2010-10

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

戴晴、艾暁明、呂頻氏らが「劉暁波のノーベル賞受賞に関する声明」に署名

 10月14日、100人あまりの中国の知識人が「劉暁波のノーベル賞受賞に関する声明」(百名中国知识人发表声明支持刘晓波获奖呼吁启动政改」中国語・英語・フランス語・日本語の各言語で書かれています)を発表し、劉のノーベル賞受賞を支持することや、劉をはじめとする全ての政治犯を釈放することをなどを訴えました。

 その中には、女性の人権問題とかかわりが深い、以下のような人の名前もありました(肩書は、署名に付してある肩書)。

・戴晴(北京、学者)
・艾暁明(広州、学者)
・呂頻(北京、女性の権利活動家[婦女権利工作者])

 もちろん、ほかにも私が知らないだけで、女性の人権問題にかかわっている方はいらっしゃると思いますが、上の3人の方はとくに著名だと思います。

戴晴さんについて

 戴晴さん(戴晴[维基百科][写真あり])は、日本でも、田畑佐和子訳で『毛沢東と中国知識人 : 延安整風から反右派闘争へ』(東方書店 1990年)が翻訳されているなど、比較的有名です。他にも、戴晴ほか著(林郁編訳)『「性」を語り始めた中国の女たち』(徳間書店 1989年)、戴晴編(鷲見一夫・胡暐婷訳)『三峡ダム : 建設の是非をめぐっての論争』(築地書館 1996年)が訳されていますが、こうした著作にもあらわているように、女性問題や環境問題についても見識があり、行動をしている人です。

 戴晴さんは、1982年から1989年まで『光明日報』の記者でしたが、そのとき、方励之、厳家其、金観濤といった反体制的な知識人にインタビューをしています。1989年には、民主活動家の魏京生釈放要請の署名請願運動の推進者になり、6月4日の天安門事件後、投獄されました。戴晴さんと天安門事件とのかかわりについては、上の『毛沢東と中国知識人 : 延安整風から反右派闘争へ』の「訳者あとがき」に詳しく、事件後の投獄に関しては、戴晴(田畑佐和子訳)「私の入獄」(『中国研究月報』1990年5月号)に詳しいです。

艾暁明さんについて

 艾暁明さんは、広州市の中山大学の元教授(2008年退職)で、「ジェンダー教育フォーラム」(性别教育论坛)を主宰してきました。

 艾暁明さんは、2004年から、社会問題を取材したドキュメンタリー映画の撮影を開始し、これまでに以下のような作品を完成させてきました。
 ・《ヴァギナ・モノローグの舞台裏の物語[阴道独白幕后的故事]》―中山大学で《ヴァギナ・モノローグス》の中国語版を上演した際の記録
 ・《ホワイトリボン[白丝带]》―女性に対する暴力反対運動の記録
 ・《太石村[太石村]》―2005年の広州市の太石村で起きた村長罷免運動(弾圧された)の記録…太石村事件については、「太石村罷免事件[维基百科]」、日本語では、「『民主化運動』だから断固弾圧――番禺太石村事件(上)」「(下)」「(3)」(日々是チナヲチ2005年9月15日~16日)参照。
 ・《天国の花園[天堂花园]》―小学校教師・黄晴さんが遺体で発見され、前日黄さんが会っていた男による強姦致死が疑われたが、裁判ではその男は無罪になった事件の記録
 ・《私たちの子ども[我们的娃娃]》―四川省大地震で、手抜き工事の疑いのある校舎の倒壊により生き埋めになった子どもたちの幼年期、およびその父母たちの痛み・怒りを記録
 ・《市民調査[公民调查]》―四川省大地震の校舎倒壊被害についての譚作人、艾未未、そのほか一般の人々による市民調査の記録。譚作人は「国家政権の転覆を扇動した」という嫌疑で逮捕されたという。

 艾暁明さんは、昨年12月、「女性の自由のためのシモーヌ・ド・ボーヴォワール賞」を受賞しました。しかし、《太石村》を撮影したことが原因で、出国が認められず、授賞式には出席できませんでした。

 艾暁明さんについては、張潔平(佐原安希子訳)「四川大地震を描いたドキュメンタリー映画『私たちの子ども』 ボーヴォワール賞受賞の艾暁明さんに制作の意図を聞く」(『亜洲週刊』2010年1月24日→日刊ベリダ2010年5月17日)に詳しく書かれています(1)

