2013-08

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ジェンダー平等活動グループの合宿に対する当局の妨害と「herstory maker青年女性行動力育成計画」

当局の圧力によりホテルが解約、合宿はゲリラ的に継続

8月16日から20日までの予定で、ジェンダー平等活動グループ(性别平等工作小组。正式名称は「ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク」。女子大学生ら、若い女性中心のグループで、これまでの活動は「『ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク』(中国)年表」とその下のリンク参照)は、広州で「herstory maker行動力育成夏令営(サマーキャンプ)」という名の合宿をおこなっていた。

ところが、8月17日14時19分、北京益仁平センター(さまざまな差別撤廃に尽力しているNGOで、ジェンダー平等活動グループの後ろ盾になっている)の微博が、「李麦子・鄭楚然などが呼びかけたジェンダー平等広州夏令営が今、契約違反に遭った。予約していた錦江之星(ホテルの名)が会議室を提供することを断り、多くのホテルも参加者の使用を断った。維穏(社会の安定維持)部門が応対を断るよう指令したのだという」という発信をした(【反性别歧视夏令营遭"维稳"部门踢场】2013年8月17日 14:19)。

15時22分には、鄭楚然さんが、「私たちは粤k535y3[車のナンバーであろう。粤は広東省の別名]の車両にずっと追跡されている」と発信した(大兔纸啦啦啦的微博【性别平等夏令营遭“维稳部门”踢场】同日 15:22)。つまり、「反性差別夏令営は維穏部門に追跡追撃されている」(北京益仁平センターの陸軍弁護士)のだった(陆军-反歧视的微博同日 21:20)。

同日21時56分、女権之声(女性メディアウォッチネットワークというNGOの微博。このNGOもジェンダー平等活動グループを支えている)が、「herstory maker 夏令営とフェミニズム[女権]行動派の活動は合法で平和的である。惜しみない声援をお願いする。多くの人が声を上げれば上げるほど、安全になる。夏令営は移動しながら続けられている」と伝えた(女权之声的微博8月17日 21:56)。

次の日、北京益仁平センターの陸軍弁護士は、「女子大学生の参加者は、覆面車両が追跡している中で、機知を働かせて勇敢に場所を変えた……。維穏部門は、女子大学生を『女遊撃隊員』に変えた」と微博で発信した。この発信には、李麦子さんと鄭楚然さんが地下鉄に乗っている写真や、どこかの板の間(?)で、みんなが椅子や床に座って本(ノート?)やパソコンを膝の上に置いている写真が添付されていた(陆军-反歧视的微博【遭维稳部门踢场,女大学生展开“游击”夏令营】8月18日 22:07)。彼女たちは地下鉄に乗って移動して、尾行を巻いて(?)、おそらくはホテルでない場所を確保したのだろう。

その後の状況については、おそらく安全のため、対外的には発信されていないが、5日間の日程の2日目に場所の変更を余儀なくされたのであるから、たとえ最後まで活動を継続できたにせよ、さまざまな困難をきたしたと思われる。

当局による妨害の理由は?

このグループの合宿の類が弾圧されたのは初めてだったせいか、陸軍弁護士は「ジェンダー平等さえ、デリケートな問題になったのか?」 (8月17日 14:42)、「維穏部門が、手に何も武器を持っていない女子大学生の性差別についての夏令営に対して、このように大いに武器を振るうのは、彼らがヒマすぎるからか? それともこの仕事は手柄を立てやすいからか?」(8月18日 22:25)といぶかしんだ。

この件に関して、北京益仁平センターの微博は、「李麦子は、かつて『男子トイレ占拠』で国内外を騒がせ、鄭楚然は、先週[広東]省の人社庁(人力資源と社会保障庁)の庁長に人材市場を歩き回って女子学生の就職難に注目するように訴えた。女性の反差別が行政部門のメンツをつぶしたのか? こんなに早く報復するのか?」(8月17日 14:19)と述べている。

とはいえ、「男子トイレ占拠」(本ブログの記事「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」参照)は、たしかに各地でおこなわれ、マスコミの話題にもなったが、これは昨年の2~3月のことである。

