2012-05

WANの第3回総会とシンポに参加して

5月13日、ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の第3回総会とシンポジウム「女がつなぐメデイア――ミニコミからウェブへ」が東京大学でおこなわれました。

総会もシンポも、それぞれ豊かな内容がありましたが、以下では、私がとくに関心を持った点について述べたいと思います。

<目次>
一 第3回WAN総会
 1.会員数の増加
 2.総会の時間が1時間半に
 3.サイトの双方向性の拡大をめぐって
 4.投稿規程の字数とジャンルの緩和などを要望
 5.組織運営の透明性
 6.「ボランティアでは限界、専従を」という声
二 シンポジウム「女がつなぐメデイアーミニコミからウェブへ」

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学校における性的指向などによるいじめに関する調査

5月17日は、国際反ホモフォビア・トランスフォビア・デー(International Day Against Homophobia & Ttansphobia, IDAHO)(Wikipediaの説明)でしたが、この日を前にした5月14日、中国大陸初の、学校でのホモフォビア・トランスフォビアについての調査結果が発表されました。

この調査をおこなったのは、「愛白文化教育センター(爱白文化教育中心)」と「北京LGBTセンター(北京同志中心)」と「広州『同城』コミュニティー(広州“同城”社区)」という3つのLGBTのための民間団体です。今年4月から5月にかけて、性的指向やジェンダー身分による学校でのいじめについて、インターネットをつうじてオンライン調査をおこないました(1)

調査結果(2)

この調査では、421名の初級中学(日本で言う中学)、高級中学(日本で言う高校)、大学、職業中学の学生から回答を得ました。回答者の4/5近くは、同性愛者かバイセクシュアルでした(「性別」としては、男性50%、女性47%、トランスジェンダー1.4%、不明1.2%)。

回答内容は、以下のようでした。

性的指向やジェンダーによって学校で何らかのいじめにあったことがある―77%
・言語による攻撃(あだ名、嘲笑、悪意のからかいなど)にあった―44%
・身体に対する攻撃(殴る蹴る、平手打ち、押したり足を引っかけたりして倒される、髪の毛を引っ張られる) にあった―10%
・同級生か先生にセクハラされた(服を脱がされる、秘部を触られる、裸の写真を撮られる)―7.6%

学校でのいじめによって、学業上マイナスの影響があった―59%
・退学に追い込まれた―3%
心理的・精神的にマイナスの影響があった―63%
・憂鬱になった―42%、・憤怒、報復を考える―26%、・不眠―19%、・長い間おじけ恐れる状態―16%
身体的に軽傷・重傷を負った―5%
大酒を飲んだ、自傷した、自殺を試みた、感情の抑圧によって見知らぬ人と性行為をした―26%

いじめにあったとき、他の人のサポートを求めたことがある―33%
 そのうちの72%―関係が良い同年齢の人に助けを求めた

性的指向とジェンダー身分によるいじめをなくすためにやるべきこと(3つ選択、上位から)
・大衆的メディアが宣伝・提唱して反対する―76%
・国家の政策を改善して明確に禁止する―60%
・学校で関連するカリキュラムを開設する―44%
・学校にサポートグループを設立して、いじめに関心を寄せ、被害者をサポートする―43%

いじめの具体的な事例

この調査結果は、中国国内のマスコミでは、『南方都市報』が報じましたが(新浪網なども転載した)(3)、同紙は、学校内のいじめの実例として、以下の2人の方のお話を掲載しています。

○冰封さん(ゲイ)の場合

高校のときから寄宿舎住まいを始めた冰封さんは、学級委員長をつとめていたのですが、彼がゲイであることがわかったら、「変態、人妖、女みたいだ」と罵られるようになりました。それでも、冰封さんはみんなに認められようと努力したのですが、誰も彼の言うことを聞かなくなり、寄宿舎に帰ったら、机の上に「変態、ゴミ」といった文字がびっしりと書いてあったこともありました。

合唱コンクールの前の音楽の授業のとき、冰封さんはステージの上からみんなをまとめようとしたのですが、例によって、誰も言うことを聞きません。先生が来て、「このクラスは、男子が何人で、女子が何人なのか?」と尋ねると、ある男子生徒が「僕たちのクラスには、男子が22.5人と、女子が22.5人います」と答え、クラス全員がどっと笑いました。冰封さんは教室を出ると、グラウンドで号泣しました。その後は、彼はもうクラスの仕事をしなくなり、みんなに溶け込もうという努力もしなくなりました。

冰封さんは、当時は、人生には希望がないように感じ、高校3年になっても、大学に進学する気持ちにはなれませんでした。

○杉杉さん(レズビアン)の場合

杉杉さんは、今年大学を卒業したばかりの女性ですが、高校のとき、ガールフレンドへの手紙が見つかったので、家族に自分の性的指向をカミングアウトせざるをえなくなりました。それから4年間の同居期間中、杉杉さんの母親は、1週間に何度も彼女を殴るようになりました。机の上の電気スタンドで頭を殴ったために、杉杉さんに傷跡が残ったこともありました。

杉杉さんの母親は衛生学校の先生だったのに、「同性愛は病気だ」と思い込んで、彼女を精神病院に連れて行って、医者に診せました。医者も、母親の話を聞いて「性的指向を変える」薬を出したので、杉杉さんは怒って医者と口論をしたため、「同性愛の治療」からは逃げ出すことができました(中国でも、2001年には「同性愛」は、「精神障害分類と診断標準」から削除されて、病気とはみなされなくなったはずなのですが、実態としては、こうしたこともあるようです)。

けれども、家族は杉杉さんを監視するために、彼女の性的指向やガールフレンドとの交際を多くの先生に知らせたため、彼女のプライバシーは誰もが知るところとなりました。

その後、杉杉さんは、学校でさまざまな事実無根の噂を立てられ、同級生たちは、彼女が堪えられないような嘲弄とまなざしを浴びせました。杉杉さんは、男子生徒に、ガールフレンドが送ってきた写真を破かれ、便所に捨てられたこともありました。

杉杉さんは、以前は明朗な女子生徒だったのですが、同級生と話をしなくなり、ときには授業をさぼるようになりました。大学入試の数日前にも、母親は、杉杉さんとガールフレンドが連絡を取っているのを知って、刃物を持ち出して「死ね」と言い、もみ合ってるときに、杉杉さんは人差し指の動脈を切ってしまい、入試は失敗しました。

杉杉さんは復学しましたが、以前の同級生に「杉杉さんは、よく女子トイレに行って、盗撮をしている」というデマを流されました。杉杉さんは、全世界が彼女に背を向けたように感じ、どうしたら死ねるかを毎日考えるようになり、飛び降り自殺をしようとして止められました。その後も、いつもナイフで手の指を切るようになりました。

大学入学後は、同級生たちの思想が比較的開放的だったので、クラスの中でカミングアウトでき、同級生たちのとの関係も正常で、少しずつ暮らしやすくなりました。今は、できれば同性愛の団体に入って、現状を変えるために何かしたいと思っています。

大学ではLGBTのための団体が設立され始めているが……

2006年10月、中山大学に大陸初のLGBTのための正式の学生団体である「レインボー社(彩虹社)」が設立されましたが(本ブログの記事「同性愛者などの人権のための初の正式の学生団体」)、圧力がかかって、翌年には活動を停止しました。

といっても、必ずしも大学などに公認された正式の団体ではないようですが、2006年には、今回の調査をおこなったLGBTQの青年・学生のための「広州『同城』コミュニティー(広州“同城”社区)」や福建師範大学の「同心社」も設立されており、2009年には中国青年政治学院の「愛知社」が設立されました。2005年に設立された復旦大学の「知和社」は、ジェンダー全般に取り組んでいますが、LGBTに重点を置いているようです(4)

これらの学生の団体は、ミーティングや講座をはじめとしてさまざまな活動をしており(そうした活動については今度またご報告したいと思います)、大学では、少なくとも場所によっては、ある程度開放的な雰囲気もあるようです。