 艾暁明さんは、以前はブログをしていたのですが、どういう事情によってなのかわかりませんが、現在、このブログは閉鎖されています。彼女はツイッター(艾晓明 on twitter)で、劉氏のノーベル賞受賞について多くの発言をしています。

呂頻さんについて

 呂頻さん(写真)は現在はフリーですが、かつては中華全国婦女連合会の機関紙『中国婦女報』の記者・編集者でした。呂頻さんは、現在は、女性の視点からメディアを分析するNGOである「女性メディアウオッチネットワーク」で活動しており、同ネットワークが発行する電子週報『女声』の編集をしています。呂頻さんは、『中国婦女報』にもしばしば寄稿してきましたが、鄧玉嬌事件をめぐって婦連の体質を厳しく批判したこともあります(ただし、『中国婦女報』に掲載された際には、婦連批判の個所が大幅に削除されました。本ブログの記事「鄧玉嬌事件をめぐって」参照)。

 今年9月、『女声』に同誌発行1周年の回顧記事(2)が無署名で掲載されましたが、その中の以下の1節は呂頻さんのスタンスを示したものだと思います。

 「『一切の社会問題はみなジェンダー問題である』。『女声』は時事ニュースの追跡と分析をつうじて、このような信念を体現している。そうした問題に切り込むとき、最も重視する角度は、女性のエンパワメント、制度の責任を問うこと、文化の批判である。『女声』は、ジェンダー問題は、現実も根源も非常に複雑であり、また、他の多くの問題と絡み合っていると信じるので、単純な思考と判定的な結論は避ける。『女声』は、いつも女性の力を信じ・探し、女性の抗争は、その成功・失敗にかかわらず、最も傾聴と励ましに値する話だと考える。『女声』は、ジェンダーの不平等は必ずなくさなければならないと確固として主張すると同時に、ジェンダーの不平等をなくすための努力は、同時に全面的に公民の権利と政治的変革を勝ち取るための闘争の一部でもあると信じる。『女声』は、フェミニズム理論を、中国の社会の現実と民間の権利の行動と結びつけ、このような結びつきのために、このまれにみる時代において、独自の視角による記録を残すものである。」

 中国の民主活動家が必ずしもフェミニズムの視点を持っておらず、また逆に、現在の体制を批判しえないフェミニストも多いなかで、上のような視点はきわめて貴重であると思います。

 呂頻さんはブログ(朝阳路上)を持っています。しかし、このブログも、一度完全に消去されており、呂頻さんが鄧玉嬌事件をめぐって婦連を批判したエントリ(ブログのほうには、婦連批判の個所がそのまま掲載されていた)はもう読むことができません。

戴晴・艾暁明両氏は「08憲章」にも署名

 戴晴・艾暁明のお2人は、劉暁波さんら303人が、2008年12月9日、中国の根本的な民主化を求めた宣言である「08憲章」(wikipedia日本語版の記述、「零八宪章[中国語、日本語、英語、フランス語、ドイツ語])にも名を連ねています。

 呂頻さんは、最初の署名者である303人のうちには入っていません。また、その後「08憲章」に署名したかどうかも確認できませんでした。けれど、呂頻さんも、2009年6月24日に発表された、劉暁波釈放を求める声明(海内外签名声援刘晓波:呼吁无罪释放刘晓波博士!」唯色的博客2009年6月26日)には名を連ねています。

万延海・葉海燕両氏もtwitterで歓迎、言及

 また、劉暁波さんのノーベル賞受賞決定前に、中国の各界の人々が劉にノーベル賞を与えるようノーベル平和賞委員会に訴えた公開状(各界人士发布“致诺贝尔和平奖委员会的公开信”(2010年9月22日)」縦覧中国)には、エイズやセクマイの問題に取り組んできた万延海さん(北京愛知行研究所所長)が名を連ねています。

 万延海さんは08憲章にも署名していますが、昨年末あたりから、北京愛知行研究所に対する当局の妨害がエスカレートしたこともあって、この5月、アメリカに「自己亡命」したそうです(3)。もしも万延海さんが中国にとどまっていたら、当然、「劉暁波のノーベル賞受賞に関する声明」にも名を連ねていたでしょう。万延海さんは、ツイッター(万延海 on Twitter)では、ノーベル賞受賞について盛んに取り上げています。

