2010-11

DVに対する人身安全保護裁定(人身保護命令)の現状

 中国にはDV防止法はなく、DVに対する保護命令も法律では定められていません。しかし、近年、「人身安全保護裁定」がごく一部の法院(裁判所)で試験的に出されるようになりました。「人身安全保護裁定」は、俗に「(人身)保護命令(人身保护令)」と言われており、欧米や日本の「保護命令」に比較的近いものです。人身安全保護裁定については、本ブログでも何度か取り上げてきましたが、今回、少しまとめてみました。

一 最高人民法院応用法学研究所「家庭内暴力が関係する婚姻事件の審理指南」

 「人身安全保護裁定」が中国の公式の文書の中に初めて規定されたのは、2008年3月に最高人民法院応用法学研究所が出した「家庭内暴力が関係する婚姻事件の審理指南(渉及家庭暴力婚姻案件審理指南)」(以下、「審理指南」と略す)の第3章「人身安全保護措置」ではないかと思います。おおむね以下のような内容ですが、この「指南」が、あとで紹介する各地の規定のもとになっています。

 人身安全保護措置の必要性(23条)

 家庭内暴力が関係する婚姻事件の審理の過程で、被害者の人身の安全が脅かされ、精神がコントロールされる状況が広く存在しており、典型的な「別れの暴力」現象さえ存在しており、訴訟活動の正常な進行を大きく妨げている。このため、人民法院は、裁定の形式で民事的強制措置を取ることを含めて、被害者に対して保護的な措置を取って、被害者の人身の安全を保護し、訴訟手続きの厳粛さと公正さを確保する必要がある。

 人身安全保護裁定の一般的規定(26条)

 人身安全保護裁定は、民事強制措置の一種であり、人民法院が家庭内暴力の被害者とその子どもと特定の親族の人身の安全を保護し、民事訴訟手続きの正常な進行を確保するためにおこなう裁定である。
 人民法院がおこなう人身安全保護裁定は、民事訴訟法第140条第1款第11項の規定などを法律的根拠とする。

 人身安全保護裁定の主な内容(27条)

 人民法院がおこなう人身保護裁定は、以下の内容の1項目か多項目を包括することができる。
 1.被申請人は、申請人やその親・友人を殴打したり、脅迫してはならない。
 2.被申請人は、申請人にハラスメントをしたり、つきまとったり、申請人やその未成年の子どもに歓迎されない接触をしてはならない。
 3.人身安全保護裁定が有効な期間は、夫婦の一方が勝手に、価値が比較的大きい夫婦の共有財産を処理してはならない。
 4.必要性があり、かつ条件がある場合は、申請人をしばらく双方の共同の住まいから立ち退くよう命令を下すことができる。
 5.申請人の住まい、学校、職場、その他のいつも出入りする場所から200m以内において、被申請人が活動することを禁止する。
 6.必要なときは、申請人に自費で心理的な治療を受けるように命ずることができる。
 7.申請人およびその特定の親族の人身の安全のためのその他の措置

 人身安全保護裁定の付帯内容(28条)

 申請人が申請し、審査によって必要であることを確認した場合、人身安全保護裁定は、付帯して以下の事項を解決することができる。
 1.申請人に安定した収入源がないか生活がたしかに困難である場合は、保護裁定が有効な期間の申請者の生活費および未成年の子どもの養育費・教育費などを被申請人が責任を持って支払うように命ずる。
 2.被申請人に、申請人が被申請人の暴力行為によって治療を受けた支出の費用と適当な心理治療費およびその他の必要な費用を責任を持って支払うように命ずる。 

 人身安全保護裁定の種類と有効期限(第29条)

 人身保護裁定は緊急保護裁定と長期保護裁定に分けられる。
 緊急保護裁定の有効期間は15日、長期保護裁定の有効期限は3~6ヵ月である。たしかに必要な場合は、分管副院長の批准を経て、12ヵ月まで延長できる。

 人身安全保護措置の申請の提出期間(第31条)

 人身安全保護裁定の申請は、書面の形式で提出しなければならない。緊急の状況の下では、口頭で申請できる。口頭の申請は、記録して書類として残し、あわせて、申請人が署名をする、拇印を押すなどの方式で確認しなければならない。
 人身保護裁定の申請は、離婚訴訟を起こす前か、離婚過程の中か、訴訟終結後6ヵ月以内に提出することができる。
 訴訟の前に提出した場合は、当事者は、人民法院が人身保護裁定を発行した15日以内に離婚訴訟を起こさなければならない。期限を過ぎても離婚訴訟を起こさなければ、人身保護裁定は自動的に失効する。

 人身安全保護措置の申請の条件(第32条)(抄)

 人身安全保護裁定の申請は、以下の条件に合致していなければならない。
 1.申請人が被害者である。
 2.被申請人の姓名・連絡先の住所あるいは単位[所属機関。勤務先など]が明確である。
 3.具体的な請求・事実・理由がある。
 4.家庭内暴力を受けたことがあるか、いま家庭内暴力の脅威に直面している。
 
 人身安全保護措置を申請する証拠になりうるのは、傷の写真、警察への通報の証明、証人の証言、社会的機構の関係の記録あるいは証明、加害者の保証書、加害者が脅迫をした内容の携帯電話のショートメールなどである。

 人身安全保護裁定をおこなう(第34条)(抄)

 人民法院は申請を受け取って以後、48時間以内に批准するか否かの裁定をしなければならない。

 人身安全保護裁定の送達(第35条)(抄)

 人身安全保護裁定は申請人、被申請人あるいは同居家庭に送達すると同時に、管轄区域の公安機関に副本を送らなければならない。

 人身安全保護裁定の効力の発生と執行(第33条)(抄)

 人民法院は、人身安全保護裁定の副本を管轄区域の公安機関に送ると同時に、管轄区域の公安機関に、警戒心を持ち、義務を履行するよう手紙で知らせなければならない。公安機関が必要な保護義務を履行することを拒み、申請人に傷害を負わせる結果をもたらしたら、被害者は公安機関の不作為を理由として行政訴訟を起こして、関係する責任を追及することができる。
 人民法院は、被申請人が人身安全裁定を履行するのを監督しなければならない。被申請人が人身安全裁定が有効な期間に、被害者をハラスメントし続ける、被害者及びその親族を殴打・脅迫する、被害者に訴訟の取り下げ或いは正当な権益の放棄をするよう脅迫する、或いはその他の効力が発生している裁定を履行しない行為があれば、人民法院は、民事訴訟法102条の関連規定にもとづき、その情状の軽重を見て、罰金・拘留に処す。犯罪を構成するものは、公安機関に移送して処理するか、被害者に刑事自訴が出来ることを知らせる。 
 
 ただし、「この指南は、司法解釈ではなく、裁判官の参考として提供する事件処理の指南である[为法官提供的参考性办案指南]」、「この指南は、裁判官が案件を裁判する法律的根拠とすることはできないけれども、判決文の中の道理を説く部分に引用して、論証の根拠と素材にすることができる」(前書きから)という位置付けのものです。

 この指南は、まず、全国の9ヵ所の基層(末端)の法院で試験的に実施されることになりました。

ニ 各地で人身安全保護裁定についての規定が作成

 最高人民法院応用法学研究所の「審理指南」を試験的に実施する法院(「試点法院」)やその法院がある地域では、人身安全保護裁定についての規定が作成されています。

 たとえば、湖南省では、2008年11月、試点法院の一つである長沙市岳麓区の人民法院が公安局・検察院・司法局・婦連と共同で「長沙市岳麓区法院の家庭内暴力の被害者の人身安全保護の強化に関する暫定規定」を制定しました。この規定の全文はインターネットには掲載されていないようですが、この規定を報道した『中国婦女報』の記事(1)を見るかぎり、人身安全保護裁定の内容や有効期間は、最高人民法院応用法学研究所の「審理指南」とほほ同じです。