難しい中学・高校でのLGBTに関する教育、教師の研修に活路を見出す

しかしながら、広州「同城」コミュニティの責任者の豆豆さんは、「大学4年生でも、同性愛を理解していない人はまだ大勢います。まして高校や職業学校、インターネットを頻繁に使っていない中小都市や農村では、学校でのホモフォビアの状況はさらに深刻です。NGOなどのリソースを送り込むことも非常に難しいのです」と語っています。

愛白文化教育センターや広州「同城」コミュニティは、かつて北京と広州の高校で、研修や講座、サロンをやろうとしたこともあるそうですが、「大学に比べても、中学・高校で性教育を推進するのはまだ難しい」と「愛白」の責任者の江暉さんは語ります。数年前、江さんたちがボランティアの学生に活動ポスターを中学や高校の学校の中に張ってもらったところ、学校側が発見して、張った者を調査して処罰するように求めたそうです。

そうしたことがあったので、「愛白」は、その後は、高校の教師の研修のほうに力を入れるようになりました。たとえば、国家計画出産委員会の下級機関である「青リンゴの家」と協力して、中学・高校で性教育をしている先生や師範大学の学生の研修をしたそうです。また、今年8月からは、「愛白」と「同城」と北京LGBTセンターは、ユネスコと協力して、雲南で高校の先生の研修を始めるといいます(5)

もちろん日本でも深刻な問題

円山てのるさんが「日本での同性愛者の自殺予防対策の現状」(g-lad xx)で述べておられるように、最近、アメリカでゲイの少年の自殺が社会問題として報道されて注目を集めました。日本ではまだ社会問題として報道されていないものの、すでに「REACH Online 2005」という調査などで、セクシュアルマイノリティのいじめ被害や自殺未遂が多いことが明らかになっています。

円山さんも紹介しておられることですが、「REACH Online 2005」によると、ゲイ・バイセクシュアル男性の54.5%は、学校教育現場で「ホモ、おかま」などの言葉による暴力被害を受けたことがあり(3-4「いじめ被害、避難場としての保健室、性被害」)、65%はこれまでに自殺を考えたことがあり、15%前後は実際に自殺未遂の経験があった(3-5「心の健康状態―抑うつ、自尊感情―、自殺を考えたこと」)とのことです。また、「わが国における若者の自殺未遂経験割合とその関連要因に関する研究」でも、「セクシュアルマイノリティの自殺未遂率は異性愛者の約6倍に相当する」という結果が出ているといいます。

今回の愛白文化教育センターや広州「同城」コミュニティーによる調査は、中国でも同様の問題があることを明らかにしたと言えます。『南方都市報』に掲載されていた具体的な事例はひどいものですが、日本でも自殺に追い込まれる方が少なくないということは、その背景には驚くような実態がたくさんあることを意味しているのだろうな、と思います。

(1)調査票は「基于性取向、性别身份校园欺凌行为在线调查」愛白網、調査を始める際の呼びかけは、「【MY Action】同城&爱白 全国基于性取向、性别身份校园欺凌行为在线调查」"朋友公益"同城社区ブログ2012年4月18日。
(2)中国校园恐同调查发布 多数学生曾遭欺凌」愛白網2012年5月14日、「【MY News】同城与爱白的中国校园恐同调查数据在京发布」"朋友公益"同城社区ブログ2012年5月19日、「校园同性恋生存现实 社团力量能否抵挡欺凌泛滥?」『南方都市報』2012年5月23日、「调查显示:大陆校园内因性倾向遭欺凌现象堪忧」歐洲時報2012年5月14日。
(3)校园同性恋生存现实 社团力量能否抵挡欺凌泛滥?」『南方都市報』2012年5月23日。大陸以外ではマカオ日報が報じ(「內地校園性向欺凌普遍」澳門日報2012年5月15日)、Gay Star Newsも報じています(“Over three-quarters of Chinese gay students bullied at school”Gay Star News2012.5.17)。
(4)その他、たとえば、北京大学でも、CGSA-College Gay Student Allianceという団体が2004年に設立されて、北京大学への登録は批准されなかったものの、活動を続けていたそうですが、2006年には活動を停止したそうです(江晖「校园环境下LGBT学生的生存状态和活动空间」童戈・何晓培・郭雅琦・毛燕凌・郭晓飞合編『中国“同志”人群生态报告(一)』北京纪安德咨询中心 2008年 p.295-296)。
(5)以上は、「校园同性恋生存现实 社团力量能否抵挡欺凌泛滥?」『南方都市報』2012年5月23日。
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「男子トイレ占拠」などのパフォーマンスアートの成功支えた周到なプラン

私はこの間、女子大学生の男子トイレ占拠(便器数における男女差別反対)、血染めのウェディングドレス(DV反対)、就職の男女差別反対、セクハラ・ミスコン反対などのパフォーマンスアートをご紹介してきました(「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」「女性差別反対を訴える女子大学生のパフォーマンスアート続く」、「各地で雇用における女性差別反対を訴える女子大学生らのパフォーマンスアート」)。

これらのパフォーマンスアートは、とくに権力も権威も持たない人々による、民間のフェミニズムの社会的な行動でありながら、さほど当局に介入されることもなく、各種メディアにも大きく取り上げられて、成功しているように思います。

それらがなぜ成功したのかがわかる、当事者による論文がありました。それは、王曼「街頭での公益的なパフォーマンスアートをいかにして有効に展開するか――『傷を負った新婦』『男子トイレ占拠』アクションを例にして(如何有效开展街头公益行为艺术――以"受伤的新娘"及"占领男厕所"活动为例)」(『中国発展簡報』2012年春季刊)という論文です。

今回は、この論文をご紹介します。

王曼さんの論文は、上の2つのアクションを例にして、「成功するパフォーマンスアートに必要な要素を紹介する」とともに、「コスト・効果・適用範囲などの次元からパフォーマンスアートとその他の唱道の手法との比較をする」ことを目的にしています(もちろんこの論文の中には、この2つのアクションのうまくいかなかった点を教訓にして書かれた点もありますが、多くの点は、アクションが成功したことを踏まえて書かれています)。

まず、その内容を、以下でかいつまんでご紹介します(全訳でないのはもちろん、逐語的な正確な訳でもありません)。

一、成功するパフォーマンスアートに含まれる要素

王さんは、まず、「傷を負った新婦」と「男子トイレ占拠」という2つの事例から見て、良いパフォーマンスアートには、少なくとも以下の1~6の6つの要素が含まれていると述べています。

1.良い創意

パフォーマンスアートがメディアと公衆を引きつけるカギは、創意にある。ここで言う「良い」創意とは、従来のしきたりを打破し、斬新で前衛的なもののことである。また、創意の吸引力は、議論をすることにもある。議論があってこそ、メディアが興味を持ち、ニュース価値も生じる。創意は芸術家の専売特許ではない。では普通の人の場合は、良い考えはどこから来るのか? まず、既にある活動の創意を参考にすること、次に、目下流行している要素を借用すること。さらに典型的な符号を使うこと。

○「血染めのウェディングドレス、傷を負った新婦」パフォーマンスアート

 ・このアクションの創意は、トルコで2011年11月におこなわれた血染めのウェディングドレスのデモ行進に啓発されたものである。しかし、中国では、大規模なものはできないので、3人のボランティアだけが表に立つパフォーマンスアートにした。

 ・この創意が異彩を放っている点は、「ウェディングドレス」というパートナーシップや幸福な甘い関係を象徴する符号と、「傷跡」「血痕」という暴力を象徴する要素との鮮明なコントラストを形成したことである。さらに、バレンタインデーというロマンチックラブの雰囲気が充満した日にアクションをすることによって、このコントラストの効果は強まった。この創意に内在する異議申し立ては、「避難港」のような親密な関係の中に、実際には女性に対する暴力が隠れている点にある。これは、主流の価値観の家庭・婚姻・親密な関係に対する認識とは明らかに異なっており、それゆえニュース価値が生じた。