 また、葉海燕(流氓燕)さんも、ツイッター(流氓燕 on Twitter)で、劉暁波のノーベル賞受賞に言及していることは前回述べたとおりです。

 艾暁明、呂頻、万延海、葉海燕の4人の方は、女性の中でも周縁的な存在であるセクシュアルマイノリティやセックスワーカーの問題に多かれ少なかれ関わっています(戴晴さんに関してはよくわかりません)。取り上げること自体がまだ現在の中国では難しい、こうした問題に関わっていることと敢然と体制批判をするということはつながっているように思います。

付 劉巍さんについて

 なお、「劉暁波のノーベル賞受賞に関する声明」には、「劉巍」さんのお名前もあります。ただし、「劉巍」という名前は、同姓同名の方が多く、玉嬌事件に関して、判決がさんの[強姦への]正当防衛を認めなかったことを弁護士らが批判した声明(邓玉娇案法律后援团对判决结果发表声明)(事件については本ブログの記事「玉嬌事件をめぐって」「玉嬌事件の判決をめぐって」参照)の中にも、「北京の弁護士」という肩書で「劉巍」という方が2人、名を連ねています。つまり、北京の人権派弁護士の中にも、同姓同名の方がいるのです。現地の事情を知っていれば区別できるのでしょうが、私には区別できませんので、以下に、どちらの「劉巍」さんかわかりませんが、とりあえず「劉巍」さんの情報についてメモしておきます。

 ・劉巍さんは、法輪功修練者に対する裁判の弁護士になったが、2010年5月、「法定の秩序を乱し、訴訟手続きを妨害した」という理由で、北京市司法当局から、唐弁護士資格をはく奪するという決定を下されたという(4)

 ・劉巍さんは、2010年3月に北京大学から切り捨てられたNGOである「北京大学法学院女性法律・研究サービスセンター」のメンバーだった(この件に関しては、本ブログの記事「北京大学、女性法律研究・サービスセンターを切り捨て──人権NGOに対する政府の締めつけの一環か?」参照)。

 ・「劉巍弁護士のブログ」(刘巍律师的博客)は、法律の規定の紹介が中心で、本人の活動はあまり書かれていない。ただし、このブログで取り上げられている法律は、エイズや同性愛、女性、婚姻・家族関係のものであり、そうした分野が専門の方だということがわるし、北京愛知行研究所をめぐる最近の諸問題が何度も取り上げられているので、同研究所の活動とも関係があるのだろう。

 ・劉巍さんは、北京の女性弁護士・王宇さんが警察から報復されて(と多くの弁護士に考えられている)、今年3月、懲役3年の判決を受けた事件について、今年10月、全国婦連と北京市婦連に援助を求める手紙を送っている(刘巍:就王宇律师遭受迫害致北京妇联及全国妇联的呼吁信」来源:维权网2010年7月14日[2010年10月29日現在のキャッシュ])(5)