 ただし、「審理指南」では「人身安全保護裁定の付帯内容」として挙げられている1と2の点が、長沙市岳麓区法院の「規定」では、独立した人身安全保護裁定の内容として挙げられており、全体で9項目になっています。また、「審理指南」にあった、3「人身安全保護裁定が有効な期間は、夫婦の一方が勝手に、価値の比較的大きい夫婦の共有財産を処理してはならない」は、「規定」になく、かわりに「被申請人に、収入源がない申請人に裁定が有効な期間の生活費を責任を持って支払うよう命令する」が入っています(2)

 2009年4月には、湖南省の高級人民法院が「家庭内暴力の被害女性に対する司法の保護の強化に関する指導意見(試行)[湖南省高级人民法院关于加强对家庭暴力受害妇女司法保护的指导意见(试行)]」を出しました(本ブログの記事参照)。この「指導意見」は被害者保護全般を扱っていますが、その第11条で、以下のように「人身安全保護裁定」について定めています。

 「家庭内暴力の被害女性とその子どもの人身の安全をいっそう有効に保護し、民事訴訟の正常な進行を確保するために、人民法院は、被害者が申請により、人民法院が審査して、家庭内暴力の危険が存在しており、もし人身安全保護措置を取らなければ、被害者の合法的権益が埋め合わせることが難しい損害を被ることを確認した場合には、当地の公安機関と社区[地域コミュニティ]の協力の下、申請人の人身保護請求に対して、法にもとづいて裁定をすることができる。各基層人民法院は、上級法院の指導の下、現行の法律の規定に依拠して、人身安全保護裁定の試験工作をすることができる」

 さらに、2010年5月に出た、長沙市政法委「家庭内暴力予防・制止の司法執法工作を深く掘り下げて推進することに関する若干の意見(关于深入推进预防和制止家庭暴力司法执法工作的若干意见)」(長政法[2010]21号)は、全34条のうち15条を使って、人身安全保護裁定について具体的に規定しています。この内容も、おおむね最高人民法院応用法学研究所の「審理指南」に沿ったものですが、婦連や公安機関(警察)の役割について、もう少し具体的に規定してあります。たとえば、「[人身安全保護]裁定書と執行協力通知書はすぐに申請人と被申請人を管轄する派出所に送達する」とともに、「必要な時には裁定書を関係する居(村)民委員会、婦連組織、被申請人の勤務先に送達する」ことなどが書いてあります。また、「公安機関[の派出所]は24時間以内に申請人・被申請人と話をして、被申請人に警告をする」ともあります。

 また、長沙市中級人民法院「家庭内暴力予防・制止の裁判工作を深く掘り下げて推進することに関する若干の意見(长沙市中级人民法院关于深入推进预防和制止家庭暴力审判工作的若干意见)」も、全文は不明ですが、主に人身保護裁定について述べており、以下の点が注目されています。
 1.それまでは夫婦間だけに出した人身保護裁定を、子どもと老人を含む家族のメンバー全員に広げた(3)
 2.証拠についても、以下のように明確に規定している。一方が被害を受けた事実を証明する証拠ともう一方がやったという指摘をしたら、挙証責任はもう一方に移動し、もう一方は、被害が加害者の責任ではない証拠を提出する。もし反証を提出しなければ、加害者であると推定する。被害者が提出した証拠が家庭内暴力が事実である可能性が60%以上であることを証明すれば、家庭内暴力の存在を認定する(4)

 最高人民法院応用法学研究所・副研究員の陳敏さんは、上の長沙市の政法委および中級人民法院の文書を、「わが国で現在もっっとも操作性のある反家庭内暴力の司法の指導意見である」と述べています(5)

 もちろん湖南省以外でも、各地でさまざまな形で規定や意見が出されています。私が目にしたものだけでも、以下のようなものがあります。

 ・「試点法院」の一つである、広東省珠海市香洲区法院も「人身安全保護裁定に関する規定(試行)」を出しています。これが、中国で最初に規範化された操作細則であると報じられています(6)

 ・2010年6月には、江蘇省高級人民法院・江蘇省公安庁・江蘇省婦女連合会「法によって家庭内暴力に関わる婚姻家庭事件を処理する若干の問題に関する指導意見(試行)」(「关于依法处理涉及家庭暴力婚姻家庭案件若干问题的指导意见(试行)」)も、離婚・扶養・相続などの事件の際の家庭内暴力にも適用を広げています。また、この「意見」は、警察や婦連の役割について、長沙市政法委の「意見」より具体的に規定しており、たとえば、派出所が人身安全保護裁定について申請人・被申請人と話をする際には、内容の記録を取り、それに申請人と被申請人の署名をしてもらうことなどが規定してあります。

 ・陝西省では「陝西省人民法院家庭内暴力事件『人身保護命令』実施規則(試行)[陕西省人民法院家庭暴力案件“人身保护令”实施规则(试行)]」が作成されました。この中では、「訴訟前緊急保護命令」は48時間以内に実施し、「訴訟中保護命令」は申請後3業務日以内に実施することなどが定められており、同省の21の基層法院で試験的におこなうということです(7)

 ・2010年8月には、重慶市高級人民法院「家庭内暴力が関わる婚姻事件の人身安全保護裁定の手続規定(試行)[关于涉家庭暴力婚姻案件人身安全保护裁定的程序规定(试行)]」(→「市高法院规范涉家庭暴力婚姻案件人身安全保护裁定程序」に大体の内容あり)が公表されています。

 ・2010年11月から、「合肥市の人身安全保護裁定試験工作に関する暫定規定」が施行されました(8)

 試験工作をする法院(裁判所)も増加し、「2010年7月までに、最高人民法院応用法学研究所が正式に試行をおこなう権限を授けた法院が全国で72ヵ所になった」とのことです(9)

三 全国で100件を越える人身保護命令――中級人民法院が出した命令、男性を対象にした命令、精神的暴力に対する命令も

 2010年10月20日付『法制日報』は、「現在までに全国の各試点法院が出した人身保護命令は、100件を越えた」と報じました(10)

 2010年8月には、湖南省長沙市中級人民法院が、離婚訴訟の控訴人の申請に対して、人身保護命令を出しました。中級人民法院が出した初の人身保護命令です(11)

 また、2010年6月には、男性を対象にした初の人身保護命令も出されました。2010年5月、原告の何某は、夫婦の感情の不和、および、妻の李某と親族が原告とその父母を殴ることを理由に、離婚訴訟を起こすとともに、湖南省長沙市岳麓区人民法院に人身安全保護の申請をしました。長沙市岳麓区人民法院は、「司法の家庭内暴力に対する関与は『家庭内暴力は、加害者の被害者に対する支配である』という本質を把握しなければならない」と考えました。法院は、この事案では女性側が強者の地位におり、李某とその親族が暴力をふるったという事実と再度暴力をふるう可能性を確認したのち、6月1日、人身安全保護裁定を出しました(12)。ただし、全体として見ると、保護の対象の99%は女性です(13)

 また、2010年11月、四川省重慶市渝中区法院が初めて精神的暴力に対する保護命令を出したと報道されました。妻が、病気になったために収入のない夫を経済的に扶養していないことに対して、同法院は、「精神的暴力」だとして、「夫に半年間毎月800元支払え」という人身保護命令を出しました(14)。このような暴力は、ふつう経済的虐待(暴力)と言うのではないかと思いますが、「精神的暴力」という言葉が使われたようです。

四 中国の人身保護命令の問題点

 以下、中国で指摘されていることを中心に、中国の人身安全保護裁定の問題点をまとめてみたいと思います。

1.離婚訴訟に付随したものにとどまっている

 上記の引用から見てわかるとおり、最高人民法院応用法学研究所「審理指南」(第23条)も、湖南省高級人民法院「指導意見」(第11条)も、人身安全保護裁定を「民事訴訟の正常な進行」のための措置と位置づけている面が強いです。