○「男子トイレ占拠」パフォーマンスアート

 ・「男子トイレ占拠」アクションの創意は、1996年に台湾の女の大学生が起こした「男子トイレ占領」運動から来ている。また、「ウォール街占拠」運動の中から、「占拠」という言葉を借用して、私たちはこのアクションを「男子トイレ占拠」と命名した。現在流行している語彙を使うこのやり方は、宣伝に有利であった。

 ・「男子トイレ占拠」という創意には、「傷を負った新婦」より大きな論争性があった。まず、「女が男子トイレに入る」行為は、世俗の社会の女性の役割と行為に対する限定に違反している。また、「占拠」という言葉は、いっそう挑戦的である。これらの要素によって、このアクションは、「傷を負った新婦」よりもさらに多くメディアに報道され、社会の関心を集めた。当然、実際の操作では、私たちも男性との対立を避けた。アクションは、女性が男子トイレを借用する間、男性に3分間だけ待ってもらうにすぎなかった。

2.訓練された、素養のあるボランティア集団の建設

パフォーマンスアートは、メディアで報道されるため、ある程度の危険がある。だから、勇敢なボランティア集団の建設も、アクション成功のカギとなる要素である。また、この2つのパフォーマンスアートをおこなう集団は、全員ボランティアで構成されており、お互いに面識がない人もいた。だから集団として協力することも非常に重要だった。

パフォーマンスアートに参与することは、たしかに大きな勇気が必要である。とくにカメラの前に立って、取材を受け、メディアにさらされると、各方面から論評され、圧力も受けた。女性たちは、びくびくしたり、出しゃばることを嫌がったりするなど、ジェンダー的原因により、メディアに顔を出したがらなかった。ここで特に言っておきたいのは、この何回かのアクションでは、レズビアンの数人のボランティアが最前線に立ったことであり、筆者は彼女たちの勇気と貢献に敬服する。

もちろん、カメラに映らない参与者にも、それぞれ心理的な障害があった。社会運動の基礎がないという条件の下では、若干の人にとっては、「表に出る」こと自体が重大なことだったと言えるかもしれない。しかし、この数回の活動に参加した者は、非常に勇敢に、積極的に行動した。彼女(彼)らの大部分は若い人々であり、多くは、初めてこのような活動に参加した。筆者もその一人である。それ以前はまだ疑いや心配があったが、この何回かの活動によって、心理的な障害を克服し、行動する信念を持つことができた。

勇気のほかに、参加者は、アクションの初志と訴えを理解しなければならない。そのため、アクションのプレスリリースと公開状については、できれば事前にすべてのメンバーが目を通して、意見を募っておくことが望ましい。このことは、メディアに取材された際に意見を統一するためにも有利である。

アクションの指導者も非常に重要である。集団には、全体の指導者が1名必要であり、重要な決定、たとえば、参加者がいつアクションの現場から離れるかに責任を負う。全体の指導者は、できれば具体的な活動(メディアの取材を受けることを含む)はしないことが望ましい。総じて言えば、参加者は多すぎない方が良く、少数精鋭であるのが望ましい。

3.十分な事前の準備

集団行動である以上、各メンバーの間には明確な分業が必要であるとともに、みながアクションの全体的なプロセスをはっきり知っていなければならない。そのためには、できれば会を開いて直接顔を合わせて討論して決めることが望ましい。もし行動のプロセスが複雑で、多くの人が協力しなければならないのならば、事前に練習しなければならない。けれど、不意の事故を避けるためには、当日の地点では練習すべきではない。また、1つから2つ、予備のプランを準備しなければならない。

活動の当日は、参加者は、できればアクションの地点に集合するのではなく、その他の適当な地点で顔を合わせた後にみんなで出発するのが望ましい。

パフォーマンスアートの場所の選択も、準備活動の重要な任務である。アクションの地点は、典型性・象徴性がなければならないだけでなく、あまりデリケートな地点であってもならない。「下見」の任務を担うメンバーは、往復のルートを明確にしなければならないだけでなく、周囲の情況(付近の通りが広々としているか否か、警備人員の数と警備が厳しいか否か、行き来する人の量など)をよく知らなければならない。

このほか、準備の際には、多くの細かい事がらにも注意しなければならない。たとえば、もし目立つ道具(ウェディングドレスやプラカード)を持った人が先に行く場合は、目立たない場所で他の人を待つようにし、計画が漏れて先手を打たれるようなことがないようにする。

4.メディア、とくに大衆メディアの支持と報道を獲得する

パフォーマンスアートは、社会的影響力を発揮するためには、必ずメディアで報道されなければならない。ここで特に言っておかなければならないのは、ニューメディア(ミニブログ、インターネットフォーラムなど)だけでは不十分であること、伝統的メディア(テレビ・新聞など)の大衆に対する宣伝作用は、少なくとも現在はまだ代替不可能であることである。だから、私たちは自分から記者に連絡して、メディアとつながりを作り、できるだけ報道のために便宜を図った。

メディアとつながりをつける責任者は、このような活動は、どのメディア・どの記者がそれに対して関心を持つかをよく知らなければならない。それは、最初はけっして容易なことではない。しかし、蓄積がある組織と協力すれば、メディアのリソースを分かち合うことができるし、また、もし組織の活動に十分なニュース価値があれば、メディアのほうから連絡してくるかもしれない。たとえば「男子トイレ占拠」アクションが広州で成功したら、他の地区のメディアのほうから、その地区でアクションをする計画があるのかどうかを尋ねてきた。

このほか、前もって記者のために良いプレスリリースを準備して、取材を受けられるようにするとともに、そのアクションを支持する専門家(学者・弁護士など)との連絡方法も提供して、記者が取材しやすいようにすべきである。もちろん、それらの専門家には予め知らせておくべきである。

5.整然と秩序立った、速戦即決の現場の行動

「フラッシュモブ(快閃)」(突然ある地点に集まって、短い時間パフォーマンスをした後に、すみやかに解散する活動)を原則とし、干渉する者が来る前に、時間を無駄にせずに直ちにおこない、けっして遅れないようにする。

活動に参与する者は、いかなる人とも、衝突(口論を含む)を起さないようにする。北京での「男子トイレ占拠」アクションの過程では、通りがかったおじさんがアクションを全く理解せず、過激なことを言ったため、あるボランティアが腹を立てて、彼と議論を始め、それに加勢する人もいたため、やじ馬が集まって、交通の邪魔になったことがあった。こうしたことは、「交通の邪魔になる」という理由で、活動が中止させられる原因になりやすい。興奮している人に対しては、もし説得できなければ、取り合うべきではなく、他のボランティアもやじ馬見物をしたり加勢したりするべきではない。

6.リスクコントロール

この数回のアクションの中で、参加者の唯一の人身の傷害は、交通事故によるものだった。このことから見ると、交通事故を避けることは、都市の中でパフォーマンスアートをする際のリスクコントロールの重要な側面である。それゆえ、アクションに参加するメンバーは、条件があれば事前に保険に入っておくべきであり、その費用を活動の予算の中に組み込むのがよく、併せて、アクションにおいては必ず交通安全に注意するようお互いに気を付けなければならない。

アクションの時間と場所は秘密にするよう注意しなければならず、事前にインターネットあるいはメディアで発表してはならない。アクションの前日になってから、記者に活動の時間を教えるべきである。場所はもっと秘密にすべきで、アクションの開始2時間前に記者に通知するのが最もよい。そのようにすると、現場に来るメディアの数が減るかもしれないが、活動の安全性には有利であり、その時になってまた場所を変えたりしなくてもすむ。

比較分析:パフォーマンスアートVS伝統的な唱道方法VSハイリスクな唱道方法

次に、王さんは、「弱者層のために声を発し、権力と資源を握っている人や機構に影響を与えて、何らかのゲームの規則や体制構造を改善しようと試みること」を、「唱道」と呼び、これまでの「唱道方法」として、次の2つを挙げています。
○「伝統的な唱道方法」――調査研究・政策建議・シンポジウム・立法提案など
○「ハイリスクな唱道方法」――上訪[陳情・直訴]・示威・対峙・デモなど

