2013-07

大学入試の外国語専攻の合格ラインの男女差別は撤廃、残る警察・航海専攻などの差別に女性たちが抗議

中国では、一部の大学の一部の専攻(小語種[=英語以外の外国語専攻]や軍・警察関係、芸術系など)では、女子学生の人数を抑制するために、男女別に合格者数を決めており、そうした専攻では、女性の入試合格ラインが男性より高くなっていました。昨2012年、このような男女差別に対して批判が高まり、弁護士やNGO関係者が教育部に質問状や意見書を出したり、女子大学生らが街頭で抗議活動をしたりしました。とくに8月、広州や北京で、若い女性たちが頭を丸坊主にして教育部(日本で言う文科省)に抗議したことは、大きな反響を呼びました(本ブログの記事「一部大学・専攻の入試合格ラインの男女差別に対する批判高まる」「大学入試の男女差別に対する抗議活動つづく――差別を正当化する教育部を批判して、坊主頭になるパフォーマンスアートも」参照)。

しかし、教育部は、同年10月、以下の3つの類型の専攻では、男女の合格者比率を決めることができると表明しました。

1.特定の職業上の必要と密接に関連しており、かつ職業に男女の比率に対して要求がある専攻、たとえば軍事、国防、公共の安全などの専攻

2.女性を保護する視点から、適当に女性の出願を制限する専攻、たとえば航海・採鉱など

3.一部の専門教育のリソースに限りがあって、学生募集の数に限りがあり、かつ社会的ニーズに一定の性別のバランスがある専攻、もし男女の比率を制限しなければ、重大な男女の比率のアンバランスが生じる可能性があって、実質的に教育の効果と社会の利益に影響して、国家の関係部門のニーズにも影響がある専攻、たとえば、一部のあまねく通用しない言語の種類[=「小語種(英語以外の外国語)」]、播音主持[キャスター、アナウンサーといった仕事のようです]の専攻など。


(この件については、本ブログの記事「教育部、大学入試の男女差別について、外国語専攻などの専攻名を挙げつつ正当化――女性団体はすぐ反論」参照)

教育部政策法規局長「今後は女性に対する制限の縮小も考える」

ただし、2013年1月、教育部政策法規局局長の孫霄兵さんは、新浪微博のインタビューに対して、上記の1~3を繰り返しつつも、「今後教育部は女性の学生募集に対する制限をいっそう縮小することも考える」と述べました(1)

北京の3つの言語系大学が男女の合格者ラインを同一に――「小語種」専攻では、多くの大学も同様に

4月には、北京外国語大学、北京語言大学、北京第二外国語学院が合格者を男女別に決めるのをやめて合格ラインを同一にしました(2)。その結果、北京外国語大学では、以前は合格者の男女比率が1:1だったのが、今年は1:3になりました。また、北京語言大学では、以前は30人中18人が男子学生だったのが、今年は、34人中(合格者数を増やした)、13人だけが男子学生になるといった変化がありました(3)。他にも多くの「小語種」専攻が男女別に合格者を決めるやり方を廃止したようです。

教育部:「軍事・国防と公共安全など一部の特殊な学院・大学以外は、大学は男女の採用の比率を規定してはならない」

さらに、教育部が4月18日に発表した「2013年普通高等学校[=大学と高等専門学校の総称]学生募集工作規定」では、43「軍事・国防と公共安全(警察などを指していると思います)など一部の特殊な学院・大学以外は、大学は男女の採用の比率を規定してはならない」と規定されました(4)

しかし、実際には、航海・航空・芸術系など専攻の男女差別も残る

ただし、「女性メディアウォッチネットワーク」というNGOのまとめによると、大学が発表した規定の中に以下のような文言があるとのことです(5)(アンダーラインを付けた分類は、私によるものです)。これを見ると、軍事・国防・警察以外の専攻でも、合格者の男女の比率の限定や受験からの女性の排除がおこなわれていることがわかります。

警察
・中南財経政法大学――「警察[公安]類専攻の女子学生の比率は、学生募集計画全体の15%を超えない」
・中国刑事警察学院――「男女の学生の比率は、10:1とする」
・中国人民公安大学――「女子学生の定員は、学生募集の総数の10-15%とする」
・北京警察学院――「未婚」(遠山注:男女を問わない条件)

海洋
・大連海事大学――「男子学生のみを募集する専攻:航海技術・タービン工程(海上方向)・船舶電子電気工程・海事管理・救助とサルベージ工程」
・広東海洋大学――「航海技術・タービン工程専攻(タービン工程[陸上]専攻は含まない)は、男子学生のみ募集」
・上海海事大学――「タービン工程・船舶電子電気工程は、男子学生のみ募集」
・上海海洋大学――「遠洋漁業科学と技術専攻は、採用する職場に対応して一般に男子学生のみを募集する」
・広東海洋大学――「航海技術・タービン工程専攻(タービン工程[陸上]専攻は含まない)は、男子学生のみ募集」

航空・宇宙飛行
・北京航空宇宙飛行大学――「女子学生の定員は、学生募集の総数の10-15%とする」
・中国民航大学――「飛行物体動力工程・飛行物体製造工程・電気工程およびそのオートメーション化・交通運輸・電子情報工程・航空機械電力設備メンテナンス・航空電子設備メンテナンス専攻は、男子学生のみ募集」
・瀋陽航空宇宙飛行大学――「飛行技術専攻は、男子学生のみ募集。国防生専攻は、男子学生のみ募集」

採鉱、資源の実地調査
・中国鉱業大学(北京)――「採鉱工程専攻は、女子学生を入学させてはならない」
・遼寧石油化工大学――「採鉱専攻は、男子学生のみ募集」
・西南石油大学――「石油工程・海洋オイルガス工程・資源実地調査工程・実地調査技術と工程・都市地下空間など職業的背景のある専攻は、男子学生の占める比率を比較的高くする」