 ですから、中国でも、以下のような指摘があります。

 「もともと英米の法体系においては、十分に成熟した『禁止令』(in junction)の制度は、訴訟手続から相対的に独立しており、実体的な権利になっている。
 しかし、中国で現在試験的におこなわれている『人身安全保護命令』は、その実質は民事強制措置であり、法院が勾引(強制的に被告などを出廷させる)をすることに類似したものである。それは必ず離婚などの民事訴訟に付属したものでなければならず、法院によって裁定されるのであり、その実質は、民事訴訟手続きの正常な進行を保障するものであって、被害者の権利を専門に保護するものではない。すなわち、法院が離婚訴訟を受理したのち、当事者がまだ暴力をふるっているとき、被害者が申請してはじめてこの手続きが始まるのであり、110番のように広くカバーすることはできない」(15)

 ただし、上記のうち、「法院が離婚訴訟を受理した後でないとダメ」という点については、最高人民法院応用法学研究所「審理指南」や各地の規定では、離婚訴訟を起こす前でも申請は可能であるとしており、人身保護裁定が出て15日以内に離婚訴訟を起こせばよいことになっていますので、少し不正確です。

 実際、少なくとも珠海市香洲区法院は、2009年5月に、被害者が離婚訴訟を起こす以前に人身保護裁定をしています。珠海市婦連は人身安全保護裁定について積極的に取り組んでおり、人身保護申請をした9人のうち、6人は婦連の紹介でしたが(残りの3人は、新聞報道を見て)(16)、このケースでも、婦連に助けを求めてきた被害者が人民安全保護裁定を申請するのを婦連が援助しました(17)

 けれど、人身保護裁定が出たら、離婚訴訟を起こさなければならないというのは、申請するハードルが高いと思います。起こさない場合は、15日で失効するわけですが、それでは、有効期間が短すぎる場合もあるのではないでしょうか?

 また、人身安全保護裁定が離婚訴訟に付随したものでしかないことは、法的婚姻以外(事実婚、同棲、同性の同居パートナーなど)の場合は、人身安全保護裁定とは無縁だということを意味しています。

2.「殴打・脅迫を禁止する」といった、既存の法律で禁止されている事項を主とした保護命令が少なくない

 具体的にどのような保護命令が出ているのかを、新聞記事から抜き書きしてみました。新聞記事からの抜き書きですので、全文でない可能性も少なくないのですが、手かがりにはなると思います。

・「殴打・脅迫を禁止する。有効期間3ヶ月間」
 2008年8月 江蘇省無錫市崇安区法院(18)
 2008年9月 湖南省長沙市岳麓区法院(19)
 2010年5月 湖南省株洲市蘆淞区法院(20)

・「殴打・脅迫を禁止する」
 2010年8月 湖南省長沙市中級人民法院(21)
 2010年3月 四川省重慶市渝中区法院(22)

・「殴打・脅迫・ハラスメント[騒擾]を禁止する。有効期間3ヶ月間」
 2009年6月 浙江省温州市龍湾区法院(23)

・「殴打・脅迫を禁止する。勝手に価値が比較的大きい夫婦の共有財産を処理してはならない。有効期間半年間」
 2010年11?月 江蘇省の揚州市高郵市法院(24)

・「殴打を禁止する。裁定が有効な期間は、夫婦の財産を勝手に処分してはならない。」
 2010年5月 広東省珠海市香洲区法院(25)
 2010年7月 山東省青島市即墨市法院(26)

・「申請人と申請人の親族や友人に対する殴打・脅迫・ハラスメントを禁止する」
 2010年9月 安徽省蕪湖市南陵県法院(27)

・「殴打・脅迫・つきまといを禁止する」
 2009年11月 広東省珠海市香洲区法院(28)

・「殴打・脅迫・ハラスメント・つきまといを禁止する」
 2010年6月 江蘇省無錫市崇安法院(29)

・「原告とその親戚・友人に対する殴打・脅迫・ハラスメント・つきまといを禁止する」
 2010年6月 湖南省長沙市岳麓区法院(30)

・「申請人とその近い親族に対する殴打・脅迫、ハラスメント、つきまとい、歓迎されない接触を禁止する。」
 2010年3月 福建省莆田市城廂区法院(31)

・「被保護者の家庭・仕事の場所・いつも出入りしてる地点の200メートル以内には立ち入ってはならない」
 2010年11月 安徽省合肥市廬陽区法院(32)

・「病気で生活費がない夫に半年間毎月800元支払え」
 2010年11月 四川省重慶市渝中区法院(33)。これは、「夫に病気を治させてやらず、扶助義務を果たさないのは、精神的暴力である」として、人身保護命令が出たケースです。

 以上は新聞で報じられているものに限定されていますし、私が見ていない記事も多いと思いますが、以上から見るかぎり、「殴打・脅迫を禁止する。もし違反したら処罰する」といった、既存の法律で禁止されている事項を含んだ命令、それらを主とした命令が少なくないと言えます。しかも、既存の法律で禁止されている事項にも有効期間を設けている命令もあります。逆に「審理指南」の4で挙げている、住居からの退去命令した保護命令を報じた記事は見つけられませんでした。

 一番上に挙げてある、2008年8月に江蘇省無錫市崇安区法院が出した中国初の人身安全保護裁定である「殴打・脅迫することを禁止する。本裁定は今から3カ月間有効」という裁定に対しては、以前もご紹介したように、次のような批判が出ました。「ロジックによって推断すると、まさかこの『保護命令』がなければ、劉剛[加害者]は王貴芬[被害者]を殴打・脅迫することは『禁止』されないとでもいうのか? 『保護命令』の時効は3ヵ月しかないが、これは、この期限の後は、劉剛が王貴芬を殴打・脅迫しても、もう保護は受けられないことを意味するのか? 上述の推断は明らかに成立しない。『保護命令』があってもなくても、家庭内暴力は法律で禁止されている。(……)もし『保護命令』の殻だけで、『保護命令』の実がなければ、どうして被害者を保護できようか?」「アメリカを例にとれば、類似の『民事保護令』の申請は極めて簡単で、その内容はさまざまである。しかし、『保護令』の内容はけっして現行の法律で既に禁止している行為を含んでいない」(34)

 ただし、これも以前紹介したことですが、岳麓区人民法院も最初に出した人身安全保護裁定の内容は「被告の陳某が、原告の羅某を脅迫・殴打することを禁止する」というだけのものでしたが、2件目、3件目になると、少しずつではありますが、以下のように裁定の内容を広げています。
 1件目:「被告の陳某が、原告の羅某を脅迫・殴打することを禁止する」
 2件目:「被告の范某が、原告の潘某を殴打・脅迫することを禁止する。被告の范某が、原告の潘某の親類・友人を脅迫・ハラスメントすることを禁止する」
 3件目:「被告の王某は本裁定書送達の日から、原告の李某とその親類・友人をもう脅迫・殴打してはならないと命ずる。被告の王某は原告の李某の父母の居住地の200m以内で活動することを禁止する。」(35)

 他の法院でも接近禁止命令のようなものは出ていますから、裁定の内容は広がる傾向にあるのかもしれません(この点は、法院ごとに検討する必要があると思いますが)。

 裁定の有効期間については、現在までに出された保護命令で有効期間が最も長いものは、3カ月だということですが(36)、上で出ている「裁定の有効期間が過ぎれば、殴ってもよくなるのか?」という問題については、長沙市岳麓区法院は、殴ったり脅迫したりを禁止することには有効期間を設けず、一定の範囲内での活動を禁止することなどは、有効期間を設けるというふうに区別することによって解決しています。しかし、そうするとまた新しい問題が出てくることが指摘されています。すなわち、有効期限をも設けなければ、裁判所が永久に保護することになり、警察の職責と衝突するということです(37)

