2013-06

LGBT運動のゲイ中心主義やフェミニズム運動におけるレズビアンの主体性喪失に対する異議申し立て

中国のセクシュアル・マイノリティの人々の運動も、他国同様、ゲイが中心になっている傾向を免れなかった。そうした中、2011年末から、レズビアンらが明確にゲイ中心主義を批判しはじめた。2012年以降活躍している若い行動派フェミニストの中にも、レズビアンやバイセクシュアルのメンバーが多く、そうした動向に同調してきた――ないしは、そうした動きの中からフェミニズムの運動が生まれてきた。しかし、いま、レズビアンの中に、フェミニズム運動においてレズビアンとしての主体性を出せないことを問題にする人も出てきた。

――上記の議論は現在も進行中だが、以上のような状況があると思うので、この点について、以下、述べてみたい。

<目次>
1 クィア視点からのLGBT運動批判――「美少女戦士レズビアン」の微博
2 若い行動派フェミニストも、クィア視点を支持/共有
3 LGBT運動とフェミニズム運動におけるレズビアンの二重の失声状態を批判――『クィア レズビアン タイムス』

1 クィア視点からのLGBT運動批判――「美少女戦士レズビアン」の微博

LGBTサイトの理論家のクィア理論批判

2011年8月、LGBTサイト「愛白網」(ただし、1999年に創設された時はゲイサイトで、今日でも記事の内容はかなりゲイ中心である)の理論家であるDamien Lu(星星)さんは、「クィア理論の概念の多くは、セクシュアル・マイノリティたちの権利の推進にとって、破壊的作用がある」と批判した。その理由は、「クィア理論の主要な理論家は、性的指向は非常に可塑的で、固定的ではなく流動的であること考えており、それだけでなく、いかなる性別や性的指向の分類の『レッテル』もみな誤っていると考えている」が、そうした理論的立場に立つと、同性愛者に対する「治療」を容認することになるし、同性婚の根拠は、同性愛が先天的なものであるということなのに、性的指向が可塑的であると考えると、同性愛者差別に反対する立法や同性婚姻法を推進することが難しくなる、というものだった(1)

「美少女戦士レズビアン」の微博(ミニブログ、中国版ツイッター)による反論とLGBT運動の現状批判

2011年12月17日、「美少女戦士レズビアン(*)」の微博[美少女战士拉拉的微博]は、「私たちはレズビアンである。私たちはクィア(**)である。私たちは声を上げなければならない」という発信を皮切りに、上のような議論に対する反論を開始し、上のような議論を生み出す背景についても批判した。

(*)「美少女戦士」は、「美少女戦士セーラームーン」の中国語名(2)。また、「レズビアン」の原語は「拉拉」であり、ここでは仮に「レズビアン」と訳したが、華人拉拉連盟によると、「『拉拉』の定義は、女性の同性愛、バイセクシュアル、女を愛するトランスジェンダーである。トランスジェンダーは自分を拉拉ではないとも認識できるし、自分を拉拉だとも認識できるが、拉拉は『トランスジェンダーは私たちの中には入らない』と言ってはならない」と述べている。「美少女戦士拉拉」の微博も、この定義を引用しつつ、「lesはlesbianの略語だが、『拉拉』の2字は必ずしもそうではない」と述べている(2012.1.28)。

(**)「クィア」については、「美少女戦士レズビアン」の微博は、「性愛の表現方法が伝統的基準とは異なる立場の人を指し、必ずしも同性愛者ではない。多くの同性愛、トランスジェンダー、バイセクシュアル、性愛の方法が伝統的な一夫一婦の異性婚姻とは異なる一部の異性愛者も、クィアという呼称を受け入れる」、「『クィア』は、しだいにジェンダーないしはその他の各面でのレッテル貼りを望まない、分類されることを望まない者の総称になった」(2011.12.18)と説明している。

「美少女戦士レズビアン」は、半月の間に360の微博(ツイート)を発信し、盛んに論争を繰り広げた。

「美少女戦士レズビアン」も、「性的指向は生まれつきなので、変えることができない」という主張は、「同性愛の矯正・治療」に反撃するために、同志(セクシュアル・マイノリティ、LGBTといった意味)運動の戦略として「一つの段階の一つの領域において暫時の成果を収めうる」ことは認めている(2011.12.24)。

「美少女戦士レズビアン」の主張は、2012年1月5日の以下のような発信によくまとめられているように思う(以下は、当日の発信すべてではなく、抜粋です)(3)

第一の分岐は(……)相手方が繰り返し論証しているのは「どのように同性愛が合理的であると証明すれば最も良いのか」ということであり、私たちは、「人は、基本的権利を獲得するために、合理的であると証明される必要はない」と主張している。

そこに隠れた更に大きい分岐は、私たちの運動の目標に対する期待が非常に異なっているということである。私は、運動はすべてのセクシュアル/ジェンダーマイノリティのために権利を勝ち取るものだと考えており、「生まれつきの同性愛」あるいは「科学的に証明された同性愛」のためにだけ権利を勝ち取ることを望んでいるのではない。

私にはある友達がいて、彼女は以前は男に対して強烈な性欲を抱いていたが、50近くになってガールフレンドと付き合い始めたら、男に対する欲望がなくなった。私には別の友だちがいて、小さい時から自分は間違いなくレズビアンだと思ってきたけれど、のちにボーイフレンドと付き合いだしたら、うまくいっている。彼女たちは困惑しているけれども、私は、彼女たちは、現在、なかなか幸せだと思っている。

同性愛が構築されるものであることにマイナス面がある理由は、人類が同性愛の起因を誤解しているということにはなく、近代社会の価値観が、異性婚姻の中の、一夫一婦の、男性主導の性関係だけが正当で、その他――同性愛も、バイセクシュアル・婚姻外の性関係・SM・セックスワーク・トランスジェンダーなどなども――をみな堕落していると考えていることにある。

狭隘な出発点から考えると、いま私たちは努力して、社会に「同性愛も正常だ」と受け入れさせるために、私たちは「生まれつき」の「血統が純正」な同性愛だと言って、その他の性的マイノリティとの区別をはっきりさせなければならない。しかし、クィアがやるべきことは、朝廷の権威を直接問いただして、さまざまな情欲に対して制約をする社会の偏見の根源に挑戦することである。

このように言うことができる:ある人々は、搾取をされているので、自分がいかに這い上がるかを考え、権力を獲得した後には、他の人を支配する。しかし、ある人々は大きな局面を見ることができ、システム全体をひっくり返してこそみんなが徹底的に解放されると考える。ジェンダー不平等、異性愛ヘゲモニー、フェミニズムの関係は、モニカ・ウィティグ「人は女には生まれない」(Monique Witting“One Is Not Born A Women”)を参照してほしい。

性的指向の起因以外にも、人類の各種の態度・行動についての先天論と後天論との論争は、社会科学・自然科学の領域で今に至るまで勝負がついておらず、現在、もっと広く受け入れられているのは、先天論も後天論も部分的な働きをしているというものである。最近、国内のクィア理論に対する最大の誤解は、クィア理論は性的指向に先天的要素があることを否定しているというものである。


また、以下のような発信もしており、問題の背景には、以下のような状況があることもうかがえる。

現在、多くの同志団体は、「私たちはLGBT団体だ」と言いたがる。けれど、けれど……多くの場合、団体の中には、Gしかいない。。。。

なぜ専門のレズビアン団体があるのかについて、本当にしっかり考える必要がある。多くのLGBT団体は実際はゲイ主導の組織であり、女性が一人もいないこともある。同様に、多くの場合、B(バイセクシュアル)がおらず、T(トランスジェンダー)がいない。

大多数のレズビアングループは登録されていない民間団体であるし、一般に「LGBT」とは自称しない。若い男も女もいる1、2の組織を別にすれば。


華人レズビアン連盟の声明

論争の最中の12月25日、華人レズビアン連盟も以下のような声明を発表した(4)。全体として「美少女戦士レズビアン」の考え方を支持した声明だと言えよう。

1.性的指向が生まれつきのものか、後天的に構築されるものかという点に関しては、私たちの多くの取材や意見交換において、その2つの観点/生命の経験が共に現れており、どちらか1つの観点によって、すべての生命の経験をカバーすることはできないと考える。