芸術系
・中国メディア大学――「放送と芸術司会、演劇・映画・テレビの監督、演技などの専攻の採用時は、男女の学生で別々に順番をつけ、男女の学生の採用比率を1:1にする」
・星海音楽学院――「条件が同じときは、男子学生を優先して採用する」
・北京映画大学――「1.映画テレビ撮影と制作方向は、A類とB類の試験・採用方法を設ける。B類を採用するときは、女子学生の総数は2名を超えないこと。2.録音芸術専攻の各方向の学生募集計画は、男・女がそれぞれ50%を占めること。3.文化産業管理専攻映画(テレビ)管理方向の学生募集計画は、男18名、女17名とする。4..動画専攻の各方向の学生募集計画は、みな、男・女それぞれ50%とする」
・遼寧師範大学――「舞踏専攻は女子学生のみを募集する」

その他
 以下は、教育部の言う1~3の専攻のどれに位置づけられるのか(それともどこにも位置づけられないのか)も不明です。
・遼寧師範大学――「水文と水資源工程専攻は男子学生のみを募集する」(これは、2の「女性保護」という観点によるものかもしれませんが)
・外交学院――「本院の男女の学生の採用の比率は原則上1:1とする」
・国際関係学院――「合格させる女子学生の比率は学生募集計画の30%を超えない」
・上海税関学院――「教育部と税関総署の関連規定にもとづいて、税関管理専攻で採用する女子学生の比率は30%を超えないこととする」

昨年坊主頭になった女性たちが教育部の前で抗議、男女差別の是正を求める手紙を出す

こうした状況に対して、7月16日、光頭姐(坊主頭の女性)の図案がプリントされたTシャツを着た5人の若い女性が、北京の教育部の門前で、「女子学生を平等に扱え」というプラカードを掲げつつ、教育部に対して、大学が勝手に合格者の男女比率を決めている問題を是正するように求める手紙を投函しました。この5人の女性たちは、昨年8月、坊主頭になることによって大学入試の男女の合格ラインの差別に抗議した人々でした。

NGOの女性メディアウォッチネットワークに勤務する熊婧さんは、「小語種専攻が公平な競争に戻ったのを見て、非常に喜び、安心し、私が頭を剃ったのは無駄ではなかったと思いました」と語りました。しかし、多くの軍事・国防・公共安全などに関する大学・専攻、一部の芸術系の大学の演技・監督・撮影などの専攻で男女別に合格者を決めていることや、中国鉱業大学・広東海洋大学などの大学の採鉱・航海などの専攻では男性のみを募集していることについて、異議を申し立てたということです。

彼女たちは、教育部に対して、以下のような意見を出しました。

・「女性に対するあらゆる形態の差別撤廃条約」・「婦女権益保障法」・「教育法」などの条約・法律の中の関連規定と照らし合わせて、軍事・国防・公共安全関係の大学と専攻が性別の比率を設け続けることの合法性を検討し、社会公衆に十分で丁寧な説明をし、「特殊」という2文字で曖昧に済ませないこと。もし現在これらの大学の専攻で性別の比率を設ける合法的な根拠がないことがわかったら、きっぱりと取り消すこと。

・各大学の演技・監督・撮影・航海・採鉱などの専攻や高等専門学校、高等職業学校が勝手に性別の比率を決めている状況の監察をし、そうした大学などに直ちに性別の比率を取り消すようにきちんと促すこと。

・大学入試の性差別問題について、公益界・法律界の人々や広範な大学生・保護者と対話して、公衆の意見及び専門の反差別の政策設計の提案を聴取すること。


母校に対しても、入試の男女差別を撤廃するように求める手紙を出す

また、同じ日に、3人の女性が、自分が卒業した大学の入試の男女差別を撤廃するように求める手紙をそれぞれの母校に出しました。

中国メディア大学広告学院を卒業した肖美麗さんは、教育部に手紙を出すとともに、母校に対しても、放送と芸術司会、演劇・映画・テレビの監督、演技などの専攻での性別の比率の制限を取り消すことを求める手紙を出しました。肖さんは、「受験する女性が多いからと言って、性別の比率を限定して、女性受験生の利益を犠牲にする方法によって、いわゆる『性別のバランス』を取ることは、不公平です」と語りました。

遼寧師範大学を卒業した猪西西さんは、母校の「水文と水資源工程専攻」が男子のみ募集だったのを見つけ、その専攻は、教育部が5月に発表した「2013年普通高等学校学生募集工作規定」が規定している「特殊な専攻」にも入っていない以上、女子学生の受験を制限する理由はない、と大学への手紙に書きました。猪西西さんは「『水資源工程は非常にきつい仕事だから、女子学生には適していないので、男子学生しか募集しないのだ』と言う人がいるかもしれないけど、私は、この意見はとてもおかしいと思います。女子学生が学ぶのに適しているのかどうかは、彼女たち自身が決めるべきであり、大学が学生募集のときに予め女子学生を排除するべきではありません。平等と公正を追求することは大学の精神の一つであるべきであり、大学自身が背くべきではありません」と話しました。

中南財経政法大学を卒業した小鉄さんも、母校に手紙を出しました(「警察[公安]類専攻の女子学生の比率は、学生募集計画全体の15%を超えない」という規定に対してだと思います)(6)

警察官への女性の採用制限についての批判

警察や航海のような専攻は、一般的に男性向けの専攻というイメージが強いと思います。だから、大学や教育部も、女性の募集人数を制限することを変えようとしないのでしょうが、専門家からは、そのことについて、かなり詳しい反論が出されています。

中国人民公安大学・元教授の栄維毅さんは、「警察学院(大学)の女子学生比率に関する問題のジェンダー視点からの討論」(7)という文を執筆しました。以下は、そのごく簡単な要約です。

