2011-12

山木教育グループ総裁・宋山木の強姦事件をめぐる議論

 2011年もとうとう大晦日になりましたが、昨年から今年にかけて、山木教育グループ(山木培训)の総裁・宋山木による強姦事件が大きな話題になりましたので、この事件について議論になったことを簡単にまとめてみました。

事件の経過

 2010年5月3日、山木教育グループの従業員の羅雲さん(仮名)は、総裁の宋山木に「清掃」を名目にアパートに連れて行かれ、脅されて裸の写真を撮られ、月経期間でしたが、強姦されました。この事件の背景には、羅さんが会社に対して辞表を出したのに対して、宋が羅さんを再三引きとめたけれども、断られ続けたということもあるようです。

 まもなく宋は逮捕され、同年12月24日、深圳市羅湖区法院は、宋被告に対し、懲役4年と、付帯民事訴訟(*)の原告の羅雲に4205.87元の賠償を命じる判決を下しました(*「中華人民共和国刑事訴訟法」第53条に「被害者が被告人の犯罪行為によって物質的損失を被ったときは、刑事訴訟の過程において、付帯民事訴訟を提起する権利を有する」とあります。詳しくは粟津光世「中国における刑事附帯民事訴訟(1)[PDF]」「同(2)[PDF]」『産大法学』42巻2、3号[2008年]参照)(1)

 宋は控訴しましたが、今年10月14日、深圳市中級人民法院は宋の控訴を棄却し、判決が確定しました(2)

 今年1月、北京衆沢女性法律相談サービスセンター(もと北京大学女性法律研究・サービスセンター)がこの事件に関する研究討論会を開催しました。そうした場などで、この事件をめぐる以下のような様々な問題が指摘されました(3)

企業の体質――従業員(とくに女性従業員)を洗脳・管理・支配

 当初から指摘されていたのが、山木教育グループの「企業文化」、企業の体質の問題です(4)

 宋山木総裁は社内では「聖人」のように扱われていました。宋は、「孔孟の道」を説くことを好み、彼が分校を視察した際には、必ず数名の従業員が花束を持って出迎えるという具合でした。毎週月曜には長い従業員大会があり、そこで、従業員は「山木の歌」を歌い、「羊羔跪乳」という宋の「教え」を暗唱させられていました。

 また、従業員はみな、本名と異なる「黄金」という同じ姓を付けられて、社員どうしは、本名でなく、「黄金○○」という名前で呼び合わなければなりませんでした。

 会社は「山木基本法」と称する規則によって管理されていました。山木基本法は280もの罰則を定めており、たとえば、勤務中は携帯電話の電源を切っていなければ、罰金を払わなければなりませんでした。会社には「査察省」と称する規律監査専門の部署があり、たとえば上の点については、「査察省」の人が抜き打ちで社員の携帯電話に電話をして検査していました。従業員どうしの監視と密告も奨励されていました。

 山木教育グループの従業員の多くは女性であり、とくに宋の執務室がある深圳山木国際科技ビル教学本部(CCVIP)の従業員は、幹部の3名を除いて、みな女性でした。山木教育グループは、済南に「山木女子学院」という全日制の教育機構も持っており、スタイルと容貌がスチュワーデスのような学生を採用し、学院の課程が修了した後は山木で仕事をさせていました。

 山木の女性従業員は制服を着用しなければならず、とくにCCVIPでは、深いVネックの青い制服に、青と黄色の縞のスカーフをつけることになっており、中にワイシャツを着ることは許されていませんでした。また、女性従業員は、長時間立って働かなければならないにもかかわらず、高さ3センチ以上(CCVIPでは5センチ以上)のヒールの靴を履くように決められていました。髪型や装身具にも規則があり、パーマなどは禁止されていました。また、CCVIPの女性は、黒の絹の靴下を履くと決められていました。

 山木の従業員のほとんどは寮に住んでいましたが、女性従業員はスマートな身体でなければならないとして、毎月20回・30分以上のエアロビクスとダイエットを義務付けられており、寮長が定期的に体重を測って、基準に達していなければ、罰金を払わなければなりませんでした。

 女性従業員の大多数は、20歳あまりで、9割前後はボーイフレンドもおらず、また、山木基本法により、入社2年以前の恋愛や社内での恋愛は禁止されていました。

 山木はこのように、とくに女性の「身体」を管理・支配していました。

 張栄麗さん(中華女子学院法律系副教授)は、山木教育グループの、このような「従業員を精神的に徹底的に洗脳し、総裁に絶対的に服従するという理念を持たせる(……)企業文化は、けっして山木集団だけのものではない。従業員を精神的に種々さまざまな形で奴隷にし、手なずける企業文化は、国内のいささかの企業、とくに私営企業において目立つ」と言います(5)

 北京衆沢女性法律相談サービスセンターの研究討論会では、労働者に対するこうした支配のあり方自体が労働法に違反していることも指摘されました。しかし、「こうした企業文化は、しばしば、経済の発展とか、地方に対する経済的貢献、就労問題の解決、企業誘致・資金導入といった現実の利益に隠蔽されて、地方政府は追及せず、労働組合と婦女連合会もほおっておくため、企業は閉鎖的な独立王国になる」(張栄麗)という状況もあるそうです。

 弁護士の李瑩さんは、こうした「従業員を奴隷化」するような企業文化が生じた原因について、一つには、企業の管理の現代化が不十分であること、もう一つには、中国の伝統文化の中には封建的なカスが多く、宋も「儒教文化」を強調していたことを述べています。けれど、その一方、山木教育グルーブは「『改革開放の最前線』の地である深圳の企業」であることを指摘する人もあります(6)

 李瑩さんも触れていることですが、やはり、まず何よりも、政府や労働組合が企業のあり方を規制・監督することが重要でしょう。また、被害者の羅さんは「婦女連合会や共産主義青年団は、私たちを保護する措置を取って、このようなことが再び発生しないようにしてくれるのですか?」とも問うています(7)。しかし、中華全国婦女連合会の機関紙である『中国婦女報』のこの事件の報道の中にも、自分たちの役割について反省した記述は見かけません。

被害者に対する二次加害、強姦罪の要件など

 被害者の羅さんは、事件について、「私を信じる人も、私を信じない人もいました」と述べています。羅さんの言うことを信じない人たちは、「なぜおとなしく宋について彼のアパートに行ったのか?」「なぜ暴行されたときに抵抗しなかったか?」と尋ねました。なかには、そこから、羅さんと宋の間に性の取引(売買)があったのではないかと憶測する人もいました。

 被告人の宋も、一審での弁護や控訴状の中で、2人は性の取引をしたのだと言明しました。宋は、羅から5000元を要求され、会社の財務を通して羅に3000元与えたとも言いました。宋が控訴した際には、宋の弁護士が記者会見を開いて、「羅さんは抵抗しなかった」、だから「合意のうえの性関係だった」と主張しました。また、羅さんには「2回オーガズム」があったなどと述べた控訴状を全文公開したほか、羅さんが同棲をしていたなど、彼女の人品や性の経歴を貶める発言をしました。

 しかし、羅さんが宋のアパートに行ったのは、アパートの清掃を、内勤の一つの任務だと考えていたからでした。また、羅さんが抵抗できなかったのは、宋が羅さんを脅迫していたからでした。また、抵抗できなかった背景には、宋の従業員に対する絶対的支配が確立していたので、羅さんには宋に対する恐怖心などがあったという点もあると、弁護士の李さんは言います。

 裁判の判決も、羅さんが宋に対して5000元を要求したなどという話は、宋が言っているだけで証拠がないこと、後に3000元を振り込んだのも、羅さんに対する「補償」という意味だったと宋は警察に対しては語っていたとして、宋の言い分を退けました。

 李瑩さんによると、今回の判決は、宋と羅との関係や当時の状況、事後の羅の反応などをもとに強姦を認定しており、羅さんが抵抗しなかったから強姦ではないという議論は退けているとのことです。判決が依拠したのは、1984年に最高人民法院などが出した「当面の強姦事件の処理における法律の具体的応用の若干の問題に関する解答(关于当前办理强奸案件中具体应用法律的若干问题的解答)」だそうで、この司法解釈は「強姦の認定は、被害女性が抵抗を示すか否かを必要条件にしてはならない」と一応述べています(8)

判決の不十分点

 ただし、李瑩さんは、以下のような点から見ると、今回の判決の量刑は軽すぎると言い、宋は懲役5年以上であるべきだと述べています(9)
 ・宋は、羅さんが月経期であることを知りながら、職務と権力を利用して強姦をおこなったが、月経期に性行為をすることは、身体に対して与える傷害が大きい。
 ・宋は、有名人として、社会的責任感を持つべきであり、彼がこのようなことをしたことは、社会に与える影響が劣悪である。
 ・宋は、一貫して罪を認めず、さまざまな手段で被害者を傷つけ続けている。

 また、警察の捜査の問題点として、多数の被害者がいたにもかかわらず、捜査が緻密でなく、証拠の収集が不十分だったために、裁判では1人に対する強姦しか確認できなかったという問題も指摘されています(10)。 

刑事事件の被害者の精神的損害賠償

 賠償金額の4205.87元は、日本円にすると5万円程度であり、日中の貨幣価値の違いを考慮したとしても、非常に低額です。これは、医療費・交通費・宿泊費の合計であり、精神的損害賠償は含まれていません。

