2010-02

世界基金のプロジェクト中止で、中国民間女権工作室に打撃――中国のNGOの困難

 セックスワーカーのサポートをしているNGOの「中国民間女権工作室(中国民间女权工作室)」(以前の本ブログの記事「『第1回セックスワーカーデー』、中国民間女権工作室、セックスワーカーの互助団体の萌芽」でも取り上げました)は、昨年、「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)」(HP日本語による説明)のプロジェクトの資金援助を受けられることになりました。ところが、半年後、突然それが中止されたたために、たちまち窮地に陥りました。

 『民主と法制時報』の記事(1)は、このことを取り上げて、「『成功も失敗もプロジェクト次第』、女権工作室の境遇は、資金がネックになっている中国の草の根NGOの縮図である」と指摘しています。以下、まず、この記事のだいたいの内容を紹介します。

底辺のセックスワーカーの中で活動

 中国民間女権工作室(以下、女権工作室と略す)は、武漢市で、エイズ予防活動を軸にして、セックスワーカーをサポートする活動をしています。

 女権工作室は、葉海燕(流氓燕)さんら数人のグループですが、2005年から、葉さんは、「妓女維権熱線」というセックスワーカー向けの電話相談をしてきました(本ブログの記事「本[2006]年の動向10―売買春に関する議論と行動」でも取り上げました)。

 また、最近は、とくに「城中村」(都市の中の村)(2)と呼ばれる、出稼ぎの人々が住んでいる地区のセックスサービスの場で働く女性たちに働きかけています。こうした安価なセックスサービスの場は、セックス産業の最底辺に位置し、その周縁性ゆえに、「コンドーム100%計画」(エイズ防止のために、当局がすべての娯楽施設にコンドームを配備する計画(3))などの活動も行き届きにくいため、エイズや性病を駆除する活動の死角になっていました。

 女権工作室は、以前から葉海燕さんと友人だった女性の店主を通じて、まず、他の店主やセックスワーカーと親しくなり、次に、セックスワーカーのところに医薬品が入った箱や宣伝資料を持って出かけ、健康の知識を宣伝したり、コンドームを配布したり、疾病制圧センターに健康診断に行くように彼女たちに働きかける活動をしてきました。

 こうした活動を通じて、2008年から今までに、女権工作室は、武漢の30%のセックスワーカーの状況を把握したといいます。

中国の草の根NGOの困難――国外のプロジェクトの資金に頼る

 2006年、葉海燕さんは、女権工作室を民政局に登記(登録)して、法定のNGOにしようとしましたが、その答えは、「業務主管単位がないと、だめ」というものでした。

 中国の「社会団体登記管理条例」(日本語中国語[PDF])の規定では、法定のNGOである「社会団体(社団)」になるためには、民政部に登記する前に、日常の業務の管理監督を引き受けてくれる「業務主管単位」の審査と承認を得ることが必要です(4)。ですから、まず、「業務主管単位」を見つけなければなりません。

 しかし、葉さんには、見つけられませんでした。「NGOは政治的にデリケートな分野で活動することも多く、そのリスクを背負い、主管単位になってくれる政府機関もしくは準政府機関は非常に少ない。それゆえに大多数の草の根NGOは民政部門で登記できず、合法的な『社会団体』という身分が得られない」(5)と言われています。清華大学NGO研究所の王名教授によると、「中国のNGOの95%以上は、実際上現行の法律の認可を得ておらず、なされるべき保障を得ることもできていない」ということです。まして、セックスワーク関係の活動となると、中国でも売春は違法ですから、無理なのでしょう。

 「登録していないということは、正式の身分や公開の口座番号がなく、社会から寄贈を受ける有効なルートがないことを意味している」そうです。ですから、女権工作室も、2年あまりの長きにわたって、ずっと資金援助がない中で、困難な活動をしてきており、武漢の大学生のボランティアたちが多くの活動を担ってきました。

 しかし、2008年、「中国ゲイツプロジェクト[中盖項目。中国とビル&メリンダ・ゲイツ財団とのプロジェクト]」が、女権工作室に資金援助をしてくれることになりました。「中国ゲイツプロジェクト」は、正真正銘の草の根のNGO組織に資金援助することを主旨としていて、民政部に登記しているか否かを問題になかったのです。

 つづいて、2009年7月、第6次中国世界基金エイズプロジェクト[第六輪中国全球基金艾滋病項目]が、女権工作室が「湖北省女性健康センター」(無料で健康の知識の研修、および無料の健康診断とHIV相談・検査サービスをする)を設立することをサポートすることを決めました。このプロジェクトは、7年間かけて実施される予定であり、同センターの家賃と業務人員に対する補助金は、プロジェクトの資金から出ることになりました。

 かくして、武漢科学技術大学中南分校の卒業生1人と看護専攻の卒業生3人が女権工作室で仕事を始めました。賃金はわずか800元でしたが、彼女たちは意気込んで働きました。

 彼女たちは、武漢市の繁華街に85㎡の活動室を借り、武漢市の全セックスワーカーをカバーするエイズ防止ネットワークを作る構想を立てました。

プロジェクトがなくなると、たちまち窮地に

 しかし、2009年12月末、世界基金から、「2010年以降は、『湖北省女性健康センター』プロジェクトをサポートできない」という通知がありました。「NGOと各種の基金のプロジェクトとの間には、契約による制約はなく、『申告』と『審査し許可する』という手続きしかない」そうです。

 たちまち、女権工作室は、活動室の家賃と養成した業務人員の賃金が払えなくなりました。

 李妍焱編著『台頭する中国の草の根NGO――市民社会への道をさぐる』(恒星社厚生閣 2008年)は、その第5章で「草の根NGOの資金集め」を論じていますが(李凡・王慶泓執筆)、この章では、「資金不足は世界中のNGOに共通する悩みといっても過言ではない。NGO法人や寄付関連の税制度がまだ整備されていない中国においては、草の根NGOの資金調達活動がいっそう厳しい状況に置かれている」、「資金的に政府の援助を受ける可能性があるのは、基本的に法定NGO、すなわち社会団体、民弁非企業単位、基金会の3つ(6)に限られている」(81頁)、「政府からの助成金がほとんどなく、国内での公開募金活動も基本的に禁止されている状況下、国内の財的支援のツールが乏しく、中国の草の根NGOの財源は、海外のNGO・外国財団からの寄付と助成に頼る部分が大きい」(89頁)と述べられています。

 今回の事件は、こうした、「海外のNGO・外国財団が、プロジェクト助成という形で、その助成趣旨に合う草の根NGOを支援する」(90頁)という形も、不安定性を抱えていることを示していると思います(7)。実際、NGOで仕事をしていたある先輩は、葉さんに対して、「プロジェクトが続くことを当てにするな」「プロジェクトは短いものであり、今日サポートすると言っても、明日はサポートしなくなるかもしない、不安定なものだ」と忠告していたということです(8)

 今年1月1日、葉さんは、衛生部や市長に助けを求める手紙を送るとともに、インターネットでも、企業家などに助けを求めました(9)。しかし、残念ながら、今のところ、芳しい返事があったという話はありません。

 1月8日に葉海燕さんが発表した「2010年中国民間女権工作室活動計画」は、以下のような目標を掲げています。
1 リプロダクティブ・ヘルスの推進。病院と協力して、無料で婦人病の検査。
2 エイズ予防公益プロジェクト。
 1) 入浴センターを2010年の重点に。
 2) 底辺のレジャーの場はひきつづき推進。
 3) アウトリーチ(外展。この場合はセックスワーカーのところに出かけて働きかけること)を漢陽・青山・漢口のすべての市街区に広げる。
3 ボランティアの拡大、大学生集団と相互に交流
4 差別反対と政策的提起
 1) ひきつづきネットワークに立脚して、セックスワーカーの姉妹に関心をよせ、文字・ビデオの多様な形式によって、社会に対してセックスワーカーに対する差別をなくし、セックスワーカーの人権を尊重することを呼びかける。
 2) 専門の行動芸術唱道団体を設立する。
 3) 話劇《セックスワーカーのモノローグ》の舞台稽古をする。
 4) 第2回セックスワーカーデーを祝う。
 5) 2010年赤い雨傘(紅雨傘、レッドアンブレラ)セックスワーカー差別反対公益活動を繰り広げる。
 6) 「赤い唇ノート」を公開して、姉妹たちが自分で書いたtwitterを社会に推薦し、社会に姉妹たちの声を理解させる(10)