一 現状及び問題

2012年、中国人民公安大学の本科は1840人を募集し、そのうち女子学生は214人で、11.63%だった。公安部の2011年の統計によると、中国の警察官の総数は200万人であり、女性警察官はその13.65%である。

警察系の大学の女子学生の比率が低いことによって生じる問題には、少なくとも以下の3点がある。1.女子学生のニーズを満たすことができない。公安大学の入試では、女子学生間の競争が男子学生より激しく、女子学生が合格できる点数は、男子学生よりも高い。2.警察業務の女性警察官に対するニーズを満たすことができない(後述)。3.女子学生が少ないと、女子学生は「別種」になってしまい、女子学生の職業的心理と専門能力の発展に不利である。

二 警察官と警察業務におけるジェンダー問題に対する国際社会の関心

現在、世界の多くの国々では、女性警察官の数は絶えず増大し、女性警察官の勤務範囲も絶えず拡大している。それは、警察官と警察業務におけるジェンダー問題に対する国会社会の関心が絶えず強まっていることと密接な関係がある。その関心は、一つは、警察の業務において、どのようにして女性の人権を保障するかということであり、もう一つは、女性警察官の権利の問題である。

中国の女性警察官の比率は、アジアでは日本(6.8%)[遠山注:2013年には7.3%になっている]よりも高いけれども、リベリア(16.7%)よりも低い。日本も2023年には10%に増やそうしている。中国の女性警察官の比率はヨーロッパやオセアニアの国々より低い(オーストラリア20%、ニュージーランド18%、スウェーデン18.5%、イギリスは1/4近く)。

三 女性警察官の資質・能力・役割

1.女性警察官の資質の全体的評価

多くの調査研究によって、女性警察官が突発事態に対処する能力や胆力・識見、勇気、事件処理能力などは、男性警察官より優れているわけではないが、男性警察官よりけっして劣ってもいないことが明らかになっている。中国ではそうした研究がないことが、女性警察官の数に影響を与えている。

2.犯罪の取り締まりと防止、社会の治安維持における女性警察官の重要な働き

地域の警察業務において、女性警察官は公衆に受けいれられやすく、信頼されやすく、公衆と密接な関係を築きやすい。女性警察官はパトロール中の紛争処理や当事者の説得、関係者に対する調査・証拠集めなどの面で、当事者に受け入れられやすい、など。

3.ジェンダー暴力犯罪における女性警察官の代替できない役割

女性警察官は自分の経験や知識によって、強姦やDV、セクハラなどの被害女性の心理や行動パターンを理解しやすく、交流・理解・情緒的サポートなどの面で、男性警察官よりもすぐれていることが多い。

4.世界平和を維持する上での女性警察官の重要な役割

国連の平和維持活動において、女性警察官には、女性と女児を送還し、落ち着かせ、社会に復帰させ、衝突後の社会を再建する上で特殊なニーズがある。国連は2014年までに平和維持活動に従事する女性警察官の比率を20%に増やす目標を立てた。

5.新しい警察文化を創建する上での女性警察官の役割

警察官という職業は、従来、男性が主体になって、公共の暴力によって犯罪を取り締まることが主な内容であった。そのため、伝統的な警察文化は、ジェンダー観念において、男が至上で、女性を差別し、被害者の女性を信じないものだった。また、警察のイメージを構築する上で、「男らしさ」をあがめ尊んだ。また、法律執行の理念においては、重大事件を重視し、逮捕を重視して、サービスを軽視した。警察業務の仕事と方法の上では、攻撃性が強く、ジェンダーと関係が強い事件を処理するときには、被害者に二次被害を与えやすい。以上はすべて、警察官の職責である人権の保障と違法犯罪行為の防止を実現する上で不利である。

四 女性の警察業務従事を促進し、女性警察官の比率を拡大しよう

(略)


船員への女性の採用制限への批判

趙碧倩さんは、「わが国の大学入試の学生募集政策の保護的政策のジェンダー視点からの分析:航海などの専攻について」(8)という文を執筆しています。以下は、そのごく簡単な要旨です。

一 背景

教育部は、航海専攻における女性の制限は、女性を保護する視点からのものだとしているが、そうだろうか。以下、検討する。

二 大学入試における航海類専攻についての性別規定

全体として、航海類の専攻では、女性を完全に制限して、男性のみを募集している。全国5カ所の海事学院と若干の船員学校には、いずれもそうした規定があり、わが国の航海類の専門教育の普遍的な規定となっている。

三 歴史的分析:海上にも女性の英雄がいた

中華人民共和国成立以前は、女性が船に乗ることはタブーだった。それは、女性には生理があるから不浄だとか、生理の女性は龍王を怒らせるとかいう理由からだった。しかし、1953年に孔慶芬が新中国最初の女性船員になり、「女性が船に乗ると、船は必ず転覆する」という論調を打ち破った。その後、最初の女性機関長の王亜夫や遠洋船舶の政治委員・焦湘蘭などが登場した。改革開放後、第一世代の女性船員が歴史の舞台から退場する一方、海運業は激烈な競争の中でやや地位が低下し、女性の海運事業への進出は中断した。それだけでなく、女性が海運業に従事することに対する制限も始まった。

以上の歴史からは、航海類の専攻の女性に対する制限は、その背景に文化的根源があることがわかるし、また、女性には、航海技術を学習する能力があることもわかる。

四 大学入試で航海類の専攻で女性を制限する政策を自由化する可能性と現実性

科学技術の進歩によって人力への依存が減ったことは、女性に対する制限をいっそう取り除いた。また、近年海事についての大学は、新入生不足に悩んでいる。また、船員は昔から男性が大多数で、性別のバランスが欠けていたために、多くの船員が心理的失調や憂鬱に陥っていた。こうした点からも、女性船員が求められている。