 弁護士の李さんも言うように、性侵害事件においては、物質的損害よりも、女性の精神的損害の方が大きい。李さんは羅さんに、5、6回会ったそうですが、羅さんは、毎回、顔中に涙を流し、全身が震えていたということです。法廷でも、羅さんの手や体は震えていたとのことです。

 今回、精神的損害賠償が認められなかったのは、以下のように、法律自体に欠陥があるからだそうです(11)

 ・「刑事訴訟法」第77条が「被害者は被告人の犯罪行為によって物質的損害を被った場合は、刑事訴訟の過程で、付帯民事訴訟を起こす権利がある」と規定していることからわかるように、中国の刑事訴訟法では物質的損害の賠償だけを認めていて、精神的賠償を認めていない。

 ・2001年3月の「最高人民法院の民事の権利侵害の精神的損害賠償の責任確定の若干の問題に関する解釈(最高人民法院关于确定民事侵权精神损害赔偿责任若干问题的解释)は、人身権の侵犯が引き起こす精神的損害賠償を規定し、民事領域の精神的損害賠償制度を確立した。しかし、刑事裁判は、2000年12月に最高人民法院が公布した「刑事付帯民事訴訟の範囲の問題に関する規定(最高人民法院关于刑事附带民事诉讼范围问题的规定)」が「被害者の犯罪行為によって精神的損失を被ったために提起された付帯民事訴訟は、人民法院は受理しない」としていることに固執している。

 ・では、刑事裁判が終わった後に、単独で精神的損害賠償を請求する訴訟を起こせばいいかというと、最高人民法院は、2002年7月の司法解釈で、そうした訴訟は裁判所は受理しないと決めている(「关于人民法院是否受理刑事案件被害人提起精神损害赔偿民事诉讼问题的批复」)。

 ・2010年7月に施行された「侵権責任法(中华人民共和国侵权责任法)」(翻訳と解説は、浅野直人・林中拳「中華人民共和国侵権責任(不法行為責任)法について」『福岡大學法學論叢』55巻1号[2010年])は、精神的損害賠償を認めた。侵権責任法は刑事訴訟法より上位法なので、刑事裁判でも精神的損害賠償を認めさせることができるはずだ。しかし、この事件については、施行以前に起きているので、侵権責任法を適用させることはできない。

 法律の規定がややこしいので、こうした整理でいいかどうかわかりませんが、性暴力の裁判において絶えずこの点が問題になっていることは確かで、たとえば、この12月に北京衆沢女性法律相談サービスセンターが開催した職場のセクシュアルハラスメントに関するシンポジウムでは、「職場の性侵害の精神的賠償の訴訟は、単独の民事訴訟にすべきだ」という意見が出たりしています(12)

セクシュアルハラスメントに関する法律の不備

 そもそも、セクシュアルハラスメントに関する法律が不備であるという問題も指摘されています。

 李思磐さんは、次のように言います。「今まで、わが国の法律がセクシュアルハラスメントに対して明確に規定したのは、『婦女権益保障法』の中だけだが、この法律は強制性よりも唱道性が強い。現在までのところ、国内の職場のセクハラについて起訴した事件の中で、『セクハラ』を理由として立件されたものはない。というのも、最高人民法院の立件の理由の中には『セクハラ』はないからである。
 立法解釈・司法解釈などの手続き上で使うことができる規定がないために、国内のセクハラ事件は、当事者に重大な傷害を負わせた場合を除いて、基本的には証拠不十分で敗訴する。勝訴した事件は、その多くは、損害・結果が重大だった場合であり、貴陽の電力供給局の女性従業員が上司から『解雇するぞ』と脅されて猥褻な行為を強制された事件が、『3万元あまり』という史上最高の賠償額だったが、当事者はもう統合失調症になっており、賠償と損害はやはり釣り合っていない。
 法律上の危険やコストがきわめて低いことが、宋山木のような上司が、再三再四、女の部下を侵犯する根本的原因である。」(13)

 また、先日述べたように、単に加害者個人だけでなく「会社としての責任」を追及する規定に不備があるという問題もあります。

 ごちゃごちゃ書いてきましたが、宋山木事件の背景には、このように何重もの問題が重なり合っている――ということのようです。

(1)宋山木强奸罪名成立 一审获刑4年」『深圳特区報』2010年12月25日。
(2)宋山木二审情绪激动“喊冤”数分钟 仍面临4年徒刑」『南方都市報』2011年10月15日、「聚焦宋山木“强奸案”三大焦点 称“要告到底”」法制網2011年10月16日、「宋山木获刑4年,为何是全国男人的悲哀」鳳凰網2011年10月17日(来源:紅網)。
(3)北京衆沢女性法律相談サービスセンターの研究討論会での議論についての報道は大変多く、「宋山木强奸判四年不服 律师:反映职场性别压迫」中国新聞網2011年1月14日、「“温柔的强奸也是强奸” 11位法律、社会学专家北京开研讨会:认同深圳罗湖法院对宋山木案的定罪」『南方都市報』2011年1月15日、「宋山木案:专家建议警 “奴化员工”的无良企业文化」婦女観察網2011年1月16日、林禾「宋山木强奸案研讨会关注职场性侵害」(2011.1.16)裴暁蘭「针对宋山木上诉 受害方律师召开研讨会」(2011.1.17)畢琳「专家研讨山木案背后:警“物化女性”的企业文化」(2011.1.18)(この3篇は、『婦女観察電子月報』第68期[PDF][2011年1月]所収)、「宋山木强奸案研讨会暨新闻发布会在京举行,与会专家学者呼吁――纵容性骚扰的企业文化该追责了」『中国婦女報』2011年1月18日、「宋山木强奸案续:“奴化员工”制度违背劳动法」新華網2011年1月24日(来源:検察日報)、「专家研讨宋山木强奸案:山木集团的企业文化令人震惊」新華網2011年2月1日(来源:中国青年報)などがあります。シンポでの張栄麗さんの発言は、「宋山木强奸案折射出的法律和社会问题」『婦女観察電子月報』第68期[PDF](2011年1月)。他に、二次被害の問題に関しては、長平「莫让强奸案受害人遭到“二次伤害”」(東方早報網2011年1月6日)も論じています。
(4)山木教育グループの体質を詳細にルポしたものとして、李思磐「山木王朝――性侵害疑云中的山木集团调查」『南方都市報』2010年5月21日、記者李思磐、評論者洛洛「总裁的王朝――性侵害疑云后的山木集团」巫婆的夜間飛行2010年5月24日、李思磐「山木王朝――性侵害疑云中的山木集团调查」『婦女観察電子月報』第68期[PDF](2011年1月)。フェミニストの李思磐記者がこのような取材をした内幕と考察については、「山木王朝采访内幕及我的冷思考」(2010.5.27)『婦女観察電子月報』第68期[PDF](2011年1月)(来源:時代周報)。山木集団の構造を分析したものとして、周周「规训与惩罚――从宋山木案说开去」(2011.1.19)『婦女観察電子月報』第68期[PDF](2011年1月)。事件全体の比較的詳しい報告は、「法制与新闻:宋山木的罪与罚」新浪網2011年2月22日(来源:法制与新聞)。
(5)張栄麗「宋山木强奸案折射出的法律和社会问题」『婦女観察電子月報』第68期[PDF](2011年1月)。
(6)楊耕身「宋山木案背后的企业专制」東方早報網2010年5月25日。
(7)李思磐「山木王朝――性侵害疑云中的山木集团调查」『南方都市報』2010年5月21日。
(8)ただし、この司法解釈の「強姦罪」の定義が「強姦罪とは、暴力・脅迫その他の手段で、女性の意思に背いて、女性と性行為を強制するを指す」となっていることについては、中国社会科学院の屈額武教授は、「この司法解釈は明らかに立ち遅れている。たとえば、何が脅迫なのか、規定が不明確であり、使いにくい。司法実践においては、精神的に強制をする脅迫は、司法機関によってあまり考慮されない」と述べています(「刑诉法修改之际,专家建议――职场性侵害精神损害赔偿应单独诉讼」『中国婦女報』2011年12月22日)。
(9)裴暁蘭「针对宋山木上诉 受害方律师召开研讨会」(2011.1.17)『婦女観察電子月報』第68期[PDF](2011年1月)。
(10)張栄麗「宋山木强奸案折射出的法律和社会问题」『婦女観察電子月報』第68期[PDF](2011年1月)。
(11)孔徳峰「宋山木只赔4000元 根源在于刑事附带民事诉讼存在缺陷」『中国婦女報』2010年12月28日。
(12)刑诉法修改之际,专家建议――职场性侵害精神损害赔偿应单独诉讼」『中国婦女報』2011年12月22日。
(13)李思磐「“宋山木案”警示反性骚扰立法须深化」東方早報網2010年5月24日。
関連記事

香港プライドパレード2011に2500人

 ご紹介が遅くなりましたが、さる11月12日、「香港プライドパレード2011(香港同志遊行2011、Hong Kong Pride Parade 2011)」(サイト:中国語英語)がおこなわれました。

 香港プライドパレードは、2008年から始まりましたが、2010年は資金不足のため中止になったので(本ブログの記事「香港プライドパレード2010が資金難で中止」参照)、今回が第3回目であり、2年ぶりの開催でした。