王さんは、上の2つの唱道方法に対して、「パフォーマンスアート」の優位性を以下のように説いています。

パフォーマンスアートの優位性

○伝統的な唱道方法(調査研究・政策建議・シンポジウム・立法提案など)
 ・コスト――比較的多くの社会資本(財力・物力・人脈を含む)が必要であり、一般に、一定の社会的資本を有する機構あるいは学会・政界・メディアというバックグラウンドを持つエリートによって推進される。
 ・効果――体制内のルートで政策に影響を及ぼすことができる。しかし、唱道者は受動的地位に置かれている。また、市民社会[原語:公民社会]をエンパワメントして、政策の実現のための社会的基礎を強めることは難しい。

○ハイリスクな唱道方法(上訪[陳情・直訴]・示威・対峙・デモなど)
 ・コスト――敵対的であると見られがちなので、通常多くの妨害を受け、抹殺され、長期間、重大な犠牲を払わされる。そのため、コストは高い。
 ・効果――ときに突破的な進展を獲得することができる。しかし、その情報は一般に大衆的なメディアでは報道することができず、そのため、公衆に対する影響力は往々にして限られている。

○パフォーマンスアート
 ・コスト――伝統的な唱道方法に比べると、必要な資本、とくに経費は非常に少なくて済む。危険が大きい唱道方法に比べれば、コストは安全で、コントロールできる。
 ・効果――「マイノリティの公益活動」を短時間のうちに「公共の話題」に変え、それによって世論に影響を与え、政策の変革と実施に有利な社会的雰囲気を作り出す。

パフォーマンスアートの限界

ただし、王さんも、「適用範囲」に関しては、パフォーマンスアートの限界を認めています。

すなわち、「伝統的な唱道方法」は、「適用できる議題の範囲は比較的広範で、とくに学術研究の形式で展開するときは、いくらか深い次元の構造の問題に触れることができる」し、「ハイリスクな唱道方法」も「深い次元の問題に触れることができる」のに対して、「パフォーマンスアート」は、「テーマは、比較的主流で、議論はあるといっても、深いレベルの挑戦はできない」と述べています。それゆえ、パフォーマンスアートは、「その他の唱道の手法(調査研究・内部での働きかけ、提議書、公益訴訟など)と結び付けて使用しなければならない」と述べています。

街頭の公益パフォーマンスアート:市民社会に通じる道か?

王さんは、最後に「指摘しておきたいのは、ここ数回のパフォーマンスアートは、筆者を含めて多くの1980年代生まれ、1990年代生まれの若い人の積極的参与を吸引していることだ」と言い、「中国では、市民社会の建設は、この上ない巨大な任務であるかのようだ。しかし、もしますます多くの人、とくに若い人が行動する者になれば、たとえ簡単で面白いパフォーマンスアートから始めるとしても、市民社会の建設は絵空事ではなくなるであろう」と述べています。

私の感想

王さんの論文を読むと、これまで、多くの場所で「男子トイレ占拠」などのアクションが総じて順調におこなわれ、メディアにも多くの報道(しかも嘲笑的ではないもの)がなされたことは、けっして偶然ではなく、練り上げられたプランの賜物であることがよくわかります。たとえば、北京でのアクションでは、当初予定していた徳勝門でのアクションは阻止されたものの、場所を変えておこなわれたのですが、それも、事前の準備の成果であることがわかります。

社会的運動の前例が少ない中で、このように行き届いたアクションを成し遂げたことには、感嘆させられます。

もちろんメディアに取り上げてもらえるように努力をすることなどは、日本の運動においても、同様の努力がなされているでしょう。しかし、当局の干渉に対する警戒――たとえば、当日の地点では練習しないこと、1つか2つは予備の計画を準備すること、活動当日の集合場所はアクションの地点にしないこと、「下見」の際には警備の状況を確かめることなどについては、中国だからこそ、という面が大きい。「整然と秩序立った、速戦即決の現場の行動」といった点は、日本の運動においても、当局の介入を招かないためにも求められることですが、やはり中国だからこそ、という面があると思います。交通事故に対する警戒も、中国だから特に気をつけなければならない点です。

以上はもちろん、「中国は遅れていて、大変だ」というような話ではなく、日本にいる者としても、困難な条件の下でも効果的なアピールをなしえた事例として学ぶ必要があるとも思います。

「アクションでは、レズビアンの数人のボランティアが最前線に立った」という点は、詳しい事情はわかりませんが、何かジェンダーと関係があるのかもしれません。女子大学生のアクションでは、同性愛やLGBT系の要求は前面には出ていませんが、レズビアンも「女性」として差別されることは同じですし、ひょっとしたら「ユニセックストイレ」などの要求にLGBT系の要望が反映しているのかもしれません。

「比較分析:パフォーマンスアートVS伝統的な唱道方法VSハイリスクな唱道方法」の節では、パフォーマンスアートを広く社会運動論の中の位置づけており、少なくとも現在の中国では、パフォーマンスアートには大きな有効性があることが理解できます。

また、若い世代の運動になっていることも、未来に繋がることとして重要だと思います。台湾もそうですが、若い世代の運動が盛んであることは、女性運動を含めて社会運動が高齢化しつつある日本の現状について、あれこれ考えさせらます。

ただし、私は、パフォーマンスアートの限界についても、もう少し考えてみるべきではないかと思います。たとえば、学術研究ほど一部のエリートのものではないとしても、パフォーマンスアートをしているのは、ほぼ大学生に限られていますから、階層的には、上層ないし中層であろうと思います。階層という点から言えば、下層の民衆も参加しているという点で、「ハイリスクな唱道方法」をもう少し評価してもいいのではないでしょうか。

また、パフォーマンスアートの場合、その効果はマスメディアの力に頼っている面がある点も限界として指摘できるかもしれません。また、王さんは3つの「唱道方法」を挙げていますが、そのほかにも、「インターネット」という方法を挙げることもできるのではないでしょうか。

女子大学生たちのパフォーマンスアートは、2月以来、もう3ヶ月も続いています。といっても、まだ明確な政策的な変化は勝ち取ってはいませんし、今後何らかの圧力(マスメディアに対する圧力を含めて)がかかる可能性もあるように思います。

しかし、長い目で見れば、王さんがおっしゃるとおり、これは「市民社会に通じる道」であろうと思います。今後、いつまで続くのか、その先に何らかの変化が起きるのか、楽しみです。
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各地で雇用における女性差別反対を訴える女子大学生らのパフォーマンスアート

2~3月にかけて、中国各地で、公共トイレの男女の便器数の不公平さを訴えるために、女子大学生が「男子トイレ占拠」のパフォーマンスアートをおこないました(本ブログの記事「女子大学生の『男子トイレを占拠する』アクション」)。その後も、セクハラやミスコンに反対するパフォーマンスアートがおこなわれましたが(本ブログの記事「女性差別反対を訴える女子大学生のパフォーマンスアート続く」)、4月以降目立つのは、雇用、とくに就職の際の女性差別に反対するための女子大学生らのパフォーマンスアートです。

女性に対する就職差別反対を訴える全国各地のパフォーマンスアート

女性に対する就職差別反対を訴えるパフォーマンスアートは、私がネットで見つけただけでも、下に示した8つがメディアに報じられていました。そのうちの6つは、「人材招聘会」「人材市場」と呼ばれる、多くの企業が求人をする場所かその近くで、女子大学生が、鎧・兜を付けた花木蘭(男装して従軍した伝承中の女性、wikipediaの説明)の扮装をして、「木蘭が現代にタイムトラベルした。鎧を脱いで仕事に就きたいのに、いかんせん仕事が見つからない(木兰穿越现代 本欲卸甲归田 无奈工作难寻)」などと書いたパネルを掲げて、女子学生への就職差別反対を訴えるものでしたが、それ以外のやり方をしたものもあります(以下、やり方について述べている個所に下線を引きました)。