2000年、上海海事大学では、全国で初めて航海専攻の女子学生クラスを上海に試験的につくり、2001年には、航海技術専攻で、上海・江蘇・浙江の3地で女子学生を一部採用した。

五 政策の提案

1.大学入試の学生募集政策の中の航海類専攻の女性に対して制限する政策規定を取り消す。

2.新入生供給源の職業教育を強化し、自由に選択できる知識の蓄えを増加させる。高校でも学生に対する職業教育・研修を強化し、船員に対する女性の理解を深めて、より良い自由な選択ができるようにする。

3.訓練を受けた女性が海運業に参与するために必要な措置を整備する。大学入試の学生募集を自由化すると同時に、就業の調整や船室の設計など、総合的な政策と施設が必要である。

六 小括

教育部は、大学入試において航海専攻の女性を制限するのは「保護」という視点によるものだと言っているが、そのような論法は成り立たない。歴史的な分析から見ると、海運業での女性の地位は、差別的な文化の影響を受けていたのである。しかし、1950年代から80年代にかけて、伝統を打ち破る傑出した女性の人材が出現した。この2つの証拠は、女性が航海技術を学ぶことを制限する政策は、合理性がないことを示している。現実の角度から分析しても、科学技術の進歩や海運業の現在の情勢、船員にも性別のバランスが必要であることは、女性を制限する政策を打破すべきことを示している。上海海事大学は、実際の経験を提供している。それゆえ、航海類の専攻で女性を制限する政策を撤廃することは必要であり、かつ実現可能である。


かつての日本の国家公務員採用における特定の職種(大学校)の女性排除問題とも接点がある?

日本では、中国と違って、戦後の男女共学の実現後は、大学の外国語専攻の募集などで女性の比率を制限するようなことはなかったと思います。

ただし、中国で船員や警察官、航空、軍事・国防関係の人員を養成する大学などで、女性の採用が禁止ないし限定されている点に関しては、かつての日本でおこなわれていた国家公務員採用における特定の職種(大学校)からの女性排除と少し重なる点があるように思いました。

そうした国家公務員の職種(学校)の受験資格が女性にも開かれるようになったのは、1975年の国際婦人年や1980年の女性差別撤廃条約署名がきっかけでした。1980年に航空管制官・航空保安大学校、海上保安官大学校・海上保安学校・気象大学校が女性に門戸を開き、1981年には税務・刑務官が、最後に自衛隊生徒(中学卒を対象にした特別職公務員)が、女性にも門戸を開きました(9)。こうした意味では、現在の中国が直面している問題は、1980年ごろの日本が直面した問題に似ている面があるかもしれないと思います。この点は、労働法における女子保護規定の存在も関係してきます。

もちろん今日の日本でも、そうした職種における女性の問題がきちんと解決しているわけでは全然ありません。

上でも少し触れたように、日本では、女性警察官は2013年4月現在、警察官全体の7.3%で、これは中国よりも低い比率です。2012年度の警察白書で、2023年までに女性警察官を全警察官の10%程度に引き上げる計画が発表されたとはいえ(10)、今年、警察庁がすべての女性警察官・職員3万人にアンケートをしたところ、回答者の82%が女性の採用拡大を求めており、その理由は「ストーカーなど女性が関係する事件の増加」、「勤務環境の改善につながる」、「国民のニーズに応えるため女性の視点が必要」などだったといいます(11)。これらは、栄維毅さんも指摘している状況です。

船員についても、今の日本では「海の世界は、まだまだ男社会だ。国内の船員は8万2953人(08年10月現在)で、そのうち女性は1301人。航海士や機関士になると248人しかいない」、「不景気で船会社の採用も厳しい。女性を採用する船会社は船の設備面からもさらに狭き門だ」(12)という状況です。近年では、円高で日本人船員の人件費が国際水準に比べて高くなったことや、きつい仕事とのイメージから志願者が減り、日本人船員の数が激減していることから、女性船員を活用するプランが立てられているそうですが(13)、このように人手不足を理由にして女性の活用が考えられている点も中国と似ているかもしれません。

日本と中国との比較は難しいですが、こうした問題における共通点や相違点からも見えてくる問題はありそうです。

(1)教育部将考虑缩小 对女生招生限制」『北京青年报』2013年1月18日。
(2)小语种提前招生 今年男女分数线合一」『北京青年报』2013年4月5日。
(3)三高校小语种专业分数线划定」『新京报』2013年7月7日。
(4)教育部关于做好2013年普通高校招生工作的通知」(教学[2013]2号)2013年4月24日。
(5)女权之声的微博【晒晒那些限招女生的专业们】7月17日 18:09。
(6)以上は、「七名“光头姐”致信教育部 呼吁取消高考招生性别限制 三名女毕业生建议母校平等招生」社会性别与发展在中国2013年7月16日。
(7)荣维毅「社会性别视角下的公安院校女生比例相关问题讨论」社会性别与发展在中国2013年7月11日。
(8)赵碧倩「性别视角下我国高考招生政策分析之保护性政策:航海类专业」社会性别与发展在中国2013年7月4日(来源:妇女观察网http://www.womenwatch-china.org/newsdetail.aspx?id=8511)。
(9)「女性もなれます 空や海の保安官 三職種”禁制”とく 運輸省が採用試験 新年度から」『読売新聞』1979年1月12日夕刊、「女性への門戸開放を正式決定 運輸省五試験」『読売新聞』1979年3月6日朝刊、「門戸開放一段と 女性税務・刑務官など」『朝日新聞』1981年3月6日東京朝刊、「自衛隊生徒に女性受験OK 防衛庁が方針」『朝日新聞』1993年6月25日朝刊。
(10)「警官 女性を1割に 警察白書 2023年目標、採用増へ」『読売新聞』2012年7月24日。
(11)「女性警官の8割『採用増やして』 警察庁、3万人に『本音アンケート』」『朝日新聞』2013年7月3日夕刊。
(12)「船乗り目指す乙女 宮古海上技術短期大学校2年20歳/岩手県」『朝日新聞』2010年1月3日朝刊岩手全県。
(13)「日本人船員増やせ 運航技術継承へ海自OB・女性活用/国交省」『読売新聞』2007年8月20日東京朝刊。
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ジェンダー平等活動グループ、9都市の公共トイレの便器数の男女比の調査報告発表