 主催したのは、香港女同盟会(レズビアンなどの人権団体)、香港彩虹(Rainbow of Hong Kong)(LGBTQのためのコミュニティセンター)、女同学社(レズビアンなど、セクマイの人権組織)、Gay Harmony(ゲイ団体)の4つの組織ですが、全体では20あまりの団体から参加があったようです。

 午後3時に香港銅鑼灣東角道に集合し、東角道→軒尼詩道からというルートでパレードし、修頓球場でフェスティバルをしました。約2000人でパレードを開始し、最終的には2500人が参加しました(1)(ただし「主催者側発表は2000人で、警察発表は1000人」と報じている新聞もあります(2)

我係 Lesbian  攣直男女行出櫃(テレビ画像からの動画)


香港同志遊行2011大會相集(写真集ですが、参加団体などがよくわかります)


香港同志遊行2011花絮 (短版) (動画)


 パレードのスローガンは「好愛同志 好愛平等(For Queer・For Love・For Equality)」でした。7色のレインボーフラッグを掲げて行進し、性的指向による差別禁止や同性婚姻の合法化などを訴えました(3)

 今年は、香港の政府機関である平等機会委員会の林煥光主席がプライドパレードに支持を表明したことが特徴だと思います。林主席自身はパレードには参加しませんでしたが、「レインボー大使」になって、ビデオ映像でパレードに支持を呼びかけました(4)(もっとも、6月には、社会福利署が、保守的キリスト教系団体の「同性愛治療」プログラムに資金援助をして、抗議されるという事件があったりしたようですが(5))。



 今回のパレードには、銀行員たちで作るHongKong LGBT Interbank Forumの人々も参加しました。

 香港のパレードには、毎回、台湾や大陸からも多くの方が参加します。今回は、広州のレズビアン組織である「広州同心工作小組」(ブログ:广州同心)からも、10人あまりが参加しました(6)。そのうちの1人の女子大学生の小兎さんは、メイド(女僕)のコスプレをして(なぜメイドのコスプレをしたかわかりませんが、なぜか多くのマスコミが取り上げていたので、目立つからかもしれません……)、「私自身は『ストレートの女』ですが、身近には男女の同性愛者がたくさんいます」「内地では大規模なセクシュアル・マイノリティの運動を起こすことは根本的に難しいので、わざわざ香港にデモに参加しに来ました。卒業後はセクシュアル・マイノリティのためのNGOで仕事をしたいと思います」と語っていました(7)

(1)2500同志遊行爭權益」『太陽報』2011年11月13日[写真多数]、「中港台同志 上街爭兩性平等」『東方日報』2011年11月13日。
(2)同志平等機會遊行」明報新聞網2011年11月13日。こうした数値のズレについて言えば、第2回のパレードでも、参加者は、主催者発表では「1800人あまり」でしたが、当日のテレビや一部の新聞は、参加者を「数百人」とか「400名あまり」と伝えていました(「香港プライドパレード2009に1800人あまり」)。もし「数百人」とか「400名あまり」というのが、警察側の発表にもとづいた数字だとしたら、今回の警察発表の「1000人」という数字から見ると、警察発表を基準にしたとしても、参加者が増加したと言えますが……。
(3)(1)に同じ。
(4)隔牆有耳:林煥光彩虹大使撐同志」生果日報網上版2011年11月8日。
(5)香港社署“治疗同性恋”引抗议 同志怒斥国际笑话」淡藍網2011年6月20日(来源:自由時報)。
(6)(1)に同じ。
(7)廣州直女來港撐攣友」『蘋果日報』2011年11月13日。

※今回の香港プライドパレードは、他にも「香港扮嘢同志大遊行」『新報』2011年11月13日、「两千多人参加2011年香港同志游行」愛白網2011年11月12日、「2011香港同志大游行 2000多人呼吁立法反歧视(组图)」淡藍網2011年11月12日、“Hong Kong Pride Parade: Too sexy or not enough?”Fridae2011.11.16といった記事が取り上げています。
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「女性労働者特別労働保護条例(意見募集稿)」に対する女性団体の意見

 11月21日、国務院法制弁公室は、「女性労働者特別労働保護条例(意見募集稿)」を発表するとともに、それに対する意見を求める通知を出しました(「国务院法制办公室关于《女职工特殊劳动保护条例(征求意见稿)》公开征求意见的通知」国务院法制办公室2011年11月21日)。

 中国では、1988年に、「女性労働者保護規定(女职工劳动保护规定日本語訳)」が、「女性労働者の生理的特徴が引き起こす労働の中の特別な困難を減らし解決する」(第1条)ために制定されました。上の「通知」は、その「女性労働者保護規定」の改定案について、社会の各界の意見を求めたものです(1)

今回の改定についての政府側の説明

 国務院法制弁公室は、今回の改定の主な内容を以下のように説明しています。

(一)条例の名称について

 「労働法(中华人民共和国劳动法日本語訳)」第7章の、女性労働者に対する特別な労働保護の実行に関する規定にもとづいて、「女性労働者保護規定(女职工劳动保护规定)」を「女性労働者特別労働保護条例(女职工特殊劳动保护条例)」に改める。

(二)労働禁忌範囲(女性労働者が従事してはならない坑内労働や重い肉体労働、月経中の高所・低温・冷水作業、月経・妊娠中の重労働など)について

 「女性労働者保護規定」の中の女性労働者の労働禁忌範囲についての規定は、比較的原則だけを定めたものであり、現在は、主に、もとの労働部(遠山注:現在の「人力資源と社会保障部」)が制定した「女性労働者労働禁忌範囲規定(女职工禁忌劳动范围的规定)」を執行している。条例の実効性を増すため、意見募集稿は、女性労働者の労働禁忌範囲の内容を条例に組み入れ、また、現在の経済・社会の発展状況にもとづいて十分に論証した基礎の上に、労働禁忌範囲の内容を適当に調整した。同時に、労働禁忌範囲は社会の実際の状況に基づいて不断に調整する必要があるが、労働禁忌範囲の調整のために条例を頻繁に改定することを避けるために、意見募集稿は、労働禁忌範囲を条例の付録として列記する。労働禁忌範囲の調整が必要なときは、国家安全生産監督部門が国務院衛生行政部門と共同でプランを提出し、国務院に報告し批准を得て、公布する(第3条)。

(三)産休の日数と産休中の給与について(2)

 第一に、ILO条約の規定を参照して、産休を90日から14週間に増やした(第7条第1款)。
 第二に、もとの労働部の関係規則を参照して、流産の休暇を細分化し、女性労働者が妊娠4か月未満で流産した場合は、少なくとも2週間の産休とし、妊娠4か月以上で流産した場合は、少なくとも6週間の産休とした(第7条第2款)。
 第三に、社会保険法(中华人民共和国社会保险法)と接続するため、企業労働者生育保険試行規則(企业职工生育保险试行办法)を参照して、「女性労働者が出産または流産したら、その賃金または出産手当および出産・流産の医療費用は、勤務先がすでに生育[出産育児]保険に参加している場合は、生育保険の基金から支出し、まだ生育保険に参加していない場合は、人を雇う単位から支出する」と規定した(第8条)。

(四)法律上の責任について

 「女性労働者保護規定」の法律上の責任に関する規定は比較的原則的(なものにとどまって)であり、実践においては使うのが難しかった。条例をきちんと遂行することを保証するため、意見募集稿は「人を雇う単位が本条例に違反した場合は、安全生産監督管理部門・衛生行政部門・人力資源社会保障部門が各自の職責に照らして、人を雇う単位に責任を持って期限までに改めるように命じ、『労働保障監察条例(劳动保障监察条例)』の関係規定によって罰金を課す、または直接責任を負う主管者及びその他の直接の責任者を法によって処分する」と規定した(第13条)。

産休の期間の延長をめぐって

 今回の意見募集稿について、メディアでは、産休の期間を90日から14週間(98日)に延ばした点が最も多く取り上げてられています。明確かつ具体的な変更だからでしょう。具体的には、以下のような点が問題にされています。

 1)多くの地方では、「晩産休暇」が30日ある。また、旧い「女性労働者保護規定」には、「難産休暇」が15日規定されている。それらの休暇は新しい「女性労働者特別労働保護条例」には規定されていないが、それらの休暇はなくなったりはしないか? もしなくなるのなら、実質的には休暇を延長したとは言えないのではないか?(3)

 この点について、劉明輝さん(中華女子学院教授)は、「産休を少なくとも8週間に延ばしたのは、ILO「2000年母性保護条約」(183号条約)[日本語訳]の規定と一致している」と述べています。劉さんも「各地の人口と計画生育条例の規定に基づくと、晩産の女性の実際の産休は14周より長い。たとえば『北京市人口と計画生育条例』は、24歳以後に出産した女性は晩産休暇を取れる。すなわち、90日の産休の後もう1か月休める。この点から言えば、産休を8日増やす実質的な意義は少ない」ことを認めています。しかし、劉さんは「晩産でない女性にとっては、休暇を8日増やすことに一定の意義がある」と指摘しています(4)。また、胡泉さん(弁護士)は、「新しく増える8日の休みは、これまでの基礎の上に増える」と述べており、この解釈だと、晩産休暇にプラスして8日休めることになります(5)