 5)の「赤い雨傘(紅雨傘、レッドアンブレラ)セックスワーカー差別反対公益活動」についてですが、赤い雨傘は、2001年にベニスでセックスワーカーがデモをした際に使われたことから、セックスワーカーに対する差別や虐待に対する反対を意味する象徴になったそうです(11)。女権工作室は、すでに2009年12月に「赤い雨傘」行動をおこなっていますが、この行動を報告したブログの記事は、十数名の若い人々が、赤い雨傘をさし、パネルを掲げて、セックスワーカーに対する警察などによる権利侵害をストップするよう訴えている写真を10枚掲載しています(「12月17日红雨伞行动」荼蘼花尽2009年12月18日)。パネルには、「呼吁警察執法人性化!」「請停止対性工作者的執法傷害」などの文字が見えます。このブログの記事には、このアクションが城管(都市管理の役人)に妨害されて、何度も何度も場所を変えなければならならなかったこと、それに対して抗議したことも書かれています。

 なかなか果敢な行動だと思うのですが、たとえばこうした行動なら資金援助なしでもできるでしょうが、上の「活動計画」で挙げられた活動の中には、規模を縮小せざるをえないものが多そうです。

 今年になってからの葉さんのブログを読むと、嘆きや苦しみとともに、中国の政治や社会に対する不満もつづられています。たとえば、1月24日の「誰が中国の女の政治家か? 中国の女の声はどこにあるのか?」と題した日記には、「なぜ、2009年の末や2010年の初め、私は女性界の声を聞くことができなかったのか? 中国には女がいなくなったのか?」、「もし婦連がこれ以上このように不作為ならば、もし中国の女がこのように沈黙し続けるならば、私は、すべての女性の公民に、婦連の主席を罷免することを提案する」とも記されています(12)

 それでも、葉さんは、今月、インドでセックスワーカーの組織と交流してきて、中国でもセックスワーカーのネットワークを作ることに意欲を燃やしておられるようです(13)

(1)“保障性工作者权益”NGO遭遇寒冬」『民主与法制時報』2010年1月18日。
(2)野村證券のサイトに解説があります(「城中村」(都市の中の村))。
(3)百分之百安全套计划。ネット上に日本語の記事もあります(「上海:娯楽スポットで『コンドーム100%計画』」 サーチナ2006/12/01、「重慶市の決断、『理髪店にコンドームを』」日経ビジネスオンライン2006年9月13日)。
(4)この1文については、李妍焱編著『台頭する中国の草の根NGO――市民社会への道をさぐる』(恒星社厚生閣 2008年)の113頁からの引用です。
(5)中国のNPOが、民政部門と業務主管単位とによって二重に管理されている問題については、王名・李妍焱・岡室美恵子『中国のNPO:いま、社会改革の扉が開く』(第一書林 2002年)の第6章「法環境――NPOをなぜ管理するか」(岡室美恵子執筆)参照。
(6)「社会団体」「基金会」「民弁非企業単位」のそれぞれについては、「中国におけるNGOの状況」(自治体国際化協会のサイト)参照。なお、ネット上での中国のNGOについての説明には、他に「中国のNGO」(国際協力機構サイト)もあります。
(7)王名・李妍焱・岡室美恵子前掲書は、「国際NGO・海外財団による支援の問題点」として、「海外組織に関する法律上の空白による活動存続の危機」「中国の草の根NGOの組織体制とアカウンタビリティの欠陥」「草の根NGOの役割に対する理解と期待に格差が見られること」の3点を挙げています(90-93頁)。
(8)“保障性工作者权益”NGO遭遇寒冬」『民主与法制時報』2010年1月18日。
(9)一个中国草根组织因为生存困难向社会求助!」紅塵網2010-1-01
(10)2010年中国民间女权工作室工作计划」荼蘼花尽2010年1月8日。
(11)红雨伞:性工作者权利的象征」荼蘼花尽2009年5月20日、Red Umbrella Campaigns(ICRSEのサイト)
(12)谁是中国的女政治家? 中国女人的声音在哪里?」荼蘼花尽2010年1月24日。
(13)建立性工作者自己的社区」荼蘼花尽2010年02月21日、「四天之后回来,有一些打算」荼蘼花尽2010年02月25日。
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WANの団交に参加して

 2月12日、私は、ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)の労組「ユニオンWAN」(遠藤礼子委員長)の団体交渉に参加しました(この間の経過については、労組のサイト「非営利団体における雇用を考える会(仮)」に詳しい)。

 私は自分のメモだけを頼りに書ていますので、以下の内容には正確さに欠ける点もあると思います。文責はすべて私にあります。また、当日は多くの細かなやり取りがありましたが、以下では、私が特に印象に残ったことのみを書きました。また、ここで書いているのは、もちろん私の個人的な意見です。

 団交では、まず最初に、理事側が「今回の事態については、NPO会員やそれ以外の人にも説明します」「その前に組合に説明したい」とおっしゃって、その説明内容について口頭で述べられました。

 その説明によると、「WANは、女性の非正規雇用やNPOでの働き方に強い問題意識を持っており、WANの労働者は一般的と思われる以上の待遇にしてきたし、労働者からの要望も受け入れてきた」そうです。この点に関しては、具体的な数値なども挙げられました。私は、それを聞いて、それ自体はWANが誇れることだと思いました(もっとも、あとで遠藤さんから、理事側の挙げた数値には、いくつか不正確な点もあることが指摘されましたけれども)。

 しかし、理事側の説明が、ユニオンWANが現在の団交で問題にしている「一方的な外注化、仕事の取り上げ」「一方的な現事務所の閉鎖→退職勧奨」という肝心の点になったとたん、私は、説明の説得力がガクッと落ちた気がいたしました。さらに後で遠藤さんに反論されると、ガタガタになった感じです。

 たとえば理事側は、外注化などについて事前に十分話せなかったのは、「コミュニケーションの不足・悪化(一方だけの責任ではない)」のためだったという言い方をしていました。しかし、私は、たとえ当時、関係がぎくしゃくしていたとしても、労使関係の場合には、使用者側は、「使用者としての責任」として、話し合うべきことはきちんと話し合わなければならないと思います。理事側の説明には、そうした観点が欠けているように思いました(→文末の追記も参照)。

 遠藤さんは、業者を入れて自分が仕事から外されることについて、理事側からは一方的に「決定済の事項」として話されたということを具体的に語られました。「事前協議制があったにもかかわらず、そうされた」ということも指摘なさいました。

 この点について、理事側は、「事前協議制の対象は、『労働条件』そのもの(=賃金と労働時間)だけで、『労働条件と関わる重大事項』(=今まで担当していた業務から外すことや事務所閉鎖)までは含んでいないと思っている」と述べておられました。しかし、今まで担当していた業務から外せば必然的に遠藤さんの労働条件は下がるのですから、これは形式論としか私には思えませんでした。誠実な対処をしたとは言えないと思うのです。

 また、遠藤さんは、今後の労働条件について前回の団交で話し合うことになっていたにもかかわらず、理事側は、その団交2日前に退職勧奨を突き付けてきたということに怒りを表明しました。今回の団交では、理事側は「財政上の理由から、現事務所を閉鎖して家賃のかからない場所に移さざるを得ない」ということを述べましたが、労働条件の協議中に退職勧奨をするというやり方については、まともな弁明はありませんでした。

 理事側は、協議中なのにユニオンが一方的に情報を労組のサイトで流したことが「信頼関係を損なった」「理事会の信用を失墜させた」と言うのですが、私にはその意味がよくわかりませんでしたし、そういうレベルの理由でこうしたやり方が正当化されるのかな? と疑問に思いました(追記:理事側のこの発言については、山口ともみさんが詳しく批判しておられます)。遠藤さんは、労働条件の協議中に退職勧奨をするようなやり方こそが信頼関係を損なうと述べました。

 それから、私が気になったのは、理事側が「理事会からの説明は、サイトには掲載せずに、NPO会員やその他の支援者などに説明する」と述べていたことです。「説明する」というのは、恐らくメールか何かで流すということだと思いますが、だとすると、それらの人々に対しては、理事会側に都合のいい説明のみが流されるということにならないでしょうか?