 断片的な情報で申し訳ありませんが、付け加えさせていただきました。

(1)呂頻さんが編集している『女声』誌にも、艾暁明さんのインタビューが掲載されています(「艾晓明谈公民社会和影像纪录」『女声』52期(2010.9.20-9.26)[word])。
(2)「作为行动的传播女声周年回顾」『女声』51期(2010.9.13-9.19)(word)。
(3)以下のようなことがあったようです。
1.「工商登記」をして(企業として登録して)いるNGOに対する海外からの援助を制約した
 NGOに対する法的制約が厳しい中国においては、NGOはしばしば「工商登記」をして、企業として登録しており、北京愛知行研究所もこのやり方をしています。しかし、2009年12月、国家外貨管理局が出した「国内の機構の外貨の寄贈の管理に関係する問題に関する通知(国家外汇管理局关于境内机构捐赠外汇管理有关问题的通知)」[汇发【2009】63号])は、中国国内の企業が国外の非営利組織から寄付を受けることを制約するものでした。「通知」は、寄贈は必ず公証を経なければならないと規定していますが、国際公証の手続きは時間がかかり、繁雑で、コストがかかるので、公益事業の発展とNGOの生存を大きく妨げます。この通知は、「工商登記」をして企業として登録しているNGOや民間組織にはっきり矛先を向けていると指摘されています(「境外资金断裂 草根NGO再临“粮荒”」『公益时报』2010年3月16日、万延海「给国家外汇管理局的建议」愛知行動BLOG2010年3月16日、「建议取消公证程序致国家外汇管理局的建议信征集签名」北京愛知行研究所サイト2010年7月5日)。
2.税務当局による悪意の検査と難癖
 この点については、詳しく読めていませんが、北京愛知行研究所の訴えによると、今年4月ごろから、税務当局が北京愛知行研究所に対して、税務査察に名を借りていやがらせをしてきたようです(「我们为何不缴纳营业税? 北京爱知行研究所关于接收捐赠款不缴纳营业税问题的说明」2010年5月21日、「北京爱知行研究所关于机构隐私信息被当局完全掌控的声明____给过往和爱知行有过合作的组织和个人」2010年5月21日、「爱知行研究所给北京市第二税务稽查局的问询函」2010年5月25日)。
3.不動産業者から突然、契約更新を断られる
 北京愛知行研究所は、不動産業者から「7月に借家契約の期限が来たら、今後はもう契約しないので、1週間以内に出ていくように」という通知を受け取りました。しかし、契約によれば、契約期限終了後も北京愛知行研究所が優先して借り受けることができるとされており、以前は業者も続けて借りてもらうことを希望していました。それにもかかわらず、突然、そのような通知が来たのです(「爱知行办公室遭物业逼迁」『女声』39期(2010.6.14-6.20)[word])。少なくとも葉海燕さんは、中国民間女権工作室の場合と同様に、当局が家主に圧力をかけたと考えています(「为了打击民间组织,有关部门动用了不少无耻手段」荼蘼花尽2010年8月27日)。
(4)中国 : 弁護士に対する嫌がらせをやめ法の支配の確保を」アムネスティ・インターナショナル日本サイト2010年4月21日、「人権弁護士の資格はく奪」MSN産経ニュース2010年5月10日、「『中国の司法局は法律精神に反する機関』 焦国標氏、弁護士資格はく奪事件を語る」大紀元2010年5月24日、「中国:天安門事件で起きた虐殺の実態を公けに認め、反体制派の釈放を」ヒューマン・ライツ・ウォッチ2010年6月1日。
(5)北京の女性弁護士・王宇さんは、2008年5月、天津西駅の待合室で鉄道員4人とトラブルになり、鉄道員に殴られてケガをさせられました。王宇さんは、天津西駅派出所に通報するとともに、ケガの治療を求めました。しかし、派出所の警官は、鉄道員をかばい、王宇さんを相手にしませんでした。そこで、王宇さんは、天津西駅派出所の不作為を天津鉄道公安局に訴えました。ところが、2008年12月、王宇さんは、警察に、王宇さんが鉄道員3人を殴ってケガをさせたことにされて、故意傷害罪の疑いで逮捕されました。今年3月、天津鉄道輸送法院は、王宇さんを懲役3年に処すとともに、2人の被害者(とされる人)に対して13万元あまりの賠償を命じる判決を下しました。今年9月の二審判決は、罪を過失傷害罪に格下げし、刑期も2年6カ月に短縮しただけで、やはり有罪でした(「北京女律师王宇故意伤害案的诸多疑点“陷害门”事件」中国维权联合网2010年8月13日、「过失致人重伤罪判刑两年半 女律师王宇 “打人案” 蹊跷」自由亚洲电台2010年9月21日、「律师王宇“故意伤害”案二审改为“过失伤害”」博讯新闻网2010年9月21日[来源:维权网]参照)。
 劉巍さんは、この手紙の中で、「全国婦連と北京市婦連は各民族・各界の女性の大衆組織であることに鑑みると、その基本的職能は女性の権益を代表・擁護することのなのだから、全国および北京市の婦連は、いま不公正な対応をされている北京の女弁護士・王宇に関心を払い、援助することを呼びかけるため特に手紙を出した」と述べ、警察や法院が提出した証拠や告発には、だいたい以下のような問題があると指摘しています。
 1.事件とは何の関係もない、王宇が会ったこともない人を被害者にしている。
 2.最も直接的な証拠であるはずの待合室のビデオテープを提出して(させて)おらず、談話のノートを証拠にしている。
 3.刑事訴訟法では、派出所には刑事捜査権がないはずなのに、捜査している。
 4.「被害者」とされる人が鑑定を申請した天津鉄道公安処司法鑑定所には、重傷の鑑定をする資質はない。また、鑑定は、被害者の訴えに依拠していて、厳密な医学報告ではない。また、鑑定の証拠とされる「公安機関指定病院の証明の手紙」には、明らかに後で付け加えた内容がある。
関連記事
スポンサーサイト

