台湾で女子生徒に対するスカート強制が問題に
昨年の話で恐縮ですが、台湾で、女子学生が制服としてスカートを強制されていることが問題になりました。
台北市女子第一高級中学(日本の高校に当たる)は、学生が体操服のショートパンツ姿で校門を出入りしていることに対して、「体裁が良くない」言って、その学生たちを処罰してきました。昨年秋、学生たちがそれに対して「不便だ」と抗議をしたことから、女子学生の制服が問題になりました(1)。
民間団体である「台湾ジェンダー平等教育協会(台湾性別平等教育協会)」が調査したところ、台北市の多くの国民中学(日本の中学校に当たる)と高級中学が、校則によって、夏季の制服として、女子学生にスカートをはくよう強制していることが明らかになりました(以下参照)。もしも守らなければ、さまざまな処罰をされます。
《夏季の制服の規定についての調査》
・国・私立の高級中学と高級職業学校……スカート:69.30%、スカートだがズボンも可:2.53%
・台北市立・私立の高級中学……スカート:95.56%、スカートだが、ズボンも可:13.95%。
・台北私立・私立の国民中学……スカート:62.50%、スカートだが、ズボンも可:15%。(2)
ジェンダー平等教育協会には、女子学生からさまざまな訴えが寄せられました。「のびのびできない」「心地よくない」「スカートをはくのが嫌な女子学生もいる」「ジェンダー平等教育法が施行されているのに、なぜ女子学生にはスカートを強制するのか」「男子学生は自由にズボンをはけるのに、女子学生ははけないのは何故か?」「スカートだと、風が強いと、覆い隠さないといけない」「階段を登るときに、押さえていなければならない」「腰を下ろして授業を受けたり、靴紐を結んだりするときに、注意しなければならない」「男子学生が足をじっと見るのがいや」(3)。
また、台北市立・私立の高級中学の3割近くは、冬服にもスカートを採用しており、「寒くてたまらない」という声も出ました(4)。
小学生にとっても、女子は学校帰りに球技場を駆け回ったり、滑り台を滑ったり、鉄棒をしたりできないこと、スカートめくりをされることを指摘する声があります(5)。
ジェンダー平等教育協会は、10月9日、記者会見を開いて、女子学生にスカートを強制するのは、なんの必要性も合理性もないことを強調しました。民進党の立法委員の黄淑英さんは、女子学生に対してスカート着用を強制するのは、上述の「ジェンダー平等教育法(性別平等教育法)」(ワードファイル)(2004年6月公布)(6)違反だと指摘しました。同法は「性別の差異が不公平な対応をもたらす」ことを避けるためのものであり、第12条には「学校はジェンダー平等の学習環境を提供しなければならない」とあるからです(7)。
台湾の教育部(日本で言う文科省)のジェンダー平等教育委員会は、この問題を受けて討論をおこない、10月13日、以下のような発表をしました(大要)。
一、多元的選択を尊重し、ステロタイプなイメージを取り除くこと。一部の学校が女子学生にスカートをはくことを強制しているのは、ジェンダーのステロタイプなイメージとジェンダーによる偏見が潜んでいるようで、ジェンダー平等教育法の「多元性を尊重し、性による差別と偏見を取り除く」という立法の精神に背いている。
二、学生が個別の選択によって処罰を受けてはならない。校則は、ジェンダー平等教育の精神に合致し、学生の個別の選択を尊重したものでなければならない。学校は、学生の服装・風采に対する個別の選択によって処罰をしてはならず、学生に民主的精神とジェンダー平等意識を身につけさせるようにすべきである(7)。
その後の経過はフォローしていませんが、日本の文科省には、こうした声明は発表できないと思います。
(1)「進出禁穿短褲不雅観? 北一女争褲権」『聯合報』2008年10月5日。
(2)「制服譲女孩真『囧』?!──女学生要有選択権 廃除強制裙装校規 記者会」(2008.10.09)台湾性別平等教育協会HP、「立委痛批/9成高中強制裙装 違性平法」『自由時報』2008年10月10日。
(3)「附件 学生申訴内容」(ワードファイル)
(4)「『穿裙子很囧』高中妹争褲装権」『中国時報』2008年10月10日。
(5)「破除刻板印象 性別平等」台湾読報教育資源網
(6)「ジェンダー平等教育法」については、台湾女性史入門編纂委員会編『台湾女性史入門』(人文書院 2008年)52-53頁の「ジェンダー・イクォリティ教育法」の項目も参照。
(7)(2)に同じ。
(8)「教育部性別平等教育委員會籲請學校尊重學生服儀之多元選擇」(2008/10/17)教育部性別平等教育委員会HP、「裙装褲装 学校不得強制規定」『台湾立報』2008年10月14日。
[お断り]
4月8日、上記の記事を書いた際に、冒頭で「最近、スカートとジェンダーの関係が台湾と大陸で話題になりました。2回に分けて書きます」と述べました。しかし、私が当初、大陸での話題として取り上げようと思った事件は、「ニュース」としての性格が薄いため、予定を変更して、今回は扱うのを中止して、またの機会に取り上げさせていただきます。冒頭の文も削除させていただきました。