2.「生まれつき論が現段階の運動の戦略だ」という説については、私たちは、それは危険な観点だと考える。その説は、そのように思っておらず、そのような定義に当てはまらない人々を軽視し、犠牲にする可能性がある。そうした軽視や犠牲は、私たちが身を投じようとしている同志運動ではない。同志運動の出発点は、科学研究によってその生理的な原因を証明することではなく、天賦人権―― 一人一人が、他人を傷つけないという前提の下、自分がどんな人であり、どんな人を愛するか、どのように生活するかを選択できる権利を持っているということにある。(……)

3.クィア理論は、その誕生の日から、周縁の立場から、しだいに主流化している同志運動に挑戦し、多元的な思考と実践をもたらしている。クィア理論は、中国大陸ではまだ充分に紹介や理解がされていないが、私たちはクィア理論に対して開放的な態度を取って、もっと多くの議論が起きることを期待する。

4.現在大陸の同志運動は勢いよく発展しているけれども、私たちは、運動の中にジェンダー視点が乏しいと切実に感じている。声をじゅうぶん上げることができないために、女の同志/レズビアンは、運動の中で常に匿名状態になっている。「同志」と言えば、人々は往々にしてゲイのことしか想定せず、レズビアン・バイセクシュアル・トランスジェンダーなどのもっと弱い立場の人々を無視する。また、同志コミュニティの中でも、理論上当然だとされる論述が、事実上、女の同志/レズビアンには適用されない。(以下略)


崔子恩さんらもクィア理論を支持する観点から、議論に参入

「中国初のクィア作家」と言われる崔子恩さん(5)も、「中国の同志運動は、もうクィア理論/文学研究との関係を断ち切ることはできない。二元論は一部のGayに享楽的な生活ができるように誤って思わせることができるけれども、二元論が作り出す独裁と専制は、けっしてそのために抑圧を弱めることはない」(@崔子en的微博2011.12.23)と述べた。

北京クィア映画祭の主席をつとめた楊洋さんも、「自分は、北京クィア映画祭がまだ北京同性愛映画祭だった間は、ずっと本当の帰属感が持てなかった」と述べ(杨oig洋non葱的微博2011.12.24)、それに対して崔子恩さんは「論争の起源は、@美少女戦士拉拉が挑戦した『同志運動の意見の指導者』だった」とコメントした(@崔子en的微博2011.12.24)。

また、崔子恩さんは、12月27日、「午前、同志NGOに輪番制を呼びかけたところ、ある人が私に対する@愛白アカウントのフォローを外した。個人が支配するNGOのようだ」(@崔子en2011.12.27)と述べ、翌日に、「改選しないことは、体制上、腐敗する土壌が生まれることを認めることになる」(同2011.12.28)と指摘、美少女戦士拉拉は「クィア映画祭の輪番主席制度が、参考になる一つのモデルだ」と述べた。

ここでは、「指導者」が権力を持つような、LGBT運動内部の民主主義のあり方も問題にされている。

2 若い行動派フェミニストも、クィア視点を支持/共有

2012年は、若い女性を中心にしたフェミニストが、街頭でのパフォーマンスアートや抗議活動、署名運動などの新しい運動を次々におこない始めた年だった(「『ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク』(中国)年表」参照)。彼女たちの中には、レズビアンやバイセクシュアルが多いが、彼女たちの多くも、「美少女戦士レズビアン」のような視点を支持ないし共有している(6)

シルヴァースタイン講演におけるクィア理論否定に対する抗議をめぐって

2012年4月16日、アメリカのチャールズ・シルヴァースタイン(Charles Silverstein)さんが、北京LGBTセンターが組織した交流会(司会は上述のDamien Lu[星星]さん)で、「クィア理論は10年以内に消滅する」「LGBTの親密なパートナーの間には暴力は存在しない」「アメリカではゲイとレズビアンが親密に隔たりなく共闘している(とくにレズビアンが、ゲイの組織に加入することを「習得」したのち)」といった発言をした(爱白Aibai的微博2012.4.19、灰烬AshWang的微博2012.4.20)。シルヴァースタインさんは、日本でも福田広司ほか訳で『ザ・ニュー・ジョイ・オブ・ゲイ・セックス』(白夜書房 1993年)という本が出ているなど、古くからのアメリカで同性愛者運動をしてこられた方らしいが、新しい運動の動向には疎いようだ。

シルヴァースタインさんに対して、「クィア理論とフェミニズムの視点からLGBTの中の周縁のグループに関心を持つ」ことを謳って結成された「辺辺グループ(边边小组)」が異議を唱えた(「性向自主!反对霸权!——边边小组关于性向问题的立场声明」边边小组的博客2012年4月19日)。

「辺辺グループ」は、呂頻さんや徐玢さんによって結成されたグループだが、若い行動派フェミニストのリーダーの一人である李麦子さんも、この件について取り上げている。李さんは、Damien Lu[星星]さんらがゲストとして呼ばれた4月19日の会で、辺辺小組のメンバーがビラを撒くとともに、ゲストと対話の機会を設けるように望んだのに対して、主催者が故意に質問の機会を与えなかった(予定よりも5分早く終了させた)という出来事を批判している。

李麦子さんが上記の出来事について述べたのは、NGO業界の問題を取り上げた、「あなたに反対する者がいるときは、あなたは再考する必要がある」という文章だ。李さんは、「問題が起きたら、私は対話によって解決しなければならないとずっと思ってきた。大国間の矛盾も、対話によって解決しなければならないのではないか?」と言い、NGO業界において「多くの人が問題から逃避したがり、矛盾を激化させる。こうした思考はまるで中国の『維穏(社会的安定の維持)』のようだ。事件が起こったら、最初は情報を封鎖し、塞ぎ止められなくなってから、やっと問題に対応する」という状態を批判している(7)

このようにNGOの民主主義の問題を問うていることも、前年の崔子恩さんらと同じだ。

クィア理論については、同じく若い行動派フェミニストの鄭楚然さんも、「クィア理論の良さは、反覇権的な理念であり(……)重要なのは、権威者たちがどのように言ったかでも、それらの権威者たちがどのようなキャリアを持っているかでもなく、私たちが主流の覇権的な声tmd[=罵倒語「他妈的」の略語]に圧死しないことである」と述べている(大兔纸啦啦啦的微博2012. 4.19)。

若い行動派フェミニストの主要メンバーは、以下のように、LGBT運動におけるゲイ中心主義や同性愛中心主義も批判している。

LGBT運動の中の男性中心主義批判

李麦子さんは、「同志はゲイと同じではない!」「女の同性愛者は相対的には弱者だが、たしかに存在していて、同じでは全くない」(麦子家的微博2011.12.5)、「多くのゲイもまったく男権的であり、セクマイ圏内のジェンダー不平等問題も深刻である」(同2012.4.27)、「男のセクマイには、セクハラというテーマについてかくも深刻な誤解がある。女性の権益が侵害されたとき、男権社会は集団で被害者に矛先を向け、被害者を非難し、被害者を中傷さえする」(同2012.9.26)と述べている。

バイセクシュアル差別批判

梁小門さんも、男とセックスしたレズビアンに対して「私は真のレズビアンは男とは寝ないと思う。本当に気持ちが悪い」と言った人に対して、「純同性愛ヘゲモニーは、異性愛ヘゲモニーと本質的に同じである。他人に自分たちと同じであることを許さない」と批判した(梁小門的微博2012.8.12)。

3 LGBT運動とフェミニズム運動におけるレズビアンの二重の失声状態を批判――『クィア レズビアン タイムス』

「美少女戦士レズビアン」の微博は、2012年7月で更新を停止しており、彼女たちが若い行動派フェミニストの運動をどう評価していたかは十分にはわからないが、全体的には、運動に注目し、評価しているようだ。ただし、「男子トイレ占拠」の際、とくに「ユニセックストイレ」の設置を唱えている(美少女战士拉拉的微博2012.2.23)ことなどは独自の特色だと思う(運動全体の要求の一つにも、ユニセックストイレの設置自体は入っていたが)。

さて、2013年4月、『クィア レズビアン タイムス[酷拉时报(Queer Lala Times)]』というネットマガジンが創刊された。

その「発刊の言葉」は、以下のようなものである(大头「《酷拉时报》发刊词」2013年4月25日)。

私たちはレズビアンであり、女性・「同志」・「同性愛」の名の下に一括して論じられることを拒絶する。

私たちはクィアであり、同性愛/異性愛、男/女、正常/変態という簡単な区分に不満である。私たちは、この複雑な世界にふさわしい多元的な論述を追求し、より差違があって多様な世界を創造することを願う。