3.人身保護命令によって暴力がストップして、夫婦が仲直りしたことを強調する報道や発言が目立つが……

ほとんどは暴力がストップしたと言うが

 先に引用した『法制日報』の記事によると、全国で出された100件を越える人身保護命令のうち「2例で違反状況が発生しただけで、自発的な履行率は98%以上に達している」ということです。保護命令によって暴力が止んだということは、個別の保護命令を報道した多くの記事にも書かれています。

 上でも述べたように、欧米や日本では「殴打・脅迫を禁止する」というような保護命令は出ないので、日本の状況と比較はできませんが、中国では、保護命令によって暴力がストップする理由として、加害者が「法院(公権力)が関与している」という意識を持つようになるから、という点が挙げられています。たとえば、ある記事は、「大多数の加害者は、『人身安全保護』を受け取った後、もう殴らないと述べる。たとえ態度を直接表明しない場合でも、裁定に違反することは公権力と張り合うことを意味し、必ず良くない結果になるだろうから、みな自覚的に従う」(38)と述べています。湖南省長沙市岳麓区人民法院民一庭の劉群さんも「私たちが出した裁定は、少なくとも私たちの当事者や社会に対しては、『法院が関与している』という情報を伝達した」「人身保護裁定がまず変えるのは、双方の当事者の家庭における地位である。家庭内暴力の特徴は支配と被支配であるが、裁定が出て以後は、支配と被支配の力の対比が変わり、支配される側は法院の裁定があるので安全感を持つようになる。暴力をふるっていた側も、法院がこのことに関与していると感じる。このような強力な関与は、彼がそれまで出会ったことがなかった」(39)と述べています。

 しかし、一般的には、DVの加害者プログラムに関してさえ、「加害者の態度を変えるのは難しい」と言われることが少なくいのですから、加害者の大多数が一つの命令だけで本当に態度を変えたのか否かは検討する必要があると思います。長期の追跡調査が必要ではないでしょうか? この点は、次の問題とかかわります。

大多数は離婚訴訟を取り下げた? 

 最高人民法院中国応用法学研究所の副研究員の陳敏さんは、「100余りの保護命令を出した後の結果から見ると、大多数は、男性側が誤りを認め、もう暴力をふるわないことを保証したのちに女性側が訴訟を取り下げるか、裁判官の調停によって仲直りした。少数は、女性があくまで離婚を要求したため、裁判官の調停か判決によって離婚した」(40)と述べています。

 実際、報道されている個別の事例を見ても、保護命令が出たために夫が暴力を振るわなくなったので、離婚をやめたという記事が目立ちます。もちろん女性が夫の暴力から逃れて離婚を獲得し、「保護命令は私に新しい生活を与えてくれた!」と言ったというケースを報道した記事もありますが(41)、保護命令によって夫は暴力を振るわなくなったので、夫婦は当初のように仲良くなって、妻は離婚訴訟を撤回したとか(42)、法院・婦連・社居委の調停の結果、妻は、もう一度夫を信じたいと述べたとか(43)、裁定が出て以後、夫は暴力を振るわなくなって、たまには家事も手伝うようになったので、離婚訴訟は起こさなかった(離婚訴訟を起していないのに保護命令を出させた場合は、裁定後15日以内に離婚訴訟を起こさないと、裁定の有効期間が切れる)とか(44)、「保護命令が出てわずか10日で、唐某[=被害者]が法院に来て、夫はもう悔い改める意思があるので、彼に一度機会を与えると決心したと述べて、自発的に法院に訴訟の取り下げをした」(45)とかいった事例のほうがよく報道されています。

 ただし、個別の法院の活動について書かれた新聞記事で、かつデータが掲載されているものを読むと、「大多数」が離婚するのをやめて仲直りしたというほどの状況は見つかりませんでした。長沙市岳麓区人民法院の2010年8月までの統計では、人身安全保護裁定を11件出したうち、夫婦関係の仲直りを促進したケースが6件、調停離婚が4件、判決離婚が1件でした(46)。また、2010年3月の新聞記事によると、珠海市香洲区法院では、9件の人身安全保護裁定の申請を受け、そのうち6件に保護命令を出し、1件を却下し、2件は申請人よって申請が取り下げられたということですが、申請を取り下げた女性は別として、6人はすでに離婚し、1人は離婚訴訟中であるとのことです(47)

 以上のことは、「全体的には離婚をやめる人が多かったが、一部の法院(保護命令について熱心な法院?)では離婚をやめる人は必ずしも多くなかった」ということを意味しているのかもしれませんし、陳敏さんの話や新聞報道には離婚を否定的に捉えるバイアスがかかっていて、現実を十分反映していないのかもしれません。そうした点はよくわかりません。

「保護命令の目的は、離婚ではなく、家族の調和」という発言

 私が少し気になるのは、保護命令を出した法院側の人に、保護命令の目的として、家族の「調和」を強調するむきがあることです。岳麓区人民法院民一庭裁判長の熊瑛さんは「保護命令は双方が矛盾を取り除くのをより良く助けるためのものであり、離婚はけっして目的ではない。私たち裁判官は人身安全保護裁定が家庭内暴力の被害者の『護身符』であるだけでなく、家庭の『調和符』であることを望んである」(48)と述べています。たしかに裁判所がこのような姿勢であれば、離婚したくないために保護命令の申請を躊躇する女性にとっては、保護命令を申請しやすくなるので良い思いますが、反面、離婚したい女性にとっては、離婚をやめせる圧力にならないでしょうか?

4.法律的な根拠が不足している

 最高人民法院応用法学研究所の「審理指南」は法律や最高人民法院が出す「司法解釈」のような法的拘束力はありません。ですから、「現行の法律法規の中には『人身保護命令』という明文の規定がない。違反した者に対してどのような処罰をするのかも、明確な規定がない」(49)と言えます。

 「審理指南」の試験的実施がおこなわれていない地域では、人身保護裁定を申請しても、裁判所は裁定を出しません(50)

五 地方性法規と保護命令

 そうした中、地方性法規の中に人身安全保護裁定の規定を盛り込む動きが出ていますが、盛り込まれなかった例と盛り込まれた例があります。

1.浙江省家庭内暴力予防・制止条例の草案の民事保護裁定の規定は削除

 2010年7月末、「浙江省家庭内暴力予防・制止条例」の草案が、はじめて同省の第11期人民代表大会常務委員会第19回会議で審議されたとき、その第14条に、「家庭内暴力と関係がある婚姻事件を審理する際、法院は、すでに家庭内暴力が発生しているか、現実にさしせまった家庭内暴力の危険が存在していることを確認した場合、被害者の申請により、法に照らして民事保護裁定をすることができる」という規定がありました。

 しかし、省の人民代表大会のある代表から、「草案の民事保護裁定についての規定は、上位法に違反している可能性があり、また人身の自由を制限する措置は、濫用される可能性があるから、全国人民代表大会に意見を求めることを提案する」という意見が出ました(『東方早報』の記事では、常務委員会のメンバーの中から、「民事保護裁定は訴訟制度に関係しており、人身の自由に関わる可能性があるから、地方性法規は必ず慎重にしなければならない」という意見が出た、と記述されています)。

 そこで、8月下旬、浙江省の人民代表大会常務委員会の法制工作委員会が全国人民代表大会の法制工作委員会に伺いをたてると、9月3日、全国人民代表大会の法制工作委員会から、「『立法法』第8条によると、訴訟に関する制度は、法律を制定することによってしか規定ができないので、地方性法規が民事保護裁定についての規定をするべきでない」という返答がありました。

 そのため、9月26日に浙江省の人民代表大会常務委員会第19回会議に提出された修正稿からは、「民事保護裁定」に関する内容は削除されました(51)