台北市女子第一高級中学(日本の高校に当たる)は、学生が体操服のショートパンツ姿で校門を出入りしていることに対して、「体裁が良くない」言って、その学生たちを処罰してきました。昨年秋、学生たちがそれに対して「不便だ」と抗議をしたことから、女子学生の制服が問題になりました(1)。
民間団体である「台湾ジェンダー平等教育協会(台湾性別平等教育協会)」が調査したところ、台北市の多くの国民中学(日本の中学校に当たる)と高級中学が、校則によって、夏季の制服として、女子学生にスカートをはくよう強制していることが明らかになりました(以下参照)。もしも守らなければ、さまざまな処罰をされます。
《夏季の制服の規定についての調査》
・国・私立の高級中学と高級職業学校……スカート:69.30%、スカートだがズボンも可:2.53%
・台北市立・私立の高級中学……スカート:95.56%、スカートだが、ズボンも可:13.95%。
・台北私立・私立の国民中学……スカート:62.50%、スカートだが、ズボンも可:15%。(2)
ジェンダー平等教育協会には、女子学生からさまざまな訴えが寄せられました。「のびのびできない」「心地よくない」「スカートをはくのが嫌な女子学生もいる」「ジェンダー平等教育法が施行されているのに、なぜ女子学生にはスカートを強制するのか」「男子学生は自由にズボンをはけるのに、女子学生ははけないのは何故か?」「スカートだと、風が強いと、覆い隠さないといけない」「階段を登るときに、押さえていなければならない」「腰を下ろして授業を受けたり、靴紐を結んだりするときに、注意しなければならない」「男子学生が足をじっと見るのがいや」(3)。
また、台北市立・私立の高級中学の3割近くは、冬服にもスカートを採用しており、「寒くてたまらない」という声も出ました(4)。
小学生にとっても、女子は学校帰りに球技場を駆け回ったり、滑り台を滑ったり、鉄棒をしたりできないこと、スカートめくりをされることを指摘する声があります(5)。
ジェンダー平等教育協会は、10月9日、記者会見を開いて、女子学生にスカートを強制するのは、なんの必要性も合理性もないことを強調しました。民進党の立法委員の黄淑英さんは、女子学生に対してスカート着用を強制するのは、上述の「ジェンダー平等教育法(性別平等教育法)」(ワードファイル)(2004年6月公布)(6)違反だと指摘しました。同法は「性別の差異が不公平な対応をもたらす」ことを避けるためのものであり、第12条には「学校はジェンダー平等の学習環境を提供しなければならない」とあるからです(7)。
台湾の教育部(日本で言う文科省)のジェンダー平等教育委員会は、この問題を受けて討論をおこない、10月13日、以下のような発表をしました(大要)。
一、多元的選択を尊重し、ステロタイプなイメージを取り除くこと。一部の学校が女子学生にスカートをはくことを強制しているのは、ジェンダーのステロタイプなイメージとジェンダーによる偏見が潜んでいるようで、ジェンダー平等教育法の「多元性を尊重し、性による差別と偏見を取り除く」という立法の精神に背いている。
二、学生が個別の選択によって処罰を受けてはならない。校則は、ジェンダー平等教育の精神に合致し、学生の個別の選択を尊重したものでなければならない。学校は、学生の服装・風采に対する個別の選択によって処罰をしてはならず、学生に民主的精神とジェンダー平等意識を身につけさせるようにすべきである(7)。
その後の経過はフォローしていませんが、日本の文科省には、こうした声明は発表できないと思います。
(1)「進出禁穿短褲不雅観? 北一女争褲権」『聯合報』2008年10月5日。
(2)「制服譲女孩真『囧』?!──女学生要有選択権 廃除強制裙装校規 記者会」(2008.10.09)台湾性別平等教育協会HP、「立委痛批/9成高中強制裙装 違性平法」『自由時報』2008年10月10日。
(3)「附件 学生申訴内容」(ワードファイル)
(4)「『穿裙子很囧』高中妹争褲装権」『中国時報』2008年10月10日。
(5)「破除刻板印象 性別平等」台湾読報教育資源網
(6)「ジェンダー平等教育法」については、台湾女性史入門編纂委員会編『台湾女性史入門』(人文書院 2008年)52-53頁の「ジェンダー・イクォリティ教育法」の項目も参照。
(7)(2)に同じ。
(8)「教育部性別平等教育委員會籲請學校尊重學生服儀之多元選擇」(2008/10/17)教育部性別平等教育委員会HP、「裙装褲装 学校不得強制規定」『台湾立報』2008年10月14日。
[お断り]
4月8日、上記の記事を書いた際に、冒頭で「最近、スカートとジェンダーの関係が台湾と大陸で話題になりました。2回に分けて書きます」と述べました。しかし、私が当初、大陸での話題として取り上げようと思った事件は、「ニュース」としての性格が薄いため、予定を変更して、今回は扱うのを中止して、またの機会に取り上げさせていただきます。冒頭の文も削除させていただきました。