私たちは実践者であり、中国のジェンダー/セクシュアリティの運動に身を投じ、多くの組織者たちといっしょに、現実の変化を自ら体験し、人の変化こそが社会運動の最も重要な目的であると信じる。

私たちは論述者であり、言葉の力を信じる。

私たちは、今日の中国で、このような刊行物を発刊するが、直面している問題は多重であり、多様である。

第一に、十年あまりの同志運動はすでに成果を上げ、社会的可視性も、公衆の認識も大きく高まった。とくに大都市で生活し、社会的・経済的地位が比較的高い男女の同志の境遇は改善された。しかし、まだはるかに不十分である。ひとまず権利については措くとしても、多くのLGBTはまだ恐怖と社会的圧力の下で生活しており、得られるべき援助が得られていない。政治環境・公共空間の状態はジャングルのようで、同性愛者・女性に対する差別は広範で赤裸々であり、公衆レベルの闘いは盛んになり始めたばかりで、まだ充分ではない。

第二に、本来平等を追求することを目標にしている同志運動に、さまざまな問題が現れている:ジェンダー観念の弱さ、階層分化、理念の単一性、主流社会への同化など。同志(LGBT)内部の差違は、本来虹色のように多種多様に、細密に現れなければならないのに、「同志」という大きな旗の下に、それらの差違は覆い隠され、単一化され、ゲイ男性化され、主流化されている。

第三に、今日の中国では、市民社会が勢いよく発展しつつあるが、同志運動、ジェンダー/セクシュアリティ運動は社会運動の一部として、どのように他の運動と対話し、どのようにこの変化により広範に参与するのか? どのようにグローバリゼーションの中で、中国本土の現実に対処するのか?


この「発刊の言葉」は、同志(LGBT)運動の問題が非常に幅広く捉えられているとともに、「女性」という一括した捉え方も拒否していることが特徴だ。

続いて掲載された、小燕「LGBT運動誰が先に平等になるのか?――中国のジェンダー/セクシュアリティ運動に関する若干の考察」(小燕「【专题】让谁先平等起来?——关于中国性/别运动的一些观察」2013年5月2日)は、LGBT運動やフェミニズム運動のあり方に対する批判を、より具体的に述べている。以下は、その抜粋だが、LGBT運動に対する批判の箇所を茶色に、フェミニズム運動のあり方に対する批判の箇所をオレンジ色にしてみた。

「一部の人が先に平等になる」、これが有効な戦略なのかどうか私は知らないが、少なくとも私は、これは有害な運動の理念だと思う。

同志運動は、結局、セクシュアリティとジェンダーにもとづく社会的公正を実現するためのものか、それとも一部分の人の合法性を勝ち取る――「同性婚姻合法化」あるいは「性的指向にもとづく差別に反対する」が私たちの最終的目標なのか?

私たちが同志運動に参加したとき、ある人は「エイズ防止」が同志運動の戦略だと言った。レズビアンの声はそれによって全面的に消されてしまったけれど。その後、ある人は「生まれつき論」が有効な戦略だと言った。なぜなら、「やむをえない」状況ならば受け入れられやすいからだと。さらにその後、彼らは「積極的で肯定的な」同志のイメージの形作ることを始めた。それは、より多くの人に社会的エリートの同志たちを受け入れさせるためだった。

私も、これらの「戦略」がおおむね、ある程度「有効」であることを否定できない。たとえば、同志の社会的可視性を高めるためには有効だろう。しかし、結局、誰が視野に入るようになり、誰がそのために後ろに隠されるのだろうか?  私はこれらの戦略を怖いと感じる。なぜなら、自分が戦略のニーズに合致していないという理由で、いつ運動から放棄されるかわからず、怖いからだ。


私は、2012年のフェミニズム運動について、「レズビアンによって中国のフェミニズム運動の誕生が推進された」と簡単に言おうとは思わないけれども、レズビアンの運動者たちがより強いジェンダー平等意識と社会運動の自覚を持ってこれらのフェミニズムのアクションに参加し、「運動」の形成において重要な役割を演じたことは認めざるをえない。

今年1月、私が上海でのある会議で李麦子
[遠山注:レズビアン]に会ったとき、私は彼女にこのような考え方を話した。その時、麦子は半ば冗談で、半ば緊張して、「もしあなたが発言するときに、『レズビアンが中国のフェミニズムを推進した』と言うのなら、私は『自分は異性愛だ』と言明する」と言った。私は麦子に何故かと問うと、麦子は「そういう言い方は、彼女たちから多くの運動の力を流失させるかもしれないからだ」と述べた。まじめな話、この回答に、私はいささか驚いた。私の心配は焦りに変わった。ひょっとしたら私はもっと繰り返し「私は確固としたフェミニストだ」と表明するべきだったのかもしれないが、私が心配なのは、レズビアンの活動家がこのままフェミニズム運動の中に埋没する、あるいはフェミニズム運動の中の「レズビアン」が主体性を喪失する――この欠落は、戦略的考慮にもとづいて主体に放棄したのかもしれないし、受動的に遮蔽されたのかもしれないが――ことである。

後に、私は会議で、このような観点を出したとき、すぐ「フェミニストレズビアン」たちの反対にあった。(……)会議に参加していた一人のフェミニスト学者は、「これらのフェミニズムの訴えを主張するのは非常に良い。けれども、レズビアンとしての身分を強調するべきではない。レズビアンであることを強調することは、公衆のフェミニズムに対する誤解を生じさせるし、そのような少数派のセクシュアリティは過度に強調するべきではない」と述べた。私が言いたいのは、これこそが私が心配している状況だということだ。


実際は、私が言いたいのは簡単なことである。

第一に、セクシュアリティ/ジェンダーの平等が基本的立場であり、LGBTであれ、フェミニズムであれ、セクシュアリティの権利であれ、どの陣営でも、これが、協力と共生の基礎である。(……)「一部の人が先に平等になる」、これが有効な戦略なのかどうか私は知らないが、少なくとも私は、それは有害な運動の理念だと思う。そうした理念は本当の圧迫と分離を作り出して、一部の人に他の一部の人のために道を譲らせ、既にある既得権益を打ち固め、作り出す。

第二に、運動の協力と結びつきは重要だが、主体の異なった訴えも、常に強調されなければならない。LGBTの訴えは異なるし、フェミニズムの訴えとレズビアンの訴えも異なるし、女性内部の訴えも異なる。人は多面的であり、ジェンダー平等の訴えも多面的であり、どの陣営も一枚岩ではない。普遍的に適用できるフェミニズムはなく、普遍的に適用できるセクシュアリティの権利もない。


上の文はフェミニズム運動のあり方も批判しているのだが、「女権之声」も、この文章に「閲読推薦、討論歓迎~」とコメントを付けて紹介しているので(2011.5.3)、中国のフェミニズム運動が、こうした議論を排斥しているわけではないようだ。

次の大頭「周縁の中の周縁に立つ」(大头「【专题】站在边缘的边缘」2013年5月20日)は、「フェミニズムレズビアングループ」を設立した女性の文である(以下の文も抜粋だが、上の文と同じく、LGBT運動に対する批判の箇所を茶色に、フェミニズム運動のあり方に対する批判の箇所をオレンジ色にしている)。

なぜ「フェミニズムレズビアングループ」を設立しようと思ったかという理由の一つは、同志運動に、ゲイが主導し、代弁する情況が深刻に現れているからだ。

公衆レベルでも、同志運動内部でも、「同志=ゲイ」、「同性愛=ゲイ」という理解がかなり一般的である。各地で「エイズ防止」の名の下に、大小の多くのゲイの組織が設立されたが、レズビアングループはその下に付属していて、「同志」の名の下に統合され、忘れられた。多くのレズビアンは、ゲイといっしょに会議をした時には発言権がなく、自分の意見が尊重されないという経験をしている。このままでは、レズビアンたちは焦りを感じ、信頼を感じられなくなりそうだった。そのとき、「フェミニズム」が、自己を確立し、ゲイとは異なる意見を確立する出口になった。

この一、二年、女と男の同志の分岐が現れた後、「レズビアンはよくしゃべる」と言う人が出てきた。これは、次の事実を無視している。レズビアンはもう長い間沈黙してきており、やっと話し始めたばかりだ。しかし、ゲイは今なお、至るところで中国のLGBT集団を代弁している(……)多くのゲイを中心とした組織は、現在「LGBT」という名前を付けている。これは流行していて、国際的な慣例にしたがっており、ポリティカル・コレクトであるけれども、「内部の差異を真に尊重し、理解する」というこの言葉の背後の意味を無視している。同時に、クィア理論に反対する組織者が「クィア」という名称を使っている(……)。

