2013-05

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長沙で100人余りのLGBTパレード、しかし発起人は行政拘留12日に

昨年11月に続く2回目のパレード

5月17日(国際反ホモフォビアデー)の午後2時~4時20分、100人あまり(「だいたい80-100人」と記している人もある)のLGBTの人々とその友人たちが、湖南省長沙市をパレードしました。パレードのコースは、天馬大ホテルを出発して、潇湘大道の沿江風光帯(湘江沿いの景観道路)を行進し、河西大学城、湖南大学を経て、天馬大ホテルに戻るというものでした(1)

彼(彼女)らは、「私は同志(LGBT、性的マイノリティといった意味)だ、私は誇りを持っている(我是同志,我骄傲)」「同志を支え、差別に反対しよう!(撑同志,反歧视)」というスローガンを叫びながら、レインボーフラッグを掲げて、パレードをしました。全国14省から、男子学生50人と女子学生55人が集まったそうです(2)。隊列の中には、「湖南大学愛Smile 協会(湖南大学爱Smile协会)」という、大学内のLGBT関係グループの旗もありました。

発起人の向小寒さんは、「長沙でこのような活動をするのはもう2回目だ」と語りました(3)。1回目の活動は、昨年11月24日におこなわれたパレード(本ブログの記事「長沙市で中国大陸初のLGBTパレード」)だと思いますが、このときの組織者も向小寒さんでした(4)。しかし、昨年11月のパレードの参加者は21人(30人余りという報道もあるが)だったのですから、今回のパレードの方がはるかに規模は大きかったのです。



今回のパレードは、「同愛ネットワーク(同爱网络[微博])」という湖南・湖北地区の同志向けポータルサイト(「同愛ネットワーク科技有限公司」という会社組織の形をとっている)が主催した、「2013年夏季大陸(長沙)同志反差別活動」でした。

向小寒さんは、4月5日に発表したプランで、すでに以下のような点を決めていました(5)
 ・活動の日――2013年5月17日(金)
 ・活動の性格――「中華人民共和国集会デモ示威法(中华人民共和国集会游行示威法)」の第7条第2款[*]で規定された、同愛ネットワークという企業組織がおこなう文化宣伝活動である([*]集会・デモ・示威は必ず申請して、許可をもらわなければならないが、「国家機関・政党・社会団体・企業事業組織が法律や団体の規約にもとづいて挙行する集会」は、申請する必要がないことを規定している)。
 ・参加する集団――レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびLGBTにフレンドリーな人々。
 ・活動の目的――集団で歩いて、レインボーフラッグを掲げ、スローガンを叫び、宣材をまき、署名を集め、一緒に写真を撮って、メディアで宣伝するなどの方法で、社会の各界に同性愛文化を宣伝し、大衆の理解と支持を獲得する。同時に、より多くの同志団体と個人がこの活動を通じて鼓舞されて、大陸の同志の平等な権利獲得の事業の中に飛び込み、権益を勝ち取ることを希望する。
 ・主催団体――同愛ネットワーク
 ・共催団体――悸花網、純愛社区、同志亦凡人、点Gayspot、出櫃[カミングアウト]バー、深圳交友網、淡藍網、北京LGBTセンター、成都同志、同愛網、同志権益運動、同性愛者の親と友人の会、同語グループ

向小寒さんは、最初は派出所に申請したのですが、デモはできないと言われたため、企業の形を取って街頭で差別反対の宣伝をすることを試みたということです(6)

このようにパレードをなんとか合法のものとしておこなう努力のほか、幅広く共催団体を求めて、大規模なパレードにしようとしていたこともわかります。また、上のビデオをご覧いただければわかるように、川沿いの遊歩道のようなところを行進しているので、交通の邪魔になるようなパレードでもなかったようです。

弾圧

パレードの当日、出発して2時間後、湖南大学のキャンパスに入った時、大学の指導部2人と大学の警備員4人と交通警官3人がパレードの責任者を探して、「これは許可されていないデモだ」と言いましたが、パレードの隊列を解散するようには言わず、そのままパレードは続けられました。

しかし、翌18日の午前2時半ごろ、数名の湖南大学の警備員と私服警官が、向小寒さんら5人を湖南大学の警備室に連れて行って拘留し、携帯電話も取り上げました。彼らはそのまま長沙市公安局岳麓区分局に連れて行かれて、拘留、訊問されました。弁護士がいなかったので黙秘していると、ある警官は、「あんたが何も知らないのなら、おれがあんたを殴っても、俺も知らないと言う」と言って脅したそうです。

そうして岳麓区分局が訊問記録を作ると、午前11時ごろ、彼らのうち4人は釈放されましたが、向小寒さんは、違法デモをしたという理由で12日間拘留されることになりました(7)

5月19日、長沙市公安局岳麓区分局は、「5月17日14時ごろ、向某(男、19歳、沅凌の人)は、公安機関の許可なしに、無断で80余名を組織して、岳麓区潇湘大道・桃子湖路などでデモをした。5月18日、長沙市公安局岳麓分局は、『中華人民共和国集会デモ示威法』第28条第2款第1項の規定[*]にもとづいて、向某を行政拘留12日に処した」と発表しました([*]「申請してない、または申請したがまだ許可を得ていない集会・デモ・示威」に対しては、「公安機関は、この責任者と直接責任を負う者に対して警告あるいは15日以内の拘留に処すことができる」)。(8)

李方平・藺其磊の両弁護士は、5月21日、「長沙の同性愛活動家の“小寒”が行政拘留12日に遭ったことに関する法律的意見書」を発表しました(9)(以下は、その一部の抜き書きです)。

私たちは、小寒(向某の常用名)の行政拘留不服事件の再議の申請および行政訴訟の予定の委託弁護士である。

一 小寒が組織した活動は、「集会デモ示威法」で言う厳格な意味でのデモではなく、街頭で記念日を祝い、差別反対を唱えただけである。

「中華人民共和国集会デモ示威法」第2条は、「中華人民共和国内で集会・デモ・示威をおこなう際は、みな本法を適用する。文化娯楽・スポーツ活動・正常な宗教活動・伝統的民間習俗活動には、本法を適用しない」と規定している。

私たちは、小寒が組織した「国際反ホモフォビアデー」の祝賀活動は、一種の文化娯楽および差別反対の唱導活動であると定義されなければならず、「中華人民共和国集会デモ示威法」によって規制されるべきではないと考える。

二 たとえ小寒が組織した活動がデモだとしても、このように厳しい処罰をするべきではなく、警告と教育で十分である!

わが国が1998年に署名した「市民的及び政治的権利に関する国際規約」第21条は、「平和的な集会の権利は、認められる。この権利の行使については、法律で定める制限であって国の安全若しくは公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳の保護又は他の者の権利及び自由の保護のため民主的社会において必要なもの以外のいかなる制限も課することができない」と規定している。

わが国の「集会デモ示威法」は、1989年10月31日に公布施行され、24年来ずっと改正されていない。この法律の市民の集会デモ示威の権利に対する規制は極めて厳格であり、事前に許可を要求するうえ、許可されていない活動には行政処罰を課すこともできる。わが国の公民の集会デモ示威は、許可が必要なだけでなく、許可される数がきわめて僅かである。憲法が規定している市民の集会デモ示威の権利が、「集会デモ示威法」の規制の下で、認可されることが常態ではなく特例になるとき、合法的な市民の集会デモ示威はマレなものになる。政府が、手続きが欠けている(申請していない、または許可を得られなかった)ことを理由にして、市民に対する人身の自由を奪う処罰をすることは、正義ではなく、違憲である。

もし警察がそれでも小寒に誤りがあったと主張するにしても、警告か教育をしさえすれば、それでよいのである。19歳の青年が、初めてこうした公益活動をしたことに対して、どうしてこのような厳重な処罰をする必要があろうか?