中国民間女権工作室(葉海燕ら)に対する当局の弾圧と同工作室の活動停止

 葉海燕(流氓燕)さんらの中国民間女権工作室が今年7月、セックスワーク合法化の街頭宣伝を初めて(おそらく中国大陸でも初めて)おこなったところ、同工作室が8月3日に計画していた第2回セックスワーカーデーが警察によって中止させられたことは、先日、本ブログで報告しました(「葉海燕らによるセックスワーク合法化の街頭宣伝と葉の拘束、第2回セックスワーカーデー中止をめぐって」)。

 その後、中国当局は、8月中に、以下の13の弾圧を、葉海燕さんと中国民間女権工作室に対して加えました。

1.葉さんの本を淘宝網[中国最大のネット商店]で売らせないようにした。

 葉さんは、自らの本を淘宝網で売ることを中国民間女権工作室の資金源の一つにしようとしていました。しかし、8月、淘宝網から葉さんに、「淘宝網は、政治的性質の商品情報を公表することを許可していない」、「関係部門が、この商品はデリケートな政治情報に触れていることを確認した」という通知があったそうです。

 葉さんは、この通知について、「私は、これまで政治的色彩とは何であるかを知らず、何が政治かも知らなかった。私の文集の目録は、すべて愛情・婚姻に関係する内容である」と述べています。

 葉さんは、淘宝網に対して、通知の中の「関係部門」とはどういう部門かを尋ねましたが、「教えられない」という答えでした。葉さんは「彼らは物事をおこなうのに、なぜ公明正大にできないのか? たとえ私が間違っているとしても、なぜ上級部門は顔を見せないのか?」と批判しています(1)

2.セックスワーカーのためのサイトである「紅塵網(红尘网)」をスクリーニングして、見られないようにした(2)

 葉さんは、この件について、以下のように怒りを表明しています(3)

 「これ[紅塵網]は、私が5年間運営してきたサイトである。
 私たちは、このインターネットという場をつうじて、社会に、底辺のセックスワーカーに関心を持つよう呼びかけ、理解と尊重を呼びかけ、人間性と愛の力を喚起してしてきた。
 このサイトのために、私は青春を5年間、費やした。
 金のためではなく、名誉のためでもなく、セックスワーカーの姉妹のためにインターネットの小さな空間を与えることを望んだだけである。
 セックスワーカーも、人である!
 セックスワーカーも、社会の一分子である!
 セックスワーカーの問題も、社会の問題である!
 なぜ最後のこの空間さえ、あなたがたは自由にさせないのか!
 私たちは、あなたがたを恨む!!!
 第一に、私たちを生存させず、私たちを活動できなくした!
 第二に、私たちの人権を無視し、私たちの発言権を無視し、私たちのサイトを封鎖した!
 紅塵網を返せ!
 あなたがたという、人民に奉仕するという看板を掲げて、世を欺き名誉を盗む強盗よ、私のサイトを返せ!」

 この件については、葉さんは、次のようにも言っています(4)

 「私には流すべき涙はなく、お笑いだとだけ思った。堂々たる大国が、私という農村の娘、私という民間の妓女、私という初級中学卒業の中年の女性よりも、『大切な道理を知り、気概がある』という点で劣っているとは!
 紅塵網が封殺されたことは、私たちの不幸であり、セックスワーカーの不幸であるが、よりいっそう中国の笑い話である!
 私たちは忘れてはならない。貧しいインドには、一つの州に500あまりのセックスワーカー支援組織があるのに、人口が十数億である大国の中国には、なんら人を傷つけない、反動的な言論もないセックスワーカーのサイト一つが許されないことを!」

3.警察が家主に圧力をかけて、中国民間女権工作室に引っ越すよう要求させた。

 家賃の支払いは10月20日が期限だったにもかかわらず、葉さんは、大家から、できるだけ早く出て行くように言われました(5)。警察が家主を強制して、引っ越すよう要求させたのです(6)

 葉さんは、「これら[=上の1.~3.の]の攻撃を受けるのは、私たちが[セックスワークの]合法化を提唱し、セックスワーカーデーを開催したからであり、私たちがたえず厳しい声で私たちの観点を表現したからである」と言っています(7)

 8月末、葉さんは、「民間組織を攻撃するために、関係部門は少なからぬ恥知らずな手段を使う」というエントリーを書き、「民間組織がこのように恥知らずな政治環境の中で成長することには、本当に悲しみを感じる」、「政府よ、もう少し公明正大であってくれ」と述べています(8)