2.珠海市婦女権益保障条例は人身安全保護裁定の規定を盛り込む

 しかし、ほぼ同時期に制定された広東省の珠海市の婦女権益保障条例では、人身安全保護裁定の規定が盛り込まれました。

 珠海市婦女権益保障条例は、7月21日、同市の人民代表大会常務委員会で採択され、9月29日に広東省の人民代表大会常務委員会で批准され、12月1日から施行されます。その第28条には、「女性が家庭内暴力を受けたときは、法によって人民法院に人身安全保護裁定の申請をして、被申請人を暫時双方の共同の住居から立ち退くように責任を持って命令させることができる」とあります(52)

 なぜ浙江省と珠海市とで、異なる結果になったのかはよくわかりません。


 いずれにせよ、このかんの人身保護裁定の広がりには、民間の努力が反映していることは確かです。上で述べたように珠海市では婦女連合会が人身安全保護裁定に積極的に取り組んできましたが、婦女連合会は、市の人民代表大会に対しても人身安全保護裁定の必要性を説いて、それを条例に盛り込む努力をしました。

 また、NGOの家庭内暴力反対ネットワーク(反对家庭暴力网络)は、人身安全保護裁定についての司法解釈の建議稿を提案したり(53)、いくつかの地方で現地の婦女連合会と協力して、人身安全保護裁定についてのシンポジウムを開催したりしてきました(54)

 先日も、「女性に対する暴力撤廃の国際デー」の11月25日を前にして、家庭内暴力反対ネットワークが開催した座談会において、参加者たちは声明を発表し、全国的なDV防止法を制定することを求めるとともに、最高人民法院に対して、人身安全保護裁定の試行と適用の範囲を拡大し、できるだけ早く全国各地の裁判所に普及させることを訴えました(55)

 なお、もちろん日本のDV防止法の保護命令もさまざまな問題点が指摘されています。今回は、そうした諸問題が中国の保護命令ではどのようになっているのかを十分調べることはできませんでした。今後、もう少し整理してみたいと思います。

(1)回望2008 妇女维权」『中国婦女報』2008年12月30日。(「长沙市岳麓区法院颁发“人身保护令”追踪」の箇所)
(2)以下の内容の一項目または多項目であるとされています。
 1.被申請人は、申請人やその親、友人を殴打したり、脅迫することを禁止する。
 2.被申請人は、申請人にハラスメントをしたり、付きまとったり、申請人やその未成年の子どもに歓迎されない接触をすることを禁止する。
 3.被申請人に、しばらく双方の共同の住まいから引っ越すことを命ずる。
 4.申請人の住まい、学校、職場、その他のいつも出入りする場所から200m以内において、被申請人が活動することを禁止する。
 5.被申請人に、経済的な収入のない申請人に、裁定が有効な期間の生活費を支払うように命ずる。
 6.子どもを直接養育していない被申請人に、未成年の子どもの養育費を支払うように命ずる。
 7.被申請人に、申請人が被申請人の暴力のための傷害によって急に必要となった医療などの費用を支払うように命ずる。
 8.申請人に自費で心理的な治療を受けるように命ずることができる。
 9.申請人およびその特定の親族の人身の安全を保護するためのその他の措置。
 有効期間は、3~6カ月で、必要な場合は12カ月まで延長できるとされています。
(3)人身保护令:“护身符”也是“和谐符”——长沙法院以反家暴专项审判推进三项重点工作」中国法院網2010年8月25日。
(4)といっても、1.の点については、「審理指南」や「指導意見」も、「家族のメンバーの間、主に夫婦間」と書いてあり、完全に「夫婦間」に限定しているわけではありません。2.の点については、「指導意見」には「家庭内暴力事件が隠蔽性や被害女性の挙証の困難さなどの特徴を十分考慮して、合理的に挙証責任を分配する」という書き方にとどまっています。「審理指南」には、この長沙市中級人民法院の「意見」とほぼ同様の内容が書かれているのですが、「被害者が提出した証拠が家庭内暴力が事実である可能性が60%以上であることを証明すれば、家庭内暴力の存在を認定する」とは書かれていません。
(5)(3)に同じ。
(6)反家庭暴力 珠海香洲法院发出人身安全保护令」中国新聞網2009年7月20日、「珠海市探索实施“人身安全保护令” 预防制止家暴现成效」(珠海市婦聯)広東省婦女連合会サイト2010年9月17日。
(7)陕西在全国率先试点家庭暴力案件“人身保护令”」人民網2010年7月9日、「陕西诉讼中遭遇家庭暴力可向法院申请人身保护令」新華網2010年7月9日、「旬阳法院发出陕西省首份“人身保护令”」华商网-华商报2010年8月12日、「陕西发出首份“人身保护令”」法制網2010年8月25日。
(8)合肥“人身保护令”25日起全面施行 将为合法婚姻保驾护航,男人遇家暴也可申请」合肥在线-江淮晨报2010年11月25日。
(9)全国已发出逾百个人身保护令 自动履行率超98%绝大多数以男方认错女方撤诉结案」法制網2010年10月19日。
(10)同上。
(11)长沙发出全国首份中级人民法院“人身保护令”」鳳網2010年8月26日。
(12)长沙男子遭家暴诉离婚 法院发“人身保护令”」人民網2010年6月7日。
(13)(9)に同じ。
(14)重庆法院发出首张家庭精神暴力“人身保护令”」新華網2010年11月6日。
(15)黒格二「“人身安全保护令”何以遇冷」『新京報』2010年1月22日→人民網。
(16)遭遇家暴可申请保护令 再打老婆就拘留你!」中国広播網2010年3月9日。
(17)珠海市探索实施“人身安全保护令” 预防制止家暴现成效」(珠海市婦聯)広東省婦女連合会サイト2010年9月17日。
(18)本ブログの記事「DVに対して初の人身安全保護裁定」参照。
(19)舒秋膂・劉群「湖南“人身保護令”為家庭暴力受害者撑起“保護傘” 長沙市岳麓区人民法院発出湖南省首個“反家庭暴力”人身安全保護裁定」(2008-10-10)反対家庭暴力網絡HP、「“人身保護令”為受害者撑起“保護傘”」『中国婦女報』2008年10月14日、「“再打老婆就拘留你” 湖南首份反家暴“人身保護令”発出」『法制日報』2009年10月22日。
(20)制止家庭暴力 株洲下达首份人身安全保护裁定书」星辰在线-长沙晚报2010年5月8日。
(21)反家庭暴力座谈会前日召开 长沙已发人身保护令16份」紅網湖南頻道2010年8月26日。
(22)一纸家庭暴力裁定书送到拳脚重庆男儿变乖了」华龙网-重慶晩報2010年3月5日。
(23)试点面临难题 浙江反家暴人身保护条款立法被叫停」浙江在線新聞網站2010年9月27日。
(24)高邮女子首获"人身保护令"」『揚洲晩報』2010年11月25日。
(25)珠海市探索实施“人身安全保护令” 预防制止家暴现成效」(珠海市婦聯)広東省婦女連合会サイト2010年9月17日。
(26)山东首个反家庭暴力合议庭发出首张保护令」『中国婦女報』2010年7月27日。
(27)南陵发出我省首张"人身保护令",有效扼制家暴」中安在线(安徽新闻)2010年9月20日。
(28)(「遭遇家暴可申请保护令 再打老婆就拘留你!」中国広播網2010年3月9日。
(29)女子不堪家暴,法官签出“人身保护令”」『無錫日報』2010年7月29日。
(30)长沙男子遭家暴诉离婚 法院发“人身保护令”」人民網2010年6月7日。
(31)福建签发首份家暴《人身保护令》」『中国婦女報』2010年3月16日。
(32)合肥启动家暴人身保护令 为受保护者设定200米安全距离」『現代快報』2010年11月9日。
(33)重庆法院发出首张家庭精神暴力“人身保护令”」新華網2010年11月6日。
(34)王琳「誰来保護“反家庭暴力保護令”」『広州日報』2008年9月10日。
(35)舒秋膂「拓寛保護範囲 規範操作流程」(2009-05-11)岳麓区法院網
(36)(9)に同じ。
(37)长沙岳麓区:家暴人身保护令总体实施效果良好」『中国婦女報』2010年1月15日。
(38)人身保护令:“护身符”也是“和谐符”——长沙法院以反家暴专项审判推进三项重点工作」中国法院網2010年8月25日。
(39)长沙岳麓区:家暴人身保护令总体实施效果良好」『中国婦女報』2010年1月15日。
(40)(9)に同じ。
(41)15个家庭受益人身保护令」『長沙晩報』2010年6月21日。
(42)南陵发出我省首张"人身保护令",有效扼制家暴」中安在线(安徽新闻)2010年9月20日。
(43)女子不堪家暴,法官签出“人身保护令”」『無錫日報』2010年7月29日。
(44)反家庭暴力 珠海香洲法院发出人身安全保护令」中国新聞網2009年7月20日。
(45)人身保护令:“护身符”也是“和谐符”——长沙法院以反家暴专项审判推进三项重点工作」中国法院網2010年8月25日。
(46)反家庭暴力座谈会前日召开 长沙已发人身保护令16份」紅網湖南頻道2010年8月26日。
(47)遭遇家暴可申请保护令 再打老婆就拘留你!」中国広播網2010年3月9日。
(48)人身保护令:“护身符”也是“和谐符”——长沙法院以反家暴专项审判推进三项重点工作」中国法院網2010年8月25日。
(49)“人身保护令”,可能面临尴尬」『検察日報』2010年8月16日。
(50)安徽省桐城県の家庭内暴力事件では、被害者の親族が人身保護裁定を申請したけれども、認められなかったとのことです(「网络召开人身保护裁定司法解释建议稿研讨会」研究倡导部 易蓓蓓、反対家庭暴力網絡サイト2009年2月20日)。
(51)以上は、「浙江取消“反家暴人身保护令”」『東方早報』2010年9月29日、「试点面临难题 浙江反家暴人身保护条款立法被叫停」浙江在線新聞網站2010年9月27日。
(52)以上は、「“人身保护令”写进法规」珠海新聞網2010年7月22日、「《珠海市妇女权益保障条例》呈现八大亮点」中国共産党珠海市委員会サイト2010年11月9日。
(53)网络召开人身保护裁定司法解释建议稿研讨会」(研究倡导部 易蓓蓓)反対家庭暴力網絡サイト2009年2月20日。
(54)“人身保护裁定司法推进研讨会”在长沙召开」(長沙市婦聯権益部)反対家庭暴力網絡サイト2009年6月12日、「反家暴人身保护裁定司法推进研讨会议在南京召开」(江蘇省婦聯)反対家庭暴力網絡サイト2009年7月21日。
(55)反对家庭暴力倡议书(2010年11月21日)」反対家庭暴力網絡サイト2010年11月22日。
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2010台湾LGBTプライドパレードに史上最高の3万人――すすまないセクマイ政策に怒り