とくに警察に人道的な考慮を求めたいのは、小寒の母親は深刻な精神障害であり、小寒が彼女の世話をしているということである。警察はできるだけ早く小寒を釈放して、一日も早く母と子を一緒にしてほしい。


(1)百余同性恋街头反歧视」『潇湘晨报』2013年5月18日。大笨猪「长沙警方为何拘留同志反歧视活动的组织者?」同爱网2013年5月13日、阿强「参与长沙5.17同志骄傲活动的介绍」夫夫生活2013年5月20日。
(2)擅自组织同性恋游行 长沙19岁男子被拘留12天」新华网2013年5月20日(来源:华声在线)。
(3)百余同性恋街头反歧视」『潇湘晨报』2013年5月18日。
(4)擅自组织同性恋游行 长沙19岁男子被拘留12天」新华网2013年5月20日(华声在线)。
(5)小寒「2013年夏季大陆(长沙)同志反歧视活动策划方案」同爱网2013年4月5日。
(6)阿强「参与长沙5.17同志骄傲活动的介绍」夫夫生活2013年5月20日。
(7)以上は、大笨猪「长沙警方为何拘留同志反歧视活动的组织者?」同爱网2013年5月13日。
(8)未经许可搞游行 同性恋街头反歧视活动组织者被行拘」红网-潇湘晨报2013年5月20日。
(9)关于长沙同性恋活动人士“小寒”遭行政拘留十二天的法律意见书」同语拉拉资讯的微博5月21日17:24。
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ジェンダー平等活動グループの活動家が西部の都市を巡回講演

今年4月、ジェンダー平等活動グループ(性别平等工作组、正式名称は「ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク[性别平等倡导与行动网络]、彼女たちの活動年表と本ブログの記事へのリンク)の中心的メンバーの女性のべ8人ほどが、中国西北部と西南部の計7都市、23箇所を巡回して講演しました。昨年9月は、大学入試の男女差別に抗議して坊主頭になった女性3人が杭州・南京・上海・合肥・武漢という東部の都市を巡回しましたが、今回は西部です。

一 西北巡講

1.講演(ワークショップ)

西北巡講では、4月6日から15日まで、以下のように、西安と蘭州の6箇所で講演をしました(1)。細かな日程や内容はわかりませんが、「工作坊(ワークショップ)」という言い方もされていますので、単なる一方的な講演ではなかったのだと思います。

西安
4月6日14:00- 万邦書城
4月?日 長安大学
4月?日 陝西学前師範学院
4月?日 西安交通大学

2.蘭州
4月?日 甘粛農業大学
4月?日 西北師範大学

私が告知ポスターを見つけられたのは4月6日の西安のものだけですが、そのポスターには、「フェミニズムのジェンダー世界観」というタイトルが付けられており、「李麦子」「武嶸嶸」「熊婧」の3人のお名前と「女権の声」(NGOの「女性メディアウォッチネットワーク」の微博名)、「北京益仁平センター」(さまざまな差別に反対しているNGO)、「ジェンダー平等活動グループ」という3つの団体名が書かれています。現地の主催団体としては、「西安relax同学社」(レズビアンの人権団体)と「万邦書城」が書かれています(2)

ただし、「西安relax同学社」のブログには、「ゲスト」として、上の3人に加えて、鄭熹さんのお名前を加えた4人が、以下のように紹介付きで書かれていますの(3)

【李麦子】北京益仁平センター反性差別プロジェクト職員、男子トイレ占拠アクション発起人。
【熊婧】新浪名博「@女権の声」編集者、多くの性差別反対アクションに参加。
【鄭熹】ジェンダー平等活動グループ副主席、「公務員婦人科検査事件」(公務員の採用の際、女性に対して人権侵害的な婦人科の検査が課されていることに反対するアクション)に参加し、公共部門の性差別に反対したことあり。
【武嶸嶸】ソーシャルワーカー。NGO分野とソーシャルワークの経験7年。女性運動家。青翼ソーシャルワークネット(青翼社工网)顧問。

李麦子さんによると、4月6日の講座には、男性も5、6人来ていたが、中には「男は理性で思考する動物で、女は感性で思考する動物だ。男は右脳が発達し、女は左脳が発達している。男が不妊手術をするとおかまになる」などと言う人もいたけれども、現場の聴衆が一つ一つ反論して、自分たちは必要なかった――といったこともあったそうです(4)

2.パフォーマンスアート

その途中で、彼女たちは、以下の3つのパフォーマンスアートにもかかわりました。

[1]「女性に対する侮辱的な呼称に反対する」

4月8日の午後、西安の鐘楼の近くで、3人の若い女性が「美少女戦士セーラームーン[中国語名:美少女战士]」の扮装をして、一人の「戦士」が、「あなたの緑茶ではなく、あなたの婊(売春婦、バイタ、bitch)でもない」というプラカードを掲げ、もう一人の「戦士」は、セーラームーンの魔法のスティックを手に持って、三人目の「戦士」が掲げている、女性に対するさまざまな蔑称が書かれたプラカードに向けて、それを突き付けるパフォーマンスアートをしました。彼女たちがセーラームーンの扮装をした理由は、「正義」の化身であることを示すためでした。

彼女たちがこのパフォーマンスアートをしたのは、海南省の三亜で開催された「海天盛宴」というクルーザー・ビジネスジェットの見本市のパーティーに多くの若いモデルや美女が登場して、そこで乱交がおこなわれたという疑いも出たのですが、インターネット上で、彼女たちに対して「緑茶婊(green tea bitch)」(清純そうに見える売女)などの女性に対する蔑称が投げかけられたことがきっかけだったようです(5)

この活動の発起人の猪西西さんは、「インターネット上では、さまざまな女性を辱め罵る新しい言葉がずっと流行しています。たとえば、朝陽婊[成金を漁り歩くモデルや俳優]、外囲女[モデルや俳優をしている私娼]、黒木耳[性関係が乱れていて性器が黒い女子学生]、拝金女、剰女[適齢期を過ぎても独身の女性]などです。これらの言葉は、女性の生殖器を嘲笑の対象にしたり、性生活に対する憶測を、女性を辱め罵る理由にしたりしています」と言います。猪西西さんは、女性は保守的であろうが、開放的であろうが、同じように尊重されなければならず、性道徳を女性を侮辱する口実にしてはならないと述べ、「『婊(bitch)』であろうが、『婊(bitch)』でなかろうが、尊重されなければなりません」と語りました(6)

[2]「東方不敗が招聘会に登場して、企業に雇用の平等を要求する」

4月10日、西安の人材市場の前で、2人の女性が、「東方不敗」(金庸の武俠小説『笑傲江湖』に登場する武芸の達人。禁断の奥義『葵花法典』を会得し最強となるために、自ら去勢して男とも女ともつかぬ怪人になった)の扮装をして、就職の性差別に反対するパフォーマンスアートをしました。2人の女性は、「東方不敗」がタイムトラベルしたという設定の下、それぞれ、「武術が優れてさえいれば、性別は重要ではない」、「天下の風雲に女輩出づ、性別にこだわらずに人材を選べ」と書かれたプラカードを掲げて、自らの訴えをアピールしました。

この活動の発起人の李麦子さんは、「東方不敗は、男のようでも女のようでもあるが、武術にすぐれていた。私たちは、東方不敗の姿を借りて、企業に採用時に性差別をしないように訴えている」と述べました(7)

[3]「蘭州のレズビアンが結婚して、アイスランドの首相が夫人を伴って訪中したことを歓迎する」

4月15日の午前10時、蘭州の小西湖公園の中で、朱西西さんと小雨さんという2人のレズビアンが結婚式をおこないました。彼女たちは、ウェディングドレスを身にまとって、抱き合ったり、キスしたりしつつ、「女が女を愛する レズビアンは祝福を求める」と書いたプラカードを掲げて、通行人にお互いの愛をアピールしました。2人は、「結婚立会人」の李麦子さんの前で、指輪の交換をして、結婚式を挙げました。このパフォーマンスアートは、レズビアンであるアイスランドのヨハンナ・シグルザルドッティル首相が、同日から結婚相手を連れて訪中したことに合わせたものです(8)

李麦子さんは、教会には入れてもらえないと思っていたそうですが、入口にいたおじさんが自ら招き入れてくれて、十字架の前で儀式ができたとのことです(9)

3.蘭州にもフェミニズムレズビアングループが設立される

5月12日、「一か月近い計画と準備」の末に、「蘭州桜桃フェミニズムレズビアングループ」の設立が、同グループの微博(兰州樱桃小组的微博)で発表されました。同グループは、「蘭州とその周辺地区の女性(セクシュアル・マイノリティの女性を含む)の権益に関心を持ち、文化教育と政策唱導に重点を置く」とのことで、「ジェンダー平等と多元的ジェンダーの構築に力を尽くす」と述べています。「桜桃(さくらんぽ)」という名前は、Jeanette WintersonのSexing the Cherry(邦訳:ジャネット ウィンターソン著 岸本佐知子訳『さくらんぼの性は』白水社 1997年)から取ったもので、さくらんぼには元々は性別がないことから来ているそうです。

このグループは、もちろん地元の女性たちの手によって設立されたのですが、李麦子さんも、4月16日に蘭州のフェミニストとフェミニズム活動の展開について詳しく検討し、翌17日には、巡講で余った物資を渡したりしていますので(10)、いくらかの役割を果たしているように思います。

二 西南巡講

西南巡講では、4月10日~24日の間に、成都・重慶・南寧・桂林の4都市の17会場で講演をしました。合計619人が参加したとのことです。

西南巡講については、性別平等網のサイトで、その目標や講座の内容について、以下のように簡潔にまとめられています。

全体的目標
 ジェンダー視点を普及し、ジェンダー平等意識と市民社会の行動意識を普及し、ジェンダー平等のために行動する者の隊列を拡大する。

毎回の講座の内容
 ・最初に、身近なジェンダー現象を切り口にして、ジェンダー概念と国際条約の差別に関する概念の話をする。
 ・次に、一つのテーマ、たとえば女子大学生の就職難というテーマで、社会的なステロタイプなイメージがどのように女性が仕事を見つけることに影響しているかを話す。
 ・最後に、若いフェミニスト行動派のアクションを紹介しつつ、なぜ大学生が社会的行動という方法で市民社会の建設に参与すべきかを説明する。