 なぜなら、それらの人々のメールアドレスを把握しているのは、理事会側だけで、組合側は把握していないでしょうから、たとえ事実と異なる説明や一面的な説明だったとしても、反論のしようがないからです。もちろん、ユニオンWANのサイトでは反論できますが、その反論を読むのは、理事会からのメールが来た人のうちの一部でしかないと思いますから、フェアなやり方でないように思います。

 やはりサイトに両方の主張を出し合うのが、公平かつオープンだと思います。たしかに同じサイトで労使がやり合うなどというのは、企業のサイトなどでは絶対やらないことでしょう。しかし、この争議に関心を持っている人は多いですし、NPOなら、それぐらいオープンにした方が良いと思います。お互い誠実な態度で議論するならば、たとえ立場の違いや認識の一面性、若干の勘違いなどがあっても、第三者にも悪い感じは与えないと思います。

 また、理事側は、サイトが見にくいので、業者を入れて大幅にリニューアルすることが必要だと強調していました。そのために相当の支出をするようです。この点自体は当日の団交では議論になりませんでしたが、私は、業者に頼んで今のサイトをリニューアルしてもらっても、それほどはアクセス数が上がるような気はしません。

 やはり記事の内容次第だと思うのです。もちろんWANは良い記事を多く掲載していますが、「他のフェミ団体・個人サイトと比べて特に記事の内容がすぐれている」というわけでは別にないと思いますし、内容が現状のままなら、アクセス数はそうは多くならないと思います。お金や手間をかけるとしたら、サイトのリニューアルも結構ですが、良い記事を毎日もっとたくさん掲載したり(*)、サイト内外のコミュニケーションを活発化するために使った方が良いような気がします。

 理事会は「雇用と経営の見通しについて甘さがあった」と述べ、責任を感じているとおっしゃって、WANの組合員に謝罪するとともに、解決金も払うと述べていました。ただ、私は、その「甘さ」の原因も掘り下げないと、業者に頼んでも、また別の形で問題が出てくるような気がしました(この点は余談ですが)。

 遠藤さんは、この日の団交で、議論がゴチャゴチャして私にはよくわからなくなったり、私が漫然と聞き流していたりしていた箇所についても、ポイントをつかんで鋭く追及して理事の側を追い詰めておられました。「やっぱり、さすが遠藤さんだ」と感服しました。

 理事会の見解には疑問が多く、立場のズレを感じさせました。しかし、理事の姿勢にまったく誠実さがないとか、対話がまるで成立していないなどとは私は思いませんでしたので、今後の粘り強い話し合いの中で、ぜひ、良い形で解決をしてほしいと思います。

 なお、この問題に関しては、「WAN労働争議への支援および理事会への要望」という署名がおこなわれています。私からもご協力をお願いいたします。

(*)たとえば、インターネット新聞社のJANJANは、毎日何本も個人の投稿を掲載しているために、多くの記事があるので、1日20万ページビュー(人数的には、数万アクセス?)だそうです。もちろんWANとJANJANでは条件が全く異なりますが、たとえばの話、そんなふうに個人投稿を受け付けて、そのチェックや掲載のために人やお金を使ったらどうだろう、と思うのですが……。

[追記]
 2月12日の団交では、理事側は、「コミュニケーションの不足・悪化」について、「理事側にも責任があった」という意味のことを何度も述べていました。実際、私の当日のメモを見ても、理事側の発言を、「担当[理事]─webに不慣れ─遠藤さんもフラストレーション─コミュニケーションの悪化」とか、「コミュニケーション 私たちにも責任がある」とかいうふうにメモしています。私の記憶では、理事側は、「コミュニケーションだから、一方だけを責めているのではない」という趣旨の発言もしてしました。

 ですから、上の記事では、私は、理事側の発言を、「コミュニケーションの不足・悪化(一方だけの責任ではない)」というふうにまとめ、その上で、私は、たとえ当時関係がぎくしゃくしていたとしても、労使関係においては、「使用者側の責任」として、「話し合うべきことはきちんと話し合わなければならないと思います」と述べたわけです。

 ところが、その後理事会がWANの会員などに対して発表した、今回の問題についての事情説明文書では、コミュニケーションの悪化について、ひたすら遠藤さんを非難したうえで、理事側の責任については、抽象的に「使用者であるWANにコミュニケーション改善の責任の一端があったことは承知していますが」と述べるにとどまっています。

 私は、理事会が、このように当事者に対する説明とWANの会員に対する説明とでニュアンスを区別するのは、結局のところ、当事者の前では言えないようなことを会員に説明していることになるので、ちょっとおかしいと思います。

 なお、2月12日の団交については労組のサイトにも報告が掲載されており、理事会の事情説明文書に対しても簡単な反論をしています。ぜひお読みください(→「2/12の団交」)。
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村民委員会組織法の改正草案と女性

 2009年12月24日、全国人民代表大会(全人代)常務委員会で、村民委員会組織法(中华人民共和国村民委员会组织法)の改正草案の審議がおこなわれました。全人代常務委員会は、改正草案の全文を公表し、意見を募りました(1月末まで)(村民委员会组织法(修订草案)条文及草案说明)。

 村民委員会とは、「基層の大衆の自治組織」で、「村の公共事務と公益事業の処理し、民間の紛争を調停し、社会の治安の維持に協力する」などのことしています(村民委員会組織法第2条)。実際には、しばしば行政の末端としての機能も果たしているようです(1)

 今回の改正草案について、全人代常務委員会は、「村民委員会の選挙と罷免の手続きをいっそう完全なものにした」、「民主的な議事制度をいっそう完全なものにした」、「民主的管理と民主的監督制度をいっそう完全なものにした」と説明しています。

一、女性に関する規定の改正点

 今回の改正草案では、女性に関する規定のうち、以下の3点が改正されています。

1.村民委員会に女性メンバーが「いなければならない」と規定した

 現行法第9条より:「村民委員会の主任・副主任・委員は、計3~7人で構成する。村民委員会のメンバーの中で、女性は適当な人数を占めなければならない
 ↓
 改正草案第6条より:「村民委員会の主任・副主任・委員は、計3~7人で構成する。村民委員会のメンバーには、女性メンバーがいなければならない

 現行の条文の中の「『適当』という言葉は十分明確でなかった」という指摘もあり、陝西省女性理論婚姻家庭研究会の会長の高小賢さんは、今回の改正は「女性が村民委員会に入ることを保障する力を強めた」と評価しています。

 2008年末現在、全国の村民委員会のメンバーのうち、女性は50.7万人です。しかし、全国に村民委員会は60.4万あるので(民政部の2008年の民政事業発展統計報告)、少なくとも9万余りの村民委員会には女性がいないことになります(2)。このような言葉の変化によって、女性のいない村民委員会が減るでしょうか?