 2)小さな私営企業などでは、長い産休を与えることは不可能だ。産休を延ばすとコストがかかるので、企業が今よりも女性を雇いたがらなくなるのではないか?(6)

 この点について、劉伯紅さん(全国婦連女性研究所副所長)は、経済的奨励や罰則によってきちんと法律を守らせる必要があることを指摘しています(7)

 3)現実には、妊娠・産休期間中に解雇されるとか、妊娠中に時間外労働や重い肉体労働をさせられることが多い。実効性はあるのか?(8)

 この点については、はっきりした回答を示している人はありません。やはり、こうした危惧はあります。

女性団体・女性グループの意見

 今回の意見募集稿については、さまざまな女性団体・女性グループ(中華女子学院ジェンダーと法律学術チーム、中共中央党校女性研究センタージェンダー平等唱道課題グループ、中華全国婦女連合会[全国婦連]女性研究所、手牽手交友活動室・小小草工友文化家園)が、それぞれ意見を発表しています(9)。それらの意見は、今回の意見募集稿に根本的に欠けているものを浮かび上がらせています。

 以下、どのような内容が提案されているかを紹介します。

一、法律の目的と根拠――単なる健康の保護のためではなく、男女の実質的平等のためのものとして位置づけよ

 全国婦連女性研究所の提案は、以下のように述べています(要旨)。

 本条例の第1条は「女性労働者の生理的特徴がもたらす労働の中の特別な困難を減らし解決して、その健康を保護するために、労働法にもとづいて、本条例を制定する」と規定している。

 しかし、女性労働者に特別な労働保護をするのは、その健康を保護するためだけでなく、特別な時期の合法的な労働権益を保護することによって、女性労働者に男性労働者と平等な就業の機会と待遇を獲得させることによって、実質的な平等を実現するためである。また、本条例の上位法は、労働法だけであるべきではない。なぜなら、本条例は女性という特別な集団の権益を保護するものだから、婦女権益保障法も上位法にしなければならない。

 それゆえ、本条例の第1条は「女性の権益を保護し、女性労働者のリプロダクティブヘルスと職業の発展のニーズを満たすために、労働法と婦女権益保障法に基づき、本条例を制定する」と改めるよう提案する。

 この全国婦連女性研究所の提案は、包括的なものであり、簡単にですが、以下のの内容も含んでいます。

二、使用者にセクシュアルハラスメント防止の義務を課すべきである

 「中華女子学院ジェンダーと法律学術チーム」は、「使用者は職場のセクシュアルハラスメント防止の措置を取らなければならない。職場のセクシュアルハラスメント防止の義務を履行していない場合は、権利を侵害した者とともに連帯責任を負わなければならない」という条文を入れるように求めています。その理由としては、以下の点を挙げています(要旨)。

1.職場のセクシュアルハラスメントは、労働者の人格尊厳権・労働安全衛生権・平等就業権を侵犯する

 労働者の労働環境の安全・衛生を保障し、労働者の人格の尊厳と平等な就業権を尊重することは、労働法の基本的精神の重要な内容の一つであり、核心的な労働基準の一つであり、労働者の基本的権利である。

 わが国が署名・批准したILOの「職業上の安全及び健康に関する条約」(第155号条約)[日本語訳]は、締約国に労働者の生命・健康、仕事の能力、人道的労働環境を保護する措置、とくに法律的措置を要求している。職場のセクシュアルハラスメントは、労働者の人格の尊厳と労働の安全衛生を侵犯し、被害者の心と体を損ない、労働関係を緊張させ、仕事の環境を劣悪にする。被害者は往々にして離職し、そのことによって生存権も脅かされる。

2.職場のセクシュアルハラスメントは、反セクシュアルハラスメント法の重点である。また、男性の被害者も保護する必要がある

 「婦女権益保障法」は、女性しかセクシュアルハラスメントを受けないように保護していない。また、セクシュアルハラスメントを一般的に禁止しているだけで、職場のセクシュアルハラスメントを言っていない。各国の反セクシュアルハラスメント法は、みな職場のセクシュアルハラスメント禁止に重点を置いている。反セクシュアルハラスメント制度の重点を最優先にし、両性ともが職場でセクシュアルハラスメントに遭遇した際に保護が必要だという現実のニーズに対応するためには、労働法の中で規制をしなければならない。労働法はまだ改正計画の中に入っておらず、専門の立法はいつになるかわからない。それゆえ、本条例の中でその制度を増設することは、理性的な選択である。

3.「防止を処罰よりも重視する」ことが、世界の反セクシュアルハラスメント立法の理念である

 他の地域の成功した経験、台湾の「セクシュアルハラスメント防止法」、フィリピンの「1995年反セクシュアルハラスメント法」などは、みな雇い主が職場のセクシュアルハラスメントを防止する義務と、義務を履行しなかった場合の賠償責任を規定している。このような規定は、使用者に職場のセクシュアルハラスメント防止メカニズムを構築するよう促進することができる。

 国内の多くの裁判の例は、問題が起きて後に救済するのは、コストが高すぎることを示している。立証が難しく、危険が大きく、勝訴が難しく、賠償が少ないだけでなく、報復されたり、世論の圧力によって形成された偏見にさらされたり、家族のメンバーからさえ足を引っ張られる危険もある。それゆえ、職場にセクシュアルハラスメント防止のメカニズムを設けることが極めて重要だと言える。

4.会社が被告になる裁判例は、雇い主の責任についての立法のニーズが現実にあることを明確に示している

 司法実践の中では、会社とセクハラ加害者が共同で被告になる裁判がすでに出現している。たとえば、全国を騒がせた、2009年の女性ホワイトカラーLが上司の横山宏明と広州の某日系企業を訴えた権利侵害事件では、初めて会社が被告席に座らされた。被告会社に対する原告の請求は支持を得られなかったとはいえ、この裁判は雇い主の責任についての立法のニーズを明確に示した。関連する国家の立法がなく、地方の立法が不明確だったことによって、被告会社に対する原告の理に合った請求が支持を得られず、この裁判が体現している法律上の正義は大きく割り引かれた(遠山注:この事件とその判決については、本ブログの記事「広州でのセクハラ勝訴判決をめぐって」参照)。だから、この空白を早急に埋める必要がある。

5.国家の立法が地方の法規に立ち遅れており、国家の法制の統一に不利である

 職場でのセクシュアルハラスメントの蔓延を食い止めるために、大多数の省・直轄市・自治区は、地方性法規の中でセクシュアルハラスメントを防止する雇い主の責任を定めている。たとえば、「四川省『中華人民共和国婦女権益保障法』施行規則」第47条は、「人を雇う単位と雇い主は、仕事の場所でのセクシュアルハラスメントを制止する措置を取らなければならない」「仕事の場所で発生した女性に対するセクシュアルハラスメントが、女性の身体・精神・名誉に損害を与え、単位または雇い主に過失があった場合は、法によって相応の民事賠償の責任を負わなければならない」と規定している。

 このような地方の法規は上位法の根拠がないために、現在、具合の悪い状況に置かれている。一方では、現実はたしかに上述の規範を必要としており、もう一方では、「立法法」に合っていないという欠陥が存在している。このような国家の法制の不統一の状況は速やかに変えなければならない。

6.使用者が職場のセクシュアルハラスメントを防止する措置はすでに試験的に成功しており、この規範は実現可能性を有している

 近年、企業が社会的責任感と企業文化の精神に基づいて、人の尊厳を尊重し、企業の生存や発展に関わる信用を損なわないようにするため、若干の先進的企業が職場のセクシュアルハラスメント防止の義務を主体的に引き受けている。たとえば、通用電気(中国)公司を模範事例として、ILOなどの機構が元北京大学女性法律研究・サービスセンターに資金援助をして、河北省衡水市老白乾醸酒(集団)有限公司、北京翠微ビル、北京西郊賓館、唯美度(AESTHETIC)国際美容チェーングループ有限公司、中山火炬城建開発有限公司、河北製薬グループ有限公司などの企業で試験的な取り組みをおこなった(遠山注:この実践については、本ブログの記事「北京大学法学院女性法律研究・サービスセンターによる企業内のセクハラ防止制度構築の取り組み」参照)。

 これらの企業の職場のセクハラ防止措置の中には、職場のセクハラを防止するための規則や制度を作り、セクハラの訴えを受理し、訴えのあった事件の処理をする専門の機構を設置するだけでなく、管理者の職責も明確している(その中には、機を逸せずに訴え又は通報のあった事件を調査・処理し、被害者に対して救済措置をとり、加害者を処罰するという積極的な作為義務と、秘密を漏らしたり、報復してはならないなどの義務とを含んでいる)。「人を雇う単位がどのような防止措置を取るか」ということについては、すでに豊富な経験が蓄積されている。規則や制度を作った後は、上述の企業の労働関係は良好であり、セクシュアルハラスメント事件は起きていない。このことは、本条例が規定を増設するために一定の社会的基礎を築いた。以上からわかるように、使用者が職場のセクシュアルハラスメントを防止する規定は、必要であるだけでなく、実行することが可能である。