1.成都
 1) 4月10日夕方 西南交通大学
 2) 4月11日夕方 成都西西弗書店春煕店
 3) 4月12日午後 morning早上好音楽現場
 4) 4月12日19:00- 西南民族大学

2.重慶
 1) 4月13日14:30-17:00 磁器口 聚森茂創意街 横街16号音楽倶楽部
 2) 4月14日午後 重慶大学城 熙街花生珈琲庁

3.南寧
 1) 4月17日夕方 広西大学
 2) 4月18日午前 広西民族大学
 3) 4月18日午後 広西民族大学
 4) 4月18日夕方 広西経済管理幹部学院
 5) 4月19日午後 広西師範学院
 6) 4月19日午後 広西医科大学
 7) 4月20日夕方 広西大学
 8) 4月21日午後 南寧書巣書店

4.桂林
 1) 4月22日夕方 広西師範大学
 2) 4月23日夕方 広西師範大学
 3) 4月24日夕方 広西師範大学(11)

西南巡講については、ポスターが見つけられたのは、4月12日と13日と14日のものだけですが、他にも、「@女権行動派很好吃」の微博(女权行动派很好吃)でいくつか報告されています。

それらを見ると、成都と重慶で講演をしたのは、鄭楚然さん、肖美腻さん、李双双さんの3人のようです。4月13日午後のイベントでは、その3人は、以下のように紹介されています(12)

【鄭大兔(楚然) 】フェミニズムクィア、NGO職員、パフォーマンスアート常習犯、広州sinner-Bフェミニズムレズビアングループ発起人。
 2012年に仲間と男子トイレ占拠を発起したり、500強CEOに手紙を出して性差別をストップするよう訴えたり、267の企業の性差別を通報するなどのフェミニズム運動をおこなう。仲間たちとSinner-Bフェミニズムレズビアングループを発起し、フェミニズム運動とレズビアンの平等な権利運動とが結びついて、家父長制社会を転覆する革命をすすめることを願っている。

【李双双】温和なフェミニストを自認しているけれども、温和とラディカルとが相互に転換してこそ、よりよい変革が可能になると信じている。
 各地の男子トイレ占拠、花木蘭が職場にタイムトラベル、女性が就職の障害のドアを越える、大学入試の性差別に反対して焼き芋を作るなどのアクションを画策、参加。2012年10月に杭州FM非密ジェンダー平等アクショングループの設立を発起、杭州国際マラソンの賞金の性差別の「同走同賞」アクションに参与・唱導、2012年12月1日のTEDxXīHúWomen活動を計画、女性のパワーに関心を注ぐ。

【肖美腻】清新な芸術の愛好者、恐るべきフェミニスト、奇怪な古着屋の経営者
 参与・計画したもの:「血染めウェディングドレスで親密な関係の暴力に反対」、「男子トイレ占拠」、「大学入試の合格ラインが女は高く男は低いことに対して、坊主頭になって教育部に抗議」「裸の胸でDV防止法を促す1万人署名」などの恐るべきパフォーマンスアート。フェミニズムと芸術の道を遠くまで歩んで行き、フェミニズム思想が常識になるまで広げたい。

ただし、「@女权行动派很好吃」の微博で見るかぎり、南寧と桂林の講演で話をしているのは、鄭楚然さんのほかは、梁小門さんであり、肖美腻さんや李双双さんは登場しなくなります。

微博で話の内容が比較的詳しくわかるのは、鄭楚然さんの広西民族大学での講演です。それを見ると、鄭さんは、「話すだけで、やらないのは物足りない――思考者から行動者へ」というテーマで話をしています。鄭さんは、「ジェンダーに関する学術研究は多いけれども、私の家の下で油条を売っているおじさんや砂遊びをしている子どもたちにそれがわかるのか? と思って、歌を歌ったり踊りを踊ったり、叫びを上げたりしているのだ」と言います。

鄭さんは、女子学生のパフォーマンスアートが、メディアや専門の学者とも協力することによって、就職の性差別やトイレの問題、女性の教育権について、ドミノ倒しのように、ゆっくりとした変化を作り出してきたことを語りました。たとえば、現在、「智聯招聘ネット」という求人サイトは、性差別的な条件を掲載することは止めるように求人側に強く言っているが、半年前には「男性のみ」という条件を検索すると、十万にのぼる結果が出てきた、なぜこのような変化が起きたのか? それは私たちが通報したからだ、と語りました(13)

主催者を見ると、4月13日の講座は、「不一社」という青年グループが主催し、4月14日のものは、「重慶milk公益小組」というLGBTグループが主催しています。また、広西省(南寧、桂林)では、「広西(省の)大学ジェンダーグループ」の先生方の大きな手助けを得たことによって、多くの大学の中で開催できたために、成果が上がったとのことです。彼女たちは、「大学の先生はときに主流の学術体系に偏るけれども、彼女たちは、必ず私たちが同盟を結ぶべきしっかりした仲間である」と評価しています。

西南巡講の成果としては、以下のようなことが挙げられています。
・ふだんニュースやインターネット上で私たちの行動に接している人々と交流することによって、仲間が増えた。
・四川・重慶・桂林・南寧などの地にもフェミニストが少なくないこと、既に自発的に活動や行動をしている人もいることを発見した。現地の人からはフェミニズムと社会的行動についての研修をしてほしいという希望も出た。
・重慶と桂林では、現地のフェミニズムグループの設立を促進した(14)

三 そのほか私が注目したこと

このように、西北・西南巡講では、合計23カ所で講演をおこなって、さまざまな成果をおさめたわけですが、そのほかに、私は以下のような点にも注目しました。

[1]若い女性だけで、自らの活動経験を生かした講演をおこなっている

日本の場合は、ふつう、ジェンダーに関する講演会は、有名な(または特定分野では第一人者である)研究者か評論家がしていると思います。たとえ活動家が講演する場合であっても、経験を積まれた、比較的お年を召した方がなさるのが普通でしょう。

しかし、今回の西北・西南巡講では、20代の女性だけで各地を回っています。そのことは、中国でのフェミニズム運動(狭い意味での運動)の歴史の浅さを示している面もあると思いますが、鄭楚然さんの話からもわかるように、この1年余りの活動経験が大きな力になっているように思います。

[2]有給の職員としての彼女たち

彼女たちは、居住地から離れて、1~2週間も講演をしています。これは、普通の会社員や公務員にできることではないでしょう。先述のように、西安relax同学社のブログでは、李麦子さんの肩書は、「北京益仁平センター反性差別プロジェクト職員」となっていましたし、google groupの「ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク(GEAAN)」のフォーラムを見ても、李麦子さん、武嶸嶸さんは、鄭楚然さん、梁小門さんは、NGOの有給の職員として、自らの活動を報告しています(有給の場合は、フォーラムで報告しないといけないようです。李さんと武さんはフルタイム、鄭さんと梁さんはパートタイム職員のようです)(15)

その意味では、有給であることがプラスになっているように思います。この点については、国外の団体からの資金援助があることが力になっているようです(中国の多くのNGOが国外からの援助を得ていますし、そうせざるをえない社会的条件にある)。

[3]ジェンダー平等活動グループのパフォーマンスアートにも、セクシュアル・マイノリティの視点が登場?