周縁の人が自らの権益を勝ち取るとき、一部の人は主流に入り込むことができるが、もっと多くの人が置き去りにされる。この「もっと多くの人」が、周縁の中の周縁である。すなわち、お飾りとしての「LTB」、辺鄙な地区、経済的状況が良くないLGBT、などなどである。同時に、運動の目的が結局、人の解放――個人の自由・自信・理解の獲得であるのか? それともいささかの量化した結果、たとえば同姓婚姻合法化? であるのか? この点から見て、現在の中国の同志運動は、異なった理念が存在しており、まだ討論がまったく不十分である。


フェミニズムのほうを見ると、奇異なことに、フェミニズムのアクションに参加したら、レズビアンたちは、広義の「女性」の中に身を隠してしまう。レズビアンの運命と異性愛の女性の運命は完全に同じであるかのようだが、実際はもちろんそうではない。「性別」と「性的指向」(カムアウトの圧力を考えてみよ)との二重の抑圧が、私たちの身の上にかぶさっている。このことは、レズビアンの、LGBT運動とフェミニズム運動の中での二重の苦境、二重の失声をもたらしている。

それゆえ、私たちは誰であるかをはっきりさせて、「レズビアン」と「フェミニズム」と「同志」との関係をはっきりさせ、自らの主人になって、相互に尊重するという前提の下で異なった運動と同盟を結ぶ、これこそが未来の方向である。私は誰なのか? それは、単なる「フェミニスト」と「同志」との間を移動するレズビアンの組織者ではない。二重(多重)に抑圧された中で生活している一人一人のレズビアンには語らなければならないことがあるのだ。みんなの経験を集めてこそ、運動のあり方が次第にはっきりし、豊富になる。

積極面を言えば、周縁は力を持っている。なぜなら、失うものは、本当に鎖だけだからである。レズビアンは、男権的社会に対して感情上のニーズもなければ、現実的な利益も得られないのだから、幻想を最も持っておらず、それゆえ、最も勇敢で、最も革命性を持っている。性別と性的指向の二重の反逆は、家父長制的体制を揺るがしうるものでもある。その前提は、私たちがもっと勇敢で、もっと自由で、もっと知恵を持たなければならないということである。



本ブログで以前述べたように、中国の若い行動派フェミニストには、レズビアンなどのセクシュアルマイノリティが多いという特徴があるが(「若い行動派フェミニストたちのネットワークの幾つかの特徴」)、上の文を読むと、その背景として、中国では、同志運動の中の男性中心主義に対する反発から、フェミニズム運動が生まれたという面があるように思う。日本では「新左翼運動の性差別への反発からウーマン・リブが生まれた」と言われるが、それと似たようなものなのだろうか?

それはともかく、その後、フェミニズムとレズビアンの問題に関しては、『クィア レズビアン タイムス』でも他の方が自らの経験や考察を発表しているし、若い行動派フェミニストたちの助言者である呂頻さんも応答している(8)。今後どのような形で議論が展開するのかは、同様の問題を抱えていると思われる日本にいる者としても注目に値すると思うので、今後またご紹介したい(こうした問題は、もちろんフェミニズム運動だけの問題ではないし)。中国の場合、当初からレズビアンであること自体は、とくに隠していない(ただし、メディアなどには宣伝しない)という状況なので、興味深い展開が生まれるかもしれないとも思う。

ただ、若い行動派フェミニストたちが4月6日から15日におこなった西北巡講(李麦子ら)の途上でのパフォーマンスアートでは、就職差別反対のアクションが男でも女でもない「東方不敗」の扮装でおこなわれた(前年は「花木蘭」という女性の扮装でおこなった)し、レズビアンの結婚式もおこなった(詳しくは本ブログの記事「ジェンダー平等活動グループの活動家が西部の都市を巡回講演」)。こうした変化は、『クィア レズビアン タイムス』で小燕さんや大頭さんがおこなった異議申し立てと何らかの関係があるのかもしれない、と思う。

(1)Damien Lu(星星)「同志问答:什么是“酷儿理论”?它与同志运动有什么关系?」爱白网。この文は、発表された日時が書かれていないが、別のサイトに掲載されている同じ文(「同主题阅读:同志问答:什么是“酷儿理论”?它与同志运动有什么关系?zz」)は、2011年8月26日に掲載されている。
(2)この名前を名乗っている理由はよくわからないが、彼女たちが微博の中で、「月に代わって差別をなくす!」(2011.12.18)とか、「風が強い闇夜の深夜、美少女戦士レズビアンは、空から現れる/この上なく麗らかな明け方、美少女戦士レズビアンは、空から現れる/薄暗いたそがれに、美少女戦士レズビアンは、空から現れる/もう黙ってはいられない瞬間には、いつも美少女戦士レズビアンが空から現れる!」(2011.12.18)とか、「私たちは、月に代わって男性を出発点とした言葉をなくさなければならない。私たちは闘いを宣言しているのよ!」(2011.12.19)と述べているところから見ると、「美少女戦士レズビアン」は、「匿名の女性の正義の味方」といった程度の意味のように思われる。
(3)これは、les+の問いに答えたものなので、より詳しくは、「1月5日les+微访问美少女战士拉拉实录」(les+的blog2012年1月6日)参照。また、「美少女战士拉拉的微博」の発信とそれをめぐる議論のある程度の部分は、微博そのものにアクセスしなくとも、「美•少•女战士拉拉的博客」に、「微博精读:拉拉在LGBT社群中的边缘化地位」、「微博精读:“正面”的同性恋形象」、「 微博精读:酷儿本土化」、「微博精读:同运与艾滋病」、「微博精读:跨性别」、「微博精读:性别规范」、「微博精读:同性恋是一种选择?」、「微博精读:双性恋」、「微博精读:同性婚姻」、「微博精读:女大学生“占领男厕所”」、「微博精读:中国的“同志运动”」、「微博精读:酷儿政治」、「微博精读:对拉拉的定义」、「微博精读:同性恋是天生的?」、「微博精读:同性恋的唯一性」、「微博精读:同性恋的“科学”解释」、「以女性主义角度看问题」として、テーマごとにまとめられている。
(4)华人拉拉联盟委员会「华人拉拉联盟关于酷儿理论争论的声明」同語サイト2011年12月25日。
(5)崔子恩については、白水紀子「中国同性愛小説の作家とその周辺」(山田敬三先生古稀記念論集刊行会編『南腔北調論集―――中国文化の伝統と現代』東方書店 2007年)p.548-557に詳しい。その他、私は読めていないが、郭晓飞「本质的还是建构的?――论性倾向平等保护中的“不可改变”进路」2011年12月28日 (来源:『法学家』2009年第1期)と二言「同性恋:本质还是建构?」二言的日志2011年12月25日とが対照的な議論をしているようだ。
(6)彼女たちに大きな影響力を持つ、女性メディアウォッチネットワークの『女声』誌も、すでに論争中から、「美少女戦士レズビアン」の微博が「クィア」論によってレズビアンの代弁者として登場したことや華人レズビアン連盟が上記の声明を発表したことを好意的に報道していた(「“美少女”激荡同志圈」『女声』第105期(2011.12.26-2012.1.3)[word])。
(7)麦子家的微博2012.4.21。李麦子さんがもう一つ、NGO業界の問題の具体的な事例として挙げたのは、恩派(NPI)公益組織発展センターが企画したお見合いの件である。李麦子さんは、このお見合いのプランがジェンダーステロタイプだったので、それに対して多くの人が微博で異議を出したけれども、黙殺されたこと、そこでやむなく、数人の女性が当日ビラまきをしたら、主催者に包囲攻撃され、「場を壊した」と非難されたこと、その後いったんは主催者が「反対者と一緒に総括会議をする」と言いながら、実際は彼らだけで総括会議をしたことを批判している。李麦子さんは、「NGOの間は垣根を打ち破らなければならない」と述べている。この件については、吕频「相亲非公益 “幸福”是迷思?——我为什么质疑“公益相亲会”和“新幸福主义”」2012-04-13も参照。
(8)大兔[鄭楚然]「【专题】在女权圈中,直着进来,弯着出去」酷拉时报2013年5月6日、Stephanie「【专题】女权拉拉——如何消解身份名词」酷拉时报2013年5月14日、文\Holly 编\典典「【专题】 后现代的“玩”身份政治」酷拉时报2013年5月16日、吕频「关于女权和拉拉」社会性別与発展在中国2013年5月22日。
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李陽の離婚裁判の判決について