2.「女性は、村民代表会議を構成するメンバーのうち3分の1以上を占めなければならない」と規定した

 村民委員会組織法は、満18歳以上の村民によって「村民会議」を設置するとしていますが(現行法17条、改正草案20条)、「人数が比較的多い、または住んでいるところが分散している村」では、「村民代表会議を設置して、村民会議が権限を与えた事項を討論し決定することができる」と定めています。

 その村民代表会議を構成するメンバー(村民代表)については、「5~15戸ごとに1人を推薦する、あるいは各村民小組が若干名を推薦する」ことになっていますが(現行法第21条、改正草案第23条)、改正草案は、「女性は村民代表会議を構成するメンバーの3分の1以上を占めなければならない」(第23条)と規定しました。

3.村民委員会の任務に「男女平等を促進する」が入った

 村民委員会組織法には、村民委員会の政治的役割を規定した条文があるのですが(現行法の第6条、改正草案の第9条)、改正草案では、この条文の中に「男女平等を促進する」という言葉が入りました。

 以上の3点については、中国の女性問題の専門家・関係者や女性の村官から、今回の改正は一歩前進だと評価する意見が出ています(3)

二、女性たちからの要求

 しかし、今回の改正には多くの不十分な点があるとして、上のような女性たちからは、以下のようなさまざまな要求も出ています。

村民委員会のメンバーのうち、女性を30%以上(または1/3以上)にすると規定すべき(4)

 先述のように、2008年末現在、全国の村民委員会のメンバーのうち、女性は50.7万人ですが、これは全メンバーの21.7%を占めるにすぎません。

 重慶市開県和謙鎮文聖村の村の主任助手である廖雅妮さんは、「村民委員会の委員のうち、女性は30%以上を占めなければならない」と言います。廖さんは、村民委員会の選挙のとき、「女は男に劣る」などの伝統的観念が今なお妨げになっているけれど、もし女性の比率が規定してあれば、抵抗も減るのではないかと述べています。

 また、李慧英さん(中央党校女性研究センター教授)は、次の4つの理由から、「女性を3分の1以上にすると規定すべきだ」と主張しています。
 1.[第一次国共内戦期の]ソビエト根拠地のとき、県の議員を選挙する際に、女性を25%以下にしないと明確に規定した。それから80年あまり経ったのだから、1/3にすべきだ(5)
 2.解放初期、「人民公社の社長または副社長に、女性を少なくとも1人入れなければならない」と規定した(6)。それから60年あまり経ったのだから、村の(主任ではなく)「2つの委員会[村民委員会と党支部委員会]」に女性の比率が33%になっても、進歩の速度はけっして速くない。
 3.[多くの男性が出稼ぎに行ったために]現在農村に残っている人のうち、女性は60~80%を占めているにもかかわらず、女性が「2つの委員会」の正の職位を担当しているのは、わずか1%である。両者の比率の差が非常に大きいので、積極的な措置を取ることによって、この差を縮小させる必要がある。
 4.2009年、中央党校女性研究センターのジェンダー平等政策唱道課題グループは、河南省登封市の3つの村、河南省舞陽県の5つの村で、村規民約(村の決まり)の改正を推進した。すべての村がジェンダー平等の観念を受け入れて、村の「2つの委員会」の1/3以上を女性が占めるべきことを村規民約に書き入れた(7)。このことは、村の「2つの委員会」の1/3以上を女性が占めることは、民衆の中に基礎があり、けっして手が届かない目標ではないことを示している。

 また、陝西省女性理論婚姻家庭研究会(陕西省妇女理论婚姻家庭研究会)は、村民委員会組織法の改正草案について座談会を開いて討論をし(8)、以下のような幾つかの提案をまとめました(9)

村民委員会に、必要に応じて、女性児童委員会を設置すべき(陝西省女性理論婚姻家庭研究会の提案)
 ―「村民委員会は、必要にもとづいて、人民調停、治安警備、公共衛生、計画生育などの委員会を設置する」(改正草案第7条、現行法第25条にも類似の規定あり)とあるが、「必要にもとづいて設置する委員会」の中に、女性児童委員会も入れるべきである。

 この点について、高小賢さんは、「現在、村の人口の多くは、女性と子どもです。留守児童の問題、留守女性の問題などは、すでに新しい農村を建設する上での主要な問題になっており、治安問題など以上の問題でさえあります」と指摘し、「農村の女性と子どもの問題を、村民委員会の主な仕事の一つにするべきです。女性児童委員会を設立すれば、制度上からこの問題を村民委員会の仕事に組み込むことができますし、同時に、村の婦女代表会議の主任が村の『2つの委員会』に入るためにも有利です」と主張しています(10)

「村の主任と副主任の候補者に、女性候補者がいなければならない」と規定すべき(〃)
 ―陝西省の実践は、こうした規定は、女性が村の主任に当選する比率を高めるのに有利であることを証明している。

「村民選挙委員会には女性がいなければならない」と規定すべき(〃)
 ―村民委員会の選挙は、村民選挙委員会が主宰することになっているが(現行法第13条、改正草案第12条)、「村民選挙委員会には女性がいなければならない」と規定すべきである。

 この点について、陝西省合陽県路井鎮韓家城村の党支部書記で村民委員会主任の路小春さんは、「現在若干の農村では、まだ選挙での買収があります。もし選挙委員会に女性の委員がいれば、前もって内情を知ることができて、早めに対策ができるので、選挙に参加する女性にとって有利です」と語っています(11)

「村務監督機構に女性メンバーがいなければならない」と規定すべき(〃)
 ―改正草案の第29条に「村は、村務監督機構を設立して、村民の民主的財政管理と村務公開などの制度の執行の責任を負う」ことが定められているが、村務監督機構の中に女性メンバーがいるようにして、女性に村務の監督権の行使に参与させるべきである。

村民委員会の任期を延ばして、女性に仕事に習熟させるようにすべき(12)

 合陽県女村官協会は、村民委員会の任期が3年であること(現行法でも改正草案でも第11条)について、「3年が1期では、時間が短すぎて、女の村官が業務に習熟して、仕事ができるようになったら、改選の時期が来るので、任期を5年に延ばすべき」と提案しました。

「村規民約(村の決まり)」によって女性の土地権益が奪われないように、「現行の法律に違反している村規民約は無効だ」と明確に規定すべき(13)

 李慧英さんは、「改正草案は、村の集団的資源を分配する際には、村民代表大会の決定によるべきことを強調していますが、これは、双刃の剣です」と言っています。李さんは、そのことによって、たしかに村の幹部の権力が村民によって制約されるので、幹部が私利を謀るのを防ぐには有利だけれども、その一方で、多数の人が合法的な手続きを利用して、少数の人の合法的な権益を剥奪する可能性もあると言っています。

 中国の農村では、家父長制的・父系制的観念のために、村規民約や村民代表大会の決議によって、嫁に行った娘(出嫁女)や入り婿の土地権を剥奪しているケースがあります(14)。李慧英さんは、そうしたケースを心配しているのです。

 この点については、現行の村民委員会組織法でも、「村民自治の規則、村規民約、村民会議または村民代表大会が決定して決定した事項は、憲法・法律・法規・規則・国家の政策と抵触してはならず、社会の公共の利益を損ねてはならず、村民の人身の権利、民主的権利、合法の財産権を侵犯してはならない」(現行法第20条、改正草案第25条)と規定していますが、上のようなケースが後を絶ちません。

 ですから、李慧英さんは、村民委員会組織法に、さらに、「村規民約は現行の法律と矛盾してはならない。矛盾した場合は、村民代表大会の決議は無効である」という条項を設けることを提案しています。