7月8日、ジェンダー平等活動グループ(正式名称は「ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク」。2012年に結成された若い行動派のフェミニストのグループ、この年表など参照)は、「9都市公共トイレ男女便器状況調査報告(性别平等工作组「九城市公共厕所男女厕位状况调查报告)」[ここからダウンロード可能]を発表した。この調査研究は、昨年夏ごろから計画が始まっており(1)、その意味では1年近くかかって完成したものだと言える。以下、そのおおまかな内容を、ごく簡単にご紹介する。



一 前書き

トイレは生活の中の小事のように見えるが、人民の生活に関わる重大な問題である。

新中国成立以来、就業する女性が増大し、女性は消費の主体にもなって、女性の外出が増大した。けれど、中国の基礎的施設の基準はまだ男性中心で、トイレの増改築も男性のニーズを満たすためにおこなわれることが多いため、女子トイレは不足しており、どこに行っても、女子トイレの前には行列が見られる。

ニューヨーク市の2人の議員が起草した法案の中に、女性は生理的条件やそれに伴って生じる行為モデルに制約される――女性は、衣服を緩め、座り、ときには連れている子どもの世話もしなければならない――ので、小便のときにトイレの中にいる時間は、男性は平均すると39秒(±6秒)であるのに対し、女性は89秒(±7秒)である、すなわち女性がトイレで使う時間は平均して男性の2.3倍である、と述べられている。子どもを連れていたり、生理だったりするともっと時間がかかる。

2005年の中国の「都市公共トイレ計画・設計基準」は、「トイレの男性用便器(座位・立位)と女性用便器(座位)との比率は1:1~2:3が適当である」と規定した。2012年初め、全国で「男子トイレ占拠」運動が起こり(本ブログの記事「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」参照)、フェミニストたちが女性の便器を増やして、男女の比率を1:2にするよう訴えた。2013年2月24日、衛生部は「公共トイレ衛生基準」(意見募集稿)を出して、「公共トイレの便器の男女比率は1:2にするのが適当である」と規定した。しかし、武漢のあるメディアは、それを強制しないのならば、女子トイレ増築の願望はかなえられないかもしれないという評論を発表した。

今回の調査研究で、私たちは、男性用便器と女性用便器の数などの現状を調査した。地区によっては、大学や地下鉄のトイレなどに的を絞った調査もおこなった。

二 調査研究方法

調査時期:2012年10月1日~2013年1月31日

調査研究内容
・北京・天津・済南・蘭州・西安・鄭州・武漢・杭州・広州の公共トイレの総数
・上記9都市の公共トイレの便器の数をランダムサンプリングによって調査する
・9都市のユニセックストイレの数を調査する
・バリアフリートイレの状況

今回調査したトイレは、道路のわきや駅、観光地にある公共トイレである。独立した公共トイレもあれば、一部の他の建築物に付属した公共トイレもある。商業経営の場所に付属したトイレは、今回は調査しなかった。

三 調査結果

9都市の公共トイレの状況

9都市の常住人口は、男性51.72%、女性48.28%である。各都市とも、男性が女性よりもやや多い程度である。しかし、9都市のトイレの男性用便器と女性用便器の比率(男:女)は、以下のとおりだった。

北京―1.22:1
天津―1.51:1
済南―1.57:1
蘭州―1.65:1
西安―1.4:1
鄭州―1.56:1
武漢―1.48:1
杭州―1.49:1
広州―1.79:1
総計―1.5:1

すなわち、9都市の男女の便器の比率はみなアンバランスであり、男の方が女より多く、女性のトイレのニーズをまったく満たしていない。

バリアフリートイレ

北京の公共トイレのうち、ユニセックストイレとバリアフリートイレの比率は1%未満であり、しかもバリアフリートイレの大きな部分は占用されているか、壊されている。

    ユニセックス バリアフリー(×は占用または損壊されている)
朝陽区    0      0
東城区    4      5(うち3は×)
豊台区    5      1(うち3は×←この箇所は何らかの誤記?)
海淀区    1(しかし×) 7
西城区    2      0
石景山区   0      0
海淀区    0      1

地下鉄のトイレ

天津の地下鉄のトイレの状況を調査したところ、以下のようだった。
・地下鉄2号線――男性用小便器35、男性用大便器36、女性用便器35
・地下鉄3号線――男性用小便器43、男性用大便器48、女性用便器52
出退勤のピーク時には、女子トイレの前には行列が出来る。

西安の地下鉄2号線でも、男性用と女性用の比率は1.52:1であり、ピーク時には、女子トイレ前に行列が出来る。

大学のトイレ

武漢では、3大学の合計17カ所の公共トイレの状況も調査した。3大学の男女比は、中南財経政法大学は7:3、武漢大学は5:3、華中師範大学は1:3である。しかし、華中師範大学でも男女の便器数は、それぞれ76と55であり、不合理さが明らかだった。他の2大学も、トイレの時間の男女差を考慮すると不合理だった。

9都市の公共トイレの全体的状況の分析

(1) 9都市のトイレの便器の比率は、どの都市も男性用のほうが女性用より多い。
 最も差が少ないのが北京市の1.22:1であり、最も差が大きいのが広州市で、1.79:1だった。全体では、1.5:1前後である。