7.新しい「中国女性発展要綱」が立てた反セクシュアルハラスメントの目標を実現するのに有利である

 「中国女性発展要綱(2011-2020年)」(七)「女性と法律」の中の第11項は、「女性に対するセクシュアルハラスメントを有効に予防・制止する。セクシュアルハラスメントを有効に予防・制止する法規と工作のメカニズムを作り、整備し、セクシュアルハラスメント行為に対する取り締まりの力を強める。人を雇う単位は、仕事の場所でのセクシュアルハラスメントを防止するために有効な措置を取る」と規定している。本条例で職場のセクシュアルハラスメントの雇い主の責任を規定することは、この目標を実現するうえで有利である(10)

三、女性の労働を一律に禁止している職種を設けるのをやめるべきである

 この点について、「中華女子学院ジェンダーと法律学術チーム」は、労働禁忌範囲の規定の中に、「ただし、『四期[月経期・妊娠期・出産期・授乳期]』以外の禁忌の職種については、女性労働者は従事しうる仕事を自ら申請することができる」という但し書きを付けるように提案しています。その理由は、以下の3点です。

1.坑内労働は必ずしも重い肉体労働ではない

 科学技術の進歩と機械化の程度の高まりにつれて、伝統的な人力による採掘の大部分はすでに機械によって代替され、労働強度が低下した。坑内作業には、ガス検査員などのような、重い肉体労働ではない職種もある。

2.国内外からの批判を回避する

 一部の相対的に高賃金の職種を女性の立入り禁止区域にすることは、その客観的効果は、女性の就労の機会を減らし、一部の適格な女性の就業の選択権を奪うことである。それは、客観的には女性の就労にとって障害になり、職業の性別分離を激化させる。このことは、内外のフェミニストの批判を招いている。

3.世界の基準に合わせ、立法の流れに合致させるのに有利である

 近年、「1935年の坑内作業(女子)条約」(第45号条約)[日本語訳]を批准した国家の一部はすでに脱退を声明している。たとえば、オーストラリア、スウェーデン、イギリス、ジンバブエなど少なくとも28ヵ国である。「保護」を「エンパワメント」に改めるのが、世界の立法の趨勢である。

四、月経・妊娠・出産・授乳期の権利保障を

 その一方、各女性団体(グループ)は、女性の月経・妊娠・出産・授乳期に関しては、女性の権利の保障を強化すべきことを唱えています。

 深圳市の手牽手交友活動室(手牵手工友活动室)と小小草工友文化家園(小小草工友家园)は、以下の1~3の点を修正するように求めています。この2つの団体は農村からの出稼ぎ労働者を支援している民間団体なので、この提案は、以下に見るように、出稼ぎの女性労働者の状況に基づいて書かれています。

1.「医務部門の証明を基づいて、月経痛の者は、有給休暇を取ることができる」という条文を入れる

 この提案は、「工業地区では、大量の女性労働者が電子・金属・プラスチック・玩具などの業務に従事しており、彼女たちの大多数は長い時間、立ち仕事をしており、かつ彼女たちの出勤制度は日勤・夜勤の交替制である。月経期間は身体が疲れやすく、腰と背中がいつも痛むので、しっかり休息することが必要である。しかし、多くの女性労働者は月経期間の立ち仕事のために、月経痛になり、なかには両脚が震え、仕事場で倒れる者さえいる。多くの工場は、労働者が持ち場を離れる時間を制限しており、トイレに行くのも5分を超えてはならないとか、トイレに行く回数にも規定があったりする。たとえ厳格な規定がなくても、生産量が多いので、多くの女性労働者はトイレに行けない。このことは、月経期間中の女性労働者に重大な影響がある。工場の規定は女性労働者の月経期間を考慮していないので、一部の女性労働者は月経痛でも休むことはできず、病欠を取るしかない」という状況にもとづいて出されています。

 この点については、中華女子学院ジェンダーと法律学術チームも同様の条文を入れることを主張しています。

2.「妊娠中のポストの異動は、もとの賃金と福利を変えないことを保障する前提の下でおこなわなければならない」という規定を入れる

 この提案は、「産休は農村から来た女性労働者にとってたしかに重要だけれども、大多数の女性労働者は妊娠期間中に『自発的に』離職する。なぜなら彼女たちは合理的なポストの異動がされないため、子どもに影響を与えることを心配する。また、賃金が妊娠前よりも大きく減るために、もう辛い思いを『したいと思わない』。また、妊娠したことによって仕事に差し障りが起き、また友好的な仕事の雰囲気や企業文化がないために、いっそう差別されるからである」という状況にもとづいて出されています。

3.妊娠7か月以前も、時間外労働や夜勤の禁止を

 意見募集稿の第6条に「女性労働者で妊娠7か月以上の者は、使用者はその労働時間を延長したり、夜間労働を割り当てたりしてはならない」という規定がありますが、上の2つの団体は、それ以前の時期の妊婦も休息と保護が必要であることや、多くの女性労働者が夜勤ができないために離職する状況を訴えて、妊娠7か月以前の時期も、夜勤を禁止するよう主張しています。

 この点については、中華女子学院ジェンダーと法律学術チームも、「妊娠反応が強く、その職務の労働時間の延長や夜間労働が不適切な場合は、7か月以上という制限を受けない」という規定を加えるべきだとしています。

4.妊娠・出産・哺乳期の契約解除の禁止、産休後の現職復帰の保障を

 上の2の提案と一部重なりますが、全国婦連女性研究所は、「人を雇う単位は、妊娠・出産・哺乳を理由として女性労働者の労働契約を解除してはならない。人を雇う単位は、女性労働者が産休を終了した後、もとのポストまたは待遇が同じポストに復帰することを保証しなければならない」という規定を加えることを提案しています。これは、「現在、女性労働者が妊娠・出産・授乳などによってポストを調整させられたり、辞職を強いられたりする状況が比較的普遍的だから」という理由によるものです。

五、父親の育児休暇を設けるべきである

 この点を詳しく述べているのは、中共中央党校女性研究センターです。具体的には、「女性労働者の出産育児期間に、男性労働者は15日のケア休暇を取って、産婦と嬰児の世話をすることができる。休暇の時期の賃金は、生育[出産育児]保険の基金から支出する」という条文を設けることを提案しています。

 同センターは、その理由として、以下の3点を挙げています。

1.男性がその配偶者の出産育児期間に、配偶者と子どもの世話をすることは、男性公民が道義上引き受けなければならない責任であり、女性と子どもの心身の健康を保障し、正常な家庭生活を維持するための当然のことである。男性労働者に出産育児休暇とその際の手当てを与えることは、公衆の共同のニーズであり、男性を含めた公衆の広範な合意がある

2.わが国の少なくとも26の省・自治区・直轄市は地方性法規または地方政府の文書の形で、男性が出産育児休暇とその際の手当てを定めており、世界では少なくとも36の国あるいは地区が立法によってこの制度を規定している

3.男性労働者に出産育児休暇の手当てを与えることは、企業と政府の負担にならない。わが国の生育保険はそのための支出を完全に引き受けることができる

 全国婦連女性研究所も同様に父親のケア休暇を設けることを提案しています(全国婦連女性研究所は、「少なくとも2週間の有給の休暇」を与えるという提案をしています)(11)

 なお、中共中央党校女性研究センターは、すでに2008年に、男性のケア休暇を設ける提案をしています。詳しくは、本ブログの記事「中央党校女性研究センターが父親の育休を提案」を参照してください。上の1や2の点についての具体的な説明は、今回は省略しましたが、当時述べられていたことを上のリンクの記事で紹介しましたので、ご覧ください。このときは、当時審議されていた「社会保険法」の中に男性のケア休暇を盛り込むことを求める提案でしたが、実現しませんでした。

 以上、長々と紹介してきましたが、中共中央党校女性研究センターの提案に限らず、上で挙げた女性団体(グループ)のさまざまな提案は、それらの団体が従来から提案してきたけれども、まだ実現していないことが少なくありません。今回も、こうした提案が取り入られる可能性はそれほど多くないように思います。

 しかし、こうした提案を読むことによって、何が現在の焦点かがわかります。

 また、これまで女性団体(グループ)がこうした要求を続けてきたからこそ、地方性法規が変わったり、今回女性労働者の労働禁忌範囲について、政府が若干の「調整」をするなどの柔軟な対応をしたりしているという面も見なければならないと思います。

 また、女性団体(グループ)の提案は、その内容自体は以前と同じでも、最近の裁判での経験や調査研究、NGOによる試験的実施などによって、新しい根拠を提出できているという点で前進があるという面も見なければならないと思います。

 ただし、法律の実効性を確保するために重要であるはずの、法律上の責任に関する規定については、あまり議論がなされていないようです。その理由はよくわかりませんが、全人代が制定する法律ではなく行政の条例だから、多くを期待できないからでしょうか?