私は、以前、ジェンダー平等活動グループの活動の特徴として、「レズビアンをはじめとしたセクマイの運動に携わっている人が多い」けれども、「彼女たちのネットワークのアクション自体の中ではレズビアンやセクマイの問題はあまり取り上げられていない」と述べました(本ブログの記事「若い行動派フェミニストたちのネットワークの幾つかの特徴」)。

しかし、今回の西北巡講の過程でおこなわれたパフォーマンスアートでは、セクシュアル・マイノリティがパフォーマンスアートの中にも登場しました。

すなわち、4月10日に西安でおこなわれた「東方不敗が招聘会に登場して、企業に雇用の平等を要求する」パフォーマンスアートは、「男でも女でもない」東方不敗の扮装でおこなわれました。パフォーマンスアートのテーマ自体は、セクマイ特有の問題を押し出してはいませんが、2012年4~5月に各地で就職の女性差別反対のパフォーマンスアートがおこなわれた際には、女性である花木蘭の扮装が使われたのとは、異なっています。

また、4月15日におこなわれた「蘭州のレズビアンが結婚して、アイスランドの首相が夫人を伴って訪中することを歓迎する」は、直接同性愛者の結婚がテーマになっています。レズビアンの結婚式(のパフォーマンス)自体は従来から何度もおこなわれてきましたが、「ジェンダー平等活動グループ」の活動としてレズビアンの結婚式がおこなわれたのは、今回が初めてだと思います。

いずれのパフォーマンスアートも、全国的な取り組みではなく、それぞれ3人がおこなったものにすぎませんが、「ジェンダー平等活動グループ」の活動のスタイルの変化の兆しである可能性もないとは言えないと思います。

(1)女权主义行动派西北巡讲」性别平等网2013年5月9日。
(2)女权之声微博2013年4月1日。
(3)RELAX活动公告――西安RELAX同学社&万邦书城 女权主义的性别世界观」西安RELAX同学社ブログ2013年3月28日。
(4)麦子家的微博2013年4月7日。
(5)西安女青年街头呼吁停止“绿茶婊”等语言暴力」华商网2013年4月9日(来源:三秦都市报)、@女权行动派很好吃的微博2013年4月8日。この見本市自体については、「水着美女とバカンス…海南省でクルーザー・ビジネスジェット見本市」(新華社日本語版2013年4月6日)というふうに、ネット上でも日本語で報道されています。沈睿(在米学者)も、女性差別的な言葉やミソジニーについて意見を発表しており(「脏词、厌女症与女人的呐喊」网易女人2013年4月6日)、柯倩婷(中山大学ジェンダー教育フォーラム)は、若い行動派から、女性差別的語彙に対する抗議について意見を求められて、「私は緑茶婊だ」と言ったりしています(「人人都是绿茶婊」林中女巫2013年4月8日)。
(6)女权行动派很好吃的微博2013年4月8日。
(7)以上は、「大学生穿越求职 西安招聘会场现“东方不败”」华商网2013年4月11日(来源:三秦都市报)。
(8)兰州两女同志穿婚纱公园结婚求祝福 欢迎冰岛女总理偕夫人访华」社会性别与发展在中国2013年4月15日、「兰州两位女同性恋者穿婚纱“举办婚礼”」凤凰网2013年4月16日(来源:兰州晨报)。なお、4月17日には、広州でも、シグルザルドッティル首相の訪中を歓迎して、路上でレズビアンの結婚式がおこなわれました(「广州女同志穿婚纱北京路结婚行礼求祝福 欢迎冰岛女总理偕夫人访华」社会性别与发展在中国2013年4月17日、「一对女“同志”街头“结婚”求祝福」『羊城晩報』2013年4月18日)。中国中央テレビ局も、シグルザルドッティル首相とそのパートナーが李克強首相の歓迎を受ける場面を放送したとのことですが(「アイスランド首相カップル訪中で中国の同性愛者に希望―英メディア」レコードチャイナ2013年4月19日) 、その一方、同局の報道のタイトルが、通常の外国元首の訪中のときは「××首相が夫人(夫)を伴って訪中した」となるのに、今回は配偶者に触れておらず、このことは外交上の礼儀を非常に失しているとの指摘も出ています(「广州女同志穿婚纱北京路结婚行礼求祝福 欢迎冰岛女总理偕夫人访华」社会性别与发展在中国2013年4月17日)。
(9)麦子家的微博2013年4月15日。
(10)「2013年4月15―4月21日工作纪录―,麦子」google groupGEAAN2013年4月22日。
(11)以上については、「女权主义行动派西南巡讲」性别平等网2013年5月13日。
(12)"权利与特权:女性主义的性别世界观"不一公益沙龙 」豆瓣同城。
(13)以上については、@女权行动派很好吃的微博2013年4月18日、4月19日、4月21日。
(14)以上については、「女权主义行动派西南巡讲」性别平等网2013年5月13日。
(15)「请回复本邮件:全职,兼职工作人员发送周工作纪录和月工作纪录」google groupGEAAN2013年2月6日、「李麦子和武嵘嵘上周工作纪录」google groupGEAAN2013年3月29日、「兼职人员3月工作纪录――小门」google groupGEAAN2013年4月26日、「2013年4月15―4月21日工作纪录―,麦子」google groupGEAAN2013年4月22日。
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2012年における反日デモ、日本軍の性暴力問題と中国のフェミニスト

2012年は、中国で史上最大の反日デモがおこなわれた年であるが、同時に若い女性を中心とした行動派フェミニストが活動を開始した年でもあった。彼女たちは、反日デモをどう見たのだろうか? 旧日本軍の性暴力問題に関してはどう対応しただろうか?

ここでは、昨年来このブログで取り上げてきた「ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク」(2012年1月結成。年表および本ブログ記事へのリンク)の女性たち(若い女子大学生やNGO活動家と、彼女たちに助言などをする年上のNGO関係者ら)を中心に見てみたい。私が見たのは、同ネットワークのメンバー(その名簿はネット上でも見ることはできるが、個人情報が含まれているのでここでリンクを示すのは遠慮したい。また、名簿には本名が示されていない人も多く、個人が特定できない場合が多い)と微博(中国版ツイッター、ミニ[マイクロ]ブログ)上で彼女たちと密接な交流があるフェミニスト(多くの人の本名が不明である以上、この中にもメンバーが多く含まれていると考えられる)である。「@」が付いているのは、微博上の名であり、他も必ずしも本名を示していない。カッコ内の数字は、その微博が発信された日付で、2012年の場合は「2012」を省略している。

目次
一 「反日デモ」と中国のフェミニスト
 1.「女としては、私には祖国はない」(ヴァージニア・ウルフ)
 2.さまざまな反日デモ批判――「愛国」という発想自体に対する批判も
 3.女性の権利のために闘わない全国婦連が領土問題で中国女性を代表する声明を出したことへの反発
二 日本軍の戦時性暴力問題と中国のフェミニスト
 1.広州での日本軍性暴力パネル展(2011年12月―2012年1月)をめぐって
 2.1日で中止させられた南京での日本軍性暴力パネル展(2012年11月)――ここでも「女には祖国なし」の声
 3.日本軍性暴力パネル展に関する日本でのシンポジウム(2012年11月)に対する反応
おわりに

一 「反日デモ」と中国のフェミニスト

1.「女としては、私には祖国はない」(ヴァージニア・ウルフ)

2012年、ナショナリズムの高まりに対して、少なくないフェミニストがヴァージニア・ウルフの「女には祖国はない」という趣旨のフレーズを口にした。

まず、尖閣諸島(釣魚島)で日台の巡視船が接触する(7月4日)など国際的緊張が高まりつつあった7月5日、「女権の声」(NGOの女性メディアウオッチネットワークの微博)は、ヴァージニア・ウルフの以下の言葉を注釈なしで発信した。

女としては、私には祖国はない。女として、私には祖国はいらない。女としては、私の祖国は全世界だ。――ヴァージニア・ウルフ『三ギニー』(1)


以後、この言葉は総じて当時のナショナリズム(「愛国」「反日」)の高まりに反対する言葉として繰り返し発せられることになるが、ナショナリズムに対する批判は、具体的には、以下の【1】~【3】に対する批判をテコにして語られている。

【1】女性を差別する国家に対する批判

香港の活動家が尖閣に上陸して(8月15日)、反日デモが起きた前日の8月17日には、李思磐さん(ジャーナリスト)が微博で以下の発信をした。

わからない島のことは話さない。大学が男子学生が4、50点低くても合格させるかぎり[一部大学の一部専攻が、男女で合格ラインを差別し、それを教育部が承認していることを指している]、採用が男性優先であるかぎり(……)子宮が婚家と国家が綱引きする戦場であるかぎり、「女としては、私には祖国はない。女としては、私には祖国はいらない。女としては、私の祖国は全世界である」――ヴァージニア・ウルフ『三ギニー』


その後も、@流浪的清風在路上さんは、大学入試の合格ラインの男女差別問題をめぐって、「女に祖国なし」と述べている(9.11)。また、朱雪琴さん(@千千和风v)もジェンダーと天下国家との関係の議論する際の「最初の言葉は、『女に国なし』だ」と言っている(9.22)。

【2】反日デモの中の、日本女性に対する(性)暴力を唱えるスローガンに対する批判

大学を卒業したばかりのNGO活動家の李麦子(@麦子家)さんは、8月20日、以下の発信をした。

【女権なくして、どうして人権があろうか。人権なくして、どうして主権があろうか?】今日パソコンを見たら、抗日デモの中に、『日本の女房を嫁にして、家で毎日吊るして殴る』『小日本よ、おまえの母親を犯してやる』といった類のジェンダー暴力の言語が多く見られた。これは、なぜ私がこの予め計画されたmovementに興味がないかという理由の一つでもある。たとえ私たちが戦争の最中であっても、私たちはジェンダー暴力に警戒しなければならない。女権なくして人権なし。