(2) 経済の発展水準と便器の平等とには、必然的関係はない。

(3) 現在のトイレ改革は、小便器を統計に入れていないので、効果が少ない。
 調査研究の過程で、私たちは、大部分の地区の女子トイレ増築政策は、女性用便器を男性用の大便器の2倍にすることを基準にしていて、小便器を計算に入れていないことを知った。こうした政策によって、実際は男性用便器が女性用便器よりもずっと多いという現実が長い間無視されてきたのだ。

(4) 広州市都市管理委員会はトイレ改築を承諾したけれども、実際の行動にはまだ移していない。
 2012年2月19日、女子大学生が「男子トイレ占拠」のパフォーマンスアートをおこなったら、20日には、広州市都市管理委員会は「強制的な立法によって、女子トイレを男子トイレの1.5倍にする」と微博で発表した。政府が返事をするという点では、広州市都市管理委員会は積極的で迅速だが、実際の行動においては、女子トイレ増築はまだ立法の議事日程には入っておらず、規範的文書も遅々として出ていない。

四 国内外のトイレの男女の便器の比率

1.アメリカでは、12の州で、1990年代初めに「ポッティ・パリティ(トイレの公平)」を保障する法案が成立した。この法律は、公共トイレを増築するとともに、女性用便器の数を男性用便器の2倍にすることを定めた。

2.台湾では、2006年に「建築技術規則」を改正して、駅・学校・映画館の「男女の公共トイレの比率を1:3」にすると明確に規定した。今後はこの規定に従わなければ、建築が許可されない。

3.香港政府は、2012年2月に立法会に対して文書を出して、建築物の規則を改正して、男女の便器の比率を1:1.5にすることを提案した(2)

五 中国の公共トイレの男女の便器の分配の合理化に関する提案

建設部「都市公共トイレ計画・設計基準」について

2005年の中国の「都市公共トイレ計画・設計基準(城市公共厕所规划和设计标准[PDF])」は、第3.1.8条で「公共トイレは女子トイレの建築面積と便器の数を適当に増やさなければならない。トイレの男性用便器(座位・立位)と女性用便器(座位)との比率は1:1~2:3が適当である。独立した公共トイレは1:1にするのが適当であり、商業地区の公共トイレは2:3にするのが適当である」と規定している。

しかし、この基準には、便器の比率または便器の数に対する強制的な規定がないため、具体的に執行する際には恣意的なりがちであり、女性がトイレに行く平等な権利を保障できていない。それゆえ、私たちは、この「基準」について以下の提案をする。

1.「基準」の中の便器の概念について、男性用便器には、しゃがむ便器、座る便器、立つ便器が含まれ、女性用便器には、しゃがむ便器と座る便器が含まれることを明確にする。

2.「基準」の中に、強制的な規定を設けて、公共トイレの中の女性用便器と男性用便器の比率は必ず2対1に達しなければならず、そのうち女性用便器と男性用のしゃがむ(座る)便器の比率は必ず4:1に達しなければならず、女性トイレの面積も増やさなければならず、あわせて各地の行政管理部門(都市建築管理部門)に真剣に執行し監督を強化するよう求めることを定める。

3. 「基準」の中で、公共トイレでは必ずバリアフリートイレを増設し、第三のトイレ(ユニセックストイレ)を適切に増設しなければならないことを規定する。

4. 「基準」の中で、公共トイレの審査許可と検収のメカニズムを規定して、各地の行政管理部門に真剣に執行するよう要求する。各地の都市建築管理部門は、新しく公共トイレを建築するとき、女性用便器の比率と面積が基準に達していなければ許可しない。公共トイレを検収するときは、基準に達していなければ検収しない。現在ある公共トイレについては、3年以内に改築を完成させるよう要求する。改築が完成する前は、一部の男子トイレを振り向けて女性に使わせるべきである。どうしても改築できない場合は、男でも女でも使えるトイレ(ユニセックストイレ)を増やすべきである。

衛生部「公共トイレ衛生基準」(意見募集稿)に関する提案

2013年2月24日、衛生部は、「公共トイレ衛生基準」(意見募集稿)を出した。この「基準」は、「公共トイレの便器の男女比率は1:2にするのが適当である[このアンダーラインの箇所は、彼女たちの原文では黄色のマーカーで印がつけてある]」と規定している (「《公共厕所卫生标准》征求意见稿[word]」の4.2.2.2、卫生部办公厅「关于征求国家标准《公共厕所卫生标准(征求意见稿)》意见的通知」2013年2月21日より)。

この「基準」は、建設部の1:1.5に比べて進歩しているように見えるけれども、私たちは、「強制的な立法」を要求している。

提案:トイレの比率について、まず男子トイレの小便器も便器であることを明確にし、それと同時に男女の便器の比率を必ず1:2にしなければならず、かつ法律を制定することをつうじて強制的に執行しなければならない。

もし強制しなければ、各地区の政府がトイレを新しく建設したり、改造したりする希望はほとんど持てない。

ユニセックストイレの改築・新築プロジェクト

現在あるトイレを拡張することには難しさがあるし、特殊な人々のニーズを満たすためにも、ユニセックストイレを新しく建設するプランを特に立てる必要がある。

提案:公共交通の駅、列車の駅、地下鉄など人の流れが密集している場所にはユニセックストイレを増設する、あるいはユニセックストイレに改築する。

その理由:
 1.現在のトイレの構造は、女性のニーズを満たすことができない一方、男子トイレの空間は使われておらず、浪費を引き起こしている。
 2.ユニセックストイレは、ある幾らかの特殊なニーズを持つ人々のトイレの難題を解決する。たとえば、老人・子どもを連れている人、性別の気質が中性の人とトランスジェンダーのニーズ

トイレの矛盾を緩和し、積極的にトイレの誘導をおこなう

女子トイレの拡張やユニセックストイレの新築・改築がまだのときは、人の流れが密集している場所のトイレに誘導員を配置して、女子トイレに長い列ができているのに男子トレイが空っぽであるという、資源の分配が不均等である現状のバランスを取るようにする。