 10月30日、第8回台湾LGBTプライドパレード(台灣同志遊行)がおこなわれ、約3万人が参加しました(一昨年と昨年のパレードについては、本ブログの記事「台湾プライドパレードに史上最高の1万8千人」「台湾プライドパレード2009に2万5千人」参照)。

11月の選挙をにらんで、政策的要求を前面に

 今回のパレードのスローガンは「同志政策に一票を投じよう」でした。

 パレードの「テーマと精神(主題與精神)」は、以下のとおりでした(「同志」という言葉――日本語で言えば、LGBT、セクシュアルマイノリティ、(広義の)ゲイ――は翻訳せずに、「同志」のままにしています。なお、以下の翻訳はかなりいい加減です)。

●政治屋の消費を拒否し、同志の政治力をカムアウトしよう

 2001年に陳水扁が執政していた時に計画した「人権基本法草案[同志が家族を形成することや養子を取ることができるようにする]」は、早々と立ち消えになった。2006年、立法委員の蕭美琴が提出した「同志婚姻法草案」は、立法院で悪質なボイコットにあった。2009年、現総統の馬英九は「国際人権デー」に「市民的および政治的権利に関する国際規約」に署名したが、同志の人権に関する立法と政策についてはまったく実績がなく、さらに、できあいの民間の同志運動の成果を業績にしている!

 ・「私たちはここにいる」! 私たちは、姿を隠した市民ではない。私たちは空手形を拒む! 本当の小人のホモフォビアやヘイトスピーチに抗議し、偽君子の同志の人々に対する偽の牛肉、本当は消費[? 美味しいことを言って、実際は利用するだけ、といった意味でしょうか?]を拒絶する。

 ・「私たちはここにいる」! 同志の市民権は、いいかげんに済ます草案であってはならず、まして票を騙し取るためのスローガンであってはならない。私たちには、公平で正義の社会のなかで、生命の自主性と多元性を実現しなければならない。

 ・「私たちはここにいる」! 同志の政治的影響力を発揮し、私たちの尊厳と権利を守るために、手紙を書き、電話をして、ホモフォビアの候補者を監督し、実際の投票という行動によって、同志に友好的な政見を励まそう。

●多元的な家族を重視し、同居パートナーの権益を保障しよう

 時宜に合わない民法に加えて現行政策が、単一の異性愛夫婦制度を強力に打ち固め、それを社会の唯一の正しい価値と見なし、他のすべての人を三流市民にして、自らが選出した政府に懲罰され、健康保険・税制・医療・補償・相続・住宅……は、どれ一つとして見ることも、得ることもできない!

 私たちの家族は、私たちが作り出す! 家族構造の変化という社会の現実に対応して、私たちは「パートナー」と「親族」関係の定義を拡大し、養子や未婚の人工生殖の合法化を推進し、関連する権益を社会福祉のシステムに組み込んで、真に生活レベルにおいて実現して、多元的な家族とパートナーが受けられるべき保障を受けることを要求する。

 私たちはまた、人はみな「性別自決」の権利を持つべきであって、法律は直ちに性別の認定と変更の制限を緩め、真に多元的なジェンダー教育を実践し、友好的な空間を作り出して、すべての形態の暴力に終止符を打つことを主張する!

●差別的政策に反対し、周縁が同盟を結んで声を上げよう

 私たちは、「歴史のない」同志になることを拒否する。今年3月、台北市は、学校に同志団体を設立することを禁止して、違法にも公然と青少年の同志を孤立させる先頭に立った![この点は後述]。「ジェンダー[性別]教育平等法」と「ジェンダー[性別]工作平等法」は明文で同志の教育と労働の権利を保障しているけれど、ほんのちょっとの実質的な平等さえ政府は保障できていない!

 私たちは「未来のない」同志になることを拒否する。台湾の現行の健康保険の保険料・節税制度・青少年が家を持つ方案(※)などの社会福祉政策は、単身者・老人・同志・新移民・労働者などを完全に排除し、異性愛の中産階級の核家族だけを優遇しており、同志は「家がなく」・「老いることができず」、パートナーがある者には権利がなく、パートナーがなければ「死死厚」(?)である!

 私たちは「人に損をさせて、己を利す」弱者になることを拒否する。同志は、他の弱者・周縁グループと同じ立場に立って、政府が労働者を搾取し、心身の障害者を長い間無視し、国際パートナーの権益を無視し、セックスワーカーを攻撃・抑圧していることに抗議する。「性の権利は人権である」、私たちは、全てのいじめられ侮辱されてきた弱者の友人を招いて共に立ち上がって、異性愛の中産家庭にばかり取り入って、他の人々のニーズを無視している政府に大きな声で怒りをぶつけなければならない!

●青[国民党]と緑[民進党]の争いを超越し、自由への大道を邁進しよう

 私たちは、多元的性別を支持・尊重し、社会の現実を正視する政治家を支持する。各候補者は同志という得票源を重視し、実質的な選挙の政見を提出すべきであり、見かけだけの話をして空手形を出してはならないと訴える!