「女権の声」も、同日、以下のような発信をした。

【反日デモの暴力的スローガン】「日本の女房を嫁にして、家で毎日吊るして殴る」「小日本よ、おまえの母親を犯してやる」……これは最近杭州・深圳などの都市の反日デモの中で出現したスローガンである。ジェンダー暴力をよしとする「愛国」は、人に軽蔑される。李思磐が言ったように、「大学が男子学生が4、50点低くても合格させるかぎり、採用が男性優先であるかぎり……『女としては、私には祖国はない』」


さらに、「女性メディアウォッチネットワーク」のネット誌『女声』は、上の発信や李思磐さんの発信などを引用しつつ、より詳しい記事を掲載した(2)

8月20日には、他のフェミニストも、上の「女権の声」の発信を転送して、ジェンダー暴力を口々に批判した。呂頻さん(女性メディアウォッチネットワーク代表)は「これは、悪質なジェンダー暴力のぶちまけである。あなたがたの思想と言語は、なんと偏狭で、なんと想像力がないのか。女をいじめることでしか、自分の力を示すことができないのか?!」と述べ、大学を卒業したばかりのフリーターの鄭楚然(@大兔紙啦啦啦)さんは「男権主義者はかくも頭が弱い」と言い、@二猫帰来さんは、「男権分子と五毛[インターネットに政府に有利な論評を書きこむスタッフ]と熱狂的民族分子は往々にして同一の馬鹿者だ」と述べた。また、鄭楚然さんは、「女としては、私の祖国は全世界だ」(8.24)、武嶸嶸(@小社工大社会)さんは、「女として、祖国はない」(9.8)と、ウルフの言葉を使ったコメントをした。

【3】女性を領土と同様に男性の所有物視するパフォーマンスに対する批判として

9月になると「反日デモ」はさらに広がったが、その中で、女性を男性の所有物視するパフォーマンスがあった。すなわち、ある新郎が、「釣魚島は中国のもの、女房は俺のもの」という旗を掲げた荷車に新婦を載せて引っ張っている写真が微博に掲載されたのである。

それに対して、@猪川猫二餅さん(男)が「妻を夫に従属させ、女性を男性に従属させて、女性をモノ化するものだ――みなさんもツッコもうと思いませんか?」と述べ、それを「女権の声」が紹介した(9.17)。

それに対して、@西風独自青さんは「ツッコミ:また女性の身体を国土の領域になぞらえる話だ。もし私が新婦の側だったら、絶対に新郎にソーダ水を吹きかけてやる」と述べ、柯倩婷さん(中山大学副教授、中山大学ジェンダー教育フォーラム代表)も「男と女をちょっと入れ替えてみなさい」と言い、日本在住の@原始女性是太陽さんは、「このたびの釣魚島事件を口実にして、女性の権益を侵犯する事件が多い。中国のフェミニズム運動はいつになったらこの点を大きな声で主張するのか」と、いら立ちを表明した(すべて9.17)。

9月15日には、@cooLululuさんが以下のように指摘している。

【釣魚台・愛国・蒼井そら】「暴力的愛国主義」の下では、女性も釣魚台も、旗が立てられる「領土」になる。感情主導の「愛国」は、恨みと屈辱の歴史の集団的注入にもとづいており、それにジェンダー暴力の文化が加わって、個人の卑劣なジェンダー暴力に「愛国」の美名をまとわせ、愛国の暴徒は、外来の若い女性を公然といじめ/征服することを想像して、自ら喜んでいる。反日の波の中のジェンダー暴力の言論に注意するように皆にお願いする


この指摘を、李思磐、@流浪的清風在路上、@我形象好気質佳、@西風独自青、@宝貝羅2011 @寒芙将軍などがリツイートした。

女性以外の者にも「祖国はない」との発言

李思磐さんの「女に祖国なし」という発信に対しては、女性以外の者にも「祖国はない(いらない)」というコメントがなされている。

すなわち、李思磐の発信に対して、@富士康工人([連続自殺事件などで劣悪な労働条件が問題になった]フォックスコンの労働者)アカウントは「私には祖国はいらない、プロレタリアートとしては、祖国はいらない!」(8.17)とコメントした。それを受けて、李思磐さんも「労働者に祖国なし」と述べた。また、@灰塵AshWang(トランスジェンダー、FtM)は、「この祖国は誰の祖国なのか? 女にだけ祖国はないのか?」(8.21)と述べた。

「女に祖国なし」という発言を、「安全」面から心配する声も寄せられたが……

当時、『女声』に対して、ある人から、「安全のため、今はできれば『フェミニストに祖国なし』とか『プロレタリアに祖国なし』とかは、たとえ正しくても言うべきではない」と忠告する私信が寄せられたとのことだ(二猫归来9.16)。「反日デモ」が荒れ狂う中では、上で見たような発信は多少なりとも勇気なしにはできなかったのだろう。

2.さまざまな反日デモ批判――「愛国」という発想自体に対する批判も

私が見たかぎり、フェミニストの微博には、部分的にであれ反日デモを評価する意見はまったくなく、デモを批判する意見ばかりである。

たとえば、李麦子さんは、9月15日、次のように述べた。

私は今日起きた反日の大行動に対して反感を持っている。私は起きないことを望んでいたのに、相変わらず起きたからだ。政府のために民意を利用して、私たち中国市民をほしいままに踏みにじっている。こうした愛国賊たちは、本当にかわいそうだと私は思う。なぜなら、彼らは人としての最低ラインを失っているからだ。


また、@李双双さんは、「盲目的愛国・極端な民族主義・暴騰する愚か者をボイコットしよう!」(9.16)と述べた。

また、ある人が、反日デモの破壊行為に対する批判を込めて、ナチスドイツの下でのクリスタル・ナハト(ユダヤ人の商店、住宅などへの襲撃事件) についての歴史記述を発信したが、@西風独自青さんは、「私は、彼らがこうしたことをした時も、きっと自分は正義の愛国者だと思っていたと信じる」 (9.15)と語っている。

はっきりと「愛国」という発想自体などを批判するメッセージも

中国政府も、反日デモが暴徒化したことに対しては、「暴力による愛国ではなく、理性的な愛国を」と呼びかけて、反日デモの収束を図った(3)

しかし、そうした中国政府の対応にはまったく収まらない発信もなされている。

たとえば、大学を卒業したばかりの肖美腻さんは、9月16日に次のように発信した。

ある人は「真の愛国」を「偽の愛国」と区別して、暴徒の政治との関係を棚上げにし、きれいごとを言おうとしているが、こうしたやり方は、「愛国主義」に対する省察と解剖を回避している(……)愛国の華麗な外套を引き裂いて、若い人にその動物的な感情を見極めさせ、真理と自由と正義を追求させてこそ、暴徒の政治はストップする


柯倩婷さんも肖美腻さんのこの発言をリツイートしている(9.16)。

また、@言Adaさんは、9月14日、著名ブロガーである連岳さん(男)の一連の発信をリツイートしている。連岳さんの発言は、「愛国主義は政府が許可した高級なマルチ商法、ペテン師が始め、愚か者が受け取る。愚か者は犠牲になり、ペテン師が利益を得る」、「人権は主権よりも大きい。ゆえに個人は国を愛さない権利を持つ」など、愛国主義(「理性的愛国主義」を含む)そのものを批判したものである。連岳さんの発言については、古畑康雄「ネット用語から読み解く中国 (25)『愛国主義』 」(東方書店「中国・本の情報館」)、「荒れる中国、中華芸能にも波紋」(東京倶樂部2012.9.17)でも紹介されており、当時の中国でもある程度共感を得た。

また、范坡坡(クィア映画祭など、性的マイノリティの映画活動に携わっている男性。大学入試の男女差別に抗議して坊主頭になるなど、女性たちの運動にも共鳴している)は、9月17日に以下のように発信した。

中国人、日本人、台湾人……釣魚島は、人に属さないといけないかのようだ! 世界のどんな小さな土地も国家・人が所有しなければならないのか? あなたがイルカに尋ねて、イルカが同意したのか? 太平洋の鳥が同意したのか? ヒマラヤ山のサルが同意したのか? アフリカの草原の象が同意したのか? 早く土地を動物に返そう、大自然に返そう、罪なことをするな!