 総じて言えば、今回の改正草案は、女性の権利を保障する上で、少し前進した点もあるけれども、まだまだ関係者の要求に応えるものにはなっていないと言えましょう。

(1)村民委員会についての文献は多いが、清水美和『中国農民の反乱―昇竜のアキレス腱』(講談社 2002年)第6章「農村民主化の実験」など。ネットでも「村民委員会―中国の民主化の最前線―」(自治体国際化協会HP)が簡単に説明している。
(2)「《村民委员会组织法》修订征求公众意见」『女声』第14期[word]。「2008年末現在、全国の村民委員会のメンバーのうち、女性は50.7万人です」という点については、2009年10月におこなわれた全国婦連「2つの委員会[村民委員会と党支部委員会]」女性幹部座談会における全国婦連の党グループ書記、副主席、書記処第一書記の黄晴宜さんの発言(「全国妇联村“两委”女干部座谈会在长沙召开」『中国婦女報』2009年11月2日)によるもののようです。また、「民政部の2008年の民政事業発展統計報告によると、全国に村民委員会は60.4万ある」という点については、「2008年民政事业发展统计报告」参照。
(3)《村民委员会组织法》征求公众意见 明确村民代表中女性应占1/3以上」『中国婦女報』2009年12月29日、「妇女界谈村民委员会组织法修订草案:期待农村妇女参政水平进一步提高」『中国婦女報』2010年2月1日。
(4)以上については、「妇女界谈村民委员会组织法修订草案:期待农村妇女参政水平进一步提高」『中国婦女報』2010年2月1日。
(5)1939年の陝甘寧辺区第1回参議会で採択された「女性の政治的経済的文化的地位を向上させる案」は、「各級の参議会は25%の女性議員がいなければならない」と規定していました。
(6)人民公社に関しては、そのような規定は見当たらず、「高級農業生産合作社示範章程(1956年6月30日)」(邦訳「高級農村生産合作社模範定款」『新中国資料集成』第5巻 日本国際問題研究所 1971年)第61条に「合作社の主任・副主任のうち、少なくとも1人は女性でなければならない」とあるものを指しているのではないかと思われます。李慧英編著『社会性別与公共政策』(当代中国出版社 2002年)212-213頁にも、この規定も上の陝甘寧辺区の規定も述べられているのですが、そこで引用されているのも、人民公社の定款ではなく、合作社の定款です(全国婦連副主席の穎超の発言を、正式に決定した定款であるかのように誤って引用していますけれども……)。
(7)ジェンダー平等政策唱道課題グループが河南省登封市の周山村の村規民約を改正した試みについての詳細な報告が、最近、「《悄然而深刻的变革—周山村‘村规民约’修订纪实》的电子版」(2010-01-11)として、社会性別与公共政策HPに掲載ました(「1 周山村村规民约修订纪实1-1.doc」、「1 周山村鬼鬼民乐修订纪实1-2.doc」、「2 周山村村规民约修订过程记录.doc」、「3 《周山村村规民约》.doc」、「4 全国其他省份探索行动.doc」、「5 村规民约修订中的常见问题.doc」、「6 后记.doc」、「附录1 性别平等政策倡导课题组成员名单.doc」)。
(8)村民委员会组织法修订讨论会在西安举行」(2010-01-14)陝西省婦女理論婚姻家庭研究会HP。討論会には、陝西省委員会党校・省委員会政策研究室・合陽県婦連、渭南婦女促進会、合陽女村官協会、陝西師範大学婦女文化博物館などの人を招いたそうです。
(9)关于《中华人民共和国村民委员会组织法(修订草案)》的修改建议」(2010-01-16)陝西省婦女理論婚姻家庭研究会HP
(10)この発言については、「妇女界谈村民委员会组织法修订草案:期待农村妇女参政水平进一步提高」『中国婦女報』2010年2月1日。
(11)同上。
(12)关于《中华人民共和国村民委员会组织法(修订草案)》的修改建议」(2010-01-16)陝西省婦女理論婚姻家庭研究会HP
(13)妇女界谈村民委员会组织法修订草案:期待农村妇女参政水平进一步提高」『中国婦女報』2010年2月1日。
(14)何燕侠「中国農村女性の土地請負経営権をめぐる諸問題」『中国女性史研究』第10号(のち何燕侠『現代中国の法とジェンダー──女性の特別保護を問う』尚学社、2005年、第5章「農村女性の土地請負経営権とその実態」として収録)参照。本ブログの記事でも、「農村女性の土地請負経営権をめぐる裁判」、「仏山市南海区政府が農村の『出嫁女』の土地権益問題を解決」などで触れています。
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「“北京+15”中国女性NGOレポート」――中国政府の「北京行動綱領」の実施状況をチェック

北京女性会議15周年を前に、「『北京+15』アジア太平洋地区女性NGOフォーラム」で発表

 2009年10月22─24日に、フィリピンのマニラで開催された「『北京+15』アジア太平洋地区女性NGOフォーラム」で、中華全国婦女連合会と中国女性研究会は、「“北京+15”中国女性NGOレポート」(「“北京+15”中国非政府妇女组织报告」[英語版&中国語版、PDF])を発表しました。

 1995年の北京の世界女性会議では、「北京宣言」(日本語訳)や「行動綱領」(日本語訳)が採択され、国連特別総会「女性2000年会議」では、「北京宣言及び行動綱領実施のための更なる行動とイニシアティブ(いわゆる成果文書)」(日本語訳)が採択されました。

 北京での世界女性会議から15年目になる今年3月には、国連女性の地位委員会(CSW)で「行動綱領」や「成果文書」がどれだけ達成されたかの検証がおこなわれます。「『北京+15』アジア太平洋地区女性NGOフォーラム」は、それに先立ち、アジア太平洋地域での進展や課題をNGOの視点から確認するために開かれたものです(同フォーラムのサイト:Asia Pacific NGO Forum on Beijing +15(1)

 中華全国婦女連合会(中华全国妇女联合会)(全国婦連)は、基本的には中国共産党の指導の下にある中国最大の女性団体です。中国女性研究会(中国妇女研究会)は、全国婦連のイニシアで結成された研究会ですが、こちらは相当に幅広い団体会員や個人会員を傘下に収めています。

 「“北京+15”中国女性NGOレポート」は、上の2つの組織の名前で発表されていますが、後に挙げるような幅広い民間の機構・組織・学術団体の代表や女性活動家が、下の12のテーマについて、1995年の北京女性会議以来、とくに「北京+10」以来の、中国政府の「北京行動綱領」と「成果文書」の執行状況を回顧し、評価をおこなったものです。

1.女性と貧困
2.女性と教育
3.女性と健康
4.女性に対する暴力に反対
5.女性と経済
6.女性の政治と政策決定への参与
7.女性の人権と法律
8.女性とメディア
9.女性と環境
10.女児
11.女性の地位を向上させる国家のメカニズムとジェンダー主流化
12.金融危機の中国女性の発展に対する影響

 中国政府も、「行動綱領」や「成果文書」の実施状況について国連にレポートを出しています(中国政府落实《北京宣言》和第二十三届特别会议《行动纲领》以及联合国大会《成果文件》情况[2009-03-05])(2)。しかし、一般に政府の報告は政府に都合のよいことばかり書かれているので、民間からも状況を報告した文書を提出します。そのような報告のことを、「オルタナティブレポート」とか、「シャドウレポート」とか、「カウンターポート」とか、「NGOレポート」と呼ぶわけですが、この「“北京+15”中国女性NGOレポート」も、それに当たります。なお、中国では、どちらかというと「官」の側の組織である全国婦連も「NGO」に入れていますから、このレポートは全国婦連が作成に加わっているけれども、「NGOレポート」と言っているわけです。

「北京+5」「北京+10」の時に続いて、3回目のシャドウレポート

 中国の婦連とNGOが、中国政府の北京行動綱領などの実施状況を検証したレポートを出すのは、今回で3回目です(3)

 1回目は、北京女性会議から5年目の2000年6月にニューヨークで開催された特別国連総会に提出した「中国のNGOは行動している」というレポートです(以下、「『北京+5』の時のレポート」と言う)(4)。中国女性研究会によると、このレポートは、「中国史上初の女性NGOのシャドウレポート」(5)だということです。

 2回目は、「北京+10」を前にした、2004年6月の「アジア太平洋地区女性NGOフォーラム」(タイのバンコクで開催)で発表されたレポートです。このレポートは、「中国政府の『行動綱領』と『成果文書』の執行に対する中国女性NGOの評価報告」[中華全国婦女聯合会・中国婦女研究会「中国非政府妇女组织对中国政府执行《行动纲领》和《成果文件》的评估报告——中国非政府妇女组织《紫皮书》」]と題されています(以下、「『北京+10』の時のレポート」と言う)。

3回のレポートの作成に関与した団体

 「北京+5」と「北京+10」と「北京+15」の3回のレポートの作成に関与した団体は、それぞれ、以下のとおりです(関与のしかたの表現が各回で少しずつ異なります。また、団体の「代表」という言葉が使われている場合もありますが、その場合、必ずしも団体全体の意見を代表しているわけではないと思います)。