「クレイジー・イングリッシュ」という英語学習法の創始者の李陽さんが妻のキム・リー(李金)さんに暴力をふるってきたことやキムさんが2011年10月に離婚裁判を起こしたこと、中国のフェミニストたちが李陽さんを批判するとともに、キムさんの離婚裁判を支援してきたことについては、以前、このブログで書きました(「クレイジー・イングリッシュの李陽のDVと離婚裁判、フェミニズム運動」)。

今年2月3日、その離婚裁判の判決が出ましたので、今回は遅ればせながら、その判決について簡単にご紹介させていただきます(以下、敬称略)。

一 判決の内容(1)

キム・リー(今回の報道には、なぜか「李金」という表記が多いので、以下「李金」と書きます)が李陽に対して起こした離婚裁判は、これまで4回の口頭弁論を経てきましたが(2011年12月15日、2012年3月22日、8月10日、2013年1月29日)、2013年2月3日、北京の朝陽区法院は、以下のような判決を下しました。

1.離婚について――原告の李金と被告の李陽との離婚を認める(この点についてはすでに李陽も同意していた)。

2.子どもの養育権について――3人の子どもは李金が養育する。

3.養育費について――本判決の効力が生じた日から7日以内に、3人の子どもの2013年12月までの養育費をそれぞれ5万元支払う。2014年からは被告の李陽は毎年1月31日より前に、3人の子どもが満18歳になるまで、一人あたり毎年10万元、養育費を支払う。

4.財産分割について――被告の李陽は、本判決の効力が生じた日から3か月以内に、李金に対して、財産を現金化した金額1200万元を支払う。

5.DVの認定と精神的損害賠償について――李陽の家庭内暴力を認定する。李陽は李金に精神的損害賠償5万元を支払う。


そのほか、裁判所は、李金の申請にもとづいて、以下の人身保護命令を下しました。

李陽が李金を殴打・脅迫することを禁止する。もし李陽がこの禁止命令に違反したならば、裁判所は情状の軽重にもとづいて、罰金・拘留に処し、犯罪を構成するときは、法によって刑事責任を追及する。裁定の有効期間は3ヶ月である。


二 判決に対する評価

呂頻(女性メディアウオッチネットワーク代表、DV反対ネットワーク)は、この判決の注目点として、以下の3点を挙げました(2)

1.李陽がDVをしたと認定したこと。統計によると、離婚訴訟の中でDVの存在を主張しても、大多数は認定されない。そのため、賠償なども不可能だった。

2.法院(裁判所)が李金のために人身安全保護命令を出したこと。被害者の人身安全保護命令は近年公に認められた反DVの重要な実務上の進展であり、2008年から全国の試験法院(人身安全保護命令を試験的に出す裁判所)はすでに合計約200件の保護命令を出している。

3.法院が3人の女児の養育権をすべて李金に与えたこと。婚姻法の「子供の成長の有利になるようにする」という原則の精神によって養育権についての判決を見ると、DV加害者は明らかに子供を養育するのに適していないが、現在の法律にはこの点に関する明文の規定はない。子どもが多い場合、よくあるやり方は、両方がそれぞれ養育権を持つということであり、兄弟姉妹が共同で生活するという人倫のニーズは重視されていない。

その一方、呂頻は、「遺憾と懸念」として、「李陽がDVのために支払った精神的損害賠償金はわずか5万元だったこと」を挙げ、「これは李陽にとっては、本当に小銭でしかなく、加害者の懲戒や被害者の慰めに効果があるとは信じがたい」と述べています(3)。もっとも、同時に、呂頻は、「DVが絡んだ離婚判決の中では、これは従来にない高額の賠償である」とも言っています。

郭建梅(元北京大学法学院女性法律研究・サービスセンター主任)も、この判決は「3勝1敗」だとしています。ただし、その内容は少しだけ違います(4)

郭も、呂と同じく、判決が李陽のDVを認定したことと人身保護命令を出したことは、成果として挙げています。また、DVに対する精神的損害賠償を認めたことについて、「金額は少ないけれども、非常に重要」だとしています。この点も呂と力点の差こそあれ、それほど、大きな違いはありません。

郭が、「1敗」として挙げているのは、財産分割についてで、「裁判所は李陽の真実の財産の状況を調べることができず、彼女が得られるべき補償を与えることができなかった」という点です。

裁判中、李陽が財産を譲渡・転売したため、財産の状況が複雑になったために、李金は、李陽がすでに譲渡した不動産や銀行口座の資金に対する権利を主張しなかったというような妥協をせざるをえなかったようです(5)

三 改正民事訴訟法にもとづく人身保護命令

なお、裁判所は、今回の人身保護裁定に関して、民事訴訟法第100条の行為保全に関する規定を適用したとしています。

中国の民事訴訟法(1982年制定)は、その改正案が、2012年8月の第11期全人代常務委員会第28回会議で採択され、同日の公布を経て、今年1月に施行されました(中华人民共和国民事诉讼法)。その改正点のポイントの一つが、民事保全制度が整備されたことだそうで(6)、第100条で「人民法院は、当事者の一方の行為あるいはその他の原因により、判決を執行するのが難しい、あるいは当事者のその他の損害を引き起こす可能性がある事件について、当事者の申請にもとづいて(……)一定の行為を命令を下しておこなわせ[→確保型行為保全]、または一定の行為を禁止する裁定をすることができる[→制止型行為保全。人身保護命令はこちらに入る]。当事者の申請がなくとも、人民法院は必要なときは保全措置を取る裁定ができる」と規定されました。

今回の人身保護命令は、この新民事訴訟法で定められた保全制度を初めて適用したものだということです(7)

四 裁判所前での支援運動は、判決当日までおこなわれた

この裁判に対しては、李陽の講演会やクレイジー・イングリッシュ総本部に対する抗議活動、裁判所前でのパフォーマンスアート、妻のキムを支援する1200余筆の署名運動など、これまでにない裁判支援運動が若い女性たちによって繰り広げられました(この点については、本ブログの記事「クレイジー・イングリッシュの李陽のDVと離婚裁判、フェミニズム運動」参照)。

判決の寸前の1月29日の法廷でも、数人の若い女性が、怪我をしたかのような化粧をし、血痕があるかのように赤色で染めたウェディングドレスを着て、「恥を知れ、加害者の李陽」、「DVは容認できない 加害者は制裁すべき」、「保護命令」といったプラカードを掲げて、キムに声援を送りました(8)

2月3日の判決の日にも、雪が舞う寒い中、血染めのウェディングドレス姿の若い女性(李麦子)が両手にプラカードを掲げて声援を送り、キムと抱き合って喜びました(9)

1月29日時点では、すでに判決もおおむね書き終わっていただろうと思いますが、ささやかながら、最後まで裁判支援のアピールは続けられたわけです(もちろん二審にもつれ込む可能性もありました。実際、李陽はいったん控訴したのですが、その後、控訴を取り下げました)。

今回、DVによる離婚裁判では従来あまり出なかったような判決が出たのは、こうした粘り強い裁判支援運動の力もあると考えられます。

(1)李阳离婚案落判 Kim几度落泪获赔1200万」正义网2013年2月3日。
(2)吕频「离婚判决让李阳为家暴付出了代价」『新京报』2013年2月4日。
(3)この点に関しては、李清も「李陽がDV行為のために支払ったのは5万元だけである。わずか5万元が、一人の女が数多いDVの中で受けた傷を本当に癒しうるだろうか?」と述べています(李清「李阳案判决远非反家暴胜利」陕西传媒网2012年2月4日[来源:嘉兴日报])。
(4)In China’s Most-Watched Divorce Case, 3 Victories, 1 DefeatThe New York Times February 4, 2013→「李阳家暴离婚案中的三胜一败」2013年2月7 日(来源:纽约时报中文网、翻译:梁英、谷菁璐)。
(5)李阳离婚 被发“人身保护令”」『北京晩報』2013年2月3日。
(6)宮尾恵美「中国 民事訴訟法の改正[PDF]」『外国の立法』2012年10月号。
(7)李阳离婚 被发“人身保护令”」『北京晩報』2013年2月3日。
(8)【李阳离婚案今日再开庭 志愿者声援Kim高喊"家暴可耻"】」女权之声的微博1月29日10:53。
(9)李阳离婚案判决 Kim:想尽快开始新生活」网易女人2013年2月3日、「【当历史发生,反家暴志愿者与KIM同在。】」麦子家的微博2013年2月3日23:51。
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海南万寧の女子小学生の性侵害事件と女性運動