この発言は、フェミニストの李思磐、@cooLululu、@想起的花開、@灰塵AshWangもリツイートしている。

これらは、領土問題そのもの、国境そのものを相対化する視点と言えよう。

もっとも、フェミニストにも、尖閣諸島(釣魚島)を日本領だと言っている人は皆無である。これは、多くの人は中国領であることを当然の前提にしているとも読める。しかし、前置きとしてであれ「中国領だ」ということを確認している人も見当たらないし(上記のように、李思磐さんは「わからない」と言っていた)、尖閣をめぐる攻防戦について関心を示している人も見当たらないので、なにか領土紛争そのものに関心がない(薄い)感じを受ける。また、@junglesheepさんは、「釣魚島ロジック(钓鱼岛逻辑)」という、日中台それぞれの釣魚島領有のロジックを示した漫画を転載しており(9.12)、これは范坡坡らとは違った形で、中国領であるという主張自体を相対化していると言えよう。

日本人に対して――民族差別になるなどの指摘も

日本人に対する暴力的なスローガンに対する批判はもちろん、「小日本」という差別語への批判(寒芙将军9.19)もあるし、「私は日本が好きだ」、「私は日本製品をいつも使う。日本製品は少し高いが、質は良い」(宝貝羅9.15)と言っている女性もいる。日本に対する理解が「武士道・軍国主義」など、「1945年以前にとどまっている」という指摘もリツイートされている(李思磐、寒芙将軍9.16)

さらに、@灰塵AshWangさんは、反日デモが民族差別につながる危惧を述べている。

いま中国にいる日本人はなんと惨めであろう。一日中恐怖の中で生活し、外に出ることもできない。数年毎にこうなるのは、あまりに悲劇だ。国を挙げて排日をするのは、民族差別ではないのか?(9.14) (4)


かなり多くの民族主義者が自分の民族は他の民族よりもすぐれていると信じている。これは、他民族に対する赤裸々な差別視である(9.17)


2012年の中国の反日デモに対しては、中国国内でも批判が少なくなかったことはすでに多くの方々が紹介しておられる(そのほか、そもそも反日デモに参加したのはごく一部であったことや、上から組織された「官制デモ」という面があったことなども指摘されている)(5)

そうした中でも、以上で見たように、フェミニストたちの発信は、女性に対する差別や支配、暴力を批判する視点からナショナリズムを批判している点で独自性があると言える。また、単に「暴力はいけない」というような批判は少なく、「愛国」自体を批判するなど、わりあいラディカルな批判であるように思われる(この点は、他の思想的立場の人の反日デモ批判と比較してみなければ確かなことは言えないが)。

3.女性の権利のために闘わない全国婦連が領土問題で中国女性を代表する声明を出したことへの反発

9月13日、中国共産党の指導の下にある、いわば「官制」の女性団体である「中華全国婦女連合会」は、次のような声明を出した。

日本政府が釣魚島とその付属島嶼を「購入」したことを宣言したことは、中国人民の感情をはなはだしく傷つけ、両国の関係を損なった。中国の女性は、日本政府が「島を購入する」やり口に断固として反対し、いかなる国家であれ、中国の神聖な領土に手を出すことを絶対に容認しない


それに対して、@西風独自青さんは、次のように述べた(9.15)。

婦連はむかつく。DVには何もやらず、就職の性差別には何もせず、「剰女」(年をとっているのに結婚しない女性に対する蔑称)という世論には何もやらず、男女の定年の平等には何もやらず、「幼女買春罪」(幼女に対する買春を強姦より軽く罰する法律)には何もやらずに、いま、厚かましくも、なんと全国の女性を代表するとは?


@二猫帰来さんも、次のように述べる(9.16)。

ものを言うべき時には、見あたらず、こういう時にしゃしゃり出てくる。むかつく。一人の中国の女性として、全国婦連はけっして私を代表しない。


@我形象好気質佳さんも「私を代表するな」(9.19)と述べている。

こうした全国婦連に対する反発は、大きく見れば、の【1】で見た、国家による性差別に反対する視点からのナショナリズム批判の一種だと言えるように思う。

二 日本軍の戦時性暴力問題と中国のフェミニスト

日中戦争中、日本軍は中国の女性に対して、筆舌に尽くし難いさまざまな性暴力を加えたが、その被害に遭った女性たちは、その後も長い間沈黙を余儀なくされてきた。性暴力の被害は自らの恥、家族の恥、村の恥、民族の恥だと思われてきたからだ。しかし、1992年に万愛花さんが東京の日本軍「慰安婦」問題の国際公聴会で初めて自らの性暴力被害を訴えた。その後も、自らの被害を訴え、自らの尊厳を回復しようとする女性が現れ、裁判を含めたさまざまな運動がおこなわれてきた(6)

1.広州での日本軍性暴力パネル展(2011年12月―2012年1月)をめぐって

2011年12月28日~2012年1月10日、広州で、日本と中国の民間女性団体が共同で「大娘(ダーニャン、おばあさんへの敬称)たちの戦争:第二次大戦中の日本軍性暴力パネル展」をおこなった。

この日中の団体の共催による日本軍性暴力パネル展は、中国でそれまでに以下の3回おこなわれていた(名称は、中国での名称)。
○2009年11月~2011年2月 山西省武郷県 八路軍太行記念館 「第二次大戦中の日本軍の女性に対する犯罪パネル展」
○2011年8月~12月 北京 中国人民抗日戦争記念館 「日本人の反省――第二次大戦中の女性に対する日本軍の犯罪パネル展」
○2011年10~2012年2月 西安 陝西師範大学婦女文化博物館 「大娘たちの戦争――第二次大戦中の女性に対する日本軍の侵害パネル展」

このパネル展は、「多くの中国人、特に若い世代が、パネル展を通して女性たちの被害事実への理解と闘った女性への敬意を深めるならば、それは必ず社会の中で被害女性たちの尊厳を守る力、生きやすい環境を作る力になるに違いない」(石田米子)という思いから始まった(7)

広州のパネル展は、西安に続いて中国のフェミニストと共同で開催された(8)

また、広州では、初めて日本側の主催者が使った「性暴力」という用語を中国でも使った。

また、広州では、日本側の主催者は「日本軍性暴力パネル展実行委員会」(*)であるが、中国側は、「中山大学ジェンダー教育フォーラム」「広州ニューメディア女性ネットワーク」「広東地区女性/ジェンダー学学科発展ネットワーク」という3つの民間女性団体であった。このように中国側の主催者も民間女性団体であったのも、広州が初めてだった。池田恵理子さん(「女たちの戦争と平和資料館」館長)は、広州では民間の女性団体だけで全プロセスを計画・組織したことについて、「この点は特にすばらしい」と喜んだという(@反性侵联盟12.28)。
(*)「山西省における日本軍性暴力の実情を明らかにし、大娘たちとともに歩む会」(略称「山西省・明らかにする会」)、「女たちの戦争と平和資料館」など。

広東地区女性/ジェンダー学学科発展ネットワークの王瓊さんは、西安でパネル展を見て、このパネル展を広州でもやりたいと思ったという。また、王さんは、多くの人々はこの災難をマクロな叙述や国家・民族の責任にしてしまっているけれども、「個人として、私たちにも、なにか具体的なことをやる責任がある」と考えたいう(9)

「中山大学ジェンダー教育フォーラム」と「広州ニューメディア女性ネットワーク」の両団体は、それぞれ柯倩婷さん、李思磐さんがリーダーだが、お2人とも、「ジェンダー平等唱導・アクションネットワーク」で専門家として活動している。

池田恵理子さんたちについて、呂頻さんは「彼女たちは真のインターナショナリズムの戦士である」(12.27)と言い、李思磐さんも「インターナショナリズムの戦士だ」(12.29)と言っている。

慰安婦問題を性暴力の観点から扱うことに反対する馬志海との議論

日本軍の性暴力パネル展を中国でおこなうことには、中国当局はけっして積極的ではなかった。第1回の山西省武郷県でのパネル展も、当初の予定から延期させられたが、その理由について、石田米子さんは「『建国60周年』行事を無事に成功させる、『反日』から民間の行動が広がる契機となりうる企画は延期・中止にするという、国家的レベルでの意思が強く働いたものと想像される」と述べている。また、石田さんは、八路軍太行記念館の館長から「八路軍記念館に性暴力パネル展は相応しくないと言う人がいる」という話も聞いている(10)。つまり、政府の都合次第で「反日」をコントロールしようということや性暴力の被害から目を背けたいということがあったようだ。

広州でのパネル展も、広州の公的な美術館や大学の美術館には様々な理由を付けられて断られ、最後は、広州西部の不要になった工場の建物を改造した「原創元素創意園」が彼女たちを受け入れて、無料で貸してくれることになってやっと可能になった
(11)

さらに、南方テレビ局の番組の主持人(司会者、キャスター)である馬志海さんは、フォローワー数が9万にものぼる彼の微博上で、パネル展を非難した。以下は、馬さんの発言とそれに対する反論の抜き書きである(いずれも、2011.12.29~31の李思磐の微博より)。

馬志海:[このパネル展は]慰安婦が受けた侵害を、性暴力的な侵害に帰している。私はこの団体を知らないが、罪を問うているのか、それとも日本人を免罪しているのか?

李思磐:なぜ性暴力でないのか? 日本の友人は、全アジアの女性が組織した国際戦犯法廷を支持しており、天皇の処罰や日本政府の謝罪と賠償を要求している。歴史の記録においても、法律的な訴訟においても、彼女たちが大娘のためにやったことは、私たちがやったことを越えている。これが日本を免罪することか?