 葉さんは、中国共産党傘下の婦女連合会に関しても、「中国の女性は、必ずもう一度革命を起こさなければならない。そうでなければ、永遠に男権の陰影の下で生きるであろう。(……)中国の女性の現状を変えるために最初にやるべきことは、婦連を打倒することである。婦連を打倒しなければ、中国の女性には永遠に未来はない」(9)と激烈に批判しました。

中国民間女権工作室の組織としての活動の停止を表明

 8月、中国民間女権工作室に対しては、当局の弾圧の一方で、艾未未さん(ウィキメディアによる説明)からノートパソコンを送られる(10)などの支援もあり、8月末、葉さんは、中国民間女権工作室の今後の計画(セックスワーカーに対するアンケート調査やアウトリーチ活動など)やボランティアの役割分担を発表するなどしています(11)

 しかし、9月には、中国民間女権工作室は、資金不足のため、城中村(都市の中の村。都市化の過程で農村の村落が都市に組み込まれて、農地が徴用されたために、農民が市民になったけれど、もとのまま村落に住んでいる地区(12))にある家賃の安い場所に引っ越さざるをえませんでした。このことを報告したブログの記事の中で、葉さんは、経費の問題でアウトリーチ活動も以前ほどできなくなることや、家賃や自分の子どもの養育費のために、新しく清掃の仕事を始めたことを述べています。また、葉さんは、「インターネットの言論は、年々不自由になっている。デリケート(敏感:検閲に引っ掛かるという意味でしょうか)な言葉は、数万に達したと言われる。」「セックスワーカーの生活環境は、年々悪くなり、掃黄[売買春一掃]は、公安が政治的業績をひらかす主な方式になっている。」「以前、私は、私たちの国家には希望があって、だんだん民主的になり、だんだん明るくなり、人々の生活はだんだん良くなるだろうと思っていた。私は、誰が私にこのような大きな信念を与えたのか分からない」と、悲観的な見方を綴っています(13)。この月には、中国民間女権工作室のサイトの更新もストップします。

 それでも、10月1日には、葉さんは、やや抽象的ながら、「私たちの戦略目標」として、「自己承認」「社会的承認」「セックスワーク合法化の推進」「労働組合の設立」「職業規範」「職業の安全保障と福利」といった事項を提示しています(14)。また、10月12日~16日にタイのパタヤでおこなわれたエイズとセックスワーカーについての会議(Consultation on HIV/AIDS and Sex Work in Asia)にも参加しています(15)

 しかし、やはり中国民間女権工作室としての活動は困難だったのでしょうか、10月19日、葉さんは、「組織の中の人と相談したところ、中国民間女権工作室は、現在、経済的能力から見ても、社会的環境の各面から見ても、もう現在の状況に適応して一つの組織あるいは機構の名称で生存することはできないと考える」と述べるに至ります。

 葉さんは、「私たちの目標は、けっして、生きていくために、何の役にも立たない、魂のない組織を養うことではない」、「私はエイズプロジェクトの作業者、請負商になりたいのではない。私は自分の最後の青春をかけて、私が関心を寄せている人々のために、公平な生存環境を勝ち取りたいのである」、「私は(……)反差別と暴力の問題、生存環境に対する関心を放棄したくない。私は、健康な環境がなければ、たとえ健康な身体があっても、役に立たないと堅く信じる」と述べています(16)

 上は、要するに、中国民間女権工作室が体制に順応する形で、セックスワーカーに対して単なるエイズ防止活動だけをするのであれば、活動を続けることもできるけれど、セックスワーカーをめぐる社会問題に取り組めない以上、組織として存続する意味はない、というような意味ではないかと思います。

 10月23日には、葉さんは、「私たちに未来はない」という、絶望を表明したエントリー(17)をブログに掲載しています。

 もっとも、葉さんは、現在もブログ(荼蘼花尽)やツイッター(流氓燕 (liumangyan) on Twitter)を、活発に更新しているので――ツイッターではもちろん劉暁波のノーベル平和賞受賞なども取り上げています――まったく意気消沈しておられるようなことはない思いますが……。