4月6日 武漢市 武昌区の光谷広場で、十数名の女子大学生が、就職の壁を象徴するドアの前で女性たちが倒れ伏すことによって、就職差別反対を訴えた(本ブログで既報(1))。

4月8日 西安市 陝西省スタジアム国際展示センターの人材招聘会で、某大学の女子大学生の楼さんが花木蘭の扮装をして、就職差別反対を訴えた。他の学生たちといっしょに、100人ほどの女性にアンケートもした。発起人は咸陽師範大学の夏媛さん(本ブログで既報(2)だが、(3)の情報も加味した)。

4月15日 杭州市 某人材市場の入口で、大学4年の女子学生2人が花木蘭の扮装をしてパフォーマンス。1人はプラカードを掲げ、もう1人は、通行する女性に対して、求職の過程において差別を経験したことがあるか否かをアンケート調査した(4)

4月16日 杭州市 女子大学生たちが、女性に対する就職の壁を示したパネルをくぐり抜けるパフォーマンスによって、就職差別反対を訴えた(本ブログで既報(5))。

4月22日 南京市 国際展示センターでの人材招聘会で、南京の有名大学を卒業後、会社に勤務している安さんという女性が、花木蘭の扮装をして就職差別反対を訴えた。その後ろには、6、7名の女性が、行き来する求職者に向けて、「求職者が差別に遭遇したら、どのようにして権利を守るか」をいうビラをまいた(6)

4月28日 阜陽市(安徽省) 阜陽師範学院の大学生のボランティアの卞夢迪さんが花木蘭の扮装で、阜陽益貝孤残人士康養之家(阜阳市益贝爱孤残人士康养之家。障害者のための福祉機構のようです)の先生とともに、女性に対する就職差別反対を訴えた(7)

4月28日 武漢市 人材招聘会で、武漢の某大学4年の女子学生の可さん(仮名)が花木蘭の扮装をして、就職差別反対を訴えた。このアクションの発起人は、中南財経政法大学の女子学生の李甜甜さん(8)

5月13日 鄭州市 人材招聘市場で、中原工学院愛心ボランティア協会(中原工学院爱心志愿者协会)のボランティア・暁雲さんが花木蘭の扮装をして、数名の同級生とともに、就職差別反対を訴えた(9)

これらのパフォーマンスアートの特徴

どの場所でも、1人ではなく、複数ないし数人の女子大学生がパフォーマンスをしています(ただし、南京でパフォーマンスをした安さんは、会社員であり、安さんは、かつて自分が就職活動中に性差別を受けたのみならず、身近な女性の多くもそうした経験をしていることに憤ったことが動機になっています)。

また、南京と鄭州では、単に花木蘭の扮装とプラカードによってアピールしただけでなく、「男性のみ」「男性優先」という条件が書いてある企業のブースの担当者に対して、その理由を問いただして、抗議しています。たとえば、鄭州では、花木蘭の扮装をした暁雲さんは、「男性のみ」と掲示しているブースに対して、「なぜこのポストは、女性はダメなのですか? 私たちも同じように仕事ができます!」と強い口調で尋ねました。ブースの担当者は、突然現れた花木蘭の扮装をした女子に呆然としつつ、「うちは販売業ですが、出張の仕事は、女性に適していません」と答えました。しかし、そうした答えで納得できるはずもなく、何度か質問して回答が得られなくなると、暁雲さんは、立ち上がって、ボールペンを取り出し、ブースの「男性のみ」の文字を線で消して、その上から「男女不問」と書き込んで去っていきました。このやり方に対しては、「暴力的だ」という批判も出ましたが(10)、女性差別の深刻さを根拠にして弁護する声も上がっています(11)

各地で、花木蘭の絵入りの「木蘭が現代にタイムトラベルした。鎧を脱いで仕事に就きたいのに、いかんせん仕事が見つからない」と書いてあるパネルが使われましたが、それらのパネルは、写真で見るかぎり同一のものであり、各地のアクションの間には繋がりがあることは間違いありません。

ただし、アクションをしているのは、それぞれの地区の学生たちです。また、武漢でのアクション使われたパネルは、「まさか現代の女性も、男装をしないと腕をふるえないのではあるまい???(难道现代女性也要女扮男装才能找到用武之地???)」というものであり、他の都市とは異なった文が書かれています。

また、女子大学生たちのアクションを報じた新聞は、彼女たちが訴えている女性差別の詳しい状況や女子大学生の就職に関する調査報告について報じているものも少なくなく、就職差別問題を社会的にアピールすることに寄与しています。たとえば、4月15日の杭州でのパフォーマンスアートを報じた記事は、それをおこなった女子大学生が、「女子学生は、求職の中で、容姿・身長・年齢・結婚出産などの条件を付けられる。」「6~7月になっても、多くの女子学生はまだ仕事が見つかっていないのに、男子学生の大部分はその頃にはもう就職が決まっている」と訴えていることを報じています(12)。また、たとえば、新華網の記事は、中華全国婦女連合会が発表した「女子大学生就業創業状況調査報告」では、56.7%の女子大学生が「女子学生の方が就職のチャンスが少ない」と答えていることや、91.9%の女子大学生が「人を雇う企業・機関に性による偏見がある」と述べていることを紹介しています。さらに、専門家が、「労働法や婦女権益保障法は性差別は禁止しているけれども、使用者が負うべき行政責任や民事責任を明確に規定しておらず、具体的な執行機関も規定していないので、就職差別を是正する上では実質的には役に立っていない」と指摘していることも報じています(13)

以上から見ると、花木蘭の扮装によって女性に対する就職差別に反対するアクションも、以前の「男子トイレ占拠」アクションと同様に、以下のような特徴を有していると言えます。
 ・複数から数名の女子大学生によって担われている。
 ・各地の女子学生たちの間には、繋がりないしネットワークがあるようだ。
 ・ただし、それぞれのアクションを担っているのは、地元の女子大学生のグループ。
 ・マスコミの報道は、全体として、女子大学生の言い分を伝えているものが多く、就職差別についての調査報告や専門家の解説を報じている場合もある。

女性の妊娠中の権利を侵害する企業を批判するパフォーマンスアート

また、「母の日」である5月13日には、広州市の天河区の繁華街で、10人の女子学生が、妊婦の権利を無視する企業を批判するパフォーマンスアートをおこないました。

そのパフォーマンスアートは、お腹を膨らませた妊婦の格好をした数人が、「妊婦をいじめる企業」と書かれた被り物をした人の周りを取り囲んで、剣や指(の形をしたもの)をその人に突き付けるというものです。妊婦役の人は、「社会的責任」とか、「女性労働者特別保護規定」と書かれた被り物をしています。そのほかに、「妊婦≠忍婦」「子供を産むことは社会的再生産の一部であり、その負担は女性だけに負わせるべきではない」といったプラカードを持って立っている役の人もいました。

中山大学4年の鄭楚然さんによると、「現在、女性労働者が妊娠によって解雇されることが少なくなく、インターネットでも騒ぎになっているので、そのことから今回のパフォーマンスアートを構想した」ということです。

彼女たちは、道行く人にも、剣や指(の形をしたもの)を突きつける役をするようお願いし、それに応じたある人は、「私の友だちも、妊娠で解雇されたり、産休を短縮されたりしましたから、この子たちの行為を支持します」と語っていたそうです。

鄭楚然さんたち10名の女子大学生は、「sinnerb」というフェミニストグループに属しており、広州で「男子トイレ占拠」アクションした人々でもあるとのことです(14)。また、鄭さんは、4月には、全国の上位500社の企業のCEOに、性差別的な採用条件(「男性のみ」「男性優先」「容姿端麗」「身長1m65cm以上」「三年以内に出産してはならない」)を改めるように訴える手紙を郵送する活動もしています(15)。こうした活動についても、メディアは報じていますし、その際には、女性差別の深刻な実態やそれを批判する識者の談話も掲載しています(16)