「北京+5」の時のレポート:
 「会議の主宰者[中国女性研究会と国連(在北京)ジェンダーテーマグループ]が、十数のNGOと政府組織(中国女裁判官協会、中国女検察官協会、中国婚姻家庭研究会、中国環境科学学会、中華予防医学会女性保健学会、中国児童少年基金会、首都女性ジャーナリスト協会、中国社会科学院社会学研究所、中国農業大学農村発展学院、中華女子学院、北京師範大学教育学部、中国人民大学女性研究センター、中央党校女性研究センター、全国婦連組織部・宣伝部・都市農村部・児童部、北京市婦連、北京紅楓女性心理相談サービスセンター、労働と社会保障部就業局・国際局、国家計画生育委員会国際局)と共同で(……)提出した。」

「北京+10」の時のレポート:
 「中国女検察官協会、中国婚姻家庭建設研究会、中国環境科学学会、中華予防医学会女性保健学会、首都女性ジャーナリスト協会女性メディアウオッチネットワーク、中国法学会反DVネットワーク、農家女百事通、紅楓女性心理相談サービスセンター、北京大学法学院女性法律研究・サービスセンター、中央党校女性研究センター、中国農業大学人文と発展学院、北京師範大学教育学院、中華女子学院、全国婦連などから来た代表が構成した特別テーマグループ」

「北京+15」の時のレポート:
 「全国婦連の主要工作部門、全国総工会女性職員・労働者部、中国女企業家協会、中国市長協会女市長分会、中国就業促進会、中国人口と発展研究センター、中国社会科学院法学研究所、中国社会科学院ニュースとメディア学研究所、清華大学、中国農業大学人文と発展学院、中国メディア大学、全国婦連女性研究所、中華女子学院、北京大学人口研究所、北京社会科学院社会学研究所、北京大学女性法律研究とサービスセンター、中国反DVネットワーク、北京農家女文化発展センター、北京紅楓女性心理相談サービスセンター、北京母子保健院、首都女性ジャーナリスト協会、中国婦女報、北京天津ジェンダーと発展協力者グループ、天津師範大学ジェンダーと社会発展研究センター、南京師範大学金陵女子学院、江蘇揚州市委党校、西北工業大学、陝西省女性理論婚姻家庭研究会、黒龍江省婚姻家庭研究所などから来た機構・組織・学術団体の代表と女性活動家」

 3回の報告に関与した団体を比較すると、次のような傾向が見られます(6)
 ・「+5」や「+10」の時に比べて、今回の「+15」の時は、関与した団体が大きく増えた。
 ・「+5」の時は、「NGOと政府組織(が提出した)」と書かれているように、労働と社会保障部就業局・国際局のような「官」そのものの団体も含まれており、NGOも、職能別団体が多かった。けれど、「+10」の「+15」では、民間色が強い団体(NGOらしいNGOや大学の研究センターなど)が増えている。

「北京行動綱領」の12の「重大問題領域」との比較──「北京+10」と「北京+15」のレポートではほぼ一致するようになったが、「女性と武力紛争」というテーマは欠けたまま

 3回のNGOレポートで取り上げられたテーマ(7)は、「北京行動綱領」が掲げた12の「重大問題領域」とおおむね重なっていますが、違いもあります。

 まず、「北京+5」の時のレポートは、「北京行動綱領」にはある、「女性に対する暴力」「女性と武力紛争」「女性の地位向上のための制度的な仕組み」「女性の人権」という4つのテーマが欠けていました(代わりに、「女性と法律」、「婚姻家庭と老年女性」という2つのテーマを入れて、10のテーマについて論じていた)。

 それに対して、「北京+10」の時と今回の「北京+15」の時のレポートは、「女性に対する暴力」「女性の地位向上のための制度的な仕組み」「女性の人権」という3つのテーマについては、レポートに入っています。この点は、これらの3つのテーマについては、中国でも、ここ10年間の間に語られるようになり、実践もなされつつあることの反映でしょう。

 しかし、「北京+10」と「北京+15」の時のレポートも、「女性と武力紛争」というテーマは欠けています(かわりに、「北京+10」の時は「老年女性」というテーマが入り、「北京+15」の時は「金融危機の中国女性の発展に対する影響」というテーマが入っています)。

 その理由は、おそらく、「女性と武力紛争」というテーマは、国家の外交政策や軍事費、少数民族の自治、難民などの問題を扱うので(8)、現在の中国では、民間の団体が政府に対して批判的な立場を取るのは非常に難しいからではないかと思います。

今回のレポートの内容、とくに各テーマに関する中国の問題点の指摘

 今回の「北京+15」のレポートは、まず、「5年来、中国の改革開放と社会発展は、中国のジェンダー平等の事業と女性の人権保障にとっていっそう有利な環境を作り出した」と言い、具体的には、「科学的発展観の指導の下、人間本位の、社会発展と経済発展をともに重視する発展原則を打ち立てた」こと、「国際的な重要な人権条約に署名・履行した」こと、「人間本位の発展の指導理念の下、教育・就業・社会保障・医療・住宅・交通などの民生問題を集中的に解決した」こと、「公民社会と民主政治の発展を促進し、民間組織、とくにNGO女性組織の働きを発揮させることを重視した」ことなどを述べています。

 しかし、その一方で、今回のレポートは、「経済のグローバル化と中国社会の転換という背景の下、市場経済は、性別分化を内に含んだ社会分化をもたらし、女性は労働市場から更に排斥されやすくなった。また、都市との農村の二元的体制と労働力の流動によって、女性は更に仕事と家庭、心理と生理のマイナスの影響を受けやすくなった」ということなども指摘しています。

 上で挙げた「1」~「12」の各テーマについては、それぞれ以下の3つの点を述べています(この点は、「北京+5」「北京+10」の時も同じです)。
・「進展と成就」(中国政府の政策やNGOの行動があげた成果について)
・「問題と挑戦」(政府の政策などの問題点や今後の課題について)
・「対策の提案」(問題を克服するための対策の提案)

 まず、「進展と成就」からは、このかんの政策や運動の前進や到達点を知ることができます。この箇所も、もちろん重要ですし、内容的にもけっして通り一遍のものではなく、データを添えて詳細に書かれており、貴重なものです。

 しかし、以下では、各テーマの「問題と挑戦」に、どんなことが書かれているか、そのごく一部を紹介してみます。

 「1 女性と貧困」では、たとえば、「政府の貧困救助政策のジェンダーに対する敏感さが不十分である」として、「大部分の貧困救済・開発政策は、貧困な人々を一つの全体として扱っており、『農村の貧困な女性』『留守女性(夫が出稼ぎに行って農村に残された女性)』『流動女性(出稼ぎなどによって、自らの戸籍の所在地とは異なる地区に住んでいる女性)』に対する専門的な措置がない。都市と農村の最低生活保障制度も、家族を基礎にして制定されており、貧困な女性個人のニーズを満たしにくい」ことなどを挙げています。

 「2 女性と教育」では、たとえば、「教育の過程におけるジェンダー不平等な状況がまだ根本的に改善されていない」として、「各段階の各種の教育の内容・教材が、ジェンダー平等意識に乏しく、伝統的な男女の役割のステロタイピングに対して自覚的な挑戦や変革がおこなわれていない。教学の方式と方法に、ジェンダーに対する敏感さがない」ことなどを指摘しています。また「農村、とくに辺境の貧困な地区の教育を受ける権利の実現を改善する必要がある」ことを述べた箇所では、農村で学校を合併する改革が「児童の就学の道程を増やし、または学校に寄宿さぜるをえなくなって、農村の児童、とくに女児の就学の機会と安全に一定の影響を及ぼした」ことにも触れています。