5月8日、海南省万寧市の小学校の陳在鵬校長と地方政府の職員が、女子小学生をホテルに連れ込んで、一夜を過ごすという事件が発生しました(1)

陳校長らは逮捕されましたが、警察は、彼らの犯行を「強姦」ではなく、「強制わいせつ」として扱いました。また、警察やマスコミは、被害者のほうにも問題があったかのような発表をしました。また、被害者の家族は、当局からメディアや弁護士に接触しないように言われて、家族の代理人になった7人の弁護士は、家族から解任されました。

こうした状況に対して、以下のような、さまざまな運動が起きました(以下、微博を典拠にしている記述については、注記としては不完全ですが、微博名と日付だけを付記してあります)。

<目次>
1.警察の捜査を批判する署名運動
2.メディアによる二次加害に抗議するパフォーマンスアート
3.婦女連合会の不作為に対する抗議活動
4.教育局や小学校に対する葉海燕さんらの抗議活動と葉さんに対する弾圧、行政拘留

1.警察の捜査を批判する署名運動

警察の捜査に対する批判

ジャーナリストの李思磐さんは、警察の捜査に対して、以下のような批判をしました(2)

一、「処女膜が破れていなかったから強姦ではない」という罪状決定の方向が誤っている

警察は、処女膜が破れていないことを根拠に、強姦ではなく「わいせつ」であるとしている。しかし、従来の司法解釈(最高人民法院が出す法律の公式の解釈)は、幼女の場合は、成人よりも強姦の定義を広く取って、「双方の生殖器の接触」があれば強姦と認めており、処女膜の状況だけを強姦の基準にしてはならないとしている。また、4つの鑑定書のうち、1つは処女膜に裂傷があるとしている。さらに、警察は処女膜の状況だけを問題にしていて、DNA鑑定の結果や証人の証言を取り上げていない。

二、幼い女の子に汚名を着せ、容疑者を罪から逃れさせている

警察は、被害に遭った女子生徒が自分から関係を持ったと発表している。しかし、従来の司法解釈は、一般に、幼女の場合、同意の有無を問題にしていない。警察は、被害者の道徳について主観的な論評をすべきではない。警察は幼女が主体的に売春をしたかのように言っているが、未成年者は性関係において民事的能力がないことを無視している。

三、万寧の警察は犯罪の容疑者をかばっている疑いがある

 ・警察は、6人の生徒のうち4人だけについて、DNAが検出されなかったとし、他の2人については検査をしていない。
 ・かりに挿入行為がなかったとしても、「わいせつ」よりも罪が重い「強姦未遂」である可能性がある。警察は、被害者が薬を飲まされて気分が悪くなったという証言や金銭による性関係を持ちかけられたという証言、脅迫されたという証言もあることも考慮すべきである。
 ・未成年者に対する性侵害事件は、通常、累犯・重犯であり、警察は容疑者が余罪がないか調査する必要がある。とくにこの事件では、陳は仕事をつうじて幼い女の子に接触しており、類似の行為をしていないか追及する必要がある。

公開書簡への署名運動

李思磐さんが代表をつとめる「広州ニューメディア女性ネットワーク」という団体と宋志標さん(メディアウオッチャー)・余丹丹さん(女性の権利活動家)は、以上のような認識の上に立って、以下の点を万寧市公安局に要求する公開書簡への署名運動を始めました(一部の抜き書きです)(3)

・無責任に幼い女の子に汚名を着せる情報を発表した行為に対して、女の子とその家族に謝罪すること。

・証拠を全面的に分析せずに出した「強姦は存在しなかった」という結論を撤回すること。

・一部の保護者に対して介入・説得する行為をストップすること、警察が事件の捜査の過程で政府内部の行政命令の影響を受けないことを保証すること、事態を粉飾するために、陰の取引によって事実を歪曲しないことを保証すること。

・最も重要なのは、このように全国が関心を持ち、注目している事件については、万寧市政府はその公式サイトでこの事件に関する情報を、すぐに、正確に、完全に発表して、疑問に堪えうる公開の文字の記録をとどめおくこと。本来きわめて厳粛な、公権力の機関を代表する信頼度の情報を、随意・選択的に発表するようなことがないようにすること。


この公開書簡に対しては、5月26日までに1400人近くから署名が集まりました(新媒体女性的微博5.26)。

2.メディアによる二次加害に抗議するパフォーマンスアート

5月15日付『瀟湘晨報』は、「6名の女子小学生の生活の規律の乱れを重視せよ」という社説を掲載して、女子小学生が成人男性と付き合ったり、贈り物を受け取ったり、ホテルに付いて行ったことを問題にしました(4)

この報道に対して、5月21日、長沙の瀟湘晨報ビルの前で、4人の若い女性が、股をべったり広げて地面に座り、その股の間に、細い切れ目を入れた、赤い果肉が見えているスイカを置いて、ヴァギナに見立て、『ヴァギナ・モノローグ』(イヴ・エンスラー)を改編した「私のヴァギナはお誘いではない」を朗読して、「性道徳は、性侵犯の理由ではない。海南の幼女に二次被害を与えることを止めてください」と訴ました(大兔纸啦啦啦的微博5.21)(5)。その傍らでは、一人の青年が「性道徳は、性侵犯の~」という文言を書いたプラカードを掲げて、道行く人にも訴えがわかるようにしました (以上の写真→「四女青年长沙街头上演“阴道独白”声援海南幼女」女声网2013年5月21日[新浪微博@女权之声])。

3.婦女連合会の不作為に対する抗議活動

海南省万寧市以外の地区でも、最近、相次いで幼い女の子に対する教師による性侵害事件が発覚しており、たとえば、広東省でも、雷州市で小学校の校長が女子生徒を強姦した事件が起きました(6)。しかし、各地の婦女連合会(婦連、中国共産党の指導の下にある女性団体)は、何の抗議や声明も出していません。

それに対して、5月27日、広東省の婦連の入口で、何人かの市民が、「沈黙している婦連よ、性が侵害された子どもの泣き声は聞こえているか?」、「婦連よ、耳が聞こえぬふり、口がきけないふりはやめてくれ!」「幼女買春罪(14歳以下に対する買春を、「強姦」ではなく、「幼女買春」とすることによって、強姦ほどには重く罰しない法律(7))を廃止して、子どもの性侵害という犯罪行為を厳罰にせよ!」というプラカードを掲げて、婦女連合会に抗議しました。

彼らは、婦連に対して以下の7項目の要求をまとめています。

1.婦連は「女性と少年・児童の権益を守る」という法律で定められた職責をきちんと履行して、児童に対する性侵害事件に対して、やるべきことをやり、「大衆団体」として発すべき声を発しなければならない。

2.婦連は、行政・司法機関の職責履行状況を法にもとづいて監督し、職務上の怠慢や法律違反の疑いがある行為(捜査・事件処理の手続き違反や倫理違反など)に対しては責任を追及しなければならない。

3.「社会の安定維持」の名の下に、被害に遭った子どもや家族に圧力をかけて口を封じたり、メディアの報道を阻止したりする行為に対しては、婦連は、断固として、被害当事者の権益を侵犯する行為として通報・問責するべきであり、悪行に対して声を上げないようではいけない。

4.性的侵害を受けた女性の「貞潔」に対する偏見・非難および官界での「処女を破れば官位が上がる」という悪い風俗迷信など、女性をモノ化する行為に対しては、婦連は敏感なジェンダー意識を持って対応し、譴責すべきである。

5.現行刑法の「幼女買春罪」は幼い少女に汚名を着せ、基本的法理に違反している疑いがあり、法学界や人民大衆の中では、この罪名の廃止を求める声がきわめて高い。婦連は全国的大衆組織としての立場から、学者・専門家や利害関係者と協力して、立法機関に対してこの罪名の存廃問題の研究を強化するように訴えるべきである。