馬志海:慰安婦問題は、性侵犯の問題ではなく、まして女性の権利の問題ではない。ある団体が反性侵犯の名目で日本軍性暴力展をしているが、どのような効果があると想像しているのだろうか? あなた方は、手続きが完全であることを強調し、老人たちの同意も得たと言うが、あなた方は、引き起こされるかもしれない傷害に対して取る責任の承諾をしていない。

李思磐:私たちは、「国家暴力が組織した性侵犯」として日本軍の強姦問題を考えている。これは中国人の態度であるだけでなく、中国の女性の態度である。最も重要なのは、これが、被害者の態度でもあるということだ。被害者に話をしてもらい、歴史を書いてもらうことこそが、私たちの展覧の価値なのである。

馬志海:女権の視点や性侵害の視点から慰安婦問題を扱うことは、日本人ならそのようにできるだろうが、中国人には絶対にできない。これは根本的な正邪善悪の問題である。そうすることは、強盗をコソ泥に粉飾することであり、客観的には日本人を免罪することになる。

@麦獣獣:でたらめだ。日本政府は当初、慰安婦は民事であって国家責任ではないと言っていた。日本国内のこうした女性たちの不断の努力によって各国の真相を掘り起こして、政府に国家責任を認めさせたのである。どうして重きを避けて安きに就いたと言えるだろうか。性による戦争行為が強盗ではなく、コソ泥だというのは、あなただけがそう定義しているのであって、国連もそのようには定義していない。集団的強姦は、国際法廷でも重大な犯罪になっている。

@指冷君:女性は男性と同じく戦争で虐殺などを含めた侵害をされてきたうえに、女性特有の性暴力の侵害も受けてきたのだ。

@一面湖水在南方:慰安婦には中国人だけでなく、朝鮮人や日本人もいる。まず性別の問題があり、そのあとで民族問題がある。これがすべての討論の根本である。

馬志海:私に「大男子主義(男性中心主義)」というレッテルを貼らないでくれ。「主義」は取ってくれるようお願いする。私の目標は「大男子」になることだ。中国の女性は「大男子主義」が嫌いだけれども、大男子が欠けている。大男子がいなかったことも、百年余りいじめられてきて、女も保護されなかった重要な原因だ。

李思磐:中国の女は男の保護を必要としない。平等な応対、理解、尊重を必要としている。

「私たちは日本大使館の前に碑を建てよう!」

李思磐さんが、女性の戦争と平和資料館の館長の池田恵理子さんの「私たちは、歴史の断絶がもう出現しなくなるまでアジア各国といっしょに歴史を点検する」という発言を引用した際、李麦子さんは、「歴史を忘れてはならない。私たちは日本大使館の前に碑を建てよう! 私の提案を支持する挙手を!」とコメントした。

それに対して、李思磐さんは、「韓国のハルモニたちは少女の銅像を建てた。日本の首相は李明博に撤去するように言った。李明博は、『申し訳ないが、政府は民間の行為を抑えられない』と言った~。」と応答。

それを受けて、李麦子さんは、「韓国の民間団体の覇気に見習わなければならない」と述べた(以上は2011.12.31)

李麦子さんは、若い民間の行動派フェミニストらしい積極的姿勢を示している。

2.1日で中止させられた南京での日本軍性暴力パネル展(11月)――ここでも「女には祖国なし」の声

11月29日、広州に続いて、南京師範大学でもパネル展――南京では、「Women[「女性たち」と「私たち(我们)」をかけている]は忘れることを拒絶する。第二次大戦中の日本軍の性暴力パネル展」と名付けられた――が開催された(写真:「2012年11月29日南京日本軍性暴力写真展開幕」中国民間・アジア平和文化交流の会)。

ところが、このパネル展は12月8日まで開催される予定だったにもかかわらず、1日だけで中止させられた。

このパネル展に尽力した金一虹さん(南京師範大学教授)は、中止させられた理由について、「さまざまな原因」によるとしか述べていない。しかし、金さんは「このパネル展がなぜ南京でだけ挫折したのかという深層の原因」として、以下のことを述べている(12)

金さんは、南京での女性に対する強姦がいまだに償いをされていない理由として、日本政府の姿勢や日本の右翼が日本軍の性暴力を否認していることのほかに、「観念の領域においてまだ幾つかの謬論が存在していることが、日本軍の性暴力に対する償いに影響している」と言う。その第一は、「戦争中の女性に対する強姦は不可避であると考えて、性暴力を免罪する」論、第二に、「虐殺を強姦よりも重大な犯罪行為だと見なすために、女性を強姦することの反人道的・反人権的本質を軽視する」論を挙げたあと、「第三番目の誤謬の影響が最も深い。それは、女が強姦されることを女が最も言いにくい恥辱だと見なし、自らの民族の女が強姦されることは、自分の民族の最も堪えがたい、この上ない恥辱であり、触れるべきでない話題だから、女性が性暴力にあったという記憶を封印することである」と述べる。

金さんは、韓国でも、女性が「慰安婦」にされたことをずっと「民族の恥辱」と見なしてきて、金学順さんが自らのかつての性奴隷としての身分を明かして日本政府に謝罪と賠償を要求するまでは、女性が受けた屈辱の記憶をお蔵入りにしてきたことなどから、「記憶や忘却のメカニズム」は「国家の利益」の影響を受け、「特定のジェンダーのメカニズムの下で展開する」と述べる。

金さんは言う。

なぜ日本軍は、南京で大虐殺をした際、南京の女性に対して狂気じみた性暴力をおこなうことを中国の男性の反抗の意志を打ち砕く手段にしたのか? 征服者が占領地の女性に対して大規模な集団的強姦をすることは、あたかも戦争の仇討、凱旋の快感を、被征服者の男性の財産を蹂躙し打ち砕くことによってぶちまけるようなものである。女は、ここでは領土と同じく男性の財産であり、女性に対する強姦は、ここでは都市と民族に対する強姦であり、自己の領土と女を守ることができない男を侵犯される位置に置く辱めである。強姦された女性自身は、直接的に性暴力によって侵害されるだけでなく、家父長制イデオロギーの下では、女は「敵国の男によって強姦された」と見なされて二重に強姦される。彼女たちの痛ましい記憶は、敵軍が「強姦・放火・殺戮」をした罪悪を証明するときにしか「意義」を与えられず、長年の歳月のうちに、触れることのできない、語り難いタブーになるしかない。被害者の女性が立ち上がって「私は訴えなければならない」と言うことは、正義を求める行動であるだけでなく、恥辱を払拭し、戦争の傷を治療する始まりである。社会は、「恥辱であるのは、性暴力を受けた女性ではなく、加害者であり、恥辱であるのは、大規模な性暴行を受けた国民ではなく、人類の恥辱である」という共通認識を持たなければならない。


上記は重要な指摘だが、ここで、金一虹さんは、「反日デモ」において日本女性に対する(性)暴力が唱えられたり、女性を領土と同様に男性の所有物と見なすパフォーマンスがなされたことと同一の構図を、日本軍の戦時性暴力とその記憶の封印の中に見ているとも言える。

さて、南京でのパネル展中止の報が伝わると、「女権の声」の微博は、「『さまざまな原因』! 性暴力は恥辱だと言うのか?」と述べ、李思磐さんは「女が国家・民族の視野の中で周縁化され、利用される位置にいることを女だけが理解できる」と述べた(以上12.11)。

さらに、李麦子さんは「SHIT! 狂気じみた抗日デモだけを許して、戦争の女性に対する抑圧を再現するのは許さないとは! 女としては、私には祖国はない!」、@寒芙将軍も「ほんとに『女に祖国はない』」、@西風独自青も「女としては、私には祖国はない、女としては、私には祖国は必要ない」と次々に発信した(以上も12.11)。

ここでも、「女には祖国はない」というウルフの言葉が繰り返されている。すなわち、「女には祖国はない」という言葉に示されるナショナリズム批判の文脈の【4】として、日本軍の性暴力に対する告発を抑圧する国家に対する批判という点を挙げなければならない。

3.日本軍性暴力パネル展に関する日本でのシンポジウム(2012年11月)に対する反応

一方、日本では、11月11日、西安での日本軍性暴力パネル展の開催に尽力した屈雅君さん(陝西省師範大学婦女文化博物館館長)を迎えて、日本大学で、「大娘たちの戦争と記憶――中国で性暴力パネル展を開催して」というシンポジウム(主催:日本軍性暴力パネル展実行委員会、協力:中国女性史研究会)がおこなわれた。

このシンポについては、秋山洋子「シンポジウム 大娘たちの戦争と記憶――中国で性暴力パネル展を開催して」『中国女性史研究』第22号(2013年)、屈雅君(秋山洋子訳)「女性・平和・民族自省――陝西省師範大学婦女文化博物館で日本軍性暴力パネル展を開催して」(同上)を参照されたい。ネット上でも、福岡愛子(wan上野ゼミスタッフ)「日本軍性暴力パネル展報告シンポジウム(屈雅君教授来日講演レポート【2】)」(WAN2012年12月3日)で簡単に報告されており、小浜正子(日本大学教授)「日中間の良性循環-日本軍性暴力パネル展報告シンポジウム」(つれづれなるまま2012年11月11日)でも感想が述べられている。