六 中国の女性の公共トイレを勝ち取る唱導行動

1.男子トイレ占拠―→本ブログの記事「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」参照

2.人民代表大会への提案――2012年3月8日、武漢の全人代の代表で、湖北省統計局局長の葉青が、「都市の公共トイレの設計基準を改善し、女性便器比率を高める」提案を出した。(その内容は、上記の五の建設部「都市公共トイレ計画・設計基準」についてとほぼ同じである。)

3.広州で16人の女性が都市管理委員会の前で大いに便器の陣立をして、女子トイレの便器不足に抗議した―→本ブログの記事「女性トイレの増設求める運動続く――『男子トレイ占拠』から8ヶ月」参照

4.女子大学生が学長に手紙を書いて、女性用便器の比率を増やすように提案した―→本ブログの記事「全国の12師範大学で女子学生が各学長に女子トイレ増設求める手紙」参照

5.武漢でお母さんが公衆の面前で授乳して、もっと母乳保育ができる空間を作るよう要求した――2012年8月4日、世界母乳育児週間(8月1日~8月7日)に合わせて、30人あまりの母親が、武漢市で、1分半、「哺乳フラッシュモブ」をおこなった。これは、公共の場所や職場に授乳室を設置することを訴えるためのアクションだった。2013年の全人代と全国政協の期間にも、授乳室増設のための提案をおこなった。

6.唱導への反応:各地区の政府の女子トイレ拡大政策(略)

七 謝辞

9都市のボランティアが厳寒を恐れず、冬に大部分の実地の調査研究活動を完成させたことに感謝する。

付録

1.男の方への手紙

2.両会(全人代と全国政協)の提案の手紙「女性便器の比率を高め、女性の平等な権利を保障することに関する手紙」

3.広州市都市管理委員会の女子トイレ増築立法の過程に関する陳情事項の返信

4.信陽師範学院学長への手紙



上の調査結果については、「男子トイレ占拠」運動の発祥の地であり、また、今回とくに男性用便器に比べて女性用便器が少なかったことが明らかになった広州で発行されている『南方都市報』と『羊城晩報』が真っ先に大きく報じた(3)。それらの記事は、人民網などにも転載された。

この調査は、トータルで7500にも及ぶ便器について男女別に算出しており、非常に大規模なものである。また、ユニセックストイレやバリアフリートイレについても調査しているという点においても、従来にないものだと思う。

また、建設部や衛生部の基準について、調査結果を踏まえて丁寧に批判と提言をおこなっている点、今後新築するトイレについてだけでなく、既成のトイレの改築、ユニセックストイレの増設、誘導員の設置などによって、早急な措置を提起している点でも重要だ。

今後の課題としては、商業施設のトイレや農村のトイレ(4)などの調査があろう。

日本における調査

日本でも男女の便器数の公平さについての調査がおこなわれたことがある。私の知るかぎり、ある程度まとまったものは、以下の2つである。

1 「女と男のトイレ研究会」による調査(5)

1980年代末に、「女と男のトイレ研究会」が、大阪・京都・東京で調査をおこなっている。この研究会は、以下のような人々によって作られた会である。
 ・自分たちの小学校で、トイレの数や所要時間などを男女別に調査し、統計グラフコンクールで入賞した堺市の小学6年生の女子生徒3人(一原教子さん、橋本美代子さん、岩田朋子さん。「女と男のトイレ研究会」の調査の当時は中学に進学)
 ・広瀬洋子さん、島田裕巳さんという研究者
 ・桂坂の会・女の目で見るまち研究会の伊藤陽子さん・安達恵子さん

彼女たちの調査結果は以下のようなものであり、女性用便器がどこでも男性用便器よりも少ないことが明らかになっている。

(大阪)
 ○堺市立月州中学校―→男性用81 女性用49

(京都)
 ○京都府と京都市の施設(観光地にある25カ所の公衆便所、児童公園の中の公衆トイレ、小中学校、府立伏見港総合体育館、市東余熱センター、西京極スポーツセンター、京都こども文化会館[エンゼルハウス]、社会教育総合センター、京都会館)―→清水寺境内の公衆便所を除いて、すべて男性用が女性用よりも数が多かった(たとえば西京極スポーツセンターは、男性用80、女性用49)

 ○デパートでも―→男性用が女性用の1.5倍(阪急百貨店は、男性用66、女性用46、近鉄百貨店は、男性用30、女性用20)。

 ○病院(京都桂病院)―→男性用と女性用の比率は3:1で、兼用のものを男女半々に分けても、女性用は男性用の半数以下。

(東京)
 デパート、劇場、区の施設、高速道路のパーキングエリアなど―→どこでも男性用の数の方が女性用よりも多かった。

2 埼玉県による調査

1995年8月、埼玉県の住宅都市部に「女性トイレレベルアップ検討会」が設置され、委員10人が、女性が不便を感じない県有施設における女性トイレについて検討した。1996年3月に刊行されたその報告書(6)が埼玉県立浦和図書館に所蔵されている。

この報告書には、「県有施設トイレの状況」として、以下のように男性用便器と女性用便器の比率(報告書では「穴数」という概念を使っているが)が明らかにされている。

(1)県立公園

 ・集客的公園施設(体育館・陸上競技場・野球場・ラグビー場などを有する公園を指すようです)―→穴数の男女比は、平均3.0:1(最大5.8:1[双輪場]、最小1.5:1[秩父ミューズ音楽堂他])

 ・その他の公園施設―→穴数の男女比は、平均1.4:1(最大2:1[上尾運動公園管理棟ほか]、最小1.2:1[加須はなさき公園水泳場])

 ・一般園地―→穴数の男女比は、平均1.5:1(最大2:1[久喜菖蒲公園]、最小1:1[和光樹林公園ほか])