6.婦連は、自らの組織の優位性を生かして、学校・地域コミュニティなどで、児童少年・教師・保護者などに対して性知識・性安全・自己保護教育をするべきである。

7.婦連は民間の公益組織と協力して、被害に遭った子どもに対する心理的危機管理と救済の方法を逐次構築するべきである。


実は、昨年4月24日の『広州日報』では、広東省女性児童工作委員会が検察院と共同で作成した『女児が性侵害に遭った情況の調査研究報告』について報道されています(「广东发布女童遭性侵报告:多为熟人作案」)。婦連に対する抗議行動に参加した陳生さんは、「婦連は子どもに対する性侵害事件に関心を持って、多くの時間を使って調査研究をしているのに、なぜ事件が起きたときに、各地の婦連はみな黙っているのか?」と言います。また、この研究報告はまだその一部が新聞で報道されただけなので、市民たちは、その全文を公開するように、広東省女性児童工作委員会に情報公開申請をおこないました(8)

それに対して、広東省婦連権益部は、翌日、公式微博で、「婦連はずっと、どのようにして性侵害事件の発生を防ぐかを宣伝し、被害者にさまざまな形の救助をすることに努力してきた。年内に児童の性侵害防止に関するパンフレットを出す予定だ」と述べました。もっとも、それに対しては、「ずっと努力してきた? そうは見えない。婦連は、パンフレットを編集する以外に、もし被害者が助けを求めたら、どんな役割ができるのか?」(手牽手工友活動室[女性農民工支援NGO]的微博5.28)という疑問が寄せられましたが……。

「婦連は解散せよ!」という声も

この件に対する婦連の対応に関しては、すでに5月19日、フェミニスト活動家の李麦子さんも「婦連は結局、何の役に立つのか?」と言っていますし(麦子家的微博5.19)、セックスワーカー支援活動家の葉海燕さんも、5月22日、「婦連は一言も言わない。本当におかしい」と述べました(叶海燕宝贝的微博5.22)。

さらに、広東省婦連前での抗議がおこなわれた翌日の5月28日、向莉さん(どういう方なのかよくわかりませんが、写真を見ると、わりあい若い女性のようです)は、砂浜に「妇联解散(婦連解散)」と大きく書いた写真をアップして、以下のように述べました。

婦連は本来女性の権益・少年・児童の権益を守る団体だ。。。しかし、婦連は合肥の安坭事件・万寧の校長の小学生への性的侵害などの事件の間、ずっと耳が聞こえぬふり、口がきけないふりをしていた。公権力と被害女性を前にして、婦連は何度も口を噤んできた。解散すべきだ!!!(@花儿在歌唱的微博5.28)


5月28日、作家の天佑さんも以下のように述べました。

中国には女性と子どもの権益を保護する組織があるという。それは――婦連である。けれども、多くの小学生が強姦され、わいせつなことをされても、何も言わない。こんな組織がなんの役に立つのか? この組織に解散するように強く意見を出す!(作家・天佑的微博5.28)


向莉さんは、さらに、「婦連解散、幼女買春罪廃止!」というタイトルで、「女性と子どもの権益を守ると称している婦連は、万寧の6人の女子生徒が校長にホテルに連れ込まれたというスキャンダルが発生しても、耳が聞こえぬふり、口がきけないふりをしている。婦連は解散してください! 幼女姦淫は、強姦と見なすべきだ。幼女買春罪は5年以上の有期懲役で、量刑がきわめて軽く、成人が未成年者に性的侵害をする罪を逃れさせる疑いがあるので、廃止すべきだ。幼女をこの罪の中で売春婦と見なすのは、彼女たちと家族の人権と名誉権を侵犯している」として、9人(組)がそれぞれ、婦連や幼女買春罪を批判しているメッセージを掲げている写真を掲載しました(@花儿在歌唱的微博5.28。向莉さん自身は「学校の子どもが性的侵害に遭ったのに、無用な婦連は解散しろ!!」というメッセージを持って立っている写真を掲載している)。

この発信は、5月30日現在、5881転載されており、人権派の女性弁護士である王宇さんも「婦連解散」とコメントし(律师王宇的微博5.28)、他にも、「長年、婦連がなにか役に立つことをしたということを知らない」、「婦連は表面的には民間団体だが、実際はお役所だ」、「婦連、赤十字、労働組合、政治協商会議。。。。みんな誰のために仕事をしているのか??」「婦連は解散しなくてもいいから、沈躍躍[現在の全国婦連主席]は辞任しろ! 葉海燕が就任しろ!」、「解散に同意する」などのコメントが寄せられています。

もちろん向莉さんは、婦連だけを問題にしているのではなく、「教育部部長・袁貴仁と全国婦連主席・沈躍躍にお尋ねするが、一ヶ月のうちに多くの女児に対する性侵害事件が起きているのに、あなたがたは相変わらず沈黙を守り、一言のお詫びもない。あなた方の良心はどこにあるのか?!」(@花儿在歌唱的微博5.28)というふうに、教育部の責任も問うています。また、コメントの中には、「解散すべきは某組織である」「全国の邪教団体とその支部団体を取り締まれ」といった中国共産党を指しているようにと思われるものもありますし、検閲によって削除された微博もあるので、もっと露骨な発信やコメントもあったのだろうと思います。

4.教育局や小学校に対する葉海燕さんらの抗議活動と葉さんに対する弾圧、行政拘留

万寧市の教育局や小学校前で数人で抗議活動

海南省万寧市では、セックスワーカー支援活動家として著名な葉海燕さんが、5月27日、万寧市教育局の前で「学校にはまだ何人陳在鵬がいるのか? 誰が女の子の安全を守るのか」と大きく書いた紙を持って立ちました(@花儿在歌唱的微博5.27)。また、4人が、「監督の職責失当の局長は辞めろ」と書いた紙を持って立って抗議のアピールをしました(@叶海燕宝贝的微博5.28)

また、同日午後2時からは、葉海燕、向莉、唐吉田(人権派弁護士・男)、王宇(人権派弁護士・女)、単麗華、王建芬、賈霊敏、南伏の各氏が、万寧小学校前で3時間あまり、「学校の環境を浄化せよ」「校長の陳在鵬を法によって処罰せよ」などと書いた紙を持って立って、抗議活動をしました。王宇弁護士は、女性や子どもの権利に関する法律を紹介したチラシを撒きました(@叶海燕宝贝的微博5.27、5.28、@花儿在歌唱的微博5.27)。

葉海燕さんは、「校長よ、私をホテルに連れ込め。小学生には手を出すな! 連絡先電話12338 葉海燕」と大きく書いた紙を持って、立ちました(@叶海燕宝贝的微博5.27、@花儿在歌唱的微博5.27)。「12338」というのは、婦女連合会の権利保護ホットラインの電話番号です。これは、加害者に対する皮肉であるとともに、婦女連合会への皮肉ないし注文を表現しているのかもしれません(9)

葉さんがおこなった「校長よ、私をホテルに連れ込め。小学生には手を出すな!」というメッセージに自分の写真を添えるやり方が流行

葉さんの「校長よ、私をホテルに連れ込め。小学生には手を出すな! 連絡先電話12338」という文言と自分とを写した写真を自らの微博で発信するというやり方は、その後、他のフェミニストにも広がり、5月28日には、鄭楚然さんや李麦子さんがやり(大兔纸啦啦啦的微博5.28、麦子家的微博5.28)、29日には、@夏日的第13章さんがやっています(5.29)。

さらに、女性だけでなく、雷闖さん(5.28)のような男性、阿強さん(5.29)のようなゲイにも広がりました。動物の写真とともに、上のメッセージを掲載した人もいます。連絡先の電話番号に「110」番を書き込んだ人もいます。その他、さまざまな人がやっています(10)

葉さんに対するデマ、非難

一方、葉さんに対して、「葉海燕は男の子に性的侵害をしている」とか「葉海燕はどこそこの政治グループに隷属している」というデマも振りまかれました(叶海燕宝贝的微博5.30)。

葉さんのパフォーマンスについて、「風俗を害する」ものであり、「大衆をあっと言わせて歓心を買おうとする『自己宣伝』」だとして非難する記事も出現し(11)、この記事が、新華網のような代表的ニュースサイトもに転載されるという事態も起きました。

民間女権工作室にまた調査が入る

葉海燕さんに対して、政府当局からの弾圧と思われるものも始まります。

5月29日、葉海燕さんが自宅に電話すると、広西の博白[の民間女権工作室]にまた調査が入ったと言われ、「家には子どもが一人でいる。もし子どもに何か事故があったら、きっと政府部門が関係している。私は、恥知らずな関係部門が、私に対する嫌がらせをストップするよう希望する。もし私が何か違法なことをしたのなら、直接に法律の手続きでやってほしい。私はあなたがたが文明的で合法的なやり方で問題を処理できることを望んでいる」と述べました(叶海燕宝贝的微博5.29)。

婦連の人が家主に葉さんを追い出すように圧力をかける

5月30日には、葉さんは次のように微博で述べます。

9時45分:ついさっき、家主のおばあさんが来た。彼女は、街道居民委員会にも婦連の人がいて、2、3人が一緒に来て、私がいま借りている家を私に貸すなと言ったという。私の女児は近くの学校に通っている。子どもの教育のために、近くの学校に通わせているのだ。いま私が追い出されたら、子どもの勉強は途中で終わってしまう。私は博白[県]の婦連に電話をしたら、彼女たちは、このことに関わっていないと言った。これは、私という市民が立場を表明した代償なのか?