 また、労働禁忌範囲に関して言えば、「『この仕事は女性にとって有害だから女性が従事するのを禁止する』というのではなく、労働条件を改善することを通じて、すべての労働者が従事できるようにする」(劉伯紅)(12)という主張もなされており、こうした主張は、「男というジェンダー」を再検討することにもつながると思うのですが、まだそれほど深められてはいないようです。


(1)国務院法制弁公室、人力資源・社会保障部、全国総工会は2006年から「女性労働者保護規定」の改定作業を開始し、2008年に「女性労働者保護条例(修正草案)」を提出し、2010年5月にも、もう一度、「女性労働者保護条例(修正草案)」を出しています。2008年の修正草案を巡る議論の一部は、本ブログでも、「女性労働者保護規定の改正をめぐる議論(1)――たいした改正にはならない?」という記事にしました[(2)は書けませんでした]。また、2010年5月の修正草案をめぐっては、全国婦連女性研究所が、2011年3月、調査報告と対案を出しています(《女职工劳动保护规定》修改课题组「《女职工劳动保护规定》修改调查报告」妇女观察网2011年8月10日、この報告に対する報道は、「《女职工劳动保护规定》修改调查报告在京发布,该报告提出――女职工劳动禁忌范围应定期更新」『中国婦女報』2011年3月30日)。
(2)なお、呉偉民「中国国務院、『女性従業員特別労働保護条例(案)』聴取意見を公表」(中国ビジネスホットライン2011/12/6)という記事は、産休期間について、この条例案と上海市の現行の規則との比較をしています。
(3)产假拟至14周引发热议」鳳凰網2011年11月23日(来源:『上海商報』)、「网友质疑新产假时间缩水 产假是长了还是短了?」人民網2011年11月23日(来源『鄭州日報』)。
(4)从立法层面对女职工进行更完善的劳动保护——《女职工特殊劳动保护条例(征求意见稿)》系列解读(一)」『中国婦女報』2011年11月23日。
(5)产假拟至14周引发热议」鳳凰網2011年11月23日(来源:『上海商報』)。
(6)产假拟至14周引发热议」鳳凰網2011年11月23日(来源:『上海商報』)、「女职工权益保护加大或致企业性别歧视严重」人民網011年11月24日(来源:『中国広播網』)、「产假延长8天 女性叫好老板无奈」荆楚网2011年11月23日。
(7)从立法层面对女职工进行更完善的劳动保护――《女职工特殊劳动保护条例(征求意见稿)》系列解读(一)」『中国婦女報』2011年11月23日。
(8)63%人担心生育政策加剧女性就业难 怕难以落实」人民網2011年11月29日(来源『中国青年報』)。
(9)以下にそれぞれの全文が掲載されています。
 ・中华女子学院社会性别与法律学术团队「关于《女职工特殊劳动保护条例(征求意见稿)》的建议(1)(2011年11月22日)」婦女観察網2011年11月22日→11月28日更新。
 ・中央党校妇女研究中心性别平等倡导课题组「关于《女职工特殊劳动保护条例(征求意见稿)》的建议(2)(2011年11月22日)」婦女観察網2011年11月22日。
 ・全国婦聯妇女研究所「妇女研究所对“女职工特殊劳动保护条例(征求意见稿)”的修改建议(2011年12月9日)」中国婦女研究網2011年12月9日。
 ・「工人群体对《女职工特殊劳动保护条例》经期和孕期规定的意见」社会性別与発展在中国サイト2011年12月19日(来源:手牵手工友活动室 小小草工友文化家园)。
 また、12月1日に全国婦連権益部が開催した「女性労働者特別保護条例(意見募集稿)」改定座談会(「保障女职工健康 促进男女平等就业——全国妇联《女职工特殊劳动保护条例(征求意见稿)》修改座谈会综述」『中国婦女報』2011年12月6日)や12月12日に北京ニュース文化研究所と源衆ジェンダー発展センター/北京源衆諮詢が開催した「女性労働者特別保護条例(意見募集稿)」専門家研究討論会(「有专家在《女职工特殊劳动保护条例(征求意见稿)》专家研讨会上建议——生育产生的替工费用由生育保险支付」『中国婦女報』2011年12月14日)でも、さまざまな意見が出されています。それらの多くは、全国婦連女性研究所などの提案と重なっていますが、それ以外の意見も出されています。
(10)12月4日に北京衆沢女性法律相談サービスセンターが開催した女性労働者権益保障研究討論会でも、職場のセクハラを防止する条項を入れるべきだという意見が多くの専門家の共通認識になりました。「新条例应加防治性骚扰内容」(『中国婦女報』2011年12月7日)は、その研究討論会を詳しく報じています。張立鵬「设防治职场性骚扰雇主责任」(『中国婦女報』2011年12月15日)も、職場のセクハラを防止する雇い主の責任を明記することを主張しています。
(11)加男性护理假 加入条款正当其时」(『中国経済導報』2011年11月26日)も、李慧英・劉澄・呂頻の3氏による、男性のケア休暇を盛り込む提言を紹介しています。
(12)保障女职工健康 促进男女平等就业——全国妇联《女职工特殊劳动保护条例(征求意见稿)》修改座谈会综述」『中国婦女報』2011年12月6日。
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台湾でも韓国の水曜デモ1000回目と連帯するアクション

 1992年1月から韓国の元日本軍「慰安婦」と市民たちは、毎週水曜日にソウルの日本大使館前で、謝罪と賠償を求めて抗議集会を開いてきました。その1000回目である12月14日には、「平和の碑」(少女像)が設置されるとともに(1)、世界の8ヵ国・44都市で、彼女たちと連帯する行動が展開されました。日本でも同様に、「韓国水曜デモ1000回アクション」がおこなわれ、東京では1300人が「人間の鎖」を作って外務省を包囲しました(2)

 台湾でも、同じ14日、元「慰安婦」を支援してきた婦女救援基金会(台北市婦女救援社會福利事業基金會)、アムネスティ(國際特赦組織)などが、台湾での日本の窓口機関である「交流協会」(台北市)の前で、ロウソクに火を灯し、それを「1000」の字の形に並べて、韓国の元「慰安婦」に連帯を示しつつ、亡くなった元「慰安婦」を追悼し、日本政府に元「慰安婦」たちに正式に謝罪と補償をするよう要求しました(3)

 当日は、夕方から激しい雨に見舞われましたが、100名余りの人が集まりました。民進党の立法委員の黄淑英さんと国民党の元立法委員の雷倩さんも駆けつけて、挨拶をしました。婦女救援基金会のfacebookに多数の写真が掲載されていますが、若い女性の方が多く集まられたようです。

 台湾の元「慰安婦」の方々は、昨年5人が亡くなり、今年もすでに3人の方が世を去りました。9月1日には、1992年に台湾で初めて顔や名前を出してこの問題を告発した劉黄阿桃さんも90歳で亡くなりました。台湾のマスコミは、「謝罪を待たずに亡くなった」「恨みをのんで亡くなった」と報じました(4)。その際のテレビ報道もネットに上げられています。

 「等不到一句抱歉 90歲慰安婦含恨而終」(中時電子報 影音頻道2011/09/03)


 下が、劉黄阿桃さんの生前の証言の一部です(「台湾のアマ――劉黄阿桃」より。他の方の証言は「阿媽の証言」参照)。

ある日、南洋で看護婦の仕事があるという貼り紙を見た友人が一緒に応募しないかと誘ってきました。戦争中だったので、田舎では仕事もなく、男も女もいつ海外に送られるかわからなかったので、どんな仕事でもしたいと思っていました。日本人の一組の男女が私たちを高雄から船でインドネシアへ連れていきました。現地に着いて初めて慰安婦になるのだと知り、怒りがこみ上げて私たちを連れてきた日本人に不満を言いましたが、帰ることもできず、日本人は「国のために軍を労う」という大義名分で私たちに軍人の相手をさせました。

初めての時は血が出て、悲しくて布で包み、家に持ち帰って両親に見せようと思いました。毎日20人以上の相手をさせられました。昼は兵士、夜は将校で、休むことはできません。酒に酔った日本兵から殴られることもありました。日本人の捌け口となるのは辛いことで、いつも目を閉じ、歯を食いしばって耐えました。一度逃げようとしたことがありますが、憲兵に連れ戻され、怨んでもどうすることもできず、毎晩泣いていました。インドネシアではマラリアにかかり、盲腸の手術を受け、右目は爆弾の破片に当って失明し、腹部も負傷して子宮を切除し、本当にひどい日々でした。その後、戦争が拡大し、3年後にようやく台湾に戻りました。


 台湾籍で確認された元「慰安婦」は、58人いるのですが(もちろん実際にはそれよりはるかに多くの方がおられるのでしょう)、婦女救援基金会の執行長の康淑華さんによると、現在生存している方は10人だけになり、その平均年齢も、もう87歳だということです。

 台湾の元「慰安婦」の人々は、1999年7月、日本で謝罪・損害賠償請求訴訟を起こし、2005年5月に最高裁で却下されるまで6年にわたって闘い続けました(詳しくは、「台湾の元『慰安婦』裁判を支援する会」のサイト参照)。

 その後も、元「慰安婦」の方々は、婦女救援基金会とともに、交流協会の前で抗議行動をおこなってきました(その様子の一端は、藤永壯「台北の『600回水曜デモ』」『女性史学』第14号参照)。14日の集会はテレビでは放送されたかどうかわかりませんが、今年8月におこなわれた世界同時水曜抗議行動の際の集会(5)は、テレビ放送がネットにも上がっています。ただし、このときは、元「慰安婦」の方々は高齢のため、炎天下での抗議行動には参加できなかったとのことです(12月14日も、元「慰安婦」の方の姿は見えません)。