(1)以上は、「神秘的有关部门是什么部门? 政治色彩是什么色彩?」荼蘼花尽2010年8月17日。
(2)現在もサイト自体は存在しているようですし、少なくとも日本からは閲覧できます。しかし、サイトの更新は9月2日を最後にストップしています。これは、中国国内からは閲覧できないからではないかと思います。
(3)红尘网被关闭, 我们要求归还红尘网」红尘网2010年9月1日。
(4)这不是红尘网的悲剧,也不单是我的悲剧,是中国性工作者的悲剧!」荼蘼花尽2010年8月18日。
(5)有人支持,有人打击――我们是对还是错?」荼蘼花尽2010年8月23日。
(6)为了打击民间组织,有关部门动用了不少无耻手段」荼蘼花尽2010年8月27日。
(7)(5)に同じ。
(8)(6)に同じ。
(9)中国女性在此时,是不俗地活着」荼蘼花尽2010年8月14日。
(10)感谢艾未未赞助女权工作室笔记本一台」荼蘼花尽2010年8月18日。
(11)中国民间女权工作室下段时间工作安排」中国民间女权工作室サイト2010年8月31日、「工作室2010年核心志愿者/分工/公开帐号」荼蘼花尽2010年8月30日(ボランティアの集合写真も掲載されています)。
(12)中国語ですが、百度百科に詳しい解説があります(城中村)。
(13)中国民间女权工作室搬家公告」荼蘼花尽2010年9月27日。
(14)我们的奋斗目标」荼蘼花尽2010年10月1日、「战略目标中英对照」荼蘼花尽2010年10月3日。
(15)今天参加了性工作者的盛宴」荼蘼花尽2010年10月14日など。このほか、ブログでは、エイズウイルス感染者で、エイズ問題の人権活動家である田喜さんの拘束(「エイズ感染の活動家、北京で拘束 補償や権利擁護訴える」asahi.com2010年8月25日参照)について多く取り上げています。
(16)以上は、「关于中国民间女权工作室退出邮件组与一些民间组织联盟的声明」荼蘼花尽2010年10月19日。
(17)我们没有未来」荼蘼花尽2010年10月23日。
関連記事

香港プライドパレード2010が資金難で中止

今秋の香港プライドパレード2010は中止、次回は2011年秋に

 香港プライドパレードは、2008年12月13日に第1回が、2009年11月1日に第2回がおこなわれました(それぞれ、本ブログの記事「香港初のプライドパレードに1000人あまり」「香港プライドパレード2009に1800人あまり」参照)。

 しかし、今年は、先月(9月)、香港プライドパレード準備委員会(香港同志遊行籌委會:香港女同盟会[Women Colation of HKSAR]香港彩虹[Rainbow of Hong Kong]女同学社Gay Harmonyで構成)は、経費が不足しているため、2010年秋の香港プライドパレードを中止すること、および、2011年の秋に第3回パレードをおこなうための募金活動を開始したことを発表しました(「香港同志遊行籌委會公告 | Hong kong Pride Parade Committee Announcement」)。

 香港プライドパレード準備委員会は、2008年と2009年のパレードの収支の状況について、だいたい以下のようなことを述べています(「今年拋錨的『香港同志遊行2010』」)。

 2008年の第1回パレードは、国際金融危機のために企業からの賛助が得られない中、多くのセクシュアルマイノリティの組織が少しずつ金を出し合って、7万4000ドル(香港ドル。以下同じ)あまりを集めた。支出は5万ドルあまりだったので、大幅な黒字になった。しかし、この年に支出が少なかったのは「実はみな労働搾取の結果だった」。すなわち、音響の提供やサイトの作成など、さまざまな作業を低価格または無償でおこなってもらったのである。「彼女/彼らはみな自ら志願してボランティアをしたのかもしれないが、労働には価格があり、彼女/彼らは食事をしたり、税金を払ったりしなければならない。解放と喜びを広く宣伝するプライドパレードを、どうして搾取のうえに築くことができようか?」

 2009年の第2回のパレードは、ラジオ番組ともタイアップするなどして、早くから宣伝をしたので、パレードの参加見込み人数が大幅に増えた。そのため、パレードの起点と終点に、舞台および1000人に音声が届けられる音響システムを設置した。それらに5万5000ドルかかったので、パレードの支出は、第1回の2倍以上の11万8300ドルになった。しかし、準備委員会は金を7万ドルあまりしか集められず、赤字分は、第1回の余剰と「国際反ホモフォビアデー」の会計からの借り入れで埋めざるをえなかった。


 要するに、2008年は黒字だったが、スタッフの無償労働に頼ったという問題があり、2009年は、パレードの大規模化に即した設備の費用が捻出できず赤字になったということのようです(1)