 今回の台湾同志パレードでは、私たちは「誇りを持って自らの姿を現す」だけでなく、街に出て「私に必要な幸福」を訴えなければならない。これは、政治的パワーの具体的表現である。私たちといっしょに各政党と候補者の同志政策を厳しく点検し、同志政策に一票を投じ、未来と希望に一票を投じるようお願いする!


※「青年安心成家方案」……政府が2009年から始めた、無利息の住宅ローンや家賃補助によって住宅費の負担を軽減して、青年の結婚を奨励する方案。この方案が単身者や同性愛者、中高年を排除していることに対して、婦女新知基金会、同志諮詢熱線、台北市晩晴婦女協会、台北市女性権益促進会、台北市性別平等教育協会などが抗議をおこなった(1)

 上の「テーマと精神」に見るように、今回のパレードは政治的主張を前面に出したものになりました。これは、直接には、きたる11月27日に、台湾の5大都市(台北市・新北市・台中市・台南市・高雄市)で市長選挙が行われるためです。

セクマイ政策がない台北市長候補・蘇貞昌氏のパレードへの参加を「歓迎しない」決議

 今回のパレードには、台北市長候補の蘇貞昌氏(民進党)が事前に参加を表明し、メディアは「台湾プライドパレード連盟は歓迎を表明した」と報じました。

 これに対して、台湾プライドパレード連盟は声明を発表して、立場を明確にしました(「台灣同志遊行聯盟聲明:請尊重遊行主體 不歡迎沒有同志政策的候選人」苦勞網2010年10月28日(2))。

 まず、「連盟が歓迎を表明した」という点に関しては、蘇貞昌陣営の人から電話で問い合わせがあったとき、パレード連盟は「パレードは開放された場であり、パレード連盟はいかなる人の参加も拒否したことはない」と述べただけだそうです。

 10月27日のパレード連盟の幹部会議において、蘇貞昌氏の参加について激しい議論が交わされ、最後は投票によって、「同志政策がなく、過去に同志グループに関心を寄せたことのない候補者が、投票の前だけプライドパレードに参加するのは、パレード連盟は歓迎しないという意を明確に表明する」という決議がされました。

 パレード連盟は、以下のように述べています。

 「政治家、とくに既に政界で長年さまざまな職務についた政治家が、もしプライドパレードの現場に来るならば、過去に職務上どのような『同志政策』を実践してきたかや、性の権利の保障、弱者層の保障などの社会の公平・正義に対する姿勢の記録が、必然的にプライドパレードの現場で大衆または団体によって検証されるであろう。蘇貞昌候補者はこれまで屏東県長・台北県長・行政院長を歴任しており、長い職歴において同志の権益に関連する法律の推進や政策に関心を持つ機会と時機は十二分にあったが、その施政の記録を検証してみても、同志にフレンドリーな政治的業績は何もない。この点は、同志の人々に強く問いただされるであろう。」

 蘇貞昌候補者は、主催者の意思を尊重するとして、結局、パレードには参加しませんでした。

 台湾プライドパレード連盟のこうした対応は、ある意味当然でしょう。ただし、連盟の幹部会議でも激論になったことからもわかるように、単純に結論が出せる問題ではないと思うので(たとえば「とにかく参加してもらうことが大切」という考え方もありうると思います)、今回の連盟の対応に関しては、期待を裏切ってきた従来の政治家の態度に対する不信感が影響しているように思います。

当日のパレードのようす

 当日は小雨がぱらつく天気でしたが、史上最高の3万人がパレードに参加しました(3)

 当日の写真(フリッカー)→2010同志大遊行現場相片(100枚以上の写真があり、これがいちばん当日のパレードの全体像を捉えています)。

 この記事も、写真が多いです→「台灣同志大遊行 三萬人齊聚 『投同志政策一票』」苦勞網2010年10月30日。この記事には、今年は、学校での差別事件が多く発生したので、学生の団体が目立ったとあります。

 パレードのルート→預定遊行路線

 動画は、あまりまとまったものはないのですが、一応、以下のようなものがyuotubeにはupされています。

 同志2010遊行之2裸鬧街//Taiwan LGBT Pride Parade//台湾ゲイ・パレード


 Taiwan Gay Pride


 パレードの終点のメインステージでは、台湾緑党(市民運動を基盤にした比較的小さな政党[ウィキペディア日本語版の説明])の王鐘銘・宋佳倫、人民老大参政団(こちらも市民運動的なもののようです)の王蘋の3人の「同志」の身分で選挙に出る候補者が紹介されました。

 今回は、歌手のアミト(張恵妹)が「レインボー大使」をつとめました。彼女がレインボー大使になるのは2007年に次いで2回目ですが、彼女は2009年から原住民名であるアミト[阿密特]を名乗っています(それ以前から隠していたわけではまったくないですが)。そのことでは周囲との軋轢もあったそうですが、台湾プライドパレード連盟は、彼女のこうした「カムアウト」を、プライドパレードの精神に通じるものとして高く評価しています(4)

 メインステージでのアミトの歌「彩虹」(2010 LGBT 台灣同志大遊行 阿密特-彩虹)


なかなか進まない法律と政策

 今回パレードが政策的主張を前面に出した理由は、直接には11月の選挙のためですが、根本的には、上の「テーマと精神」の文中でも触れられているように、実際の政策がなかなか前進しないことがあるようです。

 以下、台湾における近年の同性の婚姻や法律についての歴史をまとめてみました(5)

 ・1986年:家威が同性のパートナーとの結婚を裁判所に拒否され、立法院に請願したが、立法院の答えは「同性愛は少数の変態であり、情欲だけを満たす者であって、社会の善良な風俗に違反する」だった。
 ・1996年11月:有名作家の許佑生とパートナーの葛芮(Gray Harriman)が台北で公然と同性結婚をおこない、メディアも大きく報道した。
 ・2000年9月:台北市政府民政局が第1回同志公民運動「台北同玩節」をおこなった(後述)。
 ・2001年:法務部が「人権保障基本法」を草案を作成し、同性愛者に法律によって家族を形成することおよび養子を取ることができるようにする立法を起草した。しかし、この法律は、まだ立法院には送られていない。
 ・2002年:レズビアンの湯姆と漢娜が公開で結婚式。
 ・2004年:内政部社会福利綱領が明文で「多元的家族をサポートする:各公共政策の推進は、ざまざまな性的指向・人種・婚姻関係・家族の規模・家族構造によって構成された家族形態および価値観の差異を尊重しなければならず、政府は、家族に生活・教育・養育・衛生の機能を発揮させるほか、積極的に弱者の家族を援助して、家庭生活の質を保護しなければならない」とする。
 ・2004年6月:ジェンダー[性別]平等教育法(原文)が公布施行、教育での性的指向による差別を禁止。
 ・2006年:立法委員・蕭美琴(民進党)が「同性婚姻法」の制定を提案:11月、正式な提案になるに足る立法委員の連署を得て、立法院で審議される。しかし、頼士葆(国民党)、王世(民進党)ら23名の立法委員から反対の連署が提出され、審議はストップ(6)
 ・2006年3月:DV防止法が改正、同志を法律の適用対象に組み込む。
 ・2007年:両性工作平等法が改正、ジェンダー[性別]工作平等法(原文)に。労働における性的指向による差別も禁止。
 ・2009年:婦女新知基金会、同志諮詢熱線協会、台北市晩晴婦女協会、台湾女同志拉拉手協会、TG蝶園、台北市女性権益促進会、同志家庭権益促進会の7団体により、「台湾パートナー権推進連盟(台灣伴侶權推動聯盟 Taiwan Domestic Partner Task Force)」結成。