 「替慰安婦要道歉 婦團日協會抗議-民視新聞」


 台湾では、すでに2008年11月、立法院(国会)が、「日本政府は、はっきりとした、曖昧でない態度で、戦時中の日本軍の性奴隷制度の歴史的責任を正式に認めて謝罪し、生存している被害者に対して直接に謝罪と賠償をして、一日も早く慰安婦の被害者の名誉と尊厳を回復し、国連人権委員会の勧告に従い、かつ今の世代と次の世代に正確な史実を教育するべきである(日本政府應以清楚且不曖昧的態度,正式地承認、道歉且接受戰時日軍性奴隸制度的歷史責任,對受害倖存者進行直接謝罪和賠償,以利早日回復慰安婦受害者的名譽和尊嚴,遵守聯合國人權委員會建議,且教育這一代和下一代有關這段正確史實)」という決議を全会一致で採択しています(ここをクリックすると、提案された際の説明も日本語で読めます)(6)

 なお、婦女救援基金会は、「慰安婦と女性の人権バーチャル博物館」のサイト(阿嬤的網站――慰安婦與女性人権虚擬博物館)を作っていますが、このサイトには「日本語版」もあり、台湾の「慰安婦」や「慰安所」についての簡単な説明や元「慰安婦」の口述史が掲載されています。元「慰安婦」の心理的治療のワークショップの記録もあります(7)

 元日本軍「慰安婦」の告発については、韓国などが「反日」だからやっているように言う人もいますが、以上から見ると、「親日」とされる台湾でも、多くの点で情況に大差ないことがわかります。

 韓国の元「慰安婦」の運動の結果、今回、韓国政府がようやく日本政府に慰安婦問題について協議を申し入れていることについては、台湾の婦女救援基金会も声援を送っています(8)

(1)ソウルでの1000回目の水曜デモについては、参加された岡野八代さんが、よいレポートをしてくださっています(「水曜日デモ--ソウルでの1,000回」Women's Action Network2011年12月17日)。なお、この平和の碑(少女像)に対して、日本政府が撤去を申し入れていますが、その点については、日本の「韓国水曜デモ1000回アクション」の「声明」をご覧ください。(12月22日追記)「水曜集会は2011年12月21日で1001回目の開催に」(Gazing at the Celestial Blue2011/12/22)もぜひお読みください。
(2)写真入りのレポートとしては、「外務省を1300人で包囲しました。」ブーゲンビリアのきちきち日記2011年12月14日、「死んでも死にきれない!謝罪を!~『慰安婦』解決もとめ1300人が外務省包囲」レイバーネット2011年12月14日など。
(3)日交流協會前 點蠟燭悼慰安婦」自由時報電子版2011年12月14日、「婦援會燭光響應全球串聯 籲日本道歉」【写真あり】自由時報電子版2011年12月14日、「幫慰安婦點蠟燭」聯合晩報2011年12月14日、「全球慰安婦串聯 婦援會赴日交流協會抗議」【写真あり】中央廣播電臺2011年12月14日、「全球44城燭光悼慰安婦 籲日本道歉」『蘋果日報』2011年12月14日、「藍委齊聚日駐台機構 籲向慰安婦道歉」【写真あり】中央日報電子版2011年12月14日、「慰安婦『水曜デモ』は千回目、台湾でも」【写真あり】中央社日文新聞2011年12月15日。
(4)等不到道歉 首位露面慰安婦逝世」『立報』2011年9月4日、「台首位控日慰安婦 阿桃嬤逝世」『蘋果日報』2011年9月4日。
(5)慰安婦怒吼 只要公道不要錢」『立報』2011年8月10日。
(6)この決議に関する内外のさまざまな報道や台湾の「慰安婦」問題については、碧猫さんのブログ「Gazing at the Celestial Blue」の「台湾立法院にて、『慰安婦』謝罪要求決議採択」エントリーやブログ「Stiffmuscleの日記」の「台湾国会で『慰安婦』謝罪決議案が可決」エントリーに詳しく書かれています。
(7)もちろん、他にも資料として、金富子・宋連玉責任編集、VAWWーNET Japan編『「慰安婦」・戦時性暴力の実態〈1〉日本・台湾・朝鮮編』(緑風出版 2000年)もありますし、婦女救援基金会主編『台湾慰安婦報告』(台湾商務印書館 1999年)、同『沉默的傷痕:日軍慰安婦歷史影像書』(商周 2005年)のような書籍もあるようです。
(8)南韓重啟慰安婦協商 婦援會聲援」『立報』2011年9月18日。
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 今回は、昨年セックスワークの合法化を街頭で宣伝したために、当局に弾圧された中国民間女権工作室の葉海燕(流氓燕)さんのその後について、まとめてみました(これまでの経過については、本ブログの記事「『第1回セックスワーカーデー』、中国民間女権工作室、セックスワーカーの互助団体の萌芽」、「葉海燕らによるセックスワーク合法化の街頭宣伝と葉の拘束、第2回セックスワーカーデー中止をめぐって」、「中国民間女権工作室(葉海燕ら)に対する当局の弾圧と同工作室の活動停止」など参照)。

葉海燕さんが「セックスワークも仕事である」と宣言するに至るまで

 その前に、先日、『南方都市報』の記者が、葉海燕さんのセックスワーク問題についての今までの活動についてご本人に取材していましたので(1)、まず、その記事の大体の内容を以下にご紹介します。

 葉さんはセックスワーカーの権利について訴えるために、2005年、武漢で中国民間女権工作室を創設し、ネット上でも「紅塵網」というサイトを開設しました。2006年1月には、自宅の電話を使って、「紅塵熱線(ホットライン)」というセックスワーカー向けの電話相談も開始しました。

 電話相談の過程で、葉さんは、深圳のセックスワーカーの瑶瑶さんという人と知り合い、彼女にもサイトを管理してもらうようになりました。瑶瑶さんは、自分自身がセックスワーカーなので、セックスワーカーの情況をよく理解していたうえに、葉さんと価値観の衝突もなく、聡明でよい人だったとのことで、葉さんも厚く信頼していたそうです。

 ところが、瑶瑶さんは、2006年末、接客をしていたときに殺されてしまいます。葉さんは大きなショックを受けました。

 瑶瑶さんの事件が起きる前は、中国民間女権工作室と紅塵網は、他の中国の大多数の機構と同様、セックスワーカーの健康保護とエイズ防止のための活動を中心におこなってきました。けれど、瑶瑶さんの死後、葉さんは、「なぜ彼女たちの生存環境はこのように劣悪なのか?」「彼女たちに対する社会の差別と暴力は、まさか当然だと言うのではあるまい?」「法律は彼女たちに対して公平なのか?」といったことを深く考えるようになりました。

 葉さんは仕事を辞め、すべての力を女権工作室に注ぐようになりました。

 2009年ごろには、葉さんは「セックスワーカー問題の根源は、社会の彼女たちに対する差別と暴力にある。この問題を解決しなければ、コンドームの使用率を向上させることもできない」と考えるようになりました。

 葉さんは言います。「ある人は『売春婦になる原因は、善良な者が娼婦になることを強いられるか、安逸をむさぼって働くのを嫌っているかの2つしかない』と考えている。けれど、あなたがセックスワーカーと接触したら、彼女たちは普通の人でしかないことがわかるだろう。セックスワーカーになるのも、生きるためであり、家族を養うためである。なぜ他の仕事を選ばなかったのかと問えば、学歴がなくて、技術を必要としない仕事にしか就けないからかもしれないし、もう少し良い物質的生活を求めたいということも当然ある。」

 しばらくの間、葉さんは、セックスワーカーの人々の信頼を得るために、何度か実際に売春をしてみました。葉さんは、それまでは「売春と一夜限りの恋との違いは、金を貰うか貰わないかだけだ」と考えていたそうですが、実際やってみると、その大変さに震えあがりました。「客の要求が多くて、自分自身の思いや尊厳を顧みることはまったくできない」。

 葉さんは言います。「誰が『セックスワーカーは、安逸をむさぼって働くのを嫌っている』と言うのか? 仕事はきついし、たくさん接客するのに、収入は少ない。警察はしょっちゅう拘留したり、罰金を取ったりするから、仕事はいつもできないし、金も罰金でみんな取られてしまう。客に対する選択権はあるのか? 今日は飯を食う金がなく、明日は子どもの学費が必要なのに、客が『コンドームを使うな、使うならやめる』と言ったら、どうするか?」

 こうした考えから、2009年、葉さんは「セックスワークも仕事である。セックスワーカーも公民として各種の基本的権利を保障されるべきだ」と宣言しました。「けれど、実際は、現在、社会のセックスワーカーに対する差別は、彼女たちが強盗・強姦・殺害されても同情されず、警察も気にかけないまでになっている」と葉さんは言います。

 本ブログで前回までにお伝えしてきたような警察の介入によって、中国民間女権工作室に資金を援助してくれるプロジェクトはなくなってしまいました。また、武漢の警察が絶えず葉さんの家主に圧力をかけたために、葉さんは次々に引っ越さざるをえなくなります。最後には、葉さんは、武漢を離れて、広西チワン族自治区の友人のもとに身を寄せざるをえなくなりました。