また、鄭楚然の行為のほうは、この8月のことではあるが、鄭が南方人材市場に「男性のみ」という求人が10%もあることを見つけて、省の人社庁の庁長に、人材市場を歩いてみて性差別的な求人があることを見てほしいと手紙を書いて訴えて、それをマスコミに公表し、人社庁の担当者らが鄭との会談に応じて、「男子のみ」求人をなくすことを約束したという話である(1)。たしかにその際、人社庁の担当者が、鄭に対して、「[庁長に人材市場を歩き回るように要求したことは]私たちの求人の秩序を乱す行為である。私たちは実務部門として反感を持った」と言ったとか(2)、「法律の手続きを踏むべきであり、いつもメディアに訴えるべきではない」と何度も言ったとかいうことなので(大兔纸啦啦啦的微博8月14日 13:43)、こうした点は、メンツの問題と関係しているかもしれない。行政の担当者が若い女性と対話することを余儀なくされたという事態そのものがメンツにかかわるのかもしれないし、中国当局はそうしたメンツに左右されるということかもしれない。

いずれにしろ、彼女たちの活動というのは、一般の人が広く社会やメディアに訴える行為であり、また彼女たちの活動に影響力が出てきたからこそ、当局が介入したという面はあるように思う。

また、北京益仁平センターの微博によると、「彼ら[維穏部門]は大学生たちが公共の問題に関心を持つことを恐れている。今年は多くの公益(=NGO)の夏令営が維穏部門に阻止・妨害されている」(8月17日 21:03)という。つまり、けっしてジェンダー平等だけの問題ではなく、若者の政治や社会に対する関心の高まり自体を当局が恐れているということのようだ。

また、私は、この合宿が、以下で述べる「herstory maker 青年女性行動力育成計画」の冒頭のプランであったことが今回の弾圧と関係していないだろうか、とも考える。少なくとも客観的にはこの計画を妨害する働きをしたことを憂慮する。

「herstory maker 青年女性行動力育成計画2013」について

「herstory maker 青年女性行動力育成計画」(「herstory maker 青年女性行动力培育计划招募」NGO发展交流网2013年6月18日参照)は、今年、ジェンダー平等活動グループがおこなうプランである。

その呼びかけ文には、以下のようにある。

 これまではhistoryしかなかった。
 これまではheroしかいなかった。
 女性として、あなたはherstoryを作り上げたいと思いませんか?
 女性として、あなたはsheroになりたいと思いませんか?

 あなたはあなたの三観(世界観、人生観、価値観)をくつがえして、伝統的な男女のルールの外の世界を見たいと思いませんか?
 あなたは徹夜でブレインストーミングをして、思想者の肩の上に立って理想を論じたいと思いませんか?
 あなたは広く読み漁って、奥義を窮めた人の重厚な図書を読んで、矛を交えたいと思いませんか?
 あなたは「アクション」に加わって、いっしょに女性の歴史を創り上げたいと思いませんか?


また、この計画の紹介には、以下のように書かれている。

herstory maker 青年女性行動力育成計画は、ジェンダー平等ネット(性别平等网、ジェンダー平等活動グループのウェブサイト名だが、こちらの名称も時々使われている)が呼びかけたものであり、青年女性のジェンダー平等(多元的ジェンダー平等)という社会的テーマと社会的行動における指導力と行動力を育成する計画である。ジェンダー平等ネットは、2012年以来、研修キャンプとその他各種の形式で、合計256名の全国一・二・三線都市に散らばった青年女性を育成した。これらの青年女性は、新しい世代のジェンダー平等の唱導者となり、各種の方式でジェンダー平等のために声を上げた。彼女たちは、男子トイレ占拠などのパフォーマンスアートの形で公権力を問責し、ジェンダー理論を普及した。彼女たちは、訴訟を起こすなどの法律的手法で法律の条文を活性化し、真に民衆に有益なものにした。彼女たちは、街頭での唱導、キャンパス内外での活動という方法で公衆のジェンダー平等に対する見方に影響を与えた。彼女たちの足跡は全国いたるところにあり、なかには海外に伝えられたものもある。

この基礎の上に、ジェンダー平等ネットは、第1回「herstory maker 青年女性行動力育成計画」を呼びかける。授業、エンパワメント、行動、思弁、同盟を結ぶという方法で、ジェンダー平等に立脚し、社会公衆に顔を向けた、社会的現象を改革する、さらに多くの青年女性を育成することを望んでいる。