 以上、教育や労働、DVに関する法律が性的指向による差別を視野に入れるようになったことは前進だと思いますが、同性婚姻実現の壁はまだ厚いようです。

台北市で「学校で社会団体が学生を同志の交友などの活動に誘導吸収することを防ぐ」付帯意見――セクマイ団体と行政との軋轢の強まり

 また、法律で禁止さているはずの、教育での性的指向による差別を立法や行政自身がおこなったことが、今年の春、問題になりました。

 台北市は、2000年から「同志公民運動」という、市の予算を使って、同志団体とも協力して、市民の同志に対する認識を向上させる活動を開始しました(近年のサイト→2009同志公民運動2010年台北好同志 新公民運動)。毎年、この運動では、『同志認識ハンドブック』を編集したり(2009年版→『2009認識同志手冊[PDF])、座談会・講座・映画上映会などのイベントをおこなったりしてきました(2000-2009同志公民運動 簡介及成果)(7)

 しかし、その台北市の議会で、同志公民運動の予算の審査の中で、「どのようにして、高・中・職[=中等教育]以下の学校の社会団体[社団]が社会団体の名義を借りて、学生を同志の交友[交誼]などの活動に誘導吸収することを防いで、学生に自然な適性の発展の空間を保障するかを研究する」という「付帯意見」が付きました。

 しかも、台北市の民政局(同志公民運動を担う)や社会局(ジェンダー主流化を取り扱う)、法規会(法規に責任を持つ)の人々も、上の件について問題にしませんでした。

 それに対して、さまざなま同志団体が以下のように述べて、抗議をしました(以下は概略)(8)

1.同志の青少年に対して交友のスペースを与えるべきである。同志の青少年の愛情のニーズに汚名を着せることを拒否する!
 異性愛に対しては、明文で交際を禁止することはなく、むしろ男子校と女子校の合同キャンプが伝統になっている場合もある。

2.ジェンダー平等教育法を徹底して実施してほしい。市政府が先頭に立ってジェンダー平等を後退させることは拒否する!
 ジェンダー[性別]平等教育法が2004年6月24日に公布施行されて以来、すでに6年目に突入したが、その中のジェンダー平等の精神は、まだ主管機関の中に定着していない。
 [ジェンダー平等教育法より]
 第12条1項:学校は、ジェンダー[性別]平等の学習環境を提供し、安全なキャンパスの空間を築かなければならない。
 第14条1項:学校は、学生の性別あるいは性的指向によって、教学・活動・評価・賞罰・福利・サービスの上で差別待遇をしてはならない。
 第14条2項:学校は、性別あるいは性的指向のために不利な境遇にある学生に対しては、積極的に協力・援助を提供し、その境遇を改善しなければならない。

3.同志たちは、市政府がイメージを美化することを助ける消費品になることを拒否する!
 馬英九総統はかつて台北市長在任中に「同志公民運動」を創設して、同志団体に引き受けさせ、その活動をとおして市民の同志に対する認識を増進させ、「同志の市民を尊重する多元的都市」を築くことを期待した。馬前市長は、ずっと以前「国際都市フォーラム」会議に参加したとき、この活動によって、同志であるドイツのベルリン市長[=クラウス・ヴォーヴェライト(ウィキペディア日本語版の説明)]の注目と賞賛を得て、国際外交を展開することができた。
 しかし、同志公民運動の予算は年々減少し、2003年には、王世堅などの台北市議員が、台北市政府が同志活動に補助するのは「同性愛を奨励し」、「風俗を害し」、「同志が公然といちゃいちゃするのは、教化を妨げる」などと公然と差別発言さえしているのは、みな、台湾の政治家の同志の人権に対する偏見をあらわしている。



 同志団体と市当局との間には当初から認識のズレがあったうえ、だんだん市当局の姿勢は後退してきたようです。台湾性別人権協会によると、「市政府の担当者との1回1回の意思疎通・協調がスムーズにいったことはなく、しかも、後期になるほど、言葉で言いにくいほど観念の落差が現れてきた。市政府自身の『ホモフォビア』がしだいに明確・具体的になり、かつ『勇敢に表すようになった』」といいます。たとえば、宣伝ポスターの中で、同性愛者が抱擁したり、トランスジェンダーが扮装している画像を使うことを禁止するとか、同志の活動をエイズと結びつけるとかいったことがあったようです。また、予算が減少しているだけでなく、記者会見の場所も、市長の事務室から民政局の会議室になり、出席者も市長から局長、課長へと下がったとのことです(9)

 金戸幸子さんは、台湾の両性工作平等法の成立の一つの要因として、「国際社会からも認められる『国づくり』、国際社会に対する『挑戦』の一環として、台湾の政府が『ジェンダー主流化』という趨勢への対応を新しい国民統合の戦略として取り入れるようになった」という「国際的ファクター」(10)を指摘しておられますが、「国際的アピール」という面と同志たちの要求とにはズレがあるのかもしれません。

 もちろん、今回の問題は、どこの国にもあるような行政と運動とのズレ・軋轢とか、バックラッシュとかいう面から考えることもできると思います。

 それでも、日本よりは台湾の方が進んでいると思うのですが……。

(1)『抗議青年安心成家方案 排除單身、中老年與同志的權益』記者會」台灣伴侶權推動聯盟ブログ2010年3月26日。
(2)一般メディアでも、「同志聯盟憂模糊焦點 不歡迎蘇參加遊行」(『自由時報』2010年10月30日)、「騙選票? 同志遊行不歡迎蘇貞昌」(華視新聞網2010年10月31日)と報道されています。
(3)一般メディアでの報道は、「阿密特代言 3萬人冒雨挺同志政策」聯合報2010年10月31日、「台北でアジア最大規模のゲイパレード」AFPBB News2010年11月1日、「台北で今年もゲイパレード=3万人参加、アジア最大級」時事ドットコム2010年10月30日。
(4)2010同志遊行彩虹大使出爐 1030同志遊行當天歌聲支持 阿密特現身做自己 突破傳統勇敢不妥協 堅持精神同志感同身受 再次當選彩虹大使」台灣同志遊行聯盟サイト
(5)この年表は、巫緒樑(同志諮詢熱線協會文宣部主任)、曾昭媛(婦女新知基金會秘書長)、黃嘉韻(婦女新知基金會法案部主任)、劉怡伶(美國印第安那大學比較法碩士)、田庭芳(中國文化大學法律學碩士)、簡至潔(台灣女同志拉拉手協會理事長)「 同志要婚姻/伴侶權!同志伴侶要實質的權益及保障!(上)」『全國律師』10卷5期(2006年5月)の附表1「台灣同志婚姻相關新聞及歷史事件」を特に参考にしました(なお、同論文の下は「同志要婚姻/伴侶權!同志伴侶要實質的權益及保障!(下)」)。ネットで読めるよりまとまった年表は、「同志平權運動大事記」『2009同志公民運動 認識同志手冊』[PDF](台北市政府民政局 2009年)。
(6)『同性婚姻法』立法攻防戰展開」、「台灣的政治人物,你為什麼反對同志婚姻!?」、「同志婚姻法 宗教團體反彈」、「蕭美琴籲重視同志婚姻權 推動同性婚姻法」台灣性別人權協會サイト。
(7)日本のゲイサイトにも、「同性愛の公民権運動、台北市が支援。」RainbowNetJapan2000/09/03という記事があります。
(8)恐同台北,孤立同志青少年――台北市議會、市政府帶頭歧視又違法!連署及抗議行動――」台灣性別人權協會サイト2010年3月2日、「打開暗的那一頁──我的同志兒少情慾經驗 街頭行動──」同2010年3月28日。
(9)台灣性別人權協會「抗議行動發言稿:『不察』的歧視 其來有自──同志公民運動早已背離認識差異、尊重性別多元精神」台灣性別人權協會サイト2010年3月2日。
(10)金戸幸子「台湾の『両性工作平等法』成立過程に関する国際社会学的考察――多様化社会建設に向けた国家戦略としてのジェンダー主流化をめぐって」『日本台湾学会報』第7号(2005年)(PDF)38頁。
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