 「3 女性と健康」では、たとえば、「女性のヘルスケアシステムを改善する必要がある」として、「衛生・計画生育の2大政府部門の女性のヘルスケアに対する職責の分担がはっきりせず、サービスの内容が接近しているので、人力・財力・資源をもっと統合する必要がある」ことや「女性のヘルスケア領域に、医療を重んじて、予防を軽んじ、収益を重んじて、サービスを軽んじる現象が依然として存在しており、高額の費用が、女性の病気の危険を低めることができる有効な関与の措置の普及を困難にしている」ことを指摘しています。

 「4 女性に対する暴力に反対」では、たとえば、「女性に対する暴力に反対する立法をもっと強化する必要がある」として、「まだジェンダーバイオレンスに反対する全国的な専門の法律はなく、すでにある関係規定は、ざまさまな法律と地方的法規に散在している。また、DVの定義が狭すぎ、家族のメンバーに対する暴力の処罰は、よく知らない人よりも明らかに軽いため、被害に遭った女性が有効な保護を得るのは難しい。刑法と刑事訴訟法の関係規定は、多くの性的侵犯行為を強姦罪とは認定できなくしており、性的侵害の立件を難しくしている。婚姻内強姦は、立法と司法実践において重視されていない。性暴力の被害者の法律的救済は不十分であり、特定の関係(親族・教師など)と未成年の少女が性的関係を生じた事件に対する関心が不十分である」ことなどを指摘しています。

 「5 女性と経済」では、たとえば、「法律・政策およびその執行のメカニズムがなお不十分なので、経済領域におけるジェンダー平等を促進する政府の責任をもっと強化する必要がある」として、「中国は、十分な反雇用差別のメカニズムが欠けているだけでなく、法律上明確な雇用差別の定義がなく、そのため、男女の定年差別や女性に対するある種の職業的制限などについても、ずっと法律的に整理や是正ができていない。」ことや「公共サービスの領域と公共サービス事業の過度の市場化は、家庭の出産育児コストと女性の経済的負担を重くしており、女性が経済に参与するもう一つの障害になっている」こと、「ジェンダー視点がない新型の農村養老保険制度の設計によって、保険金が得られる年齢に到達した(または近づいた)一部の農村の貧困な女性が枠外に置かれている」ことなどを指摘しています。

 「6 女性の政治と政策決定への参与」では、たとえば、「女性の政治参加の比率が低く、正の職位[=副○長ではなく、○長であること]が少ないなどの現象をもっと重視する必要がある」として、「第一に、全国人民代表大会の女性の代表の比率は、長い間、行ったり来たりで前に進まず、30年来、ずっと21%前後で変動しており、国連が提出している『女性が議会の中で少なくとも30%を占める』という目標には、まだ比較的大きな開きがある。第二に、女性幹部の比率が低く、正の職位が少ない。2008年の選挙で生まれた新しい省クラスの人民代表大会・政府・政治協商会議の指導グループのメンバーのうち、正の職位の女性幹部は6.5%にすぎない。また、2009年初めまでの時点で全国の女性の村民委員会主任は、2.7%前後にすぎない」ことなどを述べています。

 「7 女性の人権と法律」では、たとえば、「女性の人権の法律体系をもっと整備する必要があり、立法の質をもっと向上させる必要がある」として、「『婦女権益保障法』などの法律の中で差別に対する明確な定義がないことが、裁判における実践で法律が確実に守られないことに直接つながっている。女性に対するあらゆる形態の暴力を全面的に禁止する全国的立法がなく、すでにある関連規定は、異なった法規の中にばらばらにあって、互いにつながりが乏しく、拡充が不十分である。一部の法律の規定は、抽象的で大ざっぱすぎ、実用性や可訴性に欠けていて、司法実践の中で直接援用するのが難しく、法律の執行を妨げている。一部の違法行為は、それに対する懲罰の措置または懲罰の力が不十分で、有効な救済手段が欠けている。いささかの女性の人権の政策・法律はジェンダー意識が乏しい」と述べています。

 「8 女性とメディア」では、たとえば、「メディアに関する政策・法規に、十分なジェンダー・センシビリティが欠けている」として、「インターネットの不良な情報を取り締まる過程で、若干の女性サイトとブログ(女性エイズ感染者集団のホームページを含む)も閉鎖やフィルタリングをされた。それと同時に、消費主義の影響の下で、メディアが古いステロタイプを強化し、女性のイメージを濫用・搾取している現象や、女性団体やジェンダー専門家の批判の声に対して、ニュース管理部門は認識したり、耳を傾けたり、応えたりしていない」ことなどを指摘しています。

 「9 女性と環境」では、たとえば、「持続可能な発展の政策とプランにおけるジェンダー主流化の程度をもっと高める必要がある」として、「国家の環境発展戦略と政策において、ジェンダーは、すみやかに関心を持たれるべき現実的・政策的問題として見なされることは少なく、ジェンダーを政策決定の主流に組み込むことはまだ問題にもなっていない。」「政府と環境部門の女性と環境に関する政策と行動はまばらで、制度化されていないものにすぎず、環境の女性に対する特別な影響や女性参加の重要性に関して明確に述べられたり関心を持たれたりすることは少ない。また、ジェンダー平等と貧困と環境の持続可能性とを関連づけることはまだできていない」ことなどを指摘しています。

 「10 女児」では、たとえば、「教育の面で女児の発展に不利な問題がまだ存在している」として、「全体的な女児との男児の入学率には基本的に大きな違いはないけれど、統計データは、女児と男児の中途退学率、とくに女児の初級中学の中途退学率を反映し得ていない。貧困・エイズ・流動などの要素の影響を受けた農村のいささかの女児は、男児に比較して9年の義務教育を完成させる機会を獲得しにくい」ことなどを述べています。また、「女児の成長する環境を速やかに改善しなければならない」として、「わが国の出生人口の性別比は2005年には118.58で、2007年には120.22だった。関係部門がおこなっている『女児愛護』行動は、まだこの問題を根本的に変えることができていない。行動の力を強めるほかに、農村の基本的な制度とその影響を変える必要がある」ことなどを述べています。

 「11 女性の地位を向上させる国家のメカニズムとジェンダー主流化」では、たとえば、「女性の地位を向上させる国家機構」として、国務院女性児童工作委員会の問題を取り上げています。「国務院女性児童工作委員会の職能の位置づけは、なお欠けている点があり、中国が署名した『女性に対するあらゆる形態の差別撤廃条約』と『北京行動綱領』を執行するために担うべき職責が明確でない。国務院女性児童工作委員会は、調整機構として、そのメンバーの機関・団体(9)に対する監督・規制・問責を強化する必要がある。また、立法・政策決定に参与する制度的ルートを増やす必要があり、その政策提案はもっと重視されなければならない。また、リソースと予算が非常に不足しており、人員の配備も足りない」と述べています。

 「12 金融危機の中国女性の発展に対する影響」では、たとえば、「危機に対応する公共政策のジェンダー視点の欠如は、女性の権益の保護と長期的発展にとって不利である」ということを指摘しています。その個所では、「まず、金融危機に対抗するための産業発展構造は、女性の構造的失業を激化させるかもしれない。たとえば、政府は金融危機に対して4兆元を投資して、鉄鋼、船舶、石油化学、紡織、軽工業、非鉄金属、設備製造、電子情報、物流産業の発展を引っ張り、3千万の就業を吸収した。しかし、産業構造から見ると、10大産業の中で女性の就業を比較的多く吸収している産業は紡織と軽工業だけであり、こうした危機に対するマクロなプランは、必然的に、構造的な女性の就労の機会の欠如をもたらす(10)。次に、経済が不景気な期間の『労働契約法』の“柔軟化”と“フレキシブル”な施行は、女性労働者の権益保護の力を弱めた」ことなどを指摘しています。

 その他、ここでは紹介しきれない、数多くの指摘があります。

 私は、このレポートは、現在の中国の女性問題の状況や政策の到達点・問題点、民間団体の要求を手短かに知るための、非常に良い文献にもなっていると思います。

 ただし、近年の政策的な前進に関する記述に比べて、それに対する批判はやや簡略で抽象的な傾向があります。また、上で述べた「女性と武力紛争」のように、タブーであるために書けていない問題もあります。セクシュアル・マイノリティやセックスワーカーの問題なども扱われていません(もっとも、セクマイなどの問題は、北京行動綱領でも特に扱われていないように思うのですが、「『北京+15』アジア太平洋地区女性NGOフォーラム」のワークショップや宣言では触れられています)。そうした限界は考慮する必要があります。