先月の私のブログの記事「女性差別反対を訴える女子大学生のパフォーマンスアート続く」でご紹介したうち、「1.豚足を切るパフォーマンスによって、セクハラ反対を訴える」(広州)と「2.花瓶を叩き壊すパフォーマンスによって、ミスコン反対を訴える」(西安)についても、そのメンバーは、「男子トイレ占拠」アクションをした女性たちと重なっている部分がありました。

ただ、今回、最初に述べた、就職差別反対のために全国各地でパフォーマンスアートをした女子学生たちについては、4月8日に西安のパフォーマンスアートをおこなった発起人が夏媛さんが、3月18日に西安で「男子トイレ占拠」アクションをした発起人でもあるのを除けば、両者のつながりを示す報道はとくに見当たりません。ひょっとしたら、ネットワークの系列が異なるのかもしれませんし、それだけ広がりを持ったアクションになっているということかもしれません。

[関連記事]
『男子トイレ占拠』などのパフォーマンスアートの成功支えた周到なプラン

(1)女性差別反対を訴える女子大学生のパフォーマンスアート続く」の参照。
(2)女性差別反対を訴える女子大学生のパフォーマンスアート続く」の参照。
(3)找工作要学"花木兰"女扮男装?――女大学生以行为艺术抗议就业性别歧视的痛与重」新華網2012年4月26日。
(4)杭州惊现“花木兰”穿越求职 呼吁关注就业歧视」湖南在線2012年4月16日(来源:華声在線)[写真あり]。
(5)女性差別反対を訴える女子大学生のパフォーマンスアート続く」の参照。
(6)南京招聘会上 女孩扮“花木兰”呼吁抵制性别歧视」南報網2012年4月22日、「“花木兰”穿越招聘会 呼吁给女性平等就业机会」鳳凰網2012年4月23日(来源:現代快報)。
(7)阜阳一招聘会现场惊现穿越版“花木兰”」中安在線2012年5月2日[写真あり]。
(8)“花木兰”穿越来应聘」現在網2012年4月29日(来源:長江商報)[写真あり]。
(9)女生扮花木兰现身招聘会呼吁消除性别歧视」鳳凰網2012年5月14日(来源:中原網)[写真あり]。
(10)程思明「扮“花木兰”赴招聘会,行为还是艺术?」舜網2012年5月15日。
(11)左崇年「“花木兰”现身招聘会是无奈维权的“踢场子”」網易新聞2012年5月15日(来源:西安日報)。
(12)杭州惊现“花木兰”穿越求职 呼吁关注就业歧视」湖南在線2012年4月16日(来源:華声在線)。
(13)找工作要学"花木兰"女扮男装?――女大学生以行为艺术抗议就业性别歧视的痛与重」新華網2012年4月26日。
(14)女大学生以行为艺术批判无良企业声援准妈妈」新浪収蔵2012年5月14日(来源:南方網)[写真あり]。
(15)“三年内不得生育”竟成某些企业女性入职硬性要求 女大学生向全国500强企业CEO邮寄倡议书 对招聘性别歧视说不」『南方日報』2012年5月8日。
(16)同上および「揭职场生育陷阱:休产假只发基本工资不合法」新浪財経2012年5月15日(来源:金羊網-羊城晩報)。
関連記事

葉海燕さんの婦連批判と「民間婦連」、底辺の女性への視点

セックスワーク問題やエイズ問題の活動家として知られる葉海燕(流氓燕)さんは、昨年から、広西チワン族自治区の玉林市博白県を拠点にして、セックスワーカーなどのために「中国民間女権工作室」と同工作室が管理する「浮萍健康服務工作室」の活動を開始しました(これまでの経過については、本ブログの記事「『第1回セックスワーカーデー』、中国民間女権工作室、セックスワーカーの互助団体の萌芽」、「葉海燕らによるセックスワーク合法化の街頭宣伝と葉の拘束、第2回セックスワーカーデー中止をめぐって」、「中国民間女権工作室(葉海燕ら)に対する当局の弾圧と同工作室の活動停止」、「葉海燕さんが広西を拠点に中国民間女権工作室の活動を再開」参照)。

今回は、今年3月、葉さんが「中国民間婦女連合会」の主席を称するようになったという話を中心に紹介させていただきます。

中華全国婦女連合会やフェミニズム研究者に対する批判

葉さんは、一昨年には、中国共産党の指導下にある「中華全国婦女連合会(全国婦連)」に対して、「中国の女性の現状を変えるために最初にやるべきことは、婦連を打倒することである。婦連を打倒しなければ、中国の女性には永遠に未来はない」(1)とか、「もし婦連がこれ以上何もしないならば、また、もし中国の女がこのように沈黙し続けるならば、私は、すべての女性の公民に、婦連の主席を罷免することを提案する」(2)といった強烈な批判をしています。

葉さんは、昨年書いた「女性の力をどのようにしてそびえ立たせるか」(3)でも、中国では、女性の権利のための(全国的な)団体は全国婦連しか認められていないことと、それが中国政府に従属していることを批判しています。

女性の力がかくも弱い元凶は2つある。第一に、中国の婦連であり、第二に、中国の民政部のNGOの発展に対する制限、民間の組織に対する壟断である。

この罪科を中国の婦連に帰す理由は、中国の婦連は中国の女性の唯一の権利擁護機構であり、唯一の声を発するルートだからである! けれども、彼女たちは、この重要な位置を占めながら、何の働きもしていない。婦連は、中国政府の裏庭、小さなお手伝いさんになっている!

中国の婦連が家のことに口出ししないお手伝いさんになるのはいいだろう。しかし、それならば、少なくとも民間を開放して、他の女性に声を発する場を与え、声を発する機会を与えるべきである!


続けて、葉さんは、中国のフェミニズム研究者にも不信の念を表明します。

現代の中国にフェミニズムはあるのか? 私はないと思う。すべてのフェミニズムに関する研究は、ばかばかしい! ばかばかしい点は、最初は他人からの引用で、まん中は痛くもかゆくもないことを書き、最後に他人の結論を書くところだ。中国のフェミニズムは、中国の女性からズレている。私はフェミニストの研究者たちが何をしているのか知らない。どうせ海外のフェミニストと密接に交流しているのだろう。


かなり乱暴な議論だと思うのですが、以下でも見るように、中国の底辺の女性の立場から発言している葉さんから見ると、そういうふうに見えるも無理はないという面もあると思います。

葉さんも、セックスワーク問題に理解がある李銀河さんについては高く評価しているのですが、「残念ながら、彼女は孤独すぎる」と言います。葉さんは、艾暁明教授らについても評価しており、そのほかに名前を憶えていない多くの女性も「それぞれ孤独に光を放っている」とは述べていますが、「これらのきらめきは、結局、限りがある」と言い、次のように述べています。

私自身は大胆な構想を持っている。まず、私は、女性の権利を学ぶ必要がある! と思う。だから、私たちには、女性を訓練できるフェミニズムの機構が必要だ。

このほか、私たちには、本当に女性を代表して声を発することができる女性の指導者が必要だ。

もし本当に私たちが中国の女性の権利の進歩を目にしたいのならば、かならず中国の婦連をやつけなければならない! さらに、見かけ倒しのフェミニズムの権威である専門家を恥ずかしめて、彼女たちをステージの前に立たせて、まず自分を解放させなければならない。


葉さんには、地道な女性グループの実践や研究者の地道な研究が十分視野に入っていないようでもあり、いきなり「指導者」の登場を言っているあたりは、現実から浮いている感じもあります。といっても、中国ではそうした地道な活動は大変弱く、とくに葉さんが活動しているセックスワークの分野などにはほとんどいないこと、研究者を含めて女性の間の階層分化が著しいことを考えると、葉さんのような考え方も中国の現実の反映だと思います(日本の現実もそれほど大差ない、という気もします)。また、婦連に焦点を当てているのは、根源にずばり焦点を当てた、何者にも囚われない葉さんならではの発言だと思います。