第2回エイズ防止とセックスワーク国際研究討論会での発言

 葉さんは、今年6月、国連人口基金が北京で開催した「第2回エイズ防止とセックスワーク研究討論会(2nd Internationl Workshop on HIV Prevention in Sex Work)」に出席して、以下のような発言をしました(2) (要約・抜粋です。翻訳にも不正確なところがあると思います)。

 私はかつて小学校の教師でしたが、家庭が貧困だったので、20歳を少し過ぎたとき、南方でカラオケの相手をする女性(陪唱小姐)をしたことがあります。当時、私の身の回りには多くのセックスワーカーがいましたけれど、私の思想はまだ主流の思想の影響を受けており、女性の性の自由と社会的名誉を金銭のために失いたくありませんでした。

 しかし、2010年、私は非常に貧困な日々を経験しました。私には仕事がないのに、家賃を払う金が必要であり、子どもを養う金も必要でした。私は男性と性の取引をしました。

 現在は、私は賃金をもらうようになり、どうにか自分の子どもを養うことができるようになりましたので、セックスワークはやめました。

 しかし、大多数のセックスワーカーは、このような選択はできません。セックスワークは、大多数の貧困な女性にとっては、仕事であり、生きるための手段であり、生存の苦境を解決する唯一のやり方なのです。

 去年、中国の公安部が、セックスワーカーを「売春婦(売淫女)」でなく「過ちを犯した女性(失足婦女)」と呼ぶようにするという情報を聞いて(遠山注:2010年12月11日の公安部治安管理局局長の劉紹武の発言)、私は希望を感じました(遠山注:といっても、葉さんは、他の場では、「失足婦女」も「差別的な言葉」だと指摘しています(3)。その点をここでは言っていないのは、この会議には、政府関係者も出席しているので、政府の変化をひとまず肯定したうえで議論しようとしたからだと思います)。

 しかし、残念ながら、その後も、セックスワーカーのエイズ防止関与の領域では何の良い変化もありません。

 現在、以下のような問題が普遍的に存在しています。

 1.コンドームが依然として、犯罪の証拠になっています。そのため、多くの場所では、コンドームを置いておくことはできず、セックスワーカー自身もコンドームを持つことができないため、コンドームなしの性の取引も普通のことになっています。

 2.掃黄(売買春取締り)のために、セックスワーカーの生存空間は以前よりもさらに狭くなり、自己を保護する力も弱くなりました。彼女たちの一部はすでに固定的なレジャー施設から他の「隠匿された」職業に入りました。たとえば、ホテル、スーパーマーケット、さらには自動車による野外での取引さえしています。

 3.掃黄によって、客が少なくなり、収入も少なくなったために、コンドームのコストが相対的に高くなって、買いにくくなったり、そもそも使わなくなったりしています。

 4.商売がやりにくくなったため、客の「コンドームなしでセックスしろ」という要求に対しても、黙って受け入れます。

 私は、掃黄はエイズ対策にとってけっして良い影響はなく、貧困なセックスワーカーと彼女たちの家庭を傷つけるものだと考えます。

 ここで、私は、NGOの活動を6年間おこなった草の根の願望を述べたいと思います。

 第一に、セックスワーク問題においては、エイズ防止とセックスワーカーの生存を最も重要なこととして扱い、[売買春を禁止している]法律をセックスワーク集団のエイズ防止の上での突破できない障害にはしないことです。

 なぜ国家がエイズ防止のために社会全体を動かし、全人民に参与するよう提唱しているかと言えば、私の理解では、エイズ防止の大きな堤防のどこかに裂け目があれば、私たちの予防活動全体が意義を失ってしまうからです。しかるに、セックスワーク集団は、法律的原因によって、みんなに回避される大きな裂け目になっています!

 私は、若干の異性愛の男性感染者も性的に活発であり、その一部は、性の売買の経験があることを皆さんに知ってほしいと思います。私には、すべての男性にコンドームをつけさせる自信はありません。しかし、私たちには、少なくともすべてのセックスワーカーが、自分を保護する力を持ち、彼女が数十元の収入を放棄しても、コンドームを付けることを選択したいと思うようにすることはできます。

 セックスワーカーはエイズの第一の被害者です。こんなに多くの感染者が普通の人々の中に潜在しているとき、誰がセックスワーカーの健康と生命に関心を持つのでしょうか。社会に普遍的に差別が存在するときに、誰がセックスワーカーの健康と生命を気に掛けるのでしょうか。

 第二に、国家が、セックスワーカーのケアをするグループの発展を重視することです。

 過去五年間に同性愛者のためのエイズ防止グループは急速に発展し、全国に少なくとも300はあります。けれども、セックスワーカーと直接橋渡しをし、交流をする組織は、まだ20を超えていません。これは、人口が非常に多い中国では、明らかに微小な数字です。

 私は、セックスワーカーが、人に感染させやすい危険なグループとしてみなされるのではなく、普通の女性として、基金や政府、民間組織から健康サービスを提供されることを希望いたします。


広西の玉林市博白県の自宅を拠点にして活動を再開

 今年8月1日、葉さんは、中国民間女権工作室が主管する団体として、「浮萍健康服務工作室」(「浮萍」とは浮草の意)を商工登記(企業として登記)しました。詳しい事情はわかりませんが、商工登記をするというやり方は、中国では非営利団体が法定NGOとして登記をすることが難しいために、便宜的におこなわれている方法のようです。ですから、浮萍健康服務工作室の活動の内容としては、中国民間女権工作室がやってきた、電話相談とか、セックスワーカーのもとに出向くアウトリーチ活動などが書かれています(4)

 また、葉さんは、中国民間女権工作室のサイト(中国民间女权工作室)を再建し、12月3日に公開しました(5)

 さらに、葉さんは、広西の玉林市博白県の自宅の客間を、活動のためのセンターとして提供しました(6)。12月4日には、そこで浮萍健康服務工作室の会議を開き、9人のボランティアなどが参加して、今後の活動として、上映サロンを毎週1回おこなう[映画やドキュメンタリーを上映するようです]、ポスターを発行する、アウトリーチ活動で宣伝資料を配布する、などのことを決めました(7)。 

 葉さんは、武漢市での活動にも引き続きタッチしています。すでに中国民間女権工作室の旗下に、「武漢市姉妹花健康サービスセンター(武汉市姐妹花健康服务中心)」という団体が設立されています。「センター」といっても、経費がないため、専用の部屋はなく、資料などは個人の家に置いているそうですが、それでも、責任者が2人、ボランティアが7人いて、電話相談のほか、毎月のアウトリーチ活動(写真:武汉姐妹花外展图片)によって、リプロダクティブヘルスやエイズ防止のための活動をしていることが公表されています(8)

 さらに、葉さんは、武漢でまた事務所を開設できないか、資金などの提供を求めているところです(9)

 当面は葉さんは以前のようなセックスワーク合法化のための公然とした街頭宣伝はできないのではないかと思いますが、武漢を追われた後も、不屈に活動を続けておられることがわかります。

(1)“流氓燕”, 挑战者的落寞离场」南都網2011年9月6日。
(2)第二届艾滋病防治与性工作研讨会叶海燕新浪微博直播内容及发言稿(北京)」China AIDS Group 中国艾滋病网络【China AIDS:6622】2011年6月30日、「第二届艾滋病防治与性工作研讨会叶海燕发言稿(北京)」中国発展簡報2011年7月1日。「発言稿」とあるように、これは事前の原稿であり、実際には、発言の途中でセックスワーカーの状況が頭をよぎって涙を流したり、時間の関係もあったりして、葉さんは、この通りには発言できなかったそうです。なお、この研究討論会(ワークショップ)については、国連のサイトにも記事があります(UN-led Workshop Engages Sex Workers to Reduce HIV Transmission in China)。
(3)呼吁中国媒体停止一切歧视女性性工作者的报道」流氓燕的博客2011年8月29日。「失足婦女」への改称については、他の論者もその限界や問題点を厳しく指摘しています(楊光志「改叫失足妇女 徒具姿态的悲悯」『生活新報』2010年12月13日、羽戈「捍卫权利比改名“失足妇女”更重要」2010年12月13日、張楠之「取消“卖淫女”称呼 更要取消标签式歧视」華声在線2010年12月13日、堂吉偉徳「改称“失足妇女”更需防范“强拆思维”」『南方都市報』2010年12月14日、「公安部改称“失足女” “尊重”背后的软暴力」『女声』62期、凝眸「软暴力之下何来“尊重”?」網易女人2010年12月14日)。
(4)浮萍健康服务工作室今天正式成立,拿到营业执照了」流氓燕的博客2011年8月1日、「关于浮萍健康服务工作室的运转」流氓燕的博客2011年10月12日。
(5)叶海燕「中国民间女权工作室网站再一次开通!」中国民間女権工作室サイト2011年12月3日。
(6)中国民间女权工作室网站开通了,武汉需要一间办公室」流氓燕的博客2011年12月6日、光永「一元放映沙龙」中国民間女権工作室サイト2011年12月6日。
(7)光永「博白县浮萍健康工作室会议结果」中国民間女権工作室サイト2011年12月6日。
(8)叶海燕「武汉市姐妹花健康服务中心简介」中国民間女権工作室サイト2011年12月3日。
(9)中国民间女权工作室网站开通了,武汉需要一间办公室」流氓燕的博客2011年12月6日。
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