形で広がっています。

先日呼びかけさせていただいた、彼女たちの釈放を求める下の国際署名がまだの方は、ぜひお願いいたします!

★★[署名]中国のフェミニストアクティビストたちの即時釈放を求める署名――大橋史恵★★

(1)王秋实律师的微博3月14日 18:02
(2)武嵘嵘慢性乙肝(中度)发病中 律师交涉后仍无改善 网友呼吁投诉要求其睡床、治疗(2015-3-18)」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】134楼(2015年3月19日)。
(3)北京大学法学院の曹順利さんがジュネーブで人権活動に参加しようとして2013年9月14日、北京空港で警察に連行され、「不法集会罪」の疑いで北京の留置所に拘留され、10月、今回の彼女たちと同じ「寻衅滋事(挑発してトラブルを起す)」罪で逮捕された。曹さんは拘留期間に肺結核・肝腹水・子宮筋腫などさまざまな病気を患ったが、病院に送られて緊急措置がなされるまで、治療を受けることができないかったため、2014年3月14日、曹さんは病院で死亡した。
(4)女权人士重病遭警方停药,亲友担忧“第二个曹顺利事件”」博讯新闻网2015年3月22日。
(5)女权案武嵘嵘狱中境况堪忧 16公民前去探望遭扣押」博讯新闻网2015年3月21日。
(6)被捕女权人士持续引发各界关注 律师会见频受阻」博讯新闻网2015年3月24日。
(7)3月16、17日律师会见武嵘嵘、郑楚然、韦婷婷情况通报」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】126楼(2015年3月17日)。
(8)“女权五杰案”最新进展通报——本网呼吁不要让武嵘嵘成为第二个曹顺利」维权网2015年3月22日、律师常玮平的微博【女权五杰案王曼被审讯至心脏病发】3月22日 12:31
(9)被捕女权人士持续引发各界关注 律师会见频受阻」博讯新闻网2015年3月24日。
(10)以上は、李思磐的微博「李麦子被讯问 一天只能睡两小时」2015年3月25日、「燕薪律师:女权五姐妹案情况通报6 李婷婷受辱」博讯新闻网2015年3月26日。
(11)3月16、17日律师会见武嵘嵘、郑楚然、韦婷婷情况通报」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】126楼(2015年3月17日)。「大兔の身体は良い。5人の中で一番いいかもしれない。中の人の対応はよく、中で仕事はしなくても良い(なぜなら重度の近視で、メガネがないから) というふうに記している報告もある(胡贵云律师的微博【郑楚然(大兔):3.8女权案】3月18日 12:53)。
(12)3月16、17日律师会见武嵘嵘、郑楚然、韦婷婷情况通报」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】126楼(2015年3月17日)。
(13)秋实律师的微博「全世界的女人都是盟友――三见韦婷婷」2015年3月31日 20:53。
(14)Jun Lu「正在呼吁释放五位女权人士的反歧视公益机构北京益仁平中心被多名“警察”查抄」Facebook2015年3月25日。彼女たちと北京益仁平センターとの関係については、拙稿「中国の若い行動派フェミニストの活動とその特徴――『ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク』をめぐって――」(『女性学年報』34号[2013年])11-12頁も参照。
(15)支持中大校友及女权公益人——中大学子的联名声援」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】54楼(2015年3月12日)、「广州10所高校学子联署声援被捕中山大学毕业生及女权公益人」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】68楼(2015年3月13日)(2015年3月12日 青益台)。
(16)【西安高校参加联署,支持为公益被拘禁的校友李麦子】」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】67楼(2015年3月13日)。
(17)【武大校友呼吁武大学生站出来声援校友韦婷婷】(2015-3-12发起)」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】71楼(2015年3月13日)。
(18)全国十八省市三十四名女律师就数名女性权益倡导者被羁押的举报信」维权网2015年3月15日。
(19)吕频的微博3月15日 09:13
(20)劳工界对女权活动者的集体声援」劳工互助网、「大学城环卫工声援被捕女权行动派」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】137楼(2015年3月20日)。
(21)工权与女权,从未分离(2015-3-15,作者:女权与工人)」工评社博客2015年3月15日。
(22)中国が国連と世界女性サミットを開催へ」人民網日本語版2015年3月11日。
(23)李思磐的微博「国际女权组织声称将杯葛中国峰会」2015年3月11日 14:31