 今後、私は、3回のレポートの内容の比較などもしてみたいと思います。

(1)このフォーラムの状況については、ごく短文ですが、「北京+15 アジア・太平洋NGOフォーラムに参加しました」『女たちの21世紀』No.60(2009年12月)71頁(「北京+15アジア太平洋NGOフォーラム宣言」アジア女性資料センターHP2009-11-23にも、ほぼ同じ内容が掲載されています)という文があります。中国での報告には、劉伯紅・王曉蓓「“北京+15亚太妇女非政府组织论坛”综述—— 探索人类社会发展的新模式」婦女観察網2009年12月31日、『女声特辑:亚太妇女的行动与力量』[word]、「“北京+15”亚太地区非政府组织论坛召开」(社会性別与発展在中国HP2009/10/31)、「中心成員参加“北京+15”亚太NGO论坛」(『妇女观察电子月报』第54期(PDF)[2009年11月]があります。それらの報告によると、フォーラムには、アジア・太平洋地区の各国のNGOから640人あまりが集まりました。フォーラムは、「世代を超えたフェミニズム」「国連のジェンダー平等機構の改革」「気候変動・防災とジェンダー」「武装衝突・安全とジェンダー」「経済危機とオルタナティブな発展」の5つのテーマを掲げ、40あまりのワークショップが開かれたということです。フォーラムの最後には、宣言文(英文は、Final Declaration of the Asia Pacific NGO Forum on Beijing +15、中国語訳は、「北京+15亚太非政府组织论坛宣言 编织智慧,直面危机,铸造未来」[婦女観察網翻訳]婦女観察網2009年11月10日)が採択されました。
(2)国連から出された、「关于《北京宣言》和《行动纲领》(1995年)、以及联合国大会第二十三届特别会议《成果文件》(2000年)落实情况的调查问卷」に答えたもののようです。
(3)北京+5、+10の際の中国女性の動きについては、遠山日出也「最近の中国の女性労働問題をめぐるさまざまな女性たちの動き」『女性学年報』第26号(2005年11月)の137頁でも少し触れました。
(4)中国婦女研究会「中国NGO在行动」『婦女研究論叢』2000年第3期。このときは、「中国女性研究会」単独の名前で出されていますが、それがどういう理由によるものかは、わかりません。
(5)中国婦女研究会弁公室「“北京+10”工作方案」(2004年5月24日)社会性別与発展HP
(6)以下に、各団体が、「+5」と「+10」と「+15」のどれに関与しているかを整理してみました。
 ・「+5」と「+10」と「+15」のすべて……中華全国婦女連合会の主要工作部門、中華女子学院、北京紅楓女性心理相談サービスセンター
 ・「+5」だけ……中国女裁判官協会、中国児童少年基金会、中国人民大学女性研究センター、北京市婦連、労働と社会保障部就業局・国際局、国家計画生育委員会国際局
 ・「+5」と「+10」……中国女検察官協会、中国婚姻家庭[建設]研究会、中国環境科学学会、中華予防医学会女性保健学会、北京師範大学教育学部(院)、中央党校女性研究センター
 ・「+5」と「+15」……首都女性ジャーナリスト協会*、中国社会科学院社会学研究所
 ・「+10」だけ……首都女性ジャーナリスト協会女性メディアウオッチネットワーク*
 ・「+10」と「+15」……[中国法学会]反DVネットワーク、農家女百事通(のちの北京農家女文化発展センター)、北京大学法学院女性法律研究・サービスセンター、中国農業大学人文と発展学院(人文と発展センター)
 ・「+15」だけ……中国女企業家協会、中国市長協会女市長分会、中国就業促進会、中国人口と発展研究センター、中国社会科学院法学研究所、中国社会科学院ニュースとメディア学研究所、清華大学、北京母子保健院、中国婦女報、北京天津ジェンダーと発展協力者グループ、天津師範大学ジェンダーと社会発展研究センター、南京師範大学金陵女子学院、江蘇揚州市委党校、西北工業大学、陝西省女性理論婚姻家庭研究会、黒龍江省婚姻家庭研究所
 *女性メディアウオッチネットワークは、首都女性ジャーナリスト協会の中にあるので、同一の団体と考えれば、首都女性ジャーナリスト協会(女性メディアウオッチネットワーク)は、すべての回に参加していることになります。
(7)「北京+15」の時は上で述べたとおりですが、「北京+5」の時と「北京+10」の時のテーマは、以下のようでした。
「北京+5」
1.女性と貧困
2.女性と教育
3.女性と保健
4.女性と就業
5.女性と政治参加
6.女性の法律
7.女性とメディア
8.女性と環境
9.女児の生存と発展
10.婚姻家庭と老年女性
「北京+10」
1.女性と貧困
2.女性と教育
3.女性と保健
4.女性と暴力
5.女性と経済
6.女性の政治参加
7.女性の地位を向上させるメカニズム
8.女性の人権環境
9.女児とメディア
10.女性と環境
11.女児
12.老年女性
(8) 「北京行動綱領」は、「女性と武力紛争」に関する「戦略目標」としては、以下の6点を挙げています。
 1.紛争解決の意思決定のレベルへの女性の参加を増大し,武力又はその他の紛争下に暮らす女性並びに外国の占領下で暮らす女性を保護すること
 2.過剰な軍事費を削減し,兵器の入手の可能性を抑制すること
 3.非暴力の紛争解決の形態を奨励し,紛争状況における人権侵害の発生を減少させること
 4.平和の文化の促進に対する女性の寄与を助長すること
 5.難民女性その他国際的な保護を必要とする避難民女性及び国内避難民女性に保護,支援及び訓練を提供すること
 6.植民地及び自治権を持たない地域の女性に支援を提供すること
(9)国務院女性児童工作委員会は、国務院が責任を持つ女性・児童工作の議事調整機構で、現在、33の部[日本で言う省]や委員会、社会団体がメンバーです。中央宣伝部、外交部、教育部、科学技術部、公安部、民政部、司法部、財政部、人力資源と社会保障部、環境保護部、住宅都市農村建設部、水利部、農業部、商務部、衛生部、人口計画生育委員会など、国の主だった省庁はすべてメンバーに入っています。
 基本的職能は、以下だとされています。
 ・政府の関係部門が女性・児童の権益を保護する活動をしっかりおこなうように調整・推進すること
 ・政府の関係部門が女性と児童の発展要綱を制定・実施するように調整・推進すること
 ・政府の関係部門が女性・児童工作と女性・児童発展事業に必要な人力・財力・物資を提供するよう調整・推進すること
 ・各省・自治区・直轄市の人民政府の女性・児童工作委員会の活動を指導・督促・検査すること(国务院妇女儿童工作委员会机构简介)。
(10)フォーラムの当日も、中国女性研究所の研究員の劉伯紅さんは、この点について以下のように発言しています。
 「その一方、私たちは、中国政府の経済危機に対する対策には足りない点があることにも気がつきます。中国政府は4兆元の資金を投入して、10大産業の発展を引っ張り、4千万の就業を促進していますが、私たちが細かく分析すると、この10大産業(鉄鋼、自動車、船舶、石油化学、紡織、軽工業、非鉄金属、設備製造)の大部分は、いわゆる『男性産業』です。それは、男性には充分な就業をもたらしますが、女性には就業機会の欠如と就業構造の低下をもたらします。すなわち、政府のマクロ経済政策にはまだジェンダー・センシビリティが欠乏しているのです」((1)の、劉伯紅・王曉蓓「“北京+15亚太妇女非政府组织论坛”综述—— 探索人类社会发展的新模式」、劉伯紅「在应对经济危机的挑战中寻求可替性发展模式」『妇女观察电子月报』第54期(PDF)[2009年11月])。
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