「民間婦連」の主席に

民間婦連は創設は、私が見るかぎり、最初は、Blue Bvshovzkiさん(=葉海燕と思われる)が2011年8月1日、「民间妇联」という豆瓣(douban。SNSの一種)を設置し、8月3日(葉さんの言う「セックスワーカーデ―」。3月8日の国際女性デーの逆)に、その豆瓣にBlue Bvshovzkiさんが「民間婦連の設立の成功を熱烈に祝う!!!」(4)と書き込んだ時ではないかと思います。

ただし、それは「中国民間女権工作室」の別名であったようで、2011年8月7日、葉さんは、ブログで、「中国民間女権工作室は、中国民間婦連である。その主旨は非常にはっきりしており、明確である。すなわち、民間女性の権益を保護し、民間女性の自己保護能力と権利擁護意識を高めることである」(5)と述べています。

上の主旨は当たり前のことを述べているようですが、全国婦連の場合は、その規約の冒頭に、「中華全国婦女連合会は、全国の各民族・各界の女性が、中国共産党の指導の下に、いっそうの解放を勝ち取るために団結した社会的大衆団体であり、党・政府と女性大衆とを結びつける橋梁・紐帯であり、国家政権の重要な社会的支柱である」と書いてあるのですから、かなり異なります。

今年2月21日、葉海燕さんは、騰訊ミニブログ(微博)で「あなたは、葉海燕が中国の婦連の主席になることに同意しますか?」という投票を呼びかけました。2月22日時点で、すでに1252人が投票し、1139人(91.05%)が「同意」、92人(7.35%)が「不同意」、20人(1.60%)が「棄権」という選択をしました(6)

葉さんは、自らの「施政綱領」は、「それぞれの階層の女性が、みな平等な発言権・発展権・参政権を持てるようにする」という一言が中心だとします。葉さんが言うには、「改革開放後の中国では、これらの権利は、官界の女の専売特許になった。普通の女性は、肉体を使って姻戚関係にならないかぎり、政策決定をする階層に入るは難しいし、たとえ入っても、必ずしも発言権はない」と言います(7)。この点は、次に述べる、葉さんが底辺の女性のニーズへの注目していることとつながっています。

葉さんは、3月8日に、中国民間婦女連合会の設立を宣言すると述べました(8)

ただし、民間婦連は、組織としての実体はないようで、「葉さんが『民間婦連主席』を自称した」というのが実際のところに近いようです。

中国では、共産党の傘下にある大衆団体とは別個に同じ系列の大衆団体を設立することは、党の指導を否定する行為として、取り締まられると思います。にもかかわらず、中国当局が正面から葉さんを拘束したりしていないのは、組織としての実体がないからではないかと思います。

ただし、ミニブログでの投票結果や『南方都市報』でも記事になっていることを見ると、葉さんは、まったく孤立した存在とはいえないようです。また、公然と「民間婦連」を称している状況があるということは、中国のある種の社会的変化を示しているのかもしれません。

底辺の女性のニーズに立脚

葉さんは、「民間婦連」の設立を宣言した当日、「三八女性デーに中国の底辺の女性のニーズを語る」(9)という文を発表しています。

葉さんが言う「底辺の女性」とは、「普通の女性労働者、セックスワーカー、出稼ぎの若い女性労働者(打工妹)、低収入の民間の教師、基層の看護師などであり、私たちのように、経済的条件がもともと不足していて、バックには何もなく、青年時代から中年までずっと家族のため、生きるために苦労して働き続けた女性」のことです。葉さんは、「三八女性デーは権利のための闘いの祝日であるのに、私たちには自分の声を発する機会がない」と言って、以下のように底辺の女性のニーズをまとめています(ここにも、婦連に対する厳しい批判がてできます)。

1.私たちには、自分の女性の代表が必要である。それぞれの領域に必要である。農家の女には農家の女の代表が必要であり、打工妹(若い出稼ぎ女性)には打工妹の代表が必要であり、セックスワーカーにはセックスワーカーの代表が必要であり……そうしてこそ、私たちの声を十分に発することができる。私たちは、人民代表大会に入ることを望む。

婦連には私たちを代表させないようにお願いする。婦連が代表しているのは、指導者の奥さんや明るくて艶やかな貴婦人である。そういう、きめ細かな肌で、豊満な体つきをした、貧しい人の家に行ったら、鼻を覆って眉を顰めるような女は、私たちの代表ではない。

2.私たちは、毎年2回、無料の婦人科の検査を受けることができなければならない。私たちの多くの農村の姉妹は、生活の負担が重く、経済的に困窮しており、体調が悪くても、近所の診療所で適当に注射をしてもらい、ちょっと薬を飲むことしかできない。全人民に対する医療保障を推進できない以上は、まず女性に適切な予防措置をとるべきだ。

3.私たちの中のシングルマザーは住宅手当が必要だ。離婚した女性は、たいてい夫に家から叩き出されて、家もないのに、子どもを養わなければならない。

4.私たちには私たちの権利を保護できる機構が必要である。中国の婦連の権利擁護ホットラインは、役に立っているのか? もし中国の婦連がこの権利擁護ホットラインをきちんとやれないなら、それを他の民間組織に引き渡してほしい。

5.上訪(陳情・直訴)する女性のために、臨時の救助ステーションを設置することが必要である。そこに民間のボランティアが行って、援助をすることも必要だ。

6.私たちのセックスワーカーの姉妹は、自分の声を発する必要があり、自分のために権利を保護する組織が必要だ。

7.一部の工場の打工妹は、労働時間と労働強度を減らし、待遇を向上させる必要がある。

8.私は、人民代表大会の中に、エイズに影響を受けた女性がいることを希望する。

9.私は、国家に、計画出産の中で傷つけられた女性に精神的賠償をすることを要求する。

10.強制的な身体検査と強制的な避妊リング装着をすぐに停止して、女性に、産児制限の方法を自由意志で選択させなければならない。


葉さんは、婦連のホットラインの現状に示されているような、現在の婦連の政策の実効性のなさを批判するとともに、婦連が一部の上流の階層のものになっていて、多様な女性を代表していないことを批判し、底辺の女性に目を向けています。

そして、葉さんの言う「底辺の女性」の中には、「セックスワーカー」「エイズに影響を受けた女性」「上訪する女性」「計画出産の中で傷つけられた女性」のような、これまで婦連のメディアが取り上げないのみならず、研究の中でもごくわずかしか扱われなかった女性、取り上げることがタブーになっているような女性も含まれています。

セックスワーカーの立場に寄り添って

セックスワーカー問題は、葉さんが長年取り組んできた問題ですが、たとえば、2011年12月にも、葉さんは、「売買春などの犯罪行為の取締り」を国家のエイズ防止活動の一環とすることに反対するよう呼びかけています(10)

その理由は、以下の3点です。
1)「売買春の取締り」は、エイズ防止にとって有効な戦略ではない。
2)コンドームを売買春の犯罪の証拠にすることは、セックスワーカーのコンドームの使用率を低下させる。
3)「売買春などの犯罪活動の取締り」を政府の公の文書に書くことは、セックスワーカー集団に対する差別視を強め、セックスワーカーが健康に関するサービスと関与を受けることを難しくする。

全国人民代表大会でも、黒龍江省の遅夙生弁護士は、繰り返し「売買春を合法化する」提案を出しており、そのことについては、葉さんも支持しています。

けれど、報道から見るかぎりでは、遅夙生弁護士の提案は、売買春の合法化によって、性病を減らしたり、強姦を減らすことを目的にしています(11)

それに対して、葉さんの場合は、単なる「合法化」ではなく、以下のように、「合法化」した際に、セックスワーカーに対する性的搾取を防ぐための施策についても述べています。

1.課税を重くしすぎないよう保証すること。政府がセックスワーカーの労働所得を搾取することは阻止しなければならない。
2.合法経営であることの証明書を、政府が金を集める道具にしてはならない。
3.セックスワーカー自身の労働組合、あるいはセックスワーカーのための権利保護組織がなければならない。
4.未成年の少女を保護し、合法的な性奴隷を防止しなければならない。(12)