(24)国际妇女组织声援中国活动家(信息汇编)」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】103楼(2015年3月15日)。
(25)【聲明稿】聲援中國女權人士,號召台灣關心性別運動者一起挺對岸的夥伴! 婦女新知基金會聲明及連署募集」婦女新知基金會サイト2015年3月21日(署名ページ「聲援中國女權人士,號召台灣關心性別運動者一起挺對岸的夥伴! 婦女新知基金會聲明及連署募集」)。
(26)馬來西亞公民社會發表的聯合聲明Malaysian civil societies Joint statement」3月15日 7:35
(27)德国最大女权组织声援中国活动家」2015年3月18日。
(28)周三联合国集会吁中国释放女权活动家」博讯新闻网2015年3月18日、「五位中国女权活动人士被抓超过10天」博讯新闻网2015年3月20日。
(29)韩国公民团体在中国使馆前集会呼吁释放女权活动家(3月18日,附40团体声明书及现场图片)」Evernote
(30)[新聞稿]向中聯辦遞交聯署,要求立即釋放五位女權人士 呼籲中國政府:立即釋放五位女權人士」新婦女協進會2015年3月21日、「[Press Release]DEMAND RELEASE OF WOMEN’S RIGHTS ACTIVISTS IN CHINA」The Association for the Advancement of Feminism[AAF]2015年3月21日。
(31)团体游行至中联办抗议大陆拘五女权人士」Radio Free Asia 2015年3月21日[動画あり]。
(32)StopStHarassmnt & SlutWalk‬ DC‬‬「記事」、「美国女权组织声援中国被捕女权人士」博讯新闻网2015年3月24日。
(33)大陸女權份子遭刑拘 各國人權組織要求釋放」香港獨立媒體網2015年3月17日。
(34)Statement on the arrest and detention of women’s rights activist in China ”EU Delegations to the United Nations
(35)Samantha Power. Chinese authorities should immediately release “Beijing+20 five.” Sad reflection on “women’s rights are human rights.”2015年3月12日13:24
(36)Foreign Office concerned by detention of women's rights activists in China,GOV.UK
(37)Foreign Affairs, Trade and Development Canada “Statement by Parliamentary Secretary Obhrai on Detention of Chinese Women’s Rights Activists
(38)以上は、「大学生连署声援被拘女权人士 当局下令管控」Radio Free Asia2015年3月16日、原文の画像は「网传校方紧急制止广州高校学生联名声援被捕女权公益校友 学生撰文反诘(2015-3-14)」(新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】87楼[2015年3月14日])に収録されている。
(39)野靖环因抗议武嵘嵘不人道待遇失联  郭飞雄狱中待遇糟糕家人忧心」Radio Free Asia2015年3月20日、「女权案武嵘嵘狱中境况堪忧 维权人士野婧环等16人海淀看守所表达关切竟遭扣押」维权网2015年3月20日
(40)欧盟呼吁中国政府尽快释放五名女权活动家 官微消息竟也遭中国当局删除(2015-3-13)」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】81楼(2015年3月13日)。
(41)中国当局拒绝释放5名女权活动人士」博讯新闻网2015年3月26日。
(42)彼女たちの組織状況については、拙稿「中国の若い行動派フェミニストの活動とその特徴――『ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク』をめぐって――」(『女性学年報』34号[2013年])12-13頁でも触れている。2013年4月時点で、「ジェンダー平等活動グルーブ中核メンバー」として52人が記載されていたが、その後さらに拡大したのであろう。
(43)工评社聚焦:她们与我们每一个受压迫者息息相关(2015-3-10)」工评社博客2015年3月15日、「深切关注遭受当局打压的女权运动:她们与我们每一个受压迫者息息相关」工评社 新声代2015年3月11日。
(44)长平观察:北京向女权亮剑」德国之声2015年3月11日。
(45)艾晓明:打压女权活动者为不智专横之举」博讯新闻网2015年3月12日。
(46)2015两会代表委员建议增加公厕女厕位 民间首倡者却遭到牢狱之灾(2015-3-14)」新青年【理解女权主义,关注被打压的女权运动】109楼(2015年3月14日)。
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