 準備委員会は、2011年秋のパレードのために、来年3月までに、少なくとも14万ドルを集めたいとしています。

第8回台湾LGBTプライドパレードは、10月30日開催

 台湾LGBTプライドパレード(台灣同志遊行 | English | 日本語)のほうは、今年で第8回目ですが、10月30日におこなわれます。

 今年のテーマは「『同志[セクマイ、LGBT]政策に一票を投じよう』Out&Vote」というもので、以下のような政治的・政策的なスローガンを前面に出しています(主題與精神)。
 ・政客の消費を拒絶し、同志の政治力を表に出そう
 ・多元的家庭を重視し、同居パートナーの権益を保障しよう
 ・差別的政策に反対し、周縁が同盟を結んで声を上げよう
 ・青と緑[国民党と民進党]の争いを乗り越え、自由の大道を邁進しよう

 それぞれについては、また後日詳しくご紹介したいと思います。

 昨年のパレードは「同志愛很大(Love Out Loud)」というテーマを掲げていましたが、それに対しては、「穏やかすぎる」とか、パレードが「娯楽化・商業化している」という批判が出ていました(昨年のパレードについての本ブログの記事「台湾プライドパレード2009に2万5千人」参照)。ひょっとしたら今回はそうした批判を受け入れたのかもしれませんし、何よりLGBTの人々の置かれている状況が改善されないことに対する怒りがあるのだろうと思います。 

第2回上海プライドウィークが10月16日から開催

 中国大陸では、昨年の6月7日から14日にかけて、上海LGBT(メーリングリスト。Shanghai LGBT)が主催して、「上海プライドウィーク」がおこなわれました。主催者によると、「中国初のLGBTのフェスティバル」だということです(本ブログの記事「上海プライドウィーク」参照)。

 昨年の時点では、主催者は、第2回をするかどうかをはっきり述べていませんでしたが、先日、今年も10月16日から10月30日までおこなうことが発表されました。パーティ、パネルディスカッション、スポーツなどの行事がおこなわれることは昨年と同じです(サイト:上海骄傲节 | Shanghai Pride2010)。ただし、下の日程表(活动行程 | CALENDAR)を見ると、11月の第一週にもクィア映画祭が連日おこなわれることになっていて、その後に閉幕パーティーをすることになっていますが。

10月16日
 オープニングパーティー
10月19日
 写真展
10月20日
 パネル・ディスカッション
10月21日
 多元化日
10月22日
 パネル・ディスカッション
10月23日
 パーティー
10月24日
 運動会、パネル・ディスカッション
10月28日
 レズビアンナイト
10月29日
 カラオケコンテスト
10月30日
 ハロウィン ゲイ(レズ)バーめぐり
10月31日
 ピンク・ピクニック(?) 
11月1日~11月5日
 クィア映画祭
11月6日
 ファミリーデー、閉幕パーティー

関西レインボーパレード2010

 なお、今週末の10月9日(土)には、日本でも、大阪の御堂筋で、関西レインボーパレードがおこなわれます。性別・年齢・性的指向などを問わず、誰でも参加できます。中之島公園阪神高速一号環状線高架下に12:30分集合、13:30分出発だそうです。

(1)それぞれの年の財政報告(「2009年香港同志遊行財政報告 Financial Report for Hong Kong Pride Parade 2009」「香港同志遊行2008 財務報告」)は、なぜか、上の数字とは必ずしも一致していないのですが、たしかに、2008年はスタッフのペイが計上されていないことや、2009年は「舞台及び音響」の項目が前年の5倍程度に増大していることなどがわかります。
関連記事

«  | HOME |  »

プロフィール

遠山日出也

Author:遠山日出也
 検索から来られた方へ:このブログの記事を分類した一覧である「『中国女性・ジェンダーニュース+』記事総覧」を見ていただくか、下の「カテゴリー」欄を使われると、関連情報がご覧いただきやすいと思います。最近の行動派フェミニストについては、「中国の行動派フェミニスト年表、リンク集」をご覧ください。
 また、「中国女性・ジェンダー関係主要HPリスト」(リンク集)も併せてご覧いただければ幸いです。日本の問題の一部は、「ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労働争議・まとめ」や「館長雇止め・バックラッシュ裁判」でまとめています。
 恐れ入りますが、スパム対策などのため、コメントは私が拝見した後で表示させていただきます。
 私への連絡はこちらまで

最近の記事

月別アーカイブ

カテゴリー

最近のトラックバック

最近のコメント

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSフィード

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。