葉さんは、中国政府は、一方では売買春を消滅させたことを成果として宣伝する一方で、多くの「紅灯区」が警察の収入の重要な源になっていることを批判しています(13)

また、葉さんは、男性がコンドームなしに性交をすることを防止する政策も求めています。

もう一度男性の友人に強調しておく――オーストラリアでは、客がコンドームやオーラル(口)用スキンを用いない性交を要求したら、違法である。中国では、私たちがセックスワーカーの健康に関与するとき、最大の問題は、客がコンドームを付けたがらないことである。オーストラリアは、法律によってセックスワーカーを保護している。これこそ、本当に有効な関与の方式であり、これこそが、公民一人一人に対する法律の保護である!――国務院弁公庁よ、わかるか? (14)


計画出産政策への抗議

葉さんは、3月22日にも、中国の計画出産政策が女性の人権を侵害していることに抗議声明を出しています。これは、中国ではタブーに近いことだと思います。

計画出産は中国政府が女性に対しておこなっている最も残虐な行為である。妊娠中絶の強制、不妊手術の強制は、重大な人権侵害である。妊娠検査の強制も同様に女性の尊厳を侵犯している。
(……)
ここに私も声明を出す。中国の計画出産部門が、妊娠検査の強制、妊娠中絶の強制、リング装着の強制をしていることに再度抗議する。女性の子宮を尊重するようにお願いする。それはあなたの金庫ではない! (15)


実は、葉さんが現在拠点にしている広西チワン族自治区の玉林市博白県では、2007年5月に、「一人っ子政策」のための堕胎強要や罰金徴収に反発した住民数千人が、役場を焼き討ちするなどの暴動を起こしたことが日本の『読売新聞』でも報じられています。同県では、「一人っ子政策」違反者1万7千人以上の女性に不妊手術や中絶手術を強制し、罰金の支払いを拒否した場合は、家を叩き壊したり、テレビや電化製品などの家財の大半を持ち去ったりしたということです(16)

当時の『読売新聞』は、最も激しい暴動に発展した博白県沙陂鎮の住民の怒りの声を拾っています(17)

 「聞いてくれ。いままでなかった『社会扶養費』という新しい罰金が今年からできたんだ。年収の3倍もの1500元を支払うよう通知が来たけど、そんな金がどこにあるんだ。」
 (……)男性は3人目の子どもが生まれた16年前、罰金をすでに支払ったにもかかわらず、「規定に違反した子どもを社会が育てている」との理由で社会扶養費の支払いを命じられたのだ。

 友人が不妊手術を強制されたという女性(42)は、「彼女は精神的ショックが大きく、家から外に出られなくなっている」と怒りをあらわにした。

 黒ずくめの格好で違反者の自宅を午前2~3時に襲撃する摘発チームは、住民にとって恐怖の対象だ。
 罰金を支払えない家庭に対しては、外壁をハンマーでたたき壊した。テレビは言うに及ばず、炊飯器や鍋も中のご飯やスープを室内にぶちまけて持ち去った。


葉さんの声明は、こうした地域的背景もあるのだと思います。

エイズ感染者

また、葉さんがエイズ感染者の女性のために力を尽くしてきたことは、すでに日本のサイトでも詳しく報じられてきたところです。

・「『それでもまっすぐ向かっていく』10歳でエイズに感染した女性の告白記=人々に差別され、行政に無視され……―中国・河南省」KINBRICKS NOW 2010年11月27日
・「『血の禍』 ある中国エイズ患者の軌跡(電子書籍配布)」

葉さんに対する嫌がらせ・弾圧

1月には、葉さんの新浪ミニブログが削除され(18)、2月26日には、博白県城区浮萍健康服務工作室の宣伝ボードが剥がされた上に、刃物で切り裂かれました。また玄関の高い所にかかっている、「博白県城区浮萍健康服務工作室」と書いてある看板も、刃物で掻き破られていました(19)

私は、このような襲撃事件は、何らかの形で権力とつながりのある者による犯行である可能性があると思います(20)

続いて2月末には、葉さんの会社のインターネットがつながらなくなって、葉さんが辞職せざるをえなくなるという事件も起きました(21)

こうした嫌がらせ・弾圧はまだ葉さんの身体の拘束を伴うようなものにはなっていないとはいえ、葉さんが「民間婦連」の主席に立候補した時期と重なっており、そうした葉さんの活動と関係しているのではないかと思います。

(1)中国女性在此时,是不俗地活着」荼蘼花尽2010年8月14日。
(2)谁是中国的女政治家? 中国女人的声音在哪里?」荼蘼花尽2010年1月24日
(3)女性的力量如何崛起?」流氓燕的博客2011年7月29日。
(4)Blue Bvshovzki「热烈庆祝民间妇联成功建立!!!」2011年8月3日。
(5)中国民间女权工作室招理事8名」流氓燕的博客2011年8月7日。
(6)你支持流氓燕当妇联主席吗?」南都網2012年2月23日(来源:南方都市報)。
(7)流氓燕twitter2012年2月23日。
(8)流氓燕twitter2012年2月24日。
(9)三八妇女节谈中国底层女性的需求」流氓燕的博客2012年3月8日。
(10)反对将“打击卖淫嫖娼”写进国家艾滋病行动指导方针的联名倡议信」流氓燕的博客2011年12月11日。
(11)女代表连续9年呼吁卖淫合法化 称可减少强奸犯罪」新華網2012年3月11日(来源:大洋網)。
(12)流氓燕twitter2012年3月7日。
(13)三八妇女节看中国女权的觉醒」美国之声2012年3月8日。
(14)流氓燕twitter2012年2月29日。
(15)「关于计划生育政策中,女性受到的伤害」流氓燕的博客2012年3月22日。
(16)「中国で数千人暴動 『一人っ子政策』違反者処遇に反発 堕胎強要や厳しい罰金」『読売新聞』2007年5月22日東京夕刊、「中国メディア暴動報じる 『一人っ子』巡り、28人拘束」『読売新聞』2007年5月24日東京朝刊。
(17)「中国『一人っ子』暴動の町 怒る住民、再発火種に 不妊手術強要で心に傷」『読売新聞』2007年5月27日東京朝刊。
(18)抗议新浪这条走狗。」流氓燕的博客2012年1月15日。
(19)工作室招牌被恶意毁坏」流氓燕的博客2012年2月26日。
(20)たとえば、2007年10月と11月には、深圳龍崗区にある「打工者—職業安全健康中心」(労働者職業安全健康センター)二度にわたり正体不明の者に襲撃され事務所を破壊され、11月には、登記代表者の黄慶南が刃物を持った二人の暴漢に襲われ全身を切りつけられるという事件が起こっている。同センターは、民間の草の根組織で、出稼ぎに来ている労働者に無償で図書サービスや労働法関連の情報や労働アドバイスを行っていたのだが、事件を警察に届けても、警察はきちんと対応しなった。香港の労働団体は、この事件を現地の既得権益集団の犯行とみており、中国政府に対して犯人逮捕に全力を挙げ、労働団体メンバーの安全を保障するよう要請するよう要求した(「中国 深圳の労働者センター襲撃される」『China Now!』第37号)。
(21)我辞职了,做一个专职的NGO,希望大家支持」流氓燕的博客2012年3月1日。
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遠山日出也

Author:遠山日出也
 検索から来られた方へ:このブログの記事を分類した一覧である「『中国女性・ジェンダーニュース+』記事総覧」を見ていただくか、下の「カテゴリー」欄を使われると、関連情報がご覧いただきやすいと思います。最近の行動派フェミニストについては、「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」をご覧ください。
 また、「中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。日本の問題の一部は、「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」や「館長雇止め・バックラッシュ裁判」でまとめています。
 恐れ入りますが、スパム対策などのため、コメントは私が拝見した後で表示させていただきます。
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