 公園施設総計―→穴数の男女比は、平均2:1(最大6.7:1[吉見総合運動公園]、最小1.1:1[和光樹林公園])

(2)劇場・ホール
 穴数の男女比は、最大6:4(埼玉会館改修前)、最少5:5(行田文会館)

(3)事務所等
 越谷県税事務所→6.5:3.5、越谷保健所→5.5:4.5、羽生勤労婦人ホーム→3:4

(4)アリーナ
 さいたまアリーナ→5:5

以上、勤労婦人ホームを例外として、ほとんどの施設で、便器数自体が、男性用の方が女性用よりも多い。

つまり、上の2つの日本での調査においても、本来便器数は女性用の方が男性用の2倍以上必要であるにもかかわらず、実際は、男性用の方がむしろずっと多いという状況が明らかになっている。

ただし、上の2つの日本での調査は今から20年ほど前のものであり、現在は状況が異なっていると考えられる。この点については詳しいことはわからないが、新聞記事や単行本から見ると、女性トイレ不足は、1980年代末~1995年ごろに比較的よく問題になっている。そして、その後は問題が少しずつ解決してきたようにも思われる(埼玉県の報告書は県立施設の改善に生かされているし、1999年には、JR東日本が30年ぶりに便器数の男女比の見直しに取り組んでいるという記事が出ている。また、2007年と2009年には、それぞれ東日本高速道路会社と西日本高速道路会社が女性用トイレを増設しているという記事が出ている)。ただし、この問題についての新聞投書は、ごく最近まで見られるし、最近でも、地方議会では、公共施設や観光地の女性トイレ不足について相変わらず取り上げられている(以上については、本ブログの記事「WANに『中国の女子大学生の「男性トイレ占拠」アクションと日本のメディア』掲載、および日本における女性用トイレ不足問題について」参照)。また、被災地の女子トイレ問題は今日でもよく取り上げられるし、もちろん今後も女性が急増するような場所では、問題になろう。駅のトイレなどについても、先日、私は近鉄京都駅で女子トイレ前の行列を見たばかりである。

いずれにせよ、日本では、この件に関しては、1990年代終わりごろ以降は、まとまったデータはないように思われる。また、問題のかなりの部分が解決したのだとしても、それはどのような要因によるかは、もう少し解明する必要があるように思う。

以上のような幾つかの意味では、日本でも、男女の便器数の公平さの問題は、今後も考えるべき点、取り組むべき点があることは確かである。

また、日本と中国とでは、同じように男女の便器数の公平さが問題になっているといっても、中国固有の問題(ひょっとしたら、公共トイレの数自体が少ないといった可能性もあるかもしれない)が存在する可能性も否定できないだろう。そうした問題も解明する必要があると思う。

(1)本ブログの記事「女性トイレの増設求める運動続く――『男子トレイ占拠』から8ヶ月」ですでにご紹介したように、2012年9月26日の「性差別撤廃討論群会」の記録に「全国のその他の地方でトイレ報告をする必要があるか……武漢の夏合宿で始動、トイレ1周年のときに発表、李麦子と湯倩がアンケート調査を整理・修正」とあり(郭小花「“消除性别歧视讨论”会议记录(20120926)」性别平等倡导计划2012年9月26日)、昨年夏ごろから計画されていたようだ。また、10月15日には、ジェンダー平等活動グループのサイト「性別平等網(性别平等网)」に、「私たちは、政策を変えさせ、女性のトイレ難の問題の解決を促進するために、全国の公共トイレの比率の調査研究をおこなう」と述べて、杭州での調査研究のためにボランティアを募る記事が掲載されている(「全国公共厕所厕所比例调研——杭州站志愿者招募」2012年10月15日)。ただし、「トイレ1周年のときに発表」するということならば、今年2月19日に発表しなければならなかったはずなので、計画どおりにはいかなかったということだろう
(2)2012 年2 月28 日討論文件 立法會發展事務委員會 《建築物(衞生設備標準、水管裝置、排水工程及廁所)規例》(第123I 章)的修訂建議」中华人民共和国香港特別行政區立法會サイト
(3)“占领男厕所”发起组织发布九城市公厕男女厕位调查 广州公厕女厕位比例最低」『南方都市报』2013年7月9日、「厕位数量男多于女 广州供需倒挂最厉害」『羊城晚报』2013年7月9日。
(4)日本では、1962年の『読売新聞』の「赤でんわ」欄に、農家の主婦のF子さんが、田植えをする際、便所がないことが大きな苦痛になっていると訴えた投書が掲載されており(「のどかな田植え風景の陰に」5月30日朝刊)、その投書が反響を呼んで、婦人面で大きな記事になっている(「農村女性の悩み/田植え時のトイレ/お茶さえ飲めない/反響読んだ『赤でんわ』欄の投書/口には出せなかった苦痛」6月12日朝刊)。詳しくは、本ブログの記事「WANに『中国の女子大学生の「男性トイレ占拠」アクションと日本のメディア』掲載、および日本における女性用トイレ不足問題について」の「3.田植え時の女性トイレ問題」を参照していただきたいが、こうした農作業の際のトイレ問題は、中国ではどのように解決しているのだろうかと思う。
(5)島田裕巳「女のトイレはなぜ混むか」島田裕巳『私というメディア』パーソナルメディア1989年。広瀬洋子「トイレを開ければ社会が見える」『からだの科学』no.152(1990年5月)もこの調査を取り上げている。
(6)埼玉県住宅都市部女性トイレレベルアップ検討会『女性トイレレベルアップに向けて』1996年3月。この報告書については、「公共施設のトイレ、便器数は『男性優位』 県の検討会」(『朝日新聞』1996年4月17日埼玉朝刊)、「トイレの便器数、男女比は2対1――県所有の公園施設/埼玉」(『毎日新聞』1996年4月19日埼玉版)として、新聞記事でも取り上げられている。
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