葉さんの家に10人あまりの女たちが来て、葉さんを殴る

10月30日、葉さんは、微博で以下のような発信をします。

11時41分:いま、4、5人の女が私の家に来て、私を殴っている。

11時42分:お手数だが皆さん、警察に通報を。家には私と娘しかいない。

11時58分:みんなで11人ほどいる。男が1人いて、ほかに10人ほど女性がいる。

11時59分:彼らはまだわが家の入口の階段をふさいでいる。皆さん、警察に通報するのを手伝ってください。役に立たなくても、記録をしなければならない。法律という手段で解決する。


Voice of Americaの記者への電話では、葉さんは、彼女(彼)ら11人は、「自分たちの写真を撮って、その写真をネットに掲載した」と言っているが、葉さんは「私は、あなた方の写真を撮っていないし、あなた方の写真を人に撮らせたこともない」と述べたのに、彼女たちが暴力をふるったと言っています。電話からは、騒がしい声が漏れてきて、葉さんが「私は撮っていない、もう一度言うが、私は撮っていない」「あなたが家に来て、私を殴ることがすでに違法だ」と言う声も聞こえて、電話が切れたということです。

その後、6、7分後に電話がつながった時は、警官がドアを開けるように言っている声や葉さんが「110番が通じない」と言って、その警官を怪しんでいる言葉や「私は違法行為はしていない」と言っている声が聞こえてきました(12)

午後1時前、王宇弁護士が、葉さんの家に電話したところ、葉さんの子どもが「お母さんは派出所に連れて行かれた」と話し(律師王宇的微博5.30)、その後、葉さんの行方はわからなくなりました。

警察が、葉さんは「刃物で3人の女性を傷つけた」ので行政拘留にしたと発表

5月31日、広西玉林市警察は、玉林市博白県警察が5月30日に「刃物で3人の女性を故意に傷つけた葉海燕を行政拘留にした」と発表しました。

警察の発表によると、博白県の女性の張某と梁某と覃某という3人の女性が、2012年に葉海燕がインターネット上で彼女たちの旅館を「十元店」(出稼ぎ労働者用の安い売春宿)だとして中傷して、彼女たちの家族の写真をネットに掲載したため、名誉が毀損されたとして、葉海燕に抗議して損害賠償を要求したところ、葉海燕は包丁で4人にけがを負わせたということです(13)

しかし、この発表は、とても人々を納得させるものではないでしょう。ある弁護士も、すぐに、自分のブログで、警察の通告は「いささかうさんくさい」と言っています。すなわち、1)葉海燕のパフォーマンスアートの後、その11人がすぐに家に来たというのは、タイミングがよすぎる。葉海燕とその11人との紛争は去年起きたのに、今になって交渉している、2)当時多くの人が家に来て挑発して、住宅に侵入し、人身に危害を加え、葉海燕はそれにかなわなかった。つまり、刃物を持ったのは防衛のためだったのに、警察が葉だけを罰して他の人を追及しないのは、公平とは言い難い、と指摘しています(14)

実際、同日、王宇弁護士と王全平弁護士が、葉さんの娘さんに事情を聴いたところ、娘さんが学校から帰ってカギをかけずにいたところ、不法に家の中に侵入されて、母親を殴ったり罵ったりしたので、これ以上ひどい怪我をさせられないように、母親が武器を取って正当防衛をしたということでした(律师王宇的微博5.31)。

葉さんの釈放を求める運動

さまざまな人が葉さんの釈放を訴え、フェミニストのグループは、そのための葉書を博白市の派出所や婦女連合会に送る運動もおこなっています(15)。艾暁明・元中山大学教授は、上半身裸の身体に、「私をホテルに連れ込め」「葉海燕を自由にしろ」と書いて、twitterで発信しました(16)

[付記(2013/06/03)]
Togetter「『校長先生、小学生をホテルに連れ込む』事件と女性活動家の逮捕―中国」もKinbricksnowさんによって作成されています。

(1)海南万宁一小校长带4幼女开房 政府职员带2幼女开房」法制网2013年5月13日(来源:法制日报)、「小学校校長と市職員、小学6年生の女児6人に性的暴行―中国海南省」XINHUA.JP 5月14日など。
(2)李思磐「校长开房案:万宁警方是否涉嫌渎职」华商报网络版2013年5月17日。
(3)致海南省公安厅关于万宁市公安局办理“小学校长带女生开房案”涉嫌渎职的公开信
(4)重视6名小学女生生活方式的失范」『潇湘晨报』2013年5月15日。
(5)すでに5月1日に、香港の1908社が、切れ目を入れたスイカを股の間に挟んでヴァギナに見立てるパフォーマンスアートをしているので(叶海燕的微博2013年5月1日)、彼女たちがオリジナルなパフォーマンスアートではないと思います。
(6)广东雷州小学校长涉嫌强奸两女生 被举报后自首」中国新闻网2013年5月23日。
(7)中華人民共和国刑法の第236条(強姦罪)は、「相手が14歳未満の幼女と姦淫する者は、強姦と見なし、重く罰する」としている。強姦は「3年以上10年以下の懲役」で、「情状が劣悪」な場合は「10年以上の懲役・無期懲役・死刑」である。その一方、刑法は、第360条2項(幼女買春罪)では、「14歳未満の幼女を買春する者は、5年以上の有期懲役に処し、あわせて罰金を課す」としている。「有期懲役」は期限が「15年以下」に決まっていますから(刑法第45条)、「幼女買春罪」は、最低刑は強姦よりも重いけれども、「情状が劣悪」な場合でも、「強姦罪」ほどは重く罰せられない。また、中華人民共和国刑法では、「強姦罪」は「公民の人身の権利、民主的権利を侵犯する罪」に属するのに対して、「幼女買春罪」は、「社会の管理と秩序を妨害する罪」に属している。これは、幼女が自分で売春したので、幼女にも問題があったとされているからである。
(8)以上については、「“拿什么保护你?我的孩子!” 广州市民妇联目前举牌表心声 申请政府消息公开 呼吁妇联维护妇女及少年儿童权益」女权之声的微博5月27日 15:44→「广州市民妇联前面举牌表心声 广州市民妇联前面举牌表心声 并申请妇儿工委会政府信息公开」社会性别与发展在中国2013年5月28日。
(9)以上の写真は、「叶海燕抗议性侵女童:开房找我,放过小学生!」(21CN微频道2013年5月28日)でも見られる。
(10)こうした写真は、「叶海燕举牌抗议万宁性侵案 遭殴打被扣押」(社会性别与发展在中国2013年5月31日)にも掲載されている。
(11)郑亚琳「“校长开房找我”哗众取宠式的“自我秀”」紅網2013年5月30日。この件についてはRedio Free Asia(自由亚洲电台)も取り上げています(「女权活动人士举牌抗议校园性侵 官媒批评行动伤风败俗」2013年5月13日)。
(12)叶海燕抗议万宁校长性侵被报复家中遭群殴」Voice of America (美国之音)2013年5月30日。
(13)广西玉林警方:叶海燕故意伤害他人被依法拘留」中国新闻网2013年5月31日。
(14)叶海燕事件」丁金坤法律博客2013年5月31日。
(15)声援叶海燕,寄出明信片 围观即是力量,表态亦能声援」女声网2013年5月31日。
(16)艾晓明「这是我生过养过的身体,为了叶海燕,我豁出去了――救救小学生,反抗性暴力!」艾晓明(xiaocao07)twitter2013年5月31日。

[追記](2013/06/03)
・葉海燕さんが掲げたスローガンの翻訳が、「小学生を解放しろ」となっていましたが、「小学生には手を出すな」に改めました。
・KinbricksnowさんによるTogetterへのリンクを付け加えました。
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