計画の内容としては、だいたい以下のようなことが書かれている。

○第1期 herstory maker 行動力育成夏令営
 期間 2013年8月16日―20日
 ジェンダー領域の非常に著名まはた経験豊かな講師の講義を受ける。参加者どうしで議論する。自らの身体と実践を通じて、ジェンダー平等の社会的行動がどのように可能であるかを理解する。

○第2期 herstory maker 小額資金援助行動プロジェクト
 期間 2013年9月―2014年2月
 あなたが自分のいる地区で、グループを作るか、個人的な行動という形で、自分がやりたいジェンダー平等唱導のテーマをやる。主催者はあなたの行動のプロジェクトの全過程に資金と技術を提供する。

○第3期 herstory maker 再び歴史を創るワークショップ
 期間 2013年末
 全国各地のワークショップに参加し、人脈(学者・専門家、フェミニスト活動家、青年アクティビスト、他の領域の市民社会建設者)を作る。

○第4期 herstory maker 進んだ段階の小額資金援助と個人サポートプロジェクト
 期間 2013年末
 全過程をサポートするほか、さまざまなNGOで実習の機会を持ち、各種のリソースを増やすことによって、あなたとあなたのグループが一人で闘わなくてもいいようにする。

以上を見ると、このプランはフェミニスト活動家の育成と活動の支援、しかも、その全国的展開を狙っていることが明確だ。

募集要項は、採用人数は30人である。広州でおこなわれる関係で、「この研修は、80%を中国南方のメンバーとし、20%だけ北方地区のメンバーを受け入れる」となっている。

これまでも、ジェンダー平等活動グループは、昨年の冬、春、夏、秋、今年の春に合宿をしてきたし(昨年冬と夏は、主催者が北京益仁平センター)、それぞれについて、多かれ少なかれ宣伝をしてきた。また、華東巡講、西北巡講、西南巡講といった形で、メンバーの何人かが地方に講演や対話に出かけたりしてきた。

しかし、今回のような長期的プランを発表したことはなかった。合宿の参加者も、昨年も毎回30人程度だったが、今回は、「80%が中国南方」という条件で30人なのだから、規模の拡大を図っていることもわかる。

ジェンダー平等活動グループが社会的影響力を増大させてきたこととともに、こうしたことが当局の目障りになってきたのではないかと思う。

しかし、今回、陸軍弁護士も指摘していることだが(陆军-反歧视的微博8月18日 23:48)、昨年3月、「天下公」というNGOが、蘇州のホテルで「エイズ差別反対とジェンダー平等」公益弁護士交流会を開催しようとしたところ、警察が「維穏」を口実に圧力をかけて、契約を破棄したところ、裁判で賠償を命じられたという判決もある(3)。だからといって、こうした妨害が収まったわけではないけれども、こうした妨害は女性差別撤廃条約にも抵触することは間違いなく、国際的な批判を招くことも考えられる(国連での同条約の履行状況の審査も、そろそろのはずだ)。

(1)她邀省人社厅厅长逛人才市场」『信息時報』2013年8月8日、「中大女毕业生邀厅长逛人才市场续 省人社厅:已清理性别歧视信息」『南方都市报』2013年8月10日、「“将杜绝性别歧视招聘语言”」『信息时报』2013年8月15日、「中大毕业生反性别歧视 邀人社厅长访人才市场 市场内招聘广告10%“限男性”,人社厅约谈该女生」『南方都市报』2013年8月16日など。
(2)不满性别歧视语言邀厅长逛人才市场,中大毕业生郑楚然被约谈 省人社厅保证:人才市场不再出现“限招男性”」『南方都市报』2013年8月15日。
(3)陸軍弁護士が挙げていた新聞記事は、「苏州一酒店因“维稳”违约败诉 赔违约21750元」(中国時刻網2013年3月26日[来源:南方都市報])。この事件を報じた「苏州一家酒店因国保警察“维稳”叫停NGO会议被判违约 (RFI2013年3月26日)は、「『維穏』(安定維持)政策に中国NGOの初勝利」NPO法人AsiaCommons(亜洲市民之道2013年3月29日として、日本語にも抄訳されている。
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遠山日出也

Author:遠山日出也
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 また、「中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。日本の問題の一部は、「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」や「館長雇止め・バックラッシュ裁判」でまとめています。
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