上記の屈雅君さんの講演録(秋山洋子訳。福岡さんも概要を報告している)を読むと、中国社会の中で日本軍の性暴力の被害者をサポートしている屈さんのような立場に立つ人こそが、日本社会への理解を深め、中国社会のあり方を自省しておられることがわかる。それは屈さんだけでなく、日本軍性暴力パネル展に関わった人々すべてに多かれ少なかれ言えることだろう。

このシンポジウムは中国でも報道されたが、微博では「女権の声」がその記事を宣伝した。呂頻さんは「報道の中で触れられている、日本軍性暴力展を組織した日本の友人は、女声や[広州]ニューメディア女性ネットワークなどの中国の民間女性団隊と協力・友好関係にある。女声のメンバーと彼女たちはいっしょに山西の大娘を訪ねた」(11.14)と紹介し、@寒芙将軍さんは「人民に国境はない。反日よりも反政府のほうがよい」(11.14)と述べた。

王天定さん(西安外国語大学教授)は、「彼女たちは国内では売国奴だと言われるのだろうか?」と言い、それに対して李思磐さんは「私たちが一緒にやったパネル展は、事実上、馬志海に売国奴だと言われた~」と述べた。

以上からは、日本でのこのシンポジウムを伝え聞いた中国のフェミニストも、中国と日本の状況の共通性を感じ、「反日」ではなく、中国と日本の人民(女性)の連帯を志向していることがわかる。

また、フォローワー数11万の崔衛平さんも、上の「女権の声」の記事をリツイートして紹介した。崔さんは元北京電影学院教授で、劉暁波らの「08憲章」の起草者の1人でもあるが、「反日デモ」の際には、「中日関係に理性を取り戻そう――私たちの呼びかけ(让中日关系回归理性――我们的呼吁)」(2012年10月5日)という署名を呼びかけた女性だ。この署名は、日本で大江健三郎さんらが呼びかけた「『領土問題』の悪循環を止めよう~日本の市民アピール」という署名(私も署名した)に呼応しておこなわれたもので、「『中日関係、理性取り戻せ』 中国の知識人らネット署名」(朝日新聞デジタル2012年10月8日)として日本でも報道された(13)。ごく簡単に言えば、両方の署名とも、日中のナショナリズムの悪循環を憂い、それぞれ自国のナショナリズムの抑制を求めたものだ。中国と日本のフェミニストの運動と交流は、大きく見れば、こうした流れともつながっていると言えよう。

おわりに

2012年、中国のフェミニストたちは、女性の人権を主張する視点から、「反日デモ」におけるジェンダー暴力や女性の所有物視を表明するスローガンや、中国という国家による女性や日本軍性暴力被害者への差別・抑圧などを批判することをつうじて、ナショナリズムに反対した。また、彼女たちは、国家を超えた日中の民間女性の交流を推進する立場にも立った。

日本女性の側が「慰安婦」裁判などをつうじて中国の性暴力被害者への支援や連帯をおこなってきたことが、中国の女性の動きにつながった面もある。もちろん中国内部でのフェミニズム運動の発展や戦時性暴力の被害者が立ち上がったことも日中の女性の交流に寄与しており、日中のフェミニストは、領土問題などの「悪循環」に対抗して、「良性循環」(小浜正子)を形成したと言えよう。

なお、中国でも「反日デモ」をやっていることを理由に、日本国内での「反中デモ」の類を正当化する人がいるが、当の中国でも「反日デモ」は批判されていることを見なければならない。また、日本軍「慰安婦」問題に取り組んできた中国の女性たちは、日本の右翼的勢力からは極め付きの「反日」のように見なされているが、彼女たちこそ、「反日デモ」に代表される中国ナショナリズムと非常に鋭く対決し、日本の女性との連帯や日本を理解する志向を持っていることを知ってほしいと思う。


(1)出淵敬子訳『三ギニー』(みすず書房 2006年)では、「女性としては、私には祖国がないのです。女性として、私は祖国が欲しくないのです。女性としては、全世界が私の祖国なのです」(p.163)と訳されているが、ここでは中国語から訳した。
(2)「反日游行现暴力口号」『女声』122期[word]。この文は、中国の反日デモは、「政府が民衆を操って日本側に圧力をかける政治的手段」であると見なすとともに、とくに今回の反日デモでは、軍国主義をあおり、対日戦争を鼓吹するようなスローガンやジェンダー暴力を誇示するスローガンが登場したことを指摘している。
(3)山谷剛史「反日デモ暴動に『あまりに愚かで悲しい』『義和団や文革のようだ』──中国のネット『理性愛国』の声」ITmedia2012年9月18日など参照。
(4)もっとも、反日デモは普通に生活している日本人には関係のないものだったようである。佐々木愛さんによると、上海の日本人学校が休みになったりしたのも、上海に駐在などで定住している日本人は、日本人だけで住んで、日本の衛星放送テレビで情報を得ている人が多いからだったとのことだ (小浜正子「反日デモをめぐって―社会・政治・歴史から(1)」つれづれなるまま2012年9月21日)。その意味では、上の@灰塵AshWangの心配は、大げさだということになる。しかし、この点は地域差もあろうし、たとえ大げさな心配であったとしても、日本人を心配する声が出ていることには注目したい。
(5)ここで述べていることと関係がある、2012年の反日デモに関する指摘には、以下のようなものがある。
・反日デモは、普通に生活している中国人や日本人には関係ないものだった(小浜正子「反日デモをめぐって―社会・政治・歴史から(1)」つれづれなるまま2012年9月21日など)。
・反日デモのやり方に反対する声は、ネット上のみならず、現場での行動としても見られた(山谷剛史「反日デモ暴動に『あまりに愚かで悲しい』『義和団や文革のようだ』──中国のネット『理性愛国』の声」(ITmedia2012年9月18日)。
・2012年の反日デモは、官制のデモである(小浜正子「反日デモをめぐって―社会・政治・歴史から(2)」つれづれなるまま2012年9月22日)。反日デモ背景には、中国共産党内部の派閥闘争があるのではないか(西端真矢「中国・反日デモ暴徒化の背景と、日中関係の今後」2012年9月18日)。9月9日の野田首相との会談で、胡錦濤国家主席は「国有化は受け入れられない」と言ったのに、2日後に国有化されて「メンツをつぶされた」ことが反日デモの原因である (ふるまいよしこ「燃え上がった反日デモと『愛国』の正体」中国風見鶏便り2012年10月3日)。
・2005年の反日デモの時には、批判意見は、メディアはおろかインターネット上でもほとんど見られなかったが、2012年のデモの際には、その反日活動に対する批判意見が多かった。その原因は、①2005年に比べて自由化が進んで自由な意見が出やすくなってきたこと(ただし、自由化が進んだことが、2012年のデモでは暴徒化する人が出ることにもつながったというが)、②日本に旅行する人も増えて日本に対して多用な見方が広がったこと、③2012年のデモには政府の関与(もしくは政府批判をかわす性格)があったことだ(麻生晴一郎『中国人は日本人を本当はどう見ているのか?』宝島社 2012 p.124-133)。
・生粋の北京人(プチブル層)は、異口同音に「今回の反日デモで暴れたやつは、中国人の面汚しだ」と言っていた(福島香織『中国「反日デモ」の真相』扶桑社 2012 p.256)。
(6)石田米子・内田知行編『黄土の村の性暴力――大娘たちの戦争は終わらない』(創土社 2004年)は、山西省于県における性暴力被害についての証言および論文を収録している。
(7)石田米子「八路軍紀念館での性暴力パネル展開催始末」『中国女性史研究』20号 p.61.
(8)西安でのパネル展については、屈雅君(秋山洋子訳)「女性・平和・民族自省――陝西省師範大学婦女文化博物館で日本軍性暴力パネル展を開催して」(同上)を参照されたい。
(9)以上は、「为“大娘”出口气」南都周刊2012年度第2期。
(10)前掲石田報告 p.62.
(11)(9)に同じ。
(12)金一虹「南京暴行记忆,不可承受之痛?」『南方都市报』2012年12月12日。[2013年7月追記:この金一虹さんの論考のほぼ全文が、『女たちの21世紀』74号(2013年6月)に、金一虹「苦難のうちに立ち止まって――日本軍性暴力パネル展の南京における挫折と内省」(大橋史恵翻訳・解説)として掲載されているので、参照されたい]
(13)崔衛平さんについては、麻生晴一郎「崔衛平さんに聞く 『中日関係に理性を取り戻せ』署名を呼びかけた理由」『週刊金曜日』932号(2013年2月22日)。崔衛平「日中関係に理性を ―私がネット署名活動を始めた理由―」(をちこち)